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5  後輩の様子が気になったんです ~桐乃~

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エステに行って頭の緊張をとってもらい、背中や肩をほぐしてもらい。
うっかり寝てしまうほどリラックスしてしまった。
目が覚めた時にどこだか分からないくらいだった。
疲れていたらしい。

昨日は遅くまで友達と飲んだから。
彼氏いる子いない子、いろんな意見を出し合い、愚痴も言い合い、皆が酔っぱらった。
私が提供した話題とえいば最近の占いの結果だ。
『二年前に目の前に来た大きなチャンスを見逃したらしい。』
そういったら三年以内に会ったすべての人に愛想を振りまいておけと言われた。
既婚者以外彼女がいても、一応対象にしておけとも言われた。
それは多いようで、そうでもないのか。
飲み会で知り合った人はいただろうけど、もはやそこは追えない。
後は会社の中で話をした人。
思い浮かべたら思った以上に少なかった。
だっておじさん上司と既婚者除外でいいでしょう。
そうなると他の課でちょっと知り合った人と後輩君たち数人。
まず「俺のものだ」と彼女の事を堂々とそう言ってた柏木君は一番に除外。
そうなるともう一人、その下もその下も一人づつ。
課内は三人。
それ以外の課も飲み会ですれ違うくらいの関係のみ。
顔が分かるか怪しいくらい。
とりあえず酔いが醒めたら候補を列挙してみてもいいと思った。
あまりの少なさにびっくりするはずだと。
きっと社外の人との間のどこかに転がっていたのだろう、そう思いたい。

地蔵の写真を机の引き出しに仕舞い込んでると教えたら、盛大に笑い飛ばしてくれた。
試しに財布の中の原本を見せた。
とりあえず皆を笑顔にもできるお地蔵様。
私の近況報告はそんなものだった。
後はちょっとした後輩ダメ男君の愚痴くらい。

久しぶりに笑い疲れて、喋り疲れて、酔っぱらった。

良く寝たつもりなのに、ここでも良く寝て。

「本当に気持ち良かったです。マヌケな顔をして寝てしまいましたよね。」

「まさかです、寝顔も綺麗ですよ。」

さすがプロの言うセリフはすんなりと心に入ってくる。
それ込みのお礼を言ってお金を払ってお店を出た。

夕方の美容院の予約まで時間があって、映画を予約した後食事をした。
一昔前のアメリカが舞台の映画は衣装も小道具もカッコよくて。
女優さんも綺麗だった。

思わず影響を受けてしまったのだ。
女優さんのスカーフを巻いたスタイルが綺麗で。
美容院に行く前にヘアスタイルを調べてしまった。

しばらく同じ髪型にして変えてない。
にわかに憧れたスタイルなら相当切ることになる。
かなりの変化だし、そんなヘアスタイルの自分はもう記憶にもないくらい。
でも金曜日に見た写真の中にはそんな自分もちょっとだけいた。
大学の途中は短めのヘアスタイルだった。
成人式のために伸ばして、終わった後一度バッサリ切ってから伸ばす途中の段階。
それ以降は長めの同じような髪型で、今もそうだ。

そんな自分に慣れている。

ああ、どんどん切りたい気持ちも出てくる。
あの頃のキラキラとした表情は自分でも可愛いと思った。
今ヘアスタイルを一緒にしたからと言ってどうなるものでもないのに。
予約の時間までじれじれと悩んだ。
美容院のドアを開ける段階になっても決められずに、相談してみた。
恥ずかしげもなく映画のタイトルを言って画像を出してもらった。
髪を触られて、見比べられて、それを三度くらいやられて、似合うと断言されたら、切るしかないでしょう。
お願いした・・・その後、やっぱり・・・と思ったけど、口を引き結んで言い出さず。
髪がケープを落ちる音がする。
結構な長い束が落ちていく。
するると滑るそれを目で追う。

「大丈夫です、似合いますよ。顎が細いし小顔だし、美人が引き立ちます。今の髪型よりも個性的でもあります。やっぱり長いとあんまり個性は出ないですよね。」

「そうですね。」

別にそこまで出したい方じゃないけど。
日々のお手入れが楽なのがいい。

それでもだんだんと顔の輪郭が出て、軽くなり、変わって行くのを見てるとワクワクもする。

「アクセサリーも目立ちますよ。アレンジ次第で雰囲気は随分変えられるし楽しめます。」

そんなに楽しみたいと張り切ることもない日々、楽なのが一番だから。

今までだってざっくりまとめるか、下ろすか。
凝った髪型にすることも本当に結婚式くらい。
そんなのは分かってると思うのに。

それでもお手入れは楽だと言われたから一安心。

最後にブローしてもらって、出来上がりは懐かしい顔・・・よりはぐんと大人っぽかった。さすがにあの頃よりは大人になり過ぎたから。

でも楽そう、軽い。

色んなアレンジのアドバイスももらった。
気分転換にちょっと試してもいいかなって思うくらい熱心に言われた。

満足した一日が終わり、鏡に映る自分に慣れない気がして、何度も見て。

次の朝、本当に楽だった。
軽く寝ぐせ直しをしてつやを出して、粗目の櫛を入れて終わりにした。

さあ、せっかくだから仕切り直しにして・・・・あ、ここ三年の出会いを列挙するのを忘れた。
まあいいか。酔っ払いの提案は根拠なし。
徒労に終わったら悲しい。
社外の恋愛対象者ど真ん中を手繰り寄せられなかった時点で結果は見えてる。

そうそう、それでも小さないいことはある。
会社に着いてたくさんの人に褒められた。
朝から気分がいいじゃない!

後輩見本の柏木君も反応してくれて。

「あ、朝倉さん、凄い綺麗でカッコいいです、似合います。断然いいです。」

うれしいけど・・・・先週までの自分を否定された気もうっすらとするのだが。
それでも全力で褒めてくれた、本当にいい奴じゃないか、嘘のつけない正直者め。
ちなみに隣にいた草野君はぼんやりしていた。
挨拶すら小声だった。

まったく、気が利かない後輩の見本にするぞ!

今日は機嫌がいいから、許そう。

それでもいつものように地蔵のコピーを見て、心を落ち着けてから仕事を始めた。


「草野君。」

そう呼んだら首と一緒に背筋も伸びて、表情は固まった。
せっかく機嫌がいい今日は優しい声で呼んだのに。
違いの分からない男なのは今朝で分かってるけどね。

また身を細くしながら目の前に来た。

「こことここ、二カ所、もう少し資料を足してくれる?ちょっと足りない気がするから。」

付箋じゃなくて言葉で伝えた。珍しく。

「・・・はい、やってみます。」

もう午後も遅い時間だった。

「明日でもいいけど。」

「いいえ、今日中にやれます。」

そう言われたら私も待つべき?残業すべき?
まあ、二か所ならそう時間もかからないで仕上げるだろう。
是非ともそうあって欲しい、そうでないなら明日にしてもいいんだから。

今日は機嫌がいいから、許す日だから。
月曜日だけど・・・・・許そう。
ちょっとくらいなら付き合おう・・・・地蔵地蔵・・・・。
念のために引き出しに手をかけた。

それから二時間が経った。
残業一時間で私の仕事は切りがいい、ただ、草野君はまだ来ない。
そもそも付き合い残業だ。
帰ろうと思ったら定時でも良かった。
明日の分をやっただけだ。
途中心がザワザワして机の引き出しを見て心で合掌すること二回。

いい加減に・・・・しないかなあ~・・・・・・。

草野君はさっきからぼうっとしてるみたいだ。
少なくとも焦点は合ってない。
柏木君に声をかけられて先に帰られてから更に。
しばらく指も動いてないんじゃない?

そろっと引き出しに手をかけて、今日はもう最後にしたい儀式、合掌。
静かにそれを終わりにして、草野君のところに行った。
目の前に立ってみた。
だんだん焦点が合ったらしい、顎の手は外れて、背筋が伸びて。

「はい、すみません。」

まだ何も言ってないのに、謝られた。

「私は終わりだけど。」とっくに終わってもいいんだけど・・・・。

「草野君、まだやるの?」明日でいいって言ってあげたのに・・・・・。

「とりあえず明日でいいよ。」明日にしてよ。最初からしてくれてたら良かったのに!!


地蔵効果で言葉に出た部分はとっても優しく、そうじゃない本心は隠せた。
さすがに儀式を三度も繰り返したんだから。
あれ、四度だったかな?
とりあえず複数回繰り返したんだから。

「出来てます、今印刷します。すみません、直ぐに。」

そう言われた。
いいのに、そこまで言われたら見ないわけにはいかない・・・というか、さっさと出せばいいじゃない?まったく・・・・・・・・ぅぅぅ。

「わかった。」

表情が変わる前にくるりと向きを変えられたと思う。

だいたい皆帰ってる、月曜日からせっせと働いたら金曜日まで持たないじゃない。

引き出しを開けて深呼吸、今度こそ最後の儀式だ。
印刷された書類を軽く見て終わりにする!
あと五分、本当にあと五分で終わりにする!!

足音がしたので急いで引き出しを閉めた。

指摘した二か所はちゃんと手を入れたらしい。
どうしてこれにそんなに時間をかけたんだ・・・・・ぅぅぅ。

「あの・・・。」

「何?」

つい、きつい口調になった、しまった、油断が出た。

「あ・・・・似合ってます、すごく。」

そう言って指で自分の頭を指した草野君。
それはまるでピストルを突き付けたようで。
一瞬何が言いたいの?自殺予告?なんて思うほどの唐突さ。

どうやら髪型を褒めてくれたらしい。
お詫びの様に、埋め合わせの様に、今になって。
かなりの時間差攻撃。


「ありがとう。」

お礼は言った。

「これは多分大丈夫。明日もう一度見るから。まだ残るの?」

書類を掲げて言った。
そんなに大量に仕事をあげてるつもりはないのに。

「いえ、もう終わりにします。」

とっくに終わりにしてなかったかしら?

ちょっと嫌みの一つでも言いたくなるような気分。
でもせっかくだからちょっと話でもしようか。
さっきのは本当にヘアスタイルの事だよね、自殺予告じゃないよね。

「帰るなら、駅まで一緒に帰っていい?ちょっと話しない?」

そう言ったらよろめくように一歩下がって、表情は固まった。
まるで漫画のような反応。そんなに破壊力のある一言だった?

「はい、今、直ぐに。」

そう言って走って帰った。
パソコンを閉じて荷物をまとめて。

私は化粧直しする暇も与えてもらえない素早さで。
このスピードに乗って駅まで競歩レベルの速さでいくつもり?

しょうがないので荷物を持って、並んで歩いた。
ハンカチで軽く顔を押さえる。
油が取れたらいいけど。
駅のトイレで軽くチェックしよう。

エレベータの中でも無言で、降りても無言で。

歩く速さは競歩レベルじゃなかった。
良かった、月曜日から疲れるし。

「あの、話は?」

会社を出たら聞いてきた。

「仕事、どう?」


「頑張ってるつもりです。すみません。」

「楽しい?」

「それは・・・・普通に・・・・。」

「まあ、そうよね。私も楽しいかって聞かれたら・・・・面倒だもんね。」

そう言ったのに反応なし。

俯いた横顔を見る。

「食事とれてたりする?よく眠れてる?」

思わずストレスチェックをしてしまう。
バレたかな?

「あ、奢ります。すみませんでした、遅くまで、待っていただいてたのに、ぼんやりしてしまって。」

ストレスチェックの途中だけど・・・・。あれ?

「お腹空いてるの?」

「はい。勿論です。」

「じゃあ・・・食事する?」

一緒に?二人で?本気?命が磨り減らない?

「お願いします。」

お願いされた。それは心からじゃないとしても・・・・じゃあ、残業のお礼の義務感だろうか?

「それじゃあ・・・。」

適当に駅中のお店に入った。見られても何ともないとどうでもいい。
寧ろ気を遣わなくて堂々としていられる。

「やっぱりお腹空いたね。お酒飲む?」

メニュー表を手にして聞いてみた。

「はい。」

飲みたかったらしい、うれしそうな顔をした。
奢りでいいの?
好きなものを飲みたいんだけど・・・・。
まあ、いっか。折半でしょう、ここは。

「適当に好きなものを頼みましょう。」

そう言って自由に好きなものを頼んでお酒を頼んで。

「そういえば、楽しかった?金曜日。柏木君の彼女たちと飲んだんでしょう?」

お酒を飲んでいた顔の表情が曇った。

「柏木に聞いたんですか?」

「ううん、まさか。偶然話をしてるのが聞こえたの。いい事あったんじゃないの?」

笑顔で聞いてみた。
でも途中で止めるべき話題だったと気がついた・・・けど遅かった。


「柏木の彼女は可愛い子でいい子で、二人の相性はバッチリみたいです。もう二年も付き合ってるし、そろそろって思ってるみたいです。」

「そうなんだ。」

俺のものだ宣言、確かに。

「お酒も料理も美味しいお店でした。」

「そう。」

「はい。」

以上、終わりみたいな雰囲気を察知した。
他には聞くなということらしい、悪かったなあ。

「最近ね、占い師さん巡りをしてたの。」

そんな食べ歩きみたいな感覚じゃない、もっと真剣だったけど、軽めの暴露にした。

「占いですか・・・好きなんですか?」

「まあ、節目を迎えるにあたっていろいろと聞いてみようかと思って。」

「・・・もしかして仕事をやめようとか思って・・・・?」

「まさか、仕事はいいよ、今のままで。それ以外。」

それ以外・・・・とつぶやいて、思い当たるだろうに何も聞いてこない。

「あ、そういえば映画を見て髪型を変えたの、ついつい影響されてしまって。本当に楽なのよ、今までがよっぽど無駄な事だったみたいに思える。」

ぽかんとした顔をされた。
占いとは無関係の話になったから。

「・・・・はい、すごく似合ってます。みんなそう思ってます。」

うすらぼんやりしてる反応の上に棒読みのような感想だった。

お酒を口にして、食事に手を付ける。
話題に困る。
後はエステの話と友達との話しかない。
最近のニュースはそんなものだ。

「ねえ、・・・」

口いっぱいにお肉を食べたタイミングは最悪だったらしい。
口を押えて頑張って飲み込んでから返事をしてくれた。

「はい。」

「あ、ごめんね。変なタイミングで。」

「いいえ。欲張ってほおばり過ぎました。息苦しかったです。」

「美味しいよね。草野君が急がないなら別にゆっくりしてもいいけど。」

「あ・・・・いえ、・・・・はい。」

どっち?二杯目を頼みたくて聞いたのに。

「新人の頃はよく一人で残業してたよね。」

「はい。あの頃から不器用で。今も、変わらなくて迷惑をかけてます。」

「まあ、出来たら一度ですんなり終わると嬉しいよね、お互いに。」

「分かってます、自分が不器用なのと、全然まだまだなのと、朝倉さんが優しいのは。柏木も言ってました。気を遣ってくれるいい先輩だって。」

いきなり褒めてきた。最近ない褒め方にうれしくなる。
しかも柏木君、やっぱりいい奴じゃないか。

「柏木君は何事にも器用そうだよね、本当にうらやましい感じだなあ。」

じっと見られて、視線を感じて。

「何?」

ヤバイ、後輩を替えたいとか・・・ちらりとしか思ったことないよ、本当に時々だから、気にしないで・・・。

「だって、朝倉さんもかっこいいです。この間も夕方なのに背筋がピンと伸びて疲れなんて見えないのにお疲れ様って声をかけて、帰って行ったじゃないですか。」

金曜日の話だろうか?
疲れてたのに、そりゃあ金曜日だからぐったりでした。
一応姿勢よくしてただけだし、意識しないとどこまでも猫になるから。

「疲れてたわよ、だから日曜日はマッサージに行って頭と肩と首をほぐしてもらってスッキリしたんだから。草野君ほどには若くないしね。」

「そんなちょっと上なだけです。」

ちょっととはどこまでちょっとなんだか。


「いろいろあるよね。」

そう言ってまとめた。
何もないって人生もいろいろの内。

「朝倉さんは・・・・。」

「何?」

「恋人は?」

私は気を遣って金曜日の事を掘り下げなかったのに、そんなところが不器用というか、無神経よ!!

「いたら・・・・草野君と飲むより彼と飲むね。」

正直に言った。
当たり前だ。奢ると言われてもさっさと帰る。
だいたいストレスがないか聞いてただけなのに、何でこうなったんだか。


「二年ちょっと前にね、大きなチャンスがあったらしいの。その占い師さん曰くだけどね。私は気がつかなかったらしいの。本当にまったく覚えがないからね。」


「友達にそう言ったら、ここ三年以内にすれ違った男をピックアップしろと言われたの。既婚者とおじさんを除外して。そうなると飲み会ですれ違うだけすれ違った誰かさん達と、数少ない後輩と、よその課で一緒に仕事したちょっとの人くらい。」


「もう、電車で隣り合った人とか、コンビニの店員とか、そんな人は無理だから、本当にちょっとだけ。どこにも見当たらないって。」


「過去は過去だよね。」


「信じるんですか?そんな身に覚えない事も。」

「悪い?」

それがないと本当にしばらく何もなかったことになる。
何もというほどでもないけど、本当に二回くらい軽く食事した人がいたくらい。

だから厄介な性格で飽きっぽいし、欠点は目についたら許せなくなるし、さらに高望みらしいし。そもそも相手にされなかったらしいし。

「僕もそのメンバーの中に入ってるんですね。」

今気がついたらしい。
別にいいよ。
そこは別にスルーでいいのに。

「だって彼女いたじゃない。いつ別れたの?」

そう聞いたらまたぼんやりした。

「あ、ごめん。別にいい。ちょっと聞いただけ。パワハラ以外にセクハラとか言われたら困るから、今のはなし。」


「パワハラって何ですか?」

ん?あ・・・。

「ほら、私の言い方がきつかったりするとストレスだろうなあって、反省してるんだけど。」

馬鹿正直に言ってしまったじゃない。

「さっき言いました、優しいのは知ってます。最初の頃本当に良く声をかけてもらったし。」

あの頃はまあ、そうかな。

「でも、ずっとそう思って感謝してたんですけど、柏木にも同じくらい声をかけてたんですね。」

ん?かけた?思い出せないし。
なんだか気になる言い方じゃない、まるで・・・・・。

「今のは、何か深い意味があったの?柏木君に声を掛けた覚えはないけど。」

だいたい必要も感じなかった。
担当でもないのに成長してる新人に構ってあげたりはしない。
あきらかに躓いてた誰かをちょっと励ましただけだ。

そう言いたいけど、俯いたままの姿勢で目も合わない。
もう背中が猫。どんどん前のめり。お説教してる気分だし、変じゃない。
楽しんでとは言わなくても、もっと楽でいいのに。
会社からは離れたのに。


「まあ、いい。それも過去。全部過去。」

「出来るだけきつくならないようにするつもり。もう性格変えないと出会いもないらしいの。占いによるとだけど。」

そんなことを言われても困るだろうけど、話題がないんです!



「どんな人がいいんですか?」

「それは難しい。飽きないくらいの味わい深い人。欠点が最初からよく見えてる人。愛情深い人。」

それなら私の欠点も何とかカバーできそうだ。
飽きさせず、最初から欠点も見せてくれてればガッカリしたり許せないと思ったりもしないだろう、あとはとにかく私より愛情深い人。冷めてもまた燃やしてくれるくらいなきゃね。

そんな人いる?

そんな人いた?

それに草野君、聞くだけ聞いて無視?

微動だにしない・・・・・まさか寝てない?

「草野君、起きてる?帰る?」

お酒は二杯飲んで、食べ物もまあまあ食べ終わり。

「奢ります。」

起きてたらしい。顔をあげて財布を出す草野君。

「割り勘にしたいの。」

だって年上だしね・・・・ちょっとだけどね。

見つめ合って、分かりましたと言われた。
何だかガッカリしてるけど、宝くじでも当たった?
使い切りたいお金でもあった?

「お腹も満足。草野君も食べたよね?今夜はよく眠れそうだよね。」

お店を出て、最後にもう一度さらりとストレスチェックをしてみた。

「・・・・無理ですよ。」

そう言って先に歩き出した草野君。
マジ?何で?

ああ、せっかく機嫌よく始まった月曜日だったはずなのに、おかしいなあ?
なんだかスッキリしないじゃない。

「じゃあ、ありがとう。お休み。」

ちょっとだけど、端数を払ってくれた。
ちゃんとお礼を言って改札で別れた。

「お疲れ様でした。」

丁寧にお辞儀をされた。

ああ、なんだか少しもリラックスはしてくれてなかった?
疲れさせてしまったの?
それなのに、それだから?眠れないだろうって・・・・・ずっと眠れてないの?

どうしたらいいんだろう。

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