夢にまで見たい二次元恋愛、現実にはあり?なし?

羽月☆

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2 改めて初心貫徹を誓い過ごす週末。

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とぼとぼと駅から家に向かう。

楽しみだった飲み会は無事に終わった。
本当に何事もなく終わった。
結果名刺一枚、連絡先一人分も手の中にはない。

ただ、飲んで食べた、先週と違うのは相手に知らない男性がいただけ、そんな現実だった。


みんながみんなそうだったら別にいい。

なのに友達の一人はなんとなく最初からロックオンされ、数合わせの先輩も途中から邪魔できない雰囲気を漂わせていた。

肝心の私はというと・・・・その他大勢の中で最後まで変わらず楽しく過ごしましたとさ、めでたしめでたし。


トホホな結果だった。何もなくて静かな結果。

どんどん現実は私に厳しくなる。

なんでだろう。



要相談。
相手はやはり幹事だった友達。
だいたい一番前のめりに参加したのに。
そうは言っても実際の数時間は普通だったと思う。
鼻息も荒くなく、笑顔も自然で、目立つほどじゃない『普通』という個性。


『夢ちゃん、手ぶらで帰っちゃった。』

『お疲れ様。楽しそうだったね。』

『楽しかった。でも何もなかった。』

『いろんな人と話してたのに?』

『話しただけだった。』





しばらく返事がなかった。

『何でだろうね?』 

そこを聞きたい!

『まあ、今回はぴったり君がいなかったと言うことかな?』

気を遣ってくれただろう夢ちゃん。

『残念だけどまた頑張る。』

また機会があればの話。
そんなチャンスが目の前に来ればの話。



それから考えた。
結論は『初心貫徹。』

だって平凡でもいいと思ったのに、そんな平凡にも見向きもされない現実に、またあの夢見がちな日々に戻ってもいいのでは?
あの頃よりは環境も変わった。
同級生や先輩、通りすがりの人、そんな枠が広がった。
今度は同期、先輩、その内後輩、通りすがりは一緒だとしても、それでも行動エリアも広がり、出会う人も増えている。
学生だった頃より明らかに増えてるよね。
じゃあ、良くない?いっそ非凡、脱普通、まるでドラマのような!!を目指してみても良くない?

そんな結論に行きついたのだった。



「里穂、いい加減に起きなさい。お昼になるわよ!」

階段の下からお母さんの声がする。

この声は隣にも響く。
一郎君によく言われた。

『おばさんの声がすると俺もビクッとなる。』
『怒られ過ぎだよ。何でそんなに怒られネタがあるのか分からない。』

呆れられてよく言われてた。

今は一郎君はいないけど、静かになった隣の家には余計に聞こえてるかもしれない。

「は~い。」

返事をして黙らせる。

ただ母親という生き物はお腹の中にいる頃から子供の事を観察してるから私より私を知ってる。私が一度で言うことを聞くとはまったく思ってない、返事が聞こえたからと言ってあきらめないのだから。

「里穂、いい加減に起きないとあっという間におばあちゃんになるわよ。」

どんな理屈?

寝坊からのおばあちゃんって、どうしてそうなるの?

とりあえず、えいっと声をかけて、自分に気合を入れて起き上がった。

途端にバラバラバラッと音がした。


そうそう、決意通り、とりあえずは古いマンガでいろんな研究を再開していたのだ。
時代を超えてもあの頃のドキドキと同じような感動に包まれる、非常に素直で清らかな心の私。結局あの頃から少しも変わりがないと分かった私のピュアさ、もしくは精神年齢。
ついつい何冊も読み過ぎて、時間も遅くなって・・・・寝たのは朝だったのだ。

だから寝坊というか、睡眠時間がシフトしただけだ。

起き上がり、ベットの下に落ちた数冊を机の上に乗せる。
枕の周りにも何冊もある。
私のバイブル、私には高尚な論文くらいの価値があるとも言える研究の書。
そこに通じてる恋愛の定理は理解不能な難しい何とかの定理よりも崇高なものなのだ・・・すくなくとも恋する女子一般にとっては・・・恋したい女子にとっては。


今日はもっともっと、ブランクを埋めるべく研究の書を集めに行く予定だ。
それが今日の私のするべき事。


「里穂~、お昼よ。いい加減にしなさい!!」

「起きたよ。大丈夫だよ。」

ドアを開けて返事した。


文句は言えない、きっと朝ご飯を飛ばしてのお昼ご飯を作ってもらってるんだから。

楽な服に着替えて、下に降りて顔を洗う。
適当適当、特に本屋に行くだけだし。

あ・・・・そこで思わぬ何かがあるかもしれない・・・・・・。

まあ、とりあえず後でいいや。

「おなか空いた~。」

挨拶より先に正直な今の気持ちが出た。

テーブルにはおいしそうな湯気といい香りが。
シンプルだけど飽きのこない週末の定番、麺。
今日はうどんだった。

「まったく手伝いなんて少しもしないし、ぐうたらして、遅くまで何してたの?」

「いろいろとやる事あるの。」

「漫画本に囲まれてジタバタしてたみたいだけど、週末なのに何のお誘いもないなんて。」

朝私の部屋をのぞきこんだらしい。

「いいじゃない。金曜日楽しく過ごしたんだから、週末はゆっくりなの。」

「楽しかったという割には落ちこんだ顔で帰って来た気がしたけど。」


もう、なんでそんなに観察してるのよ。
ずるずるとうどんに集中する。

「美味しいね、お父さん。」

「ああ、母さんが作ると何でもおいしいからな。」

褒め上手なお父さん。眼鏡をくもらせてうどんを食べている。

前に二人の馴れ初めなる古い出来事を聞いたことがある。
それはそれはレアに運命的な出会いだったらしい。


まずお母さんが貧血をおこした奥様を助けたらしい。
一緒に涼んで、飲み物を買って来て、落ち着いた後に荷物を持って自宅まで付き添ったらしい。
その時にお礼を言われて、玄関で上がって欲しいと言われたのを辞退してるところに、その家の息子さんが帰って来て。
何とそれがお父さんで。
やはり挨拶だけでそのままその家を離れたらしいけど、その後日、会社近くで再会して声をかけられたらしい。
お互いが隣のビルにお勤めだと分かって、名刺を交換し合い、一度お礼の食事をと請われて・・・・・とんとんとん。
当然反対されるでもなく、とんとんとん。

めでたく私が生まれたと言うハッピーな話だった。


そんな事例は私の研究書にも載ってなかった。
まさかこんなに身近にミラクルを体現して結論付けた二人がいたなんて。
いついかなる場合でも『情けは人の為ならず』に化けるかもしれないと、その時は思った。
ただ貧血の奥様なんてその辺に落ちてないのだ。
よく考えたらその当時、今私のお祖母ちゃんである奥様はお母さんと同じくらいの年ということだろう。
うどんをすすっているお母さんはスーパー元気だ。
その日のおばあちゃんがよっぽど体調を崩してたんだろう。
今はそんな片鱗はない、想像できないほど元気なお祖母ちゃんだ。
おじいちゃんも元気だし、二人とも行動的で問題ない。

そうなるとお母さんお父さんにとっても本当にレア現象だったと分かる。


うどんを食べ終わり後片付けを押し付けられてしぶしぶ手伝い、その後ちょっとだけ小ぎれいに身支度して本屋に出かけた。
ドキドキ必死の数冊を買い込んで戻って来た。
よく考えたら本屋で買うより読み放題のサイトに登録した方が良かったのでは・・・・・、通勤中も研究できる。隙があれば研究に没頭できる。

気がつくのが遅かった。

そしてせっかく楽な恰好よりはきちんとして出かけたのに、本当に何も起こらずに無事に家に帰ってこれた。

やっぱり何かが足りないんだと思う。
運命的なラッキーが。
どこにあるんだろう、私がハッピーになれるようなラッキーな事、もしくはミラクル。
DNAに刷り込まれてもいいのに、そこは全く必要な遺伝情報じゃないらしい。
そこは『親譲り』のモノが欲しかったのに。

残念。

ひたすら残りの週末を吹き出しと画でジタバタとして過ごした。

いつの日か、大変に有意義だったと振り返りたい。

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