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10集まったのはいろんな人たち。

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次の日、お店の中で待ち合わせだった。
『宗像』で予約が入ってるといわれた。『石川』は珍しくないという理由で。
そして名前を言って部屋に案内された。

これで一番乗りだったりしたら恥かしいし、最後の一人だというのも嫌だ。
そう思ったらまずまずだった。
まず幹事の二人が来てない。
そして自分たちメンバーの中では一番乗りだった。
時計を見たら五分前だったのだが。


知らない人に挨拶した。
一瞬静かになったテーブル。

自己紹介をして後女性三人が来ると伝えた。
携帯を確認すると迷子が一名・・・あの雀だ。


「すみません。迷子になってるのがいるので迎えに行ってきます。」

挨拶をしてその場を後にした。さっき入ったばかりなのにお店を出た。
既に来てるのは女性だけだった。なんであんなに女性が?というくらいに女性だけだった。
どうしよう・・・・・何だか・・・・どうなる?


迷子の雀と個人的なやり取りで、見える景色を教えてもらい見つけ出した。
分かりやすいお店の場所なのにどうやったら迷子になるんだ。


地下鉄の出口を間違えたらしい。
そして手には買い物の袋が既に三か所分くらい。
買い物をした後、もう一度方向を間違えたらしい。
とりあえず遅刻の連絡をしたつもりだったと言う。


「少し遅れるだけでたどり着けるつもりでした・・・。」

迎えは必要なかったと言いたいんだろうか?


二人で再びたどり着いたときにはほぼ全員揃っていた。
男性もいた。数人。

緋色と距離をとるのは約束だったから。
ちょうどいい具合に幹事の近くに一つ空いてる席があり、そこに緋色を押し込んだ。


再び挨拶をして自分の席を決めて座った。
後二人来るらしい。
結構な人数が集まった。

お酒が来るまでに宗像さんの彼氏を見た。
聞いていた頭の方はまだまだ気配はない、大丈夫そうだ。ダイエットの効果が出てるのか、やや過ぎた逞しい感じはあるが身長もあるからまだいい。
う~ん、タイプとしてはなかなか思いつかない組み合わせではある。
なるほど・・・・・。
男女の相性も分からないものだ。

男性はだいたいそんなタイプが集まり、女性はもっと個性的ではある。
私服と髪型と、帽子やアクセサリー、果ては荷物まで。
作品の雰囲気、あるいは作品をそのまま着けてる感じなんだろう。
自営業の自由業のクリエーターはそうなるらしい。
自分たち三人がずいぶん普通だと、緋色ですら普通に見えるかもしれない。


そんな個性的な女性数名の中に座ってしまった自分。
緋色を押しやるあまりそうなった。
遅刻の女性も一人隣に来た。

相手チームもそれぞれ面識があったりなかったり。

名刺交換から始まった。
自分も地味な名刺を持っているが財布に一枚だけだった。

「すみません、仕事用の荷物に入れてるので、うっかりしてました。」

名前を言って漢字を見せるだけにした。

手元にはそれぞれのにぎやかな名刺が集まった。
個性がそこにも込められてる。
決して本名じゃないだろう名前からして。

宗像さんと自分の関係を探られて、上司部下だと伝え、普段の仕事の事を聞かれて、会社員の日常を教えた。
クリエーターも一度は会社員として世間に出てる人がほとんどらしい。
そう言えば宗像さんの相手もそうだと言っていた。


「毎日早起きは無理かも。」

「ギュウギュウした電車も無理だし、猫がいるから家中仕事が一番。」

猫好きだと分かる人が一番個性が爆発していた。
猫好きにはたまらない自己表現だろうし、動く作品見本みたいな人だった。
そして自営業一般として、女性もやや太めになりやすいのかもしれない。

女性は日々同じスーツを着るからこそスタイルを保とうとするんだと、そう言えば前の彼女も言ってた。

猫の話で一盛り上がり、作品を皆が褒める。
普通にいつもがこんな感じらしい・・・・猫猫猫・・・全身・・・猫まみれ。

他はガラス細工の人と和服リメイクの人だった。
表現は自由だと改めて思う。
しみじみと。

横に座った遅刻の人が和服リメイクの人だった。
名前は風雅さん。
屋号と名前が書かれた名刺をもらったからそう呼ぶしかない。
『風雅』は本名なのだろう・・・・・と信じる?
それでもなんとなくしっくりくるような、例外の細めの人だった。
和服のアレンジが大胆で上着が羽織りだとわかる。
ちょっと粋な感じになるが、それはなかなか素敵だと思った。
他には見えるアクセサリーが着物の古布を利用して作られたものらしい。


「男性用も作ってるとそれなりに売れてます。女性でも渋い色合いの好みの方が買われますしアイテムが根付けや帯締め、羽織紐だったりするんですが普通のアクセサリーに作り替えたりは出来るようにしてるんです。」


「すみません、和服にもなじみがなくて、想像が追いつかないんですが。」

そう言ったら携帯の画像を見せられた。


「羽織紐をブレスレットにするパターンが一番多いです。もう最初からブレスレットにしようかと思うくらいです。」


「ああ・・・・なるほど。確かに渋いですし、ブレスレットだったらいいですね。後はチェーンベルトのように腰につける感じとか。」


「確かにそう言う風につける方もいます。」

「これかっこいいですね。銀地に龍ですね。」

「それは私も一押しです。」


嬉しそうに話してくれる。
本当に仕事が好きなんだろう。

正直言うと、ガラス細工と猫よりは話が進みそうだった。

「羽織はもともと男性用ですか?」

椅子の背に掛けられた羽織を見てそう聞いてみた。

「そうです。一見地味ですが裏布が気に入ったんです。」

裏地は明るいというより、かなり派手な布を使っていた。
ところどころ手を加えて、その裏地を表に出してるらしい。
リメイクでも羽織だとわかる存在感はそのままで、羽織ひもも当然ついていた。


「素晴らしいです。技術とセンスですね。昔から和服が好きだったんですか?」

「そうですね。ずいぶん昔に祖母に形見分けのようにたくさんの和服をもらったんです。そのままだと着る機会もないですから。どうにか着れる様にしたいと思ったのが始まりなんです。」

着てる姿をあんまりじろじろ見るのも失礼だが、まさかのアレンジ。
和服にヒールのある靴を合わせてるし、他にもいろいろと、すれ違っても二度見しそうだ。
でもそれを一点一点大切にリメイクしたと聞くと何とも心温まる話でもあるし、かっこいいと思う。


「まさかこんなに愛用されてるとは、お祖母さんも嬉しいんじゃないですかね?」

「そうだと嬉しいです。でもびっくりして絶句するかもしれません。」

「いえ、本当に素敵です。外国の方にも人気がありそうですね。」


「はい。そんな場所にも納品してますが売れてます。」

そこも嬉しそうだった。
思わずつられて笑顔にはなる。


ただデートする時にもこのスタイルなんだろうか?
横にいてもその内人の目にも慣れるものなんだろうか?
猫よりは・・・・いいか。
・・・やはりあまりにも猫が過ぎる。

奥が深いクリエーターの世界らしい。



なんとなくその和服の人と話をしてる感じになり、気が付いたら猫の人がいなくなり宗像さんがそこにいた。


びっくりした、いつの間に。

「相棒から聞いてはいたんですが、ちょっと興味があって、お邪魔じゃなかったら作品を見せてください。」


宗像さんの興味も引いたらしい。


「宗像さん、和服を着たりすることもあるんですか?」

「ないよ。」

あっさり。

「でもアクセサリーはいいじゃない。バッグも上着も素敵だったし、かんざしも粋ですよね。いざとなったら武器にもなりそうな。」

嬉しそうに説明を受けてる。

遠くでは一人になった相棒が緋色の相手をしてる。
あれ?どうなったんだろう?

野本さんは・・・楽しそうに猫に夢中。


「江戸川君、似合いそうじゃない。」

そう言って写真を指す。

「ありがとうございます。普段まったく付けないんですが確かにいいですよね。」

「これなんかは?」

「その色はかなり冒険です。」

まさか赤系の色を勧めてくる。

「じゃあ、これ。」


「それが一番好きです。」

さっきの銀に龍だった。
女性でも人気が高いと言ったのは本当にそうらしい。


「なんだか自分たちがすごく地味に見えてこない?」

「思います。没個性的な人生だと思わず振り返ってしまいました。」

「だよね。」


そう言って和服のアレンジを見る宗像さん。

さすがに個性では負けるが、私服も出来る女感がする宗像さん。
スタイルがいいらしい、シンプルながら似合ってる、自分をよく知ってるということだろう。



「でも逆にスーツの男性を見ると、新鮮だったりしますか?」

「そうですね。普段周りにいないのでスッキリとおしゃれに見えるし、大人っぽく見えると思います。」

自分にも向かってそう言ってくれた。

「そうだと思った。江戸川君の武器の一つを取り上げてごめん、金曜日だったらスーツだったのにね。」

「見慣れるとただの記号ですよ。」


「スーツでも腕につけてみてもいいんじゃない?」


「そんな社員いますかね?」

「女性は自由なんだから、男性もいいと思うけど。あの部屋では私が許可します。」

そうは言われてもなかなか習慣にない事だと壁がある。
時計は平気なのに。


「家でじっくり見て、多分購入します。他の二人にも聞いてみるね。まとめて送ってもらえると楽でしょう?江戸川君の分も頼もうかな。」

勝手に言う。でも持っててもいいかとも思い始めてる。

「あれだったらデニムに合わせて腰につけるのにいいですね。慣れない腕よりは活躍しそうです。」

「よし、じゃあ後日考えよう。」

そう言って名刺を渡した宗像さん。
名刺交換が行われた。

そしてバッグも見せてもらっていた。
帯のリメイクらしい。
どこまでも器用な人らしい。
日本文化もこうして形を変えていくんだなあと、江戸時代の人が見たらびっくりだろう。


結局ずっと席は動かないままだった。
あとの人たちがどんなクリエーターなのか分からずじまい。
表面上は猫、和服以上に二度見するような個性的な人はいなかった。

そして残りの二人もどうなったのか分からないまま。

なんとなくその風雅さんと連絡をとることになった。
また会うだろう、それをデートと呼ぶのだろうか?

普通の服も持ってるので安心してほしいと言われた。
着物のアレンジ攻めは仕事がらみの時だけらしい。
確かに安心した。




さすがに疲れた。
表現者の個性に当てられた。


日曜日、朝と夕にランニングをして汗を流し、スッキリとした。


夜には風雅さんと少しだけやり取りをして。
さらりと聞いたら本名だと言われた。
それでも屋号でもいろんな名前の人がいたから、仕事用の名前だと言われても納得する。
ただ本名だと言われたらそれもやっぱり似合うと思ったりして。

どこか自分が浮かれてる自覚もあったけど、久しぶりに他人とかわす情に、心の軌跡を楽しんでるくらいだと思ってた。

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