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1 私のリアルは平凡以下だったらしい。
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二次元を愛する女子はたくさんいる。
女子だけじゃない、男子だって、男性だって、おじさんだって、周りを見渡せば携帯の画面がそう言ってる。だから世の中にはたくさんいるんだから。
私はそんなたくさんの中の一人なだけだった。
だって線で描かれた人たちはすごく素敵なんだもん。
お肌ツルツルの、髪はサラサラ。
性格が悪くても、実はいい人。
口が悪くても実はツンデレで甘いか俺様か。
おまけに頭も運動神経もほどほど以上。
お気に入りの作品の影響を受けるたびに妄想が膨らんで。
そしてリアルな想像に落とし込んだら想像できる舞台を整えるのに忙しい。
それなのに・・・・。
気を抜けないどころか、いろんな意味で気を抜いていても、何も起こらなかった。
いつか廊下の角で、いつか本棚の上の方に手を伸ばした時に、今年こそ夕日に赤さを背景に教室の窓辺で、ちょっと薄暗い寂しい校舎の暗がりで、気持ちいい日の屋上で、ふと座った公園のベンチで・・・・・・。
果ては、ある日お父さんの隠し子が訪ねてきて、なんと素敵すぎる血のつながらない兄が・・・・。
さすがにそれは・・・なしなし、ダメよね。
大好きなお父さんにはそんな不埒な関係の身に覚えがなく、余計な家族は増えないまま、仲のいい家族のまま。
じゃあ、隣の家やその隣、さらにまた隣と考えても・・・・小さい頃の写真を見ても、現実で認識できる素敵な幼馴染もいない。
隣の一郎君・・・・・・普通の一郎君、一つ上の一郎君、さっさと大学生になってどこかに行った一郎君、だけ。
疲れさせた?
呆れられた?
冷たく見られたの?
アホと思われたの?
現実を見ろと言われたのかな?
ああ、はっきりといい加減にしたらとも言われた。
全部女友達に言われた。
そんな二次元の話のようなシチュエーションでの出会いはなかなかない。
なかなかと言うところに稀なパターンを想像してたのに。
ああ・・・・全くない。
私に限っては本当にまったくない、ちらともなかった。
しょうがない、こうなったら出会いは平凡な感じでもいい。
そう思って現実を見て、ようやく諦めた大学生の頃。
ニコニコしてたらそれなりに友達から彼氏へ、知り合いから彼氏へ、同級生から彼氏へ。
いかにもな平凡パターンだったけどそんな事も少しはあった。
決定的に素敵でドラマティックなシーンじゃなくて、素っ気ないくらいの約束の言葉の後、ドキドキはあった。
そして舞い上がったら、劇的な出会い編は諦めて、あとはシーン別のいろいろを期待する。
頭を撫でて欲しくて、壁にどんと押されたくて、クールに振舞っても力強く引き寄せて欲しくて、呆れながらも可愛いと思って欲しくて・・・・。
それくらいはあるよね、期待するよね、いいよねって思ってた。
初めはびっくりしながらでも、いきなりの私の甘えた視線に応えてくれた。
鈍くて全然な人も、しょうがなく言葉を足して匂わせれば、甘いシチュエーションはあった。
もう、全力で満足する。
『ちょっと、漫画みたいにラブラブじゃん。』
『現実もちっとも負けてないじゃん。』
そんな事を心でこっそりと思うこともあった。
でもそんな事はなかなか続かない。
その内視線を鬱陶しく思われて、わざとらしく誘っても少しものって来てくれなくて空回り。ため息は確かに冷たい視線を伴ってたかも。
流行りのシチュエーションに流れ込んでドキドキしたり、言ってもらいたいセリフを引き出そうとあの手この手で誘導したり。
日々愛読書を片手にお勉強して、本業であるべき勉強よりも熱心に研究して、その上で誘っても待ってても空振りが続いた。
最初は照れてる感じもあったけど、最後は軽くキレる、もしくは全無視。
毎回毎回、残念だけどすぐにそうなる。
意外に現実的な男子。
やっぱり私の愛するキャラクターたちは女子だけのものだから、私のバイブルの中にあふれる甘いラブが普通だとは思ってくれなくて。
付き合いきれないと言わんばかりの捨て台詞で短く終わる恋。
本当に短い。
盛り上がりの山を迎える前に終わってしまう。
最高最長に付き合ってくれても、丘くらいの小山が一つ二つくらい。
全然堪能できないくらい。
まだまだお願いしたいことも、されたいことも多いのに。
あふれるほどの触れ合いパターンが頭の中にはあるのに。
友達に相談してもアドバイスは『自分らしさ』で勝負しろと。
二次元にリアリティーを求めたい主義の『私らしさ』は借りものだと言われた。
それってやっぱり現実を見ろって事?
本当にあの頃の情熱は何だったんだろう。
その内嫌でも現実を見る。
そして現実と折り合う。
それが成長するって事らしい。
大人になるって事らしい。
思い出しても痛い恋愛ごっこの思い出だ。
結果、平凡なパターンが普通、少なくとも自分には滅多にそんなドラマはおこらないと諦めた。
それなのに、平凡な出来事すらおきない自分の現実を淡々と生きている日々・・・あれ?
どこにでもありそうな平凡現象は?どこ?
社会人になり一層現実折り合うことを求められた。
そして静かに一人で暇な時間を過ごしてる日々。
暇じゃないときは友達と一緒にいる。
先週に引き続き金曜日の夜を一緒に過ごしてる同期の女子友。
だからと言って私と同じ『現実幸なし組』ばかりじゃない。
半分以上は週末浮かれ組だ。
「来週、飲み会しよう。彼氏にお願いされたの。行ける人~。」
夢ちゃんからのうれしい提案だった。
「はい!!!!」
一番元気よく手を上げた。
ただ、私一人だった。
ゆっくり手を下げた。
「他には?」
「いいよ。暇、暇。」
そう言いながら参加表明二人。
少しも前のめりじゃない二人。
私なんてさっきからどんな服で行こうかと脳内会議が忙しいのに。
あらゆる組み合わせでクローゼットから服が飛び出してるのに。
そんな来週に向けてひとり鼻息荒くしてるうちに決定になった飲み会。
他にも数人先輩を呼ぶかもしれないと。
どうでもいいです。
私に意味があるのは私が参加することだけ。
期待したい!
どこにでもあるはずの平凡な出会いに!!
夢ちゃんの彼氏は年上らしいから、それもあり?
年下を可愛がる優しいお兄さんのような人を希望します。
それくらいはいいよね! いるよね? 私にもできるよね??
楽しい未来を見ていた。
元気に若さを披露して張り切って楽しそうにしましたっ!
女子だけじゃない、男子だって、男性だって、おじさんだって、周りを見渡せば携帯の画面がそう言ってる。だから世の中にはたくさんいるんだから。
私はそんなたくさんの中の一人なだけだった。
だって線で描かれた人たちはすごく素敵なんだもん。
お肌ツルツルの、髪はサラサラ。
性格が悪くても、実はいい人。
口が悪くても実はツンデレで甘いか俺様か。
おまけに頭も運動神経もほどほど以上。
お気に入りの作品の影響を受けるたびに妄想が膨らんで。
そしてリアルな想像に落とし込んだら想像できる舞台を整えるのに忙しい。
それなのに・・・・。
気を抜けないどころか、いろんな意味で気を抜いていても、何も起こらなかった。
いつか廊下の角で、いつか本棚の上の方に手を伸ばした時に、今年こそ夕日に赤さを背景に教室の窓辺で、ちょっと薄暗い寂しい校舎の暗がりで、気持ちいい日の屋上で、ふと座った公園のベンチで・・・・・・。
果ては、ある日お父さんの隠し子が訪ねてきて、なんと素敵すぎる血のつながらない兄が・・・・。
さすがにそれは・・・なしなし、ダメよね。
大好きなお父さんにはそんな不埒な関係の身に覚えがなく、余計な家族は増えないまま、仲のいい家族のまま。
じゃあ、隣の家やその隣、さらにまた隣と考えても・・・・小さい頃の写真を見ても、現実で認識できる素敵な幼馴染もいない。
隣の一郎君・・・・・・普通の一郎君、一つ上の一郎君、さっさと大学生になってどこかに行った一郎君、だけ。
疲れさせた?
呆れられた?
冷たく見られたの?
アホと思われたの?
現実を見ろと言われたのかな?
ああ、はっきりといい加減にしたらとも言われた。
全部女友達に言われた。
そんな二次元の話のようなシチュエーションでの出会いはなかなかない。
なかなかと言うところに稀なパターンを想像してたのに。
ああ・・・・全くない。
私に限っては本当にまったくない、ちらともなかった。
しょうがない、こうなったら出会いは平凡な感じでもいい。
そう思って現実を見て、ようやく諦めた大学生の頃。
ニコニコしてたらそれなりに友達から彼氏へ、知り合いから彼氏へ、同級生から彼氏へ。
いかにもな平凡パターンだったけどそんな事も少しはあった。
決定的に素敵でドラマティックなシーンじゃなくて、素っ気ないくらいの約束の言葉の後、ドキドキはあった。
そして舞い上がったら、劇的な出会い編は諦めて、あとはシーン別のいろいろを期待する。
頭を撫でて欲しくて、壁にどんと押されたくて、クールに振舞っても力強く引き寄せて欲しくて、呆れながらも可愛いと思って欲しくて・・・・。
それくらいはあるよね、期待するよね、いいよねって思ってた。
初めはびっくりしながらでも、いきなりの私の甘えた視線に応えてくれた。
鈍くて全然な人も、しょうがなく言葉を足して匂わせれば、甘いシチュエーションはあった。
もう、全力で満足する。
『ちょっと、漫画みたいにラブラブじゃん。』
『現実もちっとも負けてないじゃん。』
そんな事を心でこっそりと思うこともあった。
でもそんな事はなかなか続かない。
その内視線を鬱陶しく思われて、わざとらしく誘っても少しものって来てくれなくて空回り。ため息は確かに冷たい視線を伴ってたかも。
流行りのシチュエーションに流れ込んでドキドキしたり、言ってもらいたいセリフを引き出そうとあの手この手で誘導したり。
日々愛読書を片手にお勉強して、本業であるべき勉強よりも熱心に研究して、その上で誘っても待ってても空振りが続いた。
最初は照れてる感じもあったけど、最後は軽くキレる、もしくは全無視。
毎回毎回、残念だけどすぐにそうなる。
意外に現実的な男子。
やっぱり私の愛するキャラクターたちは女子だけのものだから、私のバイブルの中にあふれる甘いラブが普通だとは思ってくれなくて。
付き合いきれないと言わんばかりの捨て台詞で短く終わる恋。
本当に短い。
盛り上がりの山を迎える前に終わってしまう。
最高最長に付き合ってくれても、丘くらいの小山が一つ二つくらい。
全然堪能できないくらい。
まだまだお願いしたいことも、されたいことも多いのに。
あふれるほどの触れ合いパターンが頭の中にはあるのに。
友達に相談してもアドバイスは『自分らしさ』で勝負しろと。
二次元にリアリティーを求めたい主義の『私らしさ』は借りものだと言われた。
それってやっぱり現実を見ろって事?
本当にあの頃の情熱は何だったんだろう。
その内嫌でも現実を見る。
そして現実と折り合う。
それが成長するって事らしい。
大人になるって事らしい。
思い出しても痛い恋愛ごっこの思い出だ。
結果、平凡なパターンが普通、少なくとも自分には滅多にそんなドラマはおこらないと諦めた。
それなのに、平凡な出来事すらおきない自分の現実を淡々と生きている日々・・・あれ?
どこにでもありそうな平凡現象は?どこ?
社会人になり一層現実折り合うことを求められた。
そして静かに一人で暇な時間を過ごしてる日々。
暇じゃないときは友達と一緒にいる。
先週に引き続き金曜日の夜を一緒に過ごしてる同期の女子友。
だからと言って私と同じ『現実幸なし組』ばかりじゃない。
半分以上は週末浮かれ組だ。
「来週、飲み会しよう。彼氏にお願いされたの。行ける人~。」
夢ちゃんからのうれしい提案だった。
「はい!!!!」
一番元気よく手を上げた。
ただ、私一人だった。
ゆっくり手を下げた。
「他には?」
「いいよ。暇、暇。」
そう言いながら参加表明二人。
少しも前のめりじゃない二人。
私なんてさっきからどんな服で行こうかと脳内会議が忙しいのに。
あらゆる組み合わせでクローゼットから服が飛び出してるのに。
そんな来週に向けてひとり鼻息荒くしてるうちに決定になった飲み会。
他にも数人先輩を呼ぶかもしれないと。
どうでもいいです。
私に意味があるのは私が参加することだけ。
期待したい!
どこにでもあるはずの平凡な出会いに!!
夢ちゃんの彼氏は年上らしいから、それもあり?
年下を可愛がる優しいお兄さんのような人を希望します。
それくらいはいいよね! いるよね? 私にもできるよね??
楽しい未来を見ていた。
元気に若さを披露して張り切って楽しそうにしましたっ!
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