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4 仕事の相棒に求める条件について考える。
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次の日、予想した通りに詠歌が驚いて目を見張った。
「まだ内緒にして。」
「だってあと数日じゃない。皆にも教えないと。」
「うん・・・・。でもすぐ帰ってきたりしてね。」
だって前の人の突然の異動の理由が分からない。
仕事には厳しいだろう、それはそうだろう。
責任ある立場であればあるほど、本人が言うようにちゃちゃっと引継ぎをすればできるような業務だけじゃないだろう。
「なんだか・・・羨ましい・・・って訳じゃないけど・・・・おめでとうなの?」
「何でよ、もしかしたらランチもいけないと思う。」
「そうかな・・・・。」
「じゃあ週末都合がいいようだったら飲もう!」
聞きたいんだろう、私からいろいろと生のレポートを。今までは手に入らなかった上の階のしきたりや色々を。
「まだ予定が分からないから、はっきりしたら教える。」
「うん、後で皆には言っとくね。」
完全に他人事でいれる詠歌の明るい表情が羨ましいし恨めしい。
少しは寂しがってよね!!
「この間も今一つ掴み切れなかったね。もっとグイグイ来そうだけどそうでもなかったから、単純にハンターの好みじゃなかったのかな?」
それは私の事でしょう。
彼氏がいるって散々言ってた詠歌じゃない。
「だったら色々言われることもないかもね。ひたすら仕事をするだけ・・・・も寂しいね、せっかくなのにね。」
せっかくなことなんてない。
普通に仕事をするだけです。
いつかまた元の席に戻れることを祈りつつ。
そしてとうとう明日から上の階へ。
夜になって一層心が落ち着かなくて。
唸り声をあげていろいろと考えていたら林森さんから電話がかかってきた。
「はい、新山です。お疲れ様です。」
『お疲れ。明日からいよいよだね。』
「緊張してるんですから、わざわざ煽らないでください。」
『大丈夫だよ。あいつが教えてくれるだろうし。』
「だって前の人は短かったじゃないですか?どうして交代になるのか分からないし、引継ぎもないらしいです。」
『ああ・・・・・・。』
林森さんが返事をしたけど、続きがない。
「もしかして何か聞いてるんですか?」
『何かって?』
「だから前の人がすぐに辞めた理由です。」
『合わなかったんじゃない。いろいろと・・・・。』
それは気が合わないと仕事のペースと能力と・・・・何が合わないの?
そこが聞きたいのに。
知ってる風なのに教えてくれないなんて。
『大丈夫だって。分からない事は聞けばいいし、愚痴があったらいつでも僕も聞くし。』
別にそんな気安い関係じゃないじゃないですか。
私だってそれくらいの友達はいます!と言いたいけど。
「ありがとうございます。とりあえずできることを頑張るつもりです。」
『うん、楽しく仕事ができるといいね。』
「それは無理です。」
そう答えたら笑われた。
しょうがない・・・何度もそう自分に言い聞かせて、とりあえず一から教わることにしようと決めた。
次の日少し早めに行って荷物を部屋の前に置いて下の階へ行き、昨日まとめた荷物をロッカーから出して運んでまた上に上がった。
荷物はそのまま、部屋の前に置かれたままだった。
一応ノックしてみたら返事があった。
「どうぞ。」
専務の声だった。
「おはようございます。失礼いたします。」
荷物を抱えたまま近寄って正面に立ってお辞儀をした。
「新山香月です、今日からよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、よろしく。」
そう言われて顔をあげた。
「そっちの机を使って。」
「はい。」
言われた机に荷物を置いて入れて。
ロッカーも指さされた。
付箋で名前が入ってた。
中を開けて綺麗だったのでそのまま荷物を入れた。
ストールや替えのストッキング、置き傘など。
すぐに引っ越しもどきは終わった。
「じゃあ、今日の予定だけど。」
そう言われて机の前に飛んでいった。
「午前中はミーティングがあるから一人で作業をお願いして、午後の予定は一緒に外に行くから。一件だけだし早めに帰ってこれるから。今日はそれくらい。」
「はい。」
そう言われてもなにがなんだか。
見つめ合って困った顔をされたかもしれない。
「じゃあ、声をかけるまで席にいて。」
そう言って書類を出す専務。
言われた通り席に戻った。
引き出しにも何も申し送られるべき書類もなく。
ぼんやりする訳にもいかず、意味のない整理をしていたら声がかかった。
「これ、午前中にゆっくりやっておいて。経費申請と午後のアポの書類だから。」
「はい。」
渡されたのは最近の領収書と分厚く綴じられた書類。
経費の方は聞くこともないだろうか?
チラリと見てそう思った。
「じゃあ、会議に出てくる。書類の方は目を通せばいいから。」
そう言っていなくなった。
空気がグンと軽くなった。
私がホッと息をつける。
ため息をついて経費を打ち込んでいく。
きちんと日付順に並んだ書類は金額が今までより大きいことに驚いたけど、それ以外は問題なかった。
あえて一つ一つは気にしないようにした・・・・けど、やっぱり気になる。
タクシーは毎日遅い時間、食事代が頻繁に、手土産だろうか?おしゃれなお店の名前。
やっぱり忙しいらしい。
むしろあの日空いてたのが珍しかったのかもしれないし、改札を入ったから電車で帰っただろうけど、珍しかったのかもしれない。
さっさと経費は終わらせて書類を捲り始めた。
経理にいたのでは知られない会社の事業内容だった。
営業の人を引っ張ってきた方が良かったのではないかと思ったけど、それももったいない人員配置なのかと思ったり。
そんな考えばかりが浮かんでなかなか文字の意味に集中できない。
会議予定は二時間だと聞いた。
まだまだ始まったばかりだろう。
席を立って窓の方へ歩いた。
今まで休憩室以外で外を見ることはなかった。
見える景色は変わらないはずなのに、やっぱり偉そうで、静かすぎる部屋からだと寂しい気がする。
専務の机を見た。
パソコンを持って行ってるし、固定電話と眼鏡ケースと、他は何もない。
もちろん偉い人の机は見たことないけど、副社長の机の上には家族写真があったりするんだろうか?子供を含めて家族仲がいいと聞いている。
タイプが違うとは言え、兄弟仲もいいとは聞いていた。
副社長は専務の噂を知ってるのだろうか?
うっかり子供でも出来たら大変なのに、その辺りは気を付けてるんだろうけど、どう思うんだろう?
ぼんやりとして物のない机の上を見ていた。
いきなりドアがノックされて背中を窓辺からはがしたと同時に専務がドアを開けて目が合った・・・・早いよ・・・・。
「お疲れ様です。もう終わりでしょうか?」
「ああ・・・・。」
「すみません。少し休憩をしていて。今から読みます。経費は仕上げてます。」
「別にいい。特に急ぐわけじゃない。」
本当に会議は終わったらしい。
パソコンを机に置いた専務が座り心地のいい椅子に座った。
「コーヒーか、お茶をお持ちしますか?」
そう言ったら目が合った。
「そんな気遣いはいい。」
軽くうなずいた。
そうですか・・・・助かります・・・・・。
静になった部屋。
さっきまで一人だったけど頭の中でずっとぶつぶつとつぶやいててうるさいくらいだった。
二人になったのに逆に静かに感じる部屋。
「やっぱりコーヒーをブラックでお願いしてもいい?」
「はい。」
急いで立ち上がった。
ちょっとにぎやかな音がした。
「予定を教えるから、良かったら新山さんの分も持ってきて。」
「はい。」
別にお金を払うわけじゃない。
この階のマシーンはそこにあるコインをいれればいい。
ラッキーなことだ。
カフェオレを自分用に、あとはブラックコーヒーを専務に。
部屋に戻ったら椅子が専務の机の前に動かされていた。
「ここで。」
そう言われてそこにコーヒーを置いた。
経費精算後に返却したタブレットを見て説明を受けた。
専務のスケジュールが同期されるらしい。
メールも見れるらしい。
経費もこれで私がするらしい。
今日の午後は3時のアポ一件。
二時間の枠がとってあった。
明日からのスケジュールもわかる。
「しばらく同行をお願いすることがあるけど、慣れたら留守番になるから。」
「はい、よろしくお願いします。。」
コーヒーを飲んで、一区切り。
仕事の説明は終わったらしい。
以上?それだけ?
特にこれといって・・・・。
むしろ前の人は何でダメだったんだろう。
社長と副社長にも当然人はついてる。
男性だ。
専務にも必要なんだろうか?
一体留守の間何をやらされるんだろう?
静かな空間がまた戻ってきた。
もういいと言われないと戻れない・・・のだろうか?
「林森とは飲みに行ってる?」
「いいえ、でもみんなで飲むときに一緒になることがありました。相変わらず彼女の話を聞かされます。」
「そう。」
「仲がいいんですよね?」
「まあ・・・・なんか言ってた?」
「いいえ、楽しく仕事ができたらいいねって、そう言われただけです。だからそうなんだろうなあって思いました。」
「・・・・そう、とは?」
「だから・・・・仲がいいんだろうなあって。」
無言の専務。
「専務、今までの方よりは新人でよく分からない事があるし、うまく気も回りませんが、よろしくお願いします。」
「よろしく。あと、外では役職無しで名前でお願い。」
「はい。」
ここでは専務でいいらしい。
コーヒーを飲み終わり、席を動かして渡された資料を読むことにした。
読んで、私は何かするのだろうか?
まさかその辺は期待してないよね。
荷物持ちくらいにしかならないと思う。
じゃあ、同行なんてなくてもいいんじゃない?
「特別何もないときはお昼は普通に行ってもいいから。」
「はい、わかりました。」
今まで通りランチはとれるかもしれない。
ただ、下の人の中に混じりたいかと言われたら・・・・どうだろう。
「専務はここでお昼をとられるんですか?」
「いや、たいてい副社長の部屋に行くから。ここは空くから使ってもいい。」
「はい、そうさせてください。」
「今日の夕方から夜の予定は?」
「特にありません。」
二時間で終わらない可能性があるのだろうか?
ただ時間はいいけど、その間何も役に立つことなく隣にいるのはつらい。
声をかけられるまで席で資料を読んだ。
やっぱりあまり頭に入ってこない。
静かな部屋、明らかに存在する距離感。
ため息をつくのにも気を遣う。
時々私のめくる資料の音と専務のキーボードを打つ音が小さく合わさる。
苦行だ・・・・・。
最近になってやっと月末以外数字の夢も見なくなってたのに、今夜からはどんな夢を見るんだろう。
体は全く疲れてなくて眠れないかもしれない。
疲れた目を休めようと資料から顔をあげたら専務と目が合った。
「何か・・・・飲み物でも・・・・。」
思わず聞いた。視線を逸らせないから確実に断られることを聞いた。
「いや。」
そう言ってやっぱり断られて視線は外れた。
この席は・・・・危険だ。
お互いに正面を向くとお互いの姿が目に入る。
せめて壁際で視線が交わらないような場所に移れないだろうか?
心が休まらない。
席を立つ専務の気配。
「キリのいい所でお昼に行っていいから。」
「今日はここで休みます。」
「どうぞ。」
そう言って部屋を出て行った専務。
どこにも居場所がない。
下に行ったら変な視線を浴びそうだし、友達にもまだ何も言えない、さすがに愚痴も・・・・。
外に出ても同じ、どこからか自分に関する噂話が聞こえてきたら立ち直れそうにない。
ここにいるのが一番安全だと思った。
お昼にはまだ少し時間がある。
ダッシュでエレベーターに乗りコンビニでお昼を買って帰ってきた。
飲み物は休憩室の物でいい。
お金もかからないじゃない。
ロッカーに食料を蓄えようと思った。
もう少し慣れるまではそのパターンでいい。
それでも皆に連絡はした。
『静かな部屋で働いてます。本当に静か。仕事もまだまだだし、慣れたらお昼に加わります。』
『お疲れ様。じゃあ、連絡待ってる。』
『頑張って。』
携帯は力なく倒れた。
自分もぐったりと机に伏した。
どうして・・・・・。
もう何度つぶやいても誰も答えてくれない。
私の異動にどんな理由があったの?
休憩が終わるころ、ぐったりからは回復して化粧も直して歯も磨いて。
資料を読んでいた。
専務が戻ってきた。
副社長とお昼をとっていたとするなら、仲がいいか、仕事の続きか。
パソコンと資料を小脇に抱えてる。
「じゃあ、あと30分くらいしたら出る。」
「はい。この資料だけ持てばいいですか?」
「それはいらない。特に必要なものはない。」
「はい。」
説明はそれだけ。
何もいらないと言われたらやっぱり横で並んで座ってるだけでいいのかもしれない。
それ以外できないけど・・・・。
契約段階らしく書面で最終確認をして本契約となるらしい。
タクシーの中でそんな説明はあった。
私を連れて行く意味は分からないまま。
専務の仕事を見ればいいのだろうか?
相手の会社の会議室で無事に書類を交わして、予想以上に仕事はあっさり終わった。
落ち着かないと思う間もなく、さっさと話しがすすんで終わった。
こんな感じを見せたかったのだろうか?と思ったほどだ。
再びタクシーに乗り戻る。
隣からは紙のめくれる音がする。
資料を読んでるような専務。
気分が悪くなりそうだ。
私はひたすら正面を向いて、助手席の隙間から見える運転手さんの写真と名前を見ながら斜め後ろから見えるその人物の人生を勝手に考えてる。
『高野 英明』さん。
写真では50歳後半くらい。
最初から運転手だった感じじゃない、普通のサラリーマンから転職を期に運転手になって8年くらい。
カーナビも器用に扱うから、言いがかりモンスターと酔っ払いの客だけに気を付けてればまあまあいい感じ。
煙草も吸わないし、お酒もさほどでもない。
ただ運動不足と腰痛は仕事柄しょうがないと思ってる。
それでもあと10年くらいは頑張りたい、子供が立派に独立して、出来たら孫が生まれるくらいまで。
そんな感じで今日も車を走らせる。
後ろの静かな会社員の二人組なら問題ない。
無駄に愛想もふりまかずに、目的地を目指すのみ。
降りるときに観察しよう。
先輩後輩でこんなに沈黙するふたりも珍しい。
男が気を遣うべきだ、ちょっとした慰労の会話ぐらいあっていいのに。
まあ、どうでもいいが・・・・・。
なんて思ってるかもしれない。
妄想で運転手さんの気持ちになってたけど・・・・実際にそう思ってるのは私。
紙の音が聞こえなくても会話は始まらない。
部屋に戻ったタイミングでお疲れ様を言えばいいのだろうか?
それ以外仕事見学の感想を言った方がいいのだろうか?
契約の現場に少し緊張しました、でも勉強になります・・・とか。
スムーズに話が運んで面倒なくて良かったよ、とか言われる?
部屋に戻っても沈黙は続きそうで、何をすればいいのだろう?
本当に誰かを必要としてるのだろうか?
本当に無言のままタクシー移動は終わった。
一緒にエレベーターに乗る。
一歩後ろに下がっている自分。
部屋に戻ってバッグを置いて、やっと声をかけた。
それはそれは準備していた一言だった。
「専務、お疲れさまでした。」
「ああ、お疲れ。」
ただそれだけだった。
どうだった?と言うような質問もなし、専務としての感想もなし。
「この後はどうすればいいですか?」
「じゃあ、明日の午前中の資料だから、目を通してて。」
資料をもらい明日の専務の予定もチェックする。
午前午後アポ一件づつ。
「明日も二か所同行しますか?」
「よろしく。外で食事することになるかもしれない。」
「・・・分かりました。」
十時半のアポと二時のアポ。
最大5時間くらい隣にいるらしい。
ランチは正面かもしれない。
耐えられるだろうか?
林森さんにもついてきてほしいくらいだ。
何か話をしてほしい、世間話じゃなくてもいい、仕事の事でもいい・・・・。
仲良くしりとりをしてもいい。
沈黙はただただ苦痛でしかない。
やっぱり『仲良く』はなってない、たかだか一度くらい飲んだだけじゃあ、初対面と変わらない。こんなことならもっと臆せずに話をしておくべきだったかもしれない。
仕事のパートナーに望むことを聞くべきだった。
『後腐れなく切れる知的美人』以外にあげたい条件を聞いておくべきだった。
『後腐れなく切れる知的美人』以外だった場合の条件を・・・・。
タブレットを閉じて資料に目をやることにした。
今日の所と違ってまだまだ折り合いをつけるところがありそうな段階だ。
今日の人とは笑顔で話をしていた専務。
クライアントに向ける顔はそうらしい。
私はひたすら静かに座っていただけだった。
最初と最後に視線を合わせてお辞儀をしたくらいだった。
軽い紹介しかされなかったから。
明日もそんな感じだろうか?
今度もまたタクシーの運転手さんの個人情報に想像を巡らせる時間になるかもしれない。
部屋がノックされた。
返事をして立ち上がってドアを開ける。
そこには総務の友達がいた。
ちょっとびっくりして弱い笑顔になった。
『つらいよ・・・・。』そう訴えたように見えたかもしれない。
「名刺をお持ちしました。」
「ありがとうございます。」
そういえば経理の名刺しかなかった。数日前なのに素早い発注をかけてくれてたらしい。
新しい肩書は『秘書』だ。
大丈夫だろうか、自分・・・・。
この名刺を使うことはある??
さっさといなくなった友達。
なんてつぶやくだろう。
ゆっくりドアをしめて席に戻った。
名刺入れの中身を取り換えて、残りは引き出しにしまう。
前の名刺だってほとんど減ってないのに。
また資料を読み始めた。
紙を捲る音とキーボードの音。またしてもそれだけになった部屋。
あと一時間もないから頑張ろう。
時計を確認したらちょうど時間になっていた。
あと少し・・・・終わり。読み終わった・・・だけ。
気がついてくれたらしい専務。
「今日はもういい。お疲れ。明日出かける前にまた説明するから。」
「はい。じゃあ、これで失礼します。ありがとうございました。」
さっさと荷物を持って部屋を出た。
トイレに行き化粧を直して、エレベーターに乗り込んでホッと一息。
同じ階からはもちろん、下の階からも誰も乗ってこなかった。
さっさと電車に乗って部屋にたどり着いた。
気疲れという疲れがある。
緊張するのだ。
もっと私が好みのタイプの女性だったら、積極的に話かけてくれたり、食事に誘われたりするんだろうか?
スマートに誘いそうだ。
そして誘われるような人たちはスマートに応じてるんだろう。
『どうして?』『どうしよう。』なんて思うまでもなく。
わたしは林森さん以上にへどもどするんだろう・・・・・って誘われないってば。
でも、そう考えると差があり過ぎない?
ほとんど無視じゃない。
気遣いの小さなものもないなんて。
もっと興味を持ってくれてもいいのに。
会話の糸口くらいの興味を持ってくれてもいいのに。ほぼ無言劇だった。
今日の愚痴はそんなところだ。
よく言えば、真面目に仕事をしてる印象の専務、ということでいいだろうか?
でも専務も疲れたかもしれない。
もう少し私に余裕ができたら話しかけてみたい。
林森さんがああ言うんだからいい人だと思う。
そんなことは果たしていつになるのか、今は全く想像できないくらいだ。
「まだ内緒にして。」
「だってあと数日じゃない。皆にも教えないと。」
「うん・・・・。でもすぐ帰ってきたりしてね。」
だって前の人の突然の異動の理由が分からない。
仕事には厳しいだろう、それはそうだろう。
責任ある立場であればあるほど、本人が言うようにちゃちゃっと引継ぎをすればできるような業務だけじゃないだろう。
「なんだか・・・羨ましい・・・って訳じゃないけど・・・・おめでとうなの?」
「何でよ、もしかしたらランチもいけないと思う。」
「そうかな・・・・。」
「じゃあ週末都合がいいようだったら飲もう!」
聞きたいんだろう、私からいろいろと生のレポートを。今までは手に入らなかった上の階のしきたりや色々を。
「まだ予定が分からないから、はっきりしたら教える。」
「うん、後で皆には言っとくね。」
完全に他人事でいれる詠歌の明るい表情が羨ましいし恨めしい。
少しは寂しがってよね!!
「この間も今一つ掴み切れなかったね。もっとグイグイ来そうだけどそうでもなかったから、単純にハンターの好みじゃなかったのかな?」
それは私の事でしょう。
彼氏がいるって散々言ってた詠歌じゃない。
「だったら色々言われることもないかもね。ひたすら仕事をするだけ・・・・も寂しいね、せっかくなのにね。」
せっかくなことなんてない。
普通に仕事をするだけです。
いつかまた元の席に戻れることを祈りつつ。
そしてとうとう明日から上の階へ。
夜になって一層心が落ち着かなくて。
唸り声をあげていろいろと考えていたら林森さんから電話がかかってきた。
「はい、新山です。お疲れ様です。」
『お疲れ。明日からいよいよだね。』
「緊張してるんですから、わざわざ煽らないでください。」
『大丈夫だよ。あいつが教えてくれるだろうし。』
「だって前の人は短かったじゃないですか?どうして交代になるのか分からないし、引継ぎもないらしいです。」
『ああ・・・・・・。』
林森さんが返事をしたけど、続きがない。
「もしかして何か聞いてるんですか?」
『何かって?』
「だから前の人がすぐに辞めた理由です。」
『合わなかったんじゃない。いろいろと・・・・。』
それは気が合わないと仕事のペースと能力と・・・・何が合わないの?
そこが聞きたいのに。
知ってる風なのに教えてくれないなんて。
『大丈夫だって。分からない事は聞けばいいし、愚痴があったらいつでも僕も聞くし。』
別にそんな気安い関係じゃないじゃないですか。
私だってそれくらいの友達はいます!と言いたいけど。
「ありがとうございます。とりあえずできることを頑張るつもりです。」
『うん、楽しく仕事ができるといいね。』
「それは無理です。」
そう答えたら笑われた。
しょうがない・・・何度もそう自分に言い聞かせて、とりあえず一から教わることにしようと決めた。
次の日少し早めに行って荷物を部屋の前に置いて下の階へ行き、昨日まとめた荷物をロッカーから出して運んでまた上に上がった。
荷物はそのまま、部屋の前に置かれたままだった。
一応ノックしてみたら返事があった。
「どうぞ。」
専務の声だった。
「おはようございます。失礼いたします。」
荷物を抱えたまま近寄って正面に立ってお辞儀をした。
「新山香月です、今日からよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、よろしく。」
そう言われて顔をあげた。
「そっちの机を使って。」
「はい。」
言われた机に荷物を置いて入れて。
ロッカーも指さされた。
付箋で名前が入ってた。
中を開けて綺麗だったのでそのまま荷物を入れた。
ストールや替えのストッキング、置き傘など。
すぐに引っ越しもどきは終わった。
「じゃあ、今日の予定だけど。」
そう言われて机の前に飛んでいった。
「午前中はミーティングがあるから一人で作業をお願いして、午後の予定は一緒に外に行くから。一件だけだし早めに帰ってこれるから。今日はそれくらい。」
「はい。」
そう言われてもなにがなんだか。
見つめ合って困った顔をされたかもしれない。
「じゃあ、声をかけるまで席にいて。」
そう言って書類を出す専務。
言われた通り席に戻った。
引き出しにも何も申し送られるべき書類もなく。
ぼんやりする訳にもいかず、意味のない整理をしていたら声がかかった。
「これ、午前中にゆっくりやっておいて。経費申請と午後のアポの書類だから。」
「はい。」
渡されたのは最近の領収書と分厚く綴じられた書類。
経費の方は聞くこともないだろうか?
チラリと見てそう思った。
「じゃあ、会議に出てくる。書類の方は目を通せばいいから。」
そう言っていなくなった。
空気がグンと軽くなった。
私がホッと息をつける。
ため息をついて経費を打ち込んでいく。
きちんと日付順に並んだ書類は金額が今までより大きいことに驚いたけど、それ以外は問題なかった。
あえて一つ一つは気にしないようにした・・・・けど、やっぱり気になる。
タクシーは毎日遅い時間、食事代が頻繁に、手土産だろうか?おしゃれなお店の名前。
やっぱり忙しいらしい。
むしろあの日空いてたのが珍しかったのかもしれないし、改札を入ったから電車で帰っただろうけど、珍しかったのかもしれない。
さっさと経費は終わらせて書類を捲り始めた。
経理にいたのでは知られない会社の事業内容だった。
営業の人を引っ張ってきた方が良かったのではないかと思ったけど、それももったいない人員配置なのかと思ったり。
そんな考えばかりが浮かんでなかなか文字の意味に集中できない。
会議予定は二時間だと聞いた。
まだまだ始まったばかりだろう。
席を立って窓の方へ歩いた。
今まで休憩室以外で外を見ることはなかった。
見える景色は変わらないはずなのに、やっぱり偉そうで、静かすぎる部屋からだと寂しい気がする。
専務の机を見た。
パソコンを持って行ってるし、固定電話と眼鏡ケースと、他は何もない。
もちろん偉い人の机は見たことないけど、副社長の机の上には家族写真があったりするんだろうか?子供を含めて家族仲がいいと聞いている。
タイプが違うとは言え、兄弟仲もいいとは聞いていた。
副社長は専務の噂を知ってるのだろうか?
うっかり子供でも出来たら大変なのに、その辺りは気を付けてるんだろうけど、どう思うんだろう?
ぼんやりとして物のない机の上を見ていた。
いきなりドアがノックされて背中を窓辺からはがしたと同時に専務がドアを開けて目が合った・・・・早いよ・・・・。
「お疲れ様です。もう終わりでしょうか?」
「ああ・・・・。」
「すみません。少し休憩をしていて。今から読みます。経費は仕上げてます。」
「別にいい。特に急ぐわけじゃない。」
本当に会議は終わったらしい。
パソコンを机に置いた専務が座り心地のいい椅子に座った。
「コーヒーか、お茶をお持ちしますか?」
そう言ったら目が合った。
「そんな気遣いはいい。」
軽くうなずいた。
そうですか・・・・助かります・・・・・。
静になった部屋。
さっきまで一人だったけど頭の中でずっとぶつぶつとつぶやいててうるさいくらいだった。
二人になったのに逆に静かに感じる部屋。
「やっぱりコーヒーをブラックでお願いしてもいい?」
「はい。」
急いで立ち上がった。
ちょっとにぎやかな音がした。
「予定を教えるから、良かったら新山さんの分も持ってきて。」
「はい。」
別にお金を払うわけじゃない。
この階のマシーンはそこにあるコインをいれればいい。
ラッキーなことだ。
カフェオレを自分用に、あとはブラックコーヒーを専務に。
部屋に戻ったら椅子が専務の机の前に動かされていた。
「ここで。」
そう言われてそこにコーヒーを置いた。
経費精算後に返却したタブレットを見て説明を受けた。
専務のスケジュールが同期されるらしい。
メールも見れるらしい。
経費もこれで私がするらしい。
今日の午後は3時のアポ一件。
二時間の枠がとってあった。
明日からのスケジュールもわかる。
「しばらく同行をお願いすることがあるけど、慣れたら留守番になるから。」
「はい、よろしくお願いします。。」
コーヒーを飲んで、一区切り。
仕事の説明は終わったらしい。
以上?それだけ?
特にこれといって・・・・。
むしろ前の人は何でダメだったんだろう。
社長と副社長にも当然人はついてる。
男性だ。
専務にも必要なんだろうか?
一体留守の間何をやらされるんだろう?
静かな空間がまた戻ってきた。
もういいと言われないと戻れない・・・のだろうか?
「林森とは飲みに行ってる?」
「いいえ、でもみんなで飲むときに一緒になることがありました。相変わらず彼女の話を聞かされます。」
「そう。」
「仲がいいんですよね?」
「まあ・・・・なんか言ってた?」
「いいえ、楽しく仕事ができたらいいねって、そう言われただけです。だからそうなんだろうなあって思いました。」
「・・・・そう、とは?」
「だから・・・・仲がいいんだろうなあって。」
無言の専務。
「専務、今までの方よりは新人でよく分からない事があるし、うまく気も回りませんが、よろしくお願いします。」
「よろしく。あと、外では役職無しで名前でお願い。」
「はい。」
ここでは専務でいいらしい。
コーヒーを飲み終わり、席を動かして渡された資料を読むことにした。
読んで、私は何かするのだろうか?
まさかその辺は期待してないよね。
荷物持ちくらいにしかならないと思う。
じゃあ、同行なんてなくてもいいんじゃない?
「特別何もないときはお昼は普通に行ってもいいから。」
「はい、わかりました。」
今まで通りランチはとれるかもしれない。
ただ、下の人の中に混じりたいかと言われたら・・・・どうだろう。
「専務はここでお昼をとられるんですか?」
「いや、たいてい副社長の部屋に行くから。ここは空くから使ってもいい。」
「はい、そうさせてください。」
「今日の夕方から夜の予定は?」
「特にありません。」
二時間で終わらない可能性があるのだろうか?
ただ時間はいいけど、その間何も役に立つことなく隣にいるのはつらい。
声をかけられるまで席で資料を読んだ。
やっぱりあまり頭に入ってこない。
静かな部屋、明らかに存在する距離感。
ため息をつくのにも気を遣う。
時々私のめくる資料の音と専務のキーボードを打つ音が小さく合わさる。
苦行だ・・・・・。
最近になってやっと月末以外数字の夢も見なくなってたのに、今夜からはどんな夢を見るんだろう。
体は全く疲れてなくて眠れないかもしれない。
疲れた目を休めようと資料から顔をあげたら専務と目が合った。
「何か・・・・飲み物でも・・・・。」
思わず聞いた。視線を逸らせないから確実に断られることを聞いた。
「いや。」
そう言ってやっぱり断られて視線は外れた。
この席は・・・・危険だ。
お互いに正面を向くとお互いの姿が目に入る。
せめて壁際で視線が交わらないような場所に移れないだろうか?
心が休まらない。
席を立つ専務の気配。
「キリのいい所でお昼に行っていいから。」
「今日はここで休みます。」
「どうぞ。」
そう言って部屋を出て行った専務。
どこにも居場所がない。
下に行ったら変な視線を浴びそうだし、友達にもまだ何も言えない、さすがに愚痴も・・・・。
外に出ても同じ、どこからか自分に関する噂話が聞こえてきたら立ち直れそうにない。
ここにいるのが一番安全だと思った。
お昼にはまだ少し時間がある。
ダッシュでエレベーターに乗りコンビニでお昼を買って帰ってきた。
飲み物は休憩室の物でいい。
お金もかからないじゃない。
ロッカーに食料を蓄えようと思った。
もう少し慣れるまではそのパターンでいい。
それでも皆に連絡はした。
『静かな部屋で働いてます。本当に静か。仕事もまだまだだし、慣れたらお昼に加わります。』
『お疲れ様。じゃあ、連絡待ってる。』
『頑張って。』
携帯は力なく倒れた。
自分もぐったりと机に伏した。
どうして・・・・・。
もう何度つぶやいても誰も答えてくれない。
私の異動にどんな理由があったの?
休憩が終わるころ、ぐったりからは回復して化粧も直して歯も磨いて。
資料を読んでいた。
専務が戻ってきた。
副社長とお昼をとっていたとするなら、仲がいいか、仕事の続きか。
パソコンと資料を小脇に抱えてる。
「じゃあ、あと30分くらいしたら出る。」
「はい。この資料だけ持てばいいですか?」
「それはいらない。特に必要なものはない。」
「はい。」
説明はそれだけ。
何もいらないと言われたらやっぱり横で並んで座ってるだけでいいのかもしれない。
それ以外できないけど・・・・。
契約段階らしく書面で最終確認をして本契約となるらしい。
タクシーの中でそんな説明はあった。
私を連れて行く意味は分からないまま。
専務の仕事を見ればいいのだろうか?
相手の会社の会議室で無事に書類を交わして、予想以上に仕事はあっさり終わった。
落ち着かないと思う間もなく、さっさと話しがすすんで終わった。
こんな感じを見せたかったのだろうか?と思ったほどだ。
再びタクシーに乗り戻る。
隣からは紙のめくれる音がする。
資料を読んでるような専務。
気分が悪くなりそうだ。
私はひたすら正面を向いて、助手席の隙間から見える運転手さんの写真と名前を見ながら斜め後ろから見えるその人物の人生を勝手に考えてる。
『高野 英明』さん。
写真では50歳後半くらい。
最初から運転手だった感じじゃない、普通のサラリーマンから転職を期に運転手になって8年くらい。
カーナビも器用に扱うから、言いがかりモンスターと酔っ払いの客だけに気を付けてればまあまあいい感じ。
煙草も吸わないし、お酒もさほどでもない。
ただ運動不足と腰痛は仕事柄しょうがないと思ってる。
それでもあと10年くらいは頑張りたい、子供が立派に独立して、出来たら孫が生まれるくらいまで。
そんな感じで今日も車を走らせる。
後ろの静かな会社員の二人組なら問題ない。
無駄に愛想もふりまかずに、目的地を目指すのみ。
降りるときに観察しよう。
先輩後輩でこんなに沈黙するふたりも珍しい。
男が気を遣うべきだ、ちょっとした慰労の会話ぐらいあっていいのに。
まあ、どうでもいいが・・・・・。
なんて思ってるかもしれない。
妄想で運転手さんの気持ちになってたけど・・・・実際にそう思ってるのは私。
紙の音が聞こえなくても会話は始まらない。
部屋に戻ったタイミングでお疲れ様を言えばいいのだろうか?
それ以外仕事見学の感想を言った方がいいのだろうか?
契約の現場に少し緊張しました、でも勉強になります・・・とか。
スムーズに話が運んで面倒なくて良かったよ、とか言われる?
部屋に戻っても沈黙は続きそうで、何をすればいいのだろう?
本当に誰かを必要としてるのだろうか?
本当に無言のままタクシー移動は終わった。
一緒にエレベーターに乗る。
一歩後ろに下がっている自分。
部屋に戻ってバッグを置いて、やっと声をかけた。
それはそれは準備していた一言だった。
「専務、お疲れさまでした。」
「ああ、お疲れ。」
ただそれだけだった。
どうだった?と言うような質問もなし、専務としての感想もなし。
「この後はどうすればいいですか?」
「じゃあ、明日の午前中の資料だから、目を通してて。」
資料をもらい明日の専務の予定もチェックする。
午前午後アポ一件づつ。
「明日も二か所同行しますか?」
「よろしく。外で食事することになるかもしれない。」
「・・・分かりました。」
十時半のアポと二時のアポ。
最大5時間くらい隣にいるらしい。
ランチは正面かもしれない。
耐えられるだろうか?
林森さんにもついてきてほしいくらいだ。
何か話をしてほしい、世間話じゃなくてもいい、仕事の事でもいい・・・・。
仲良くしりとりをしてもいい。
沈黙はただただ苦痛でしかない。
やっぱり『仲良く』はなってない、たかだか一度くらい飲んだだけじゃあ、初対面と変わらない。こんなことならもっと臆せずに話をしておくべきだったかもしれない。
仕事のパートナーに望むことを聞くべきだった。
『後腐れなく切れる知的美人』以外にあげたい条件を聞いておくべきだった。
『後腐れなく切れる知的美人』以外だった場合の条件を・・・・。
タブレットを閉じて資料に目をやることにした。
今日の所と違ってまだまだ折り合いをつけるところがありそうな段階だ。
今日の人とは笑顔で話をしていた専務。
クライアントに向ける顔はそうらしい。
私はひたすら静かに座っていただけだった。
最初と最後に視線を合わせてお辞儀をしたくらいだった。
軽い紹介しかされなかったから。
明日もそんな感じだろうか?
今度もまたタクシーの運転手さんの個人情報に想像を巡らせる時間になるかもしれない。
部屋がノックされた。
返事をして立ち上がってドアを開ける。
そこには総務の友達がいた。
ちょっとびっくりして弱い笑顔になった。
『つらいよ・・・・。』そう訴えたように見えたかもしれない。
「名刺をお持ちしました。」
「ありがとうございます。」
そういえば経理の名刺しかなかった。数日前なのに素早い発注をかけてくれてたらしい。
新しい肩書は『秘書』だ。
大丈夫だろうか、自分・・・・。
この名刺を使うことはある??
さっさといなくなった友達。
なんてつぶやくだろう。
ゆっくりドアをしめて席に戻った。
名刺入れの中身を取り換えて、残りは引き出しにしまう。
前の名刺だってほとんど減ってないのに。
また資料を読み始めた。
紙を捲る音とキーボードの音。またしてもそれだけになった部屋。
あと一時間もないから頑張ろう。
時計を確認したらちょうど時間になっていた。
あと少し・・・・終わり。読み終わった・・・だけ。
気がついてくれたらしい専務。
「今日はもういい。お疲れ。明日出かける前にまた説明するから。」
「はい。じゃあ、これで失礼します。ありがとうございました。」
さっさと荷物を持って部屋を出た。
トイレに行き化粧を直して、エレベーターに乗り込んでホッと一息。
同じ階からはもちろん、下の階からも誰も乗ってこなかった。
さっさと電車に乗って部屋にたどり着いた。
気疲れという疲れがある。
緊張するのだ。
もっと私が好みのタイプの女性だったら、積極的に話かけてくれたり、食事に誘われたりするんだろうか?
スマートに誘いそうだ。
そして誘われるような人たちはスマートに応じてるんだろう。
『どうして?』『どうしよう。』なんて思うまでもなく。
わたしは林森さん以上にへどもどするんだろう・・・・・って誘われないってば。
でも、そう考えると差があり過ぎない?
ほとんど無視じゃない。
気遣いの小さなものもないなんて。
もっと興味を持ってくれてもいいのに。
会話の糸口くらいの興味を持ってくれてもいいのに。ほぼ無言劇だった。
今日の愚痴はそんなところだ。
よく言えば、真面目に仕事をしてる印象の専務、ということでいいだろうか?
でも専務も疲れたかもしれない。
もう少し私に余裕ができたら話しかけてみたい。
林森さんがああ言うんだからいい人だと思う。
そんなことは果たしていつになるのか、今は全く想像できないくらいだ。
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