7 / 28
7 存在を忘れかけていたことを思い出す時。
しおりを挟む
そんな日々を過ごして、金曜日、慰労会第三弾と親睦会。
こっそり見てたらやはりノンアルコールカクテルにしたらしい緋色。
それでもこの間の目隠しや手探り法じゃなくて、ちゃんと選んでた。
奢りと変わらない経費なのに。
ちょっとモヤモヤする気分だ。
残りの三人は当然飲む。
久しぶりに無駄に元気で無駄に明るい声が近くでする。
最近離れていたので忘れてたくらいだった。
さり気なく情報を探られてる野本さん。
はっきり彼氏不在を表明した途端に緋色に同盟を組まれたように、頑張りましょうと言われてる。
そしてやはり宗像さんだけが幸せだと言いながら、勝手に上司の相手の事まで野本さんに教えてる。
野本さんの興味ある情報は緋色に勝手に教えられた形だ。
素面でこれをやるんだから、飲んだらあれくらいにはなるんだと、改めて納得したりした。そう思うしかないと。
「今日は彼氏さんが一人で夜ご飯ですか?」
「そうだと思う。一人だとそう作る気力も起きないみたいだから、残り物がなかったらふらりと食べに行ったり買ってきたりするみたい。」
「週末も仕事をしたりするんですか?」
野本さんも自宅仕事のクリエーターと言う部分に興味があるらしい。
「急いでこなさないといけない仕事の時はね。あとアイデアが浮かんだ時とか。その辺は急にスケッチしたり、仕事部屋に行ったりすることもあるし。そんなものじゃない?基本は週末のイベント以外は仕事してないけど。」
そう話す上司の指を見る。
やはり変わったデザインがあり、存在感もある。
「もしかしてそれは特別なものですか?」
緋色が聞いた。
「そう・・・一緒にデザインしてお揃いでつけてるの。まあそんな感じの物。」
そう言って手を立てて見せてくれた。
意味が分かった。
ああ・・・・。
「とうとう書類も書いたんですか?」
「週末に書くようにってもらってきたみたい。だから書くかもしれない。」
予定は未定という感じだろうか?
それでも進んだらしい。
「名前が変わりますよね、何て苗字になるんですか?」
「『石川』なの。書くのが簡単でいいけど、仕事ではそのままだと思う。」
「そうですか。『宗像』さんがなんとなくしっくりきてるのでちょっとシンプルになると物足りない感じです。」
勝手に言う緋色。
失礼コードギリギリだと思うけど心広く聞き流されたらしい。
確かにそう言われる印象もそうなんだよな。
「江戸川君は?どう?」
「何がですか?」
「報告することない?」
「全くないです。この間からそう日も経ってないです。宗像さんがやる気を出した方に驚きます。」
「これが出来たから、まあそのノリです。」
そう言って指輪を指す。
「じゃあ江戸川さんも先に指輪を買ったら、それに合う人を見つけようと思うんじゃないですか?」
緋色の無謀な提案だった。
「そんなやつはいない。空しいだけじゃないか。」
「まあそうですね、好みもあるし、サイズもあるし。」
誰もがそろそろ次の飲み物を、とそんな時で。
メニュー表を手に自分の分を決めてから回した。
緋色がやはり後ろのページを見てる。
「緋色さん、飲めるんだから二杯三杯くらいは飲めばいいんじゃないの?」
そう言ったら軽く睨まれるような眼をしたが誰か気が付いただろうか?
「沙織ちゃん、飲めるの?」
そう聞かれても口を閉じたまま。
「飲めるらしいです。せっかくだから飲めばいいのに。」
「二杯くらいです、付き合える程度です。」
そう言いながらジトッとした目をこっちによこした後、メニュー表を捲り真剣な目で探しながら決めた。誘われて飲むことにしたらしい。
すべてが揃って再び乾杯をする。
緋色は本当に嬉しそうに一口目を口にしてる。
どうなるんだろう・・・・・それが楽しみで口元が緩む。
さすがにすぐにはキャラ変はしないと思うが。
「アズルさん、彼氏さんは嬉しそうでした?」
「手続きの事?まあね。一緒に暮らして長いし、そろそろどうなのとは言われてたらしいし。転職が落ち着いたらとか何とか言ってたみたい。」
「良かったです。ドレス着ちゃいましょうよ、全然まだまだ大丈夫です。綺麗です。」
ああ、うっかり失言がとりあえず一つ。
やはり気がついてない本人。
周りはちょっと止まったけど聞き流すことにしたらしい。
本当に大人対応ができる自分たちに感謝しろっ。
「あと彼氏さんも痩せる励みが出ますよね。本当に禿げたら大変ですから、さっさとある内に写真を撮って主役になりましょう。」
失言は続いた。
「どうかなあ。沙織ちゃんみたいに何回も着たいって程のテンションもないしなあ。」
「そんなのはきっと本番だけ出せばいいです。さすがに周りが盛り上げてくれるんですよね。ドレスの裾を持ってもらって歩いて、芸能人ばりにカメラが向くなんて、あの日にしかないです。」
「野本さんはどのタイプ?盛大にやりたいか、まあまあやりたいか、それとも疲れることはしない主義か。」
「普通に小規模でいいです。二種類くらい着て、二時間くらいで終わらせる感じで十分です。」
「それは普通です。もっと夢を持ちましょうよ。そこは現実逃避でもいいし、本当の夢でもいいです。現実はお金と相談なので、はっきり決めるまでは夢をみたいです。」
分かってはいるらしい。
相手がお金持ちで招待客が暇だったらとんでもなく夢が広がるということでもある。
「彼氏さんだって王子様姿が意外に似合うかもしれませんよ。惚れ直すこともあるかもしれませんよ。」
失言コードギリギリだろうか?
「多分似合わないよ。なんなら和装でいいくらいのタイプだし。」
「江戸川さんは和装も似合いそうですね。」
「普通にタキシードも似合いそうだけどね。」
野本さんと宗像さんに褒められた。
誉め言葉に気分も上がりそうなのに・・・・。
「江戸川さんは別にいいです。全く興味ないらしいのですごく好きな相手だったら言いなりだろうし、そこそこだったら盛り上がりもせず褒めもせずの非協力的なタイプじゃないですか?」
ここにきて失言を越えて何て言い草なのか、発言がこっちに来るときは本当に容赦ないじゃないか。
心のムカつきを隠せない。
グラスを手にした。
だいたいなんでそこそこな相手と結婚しないといけないのか?
それは誰のせいで、何のためだというんだ!
先に小さな扶養家族を作るような失敗はしないぞ!!
いつの間にか三杯目を頼んだ緋色、一人だけお代わりを頼んでる。
宗像さんにはお酒を控えていた理由がバレただろう。
こっそり視線をやられた。
してやったりな気分だが、あんまり荒れるのも問題だ。
あと二杯くらいでやめさせよう。
「野本さんは同期の人とかに誘われて社内の飲み会には行ってるの?」
「いいえ、同期でも集まらないし、そんな誘いもないです。友達もそう参加するタイプじゃないんです。」
「そうか・・・・じゃあ彼氏のコネを使って皆飲みに行く?クリエーターは男女いるから適当に誰でも誰とでも。」
「行きたいです。もう普通のサラリーマンじゃない方が会話も楽しそうです。絶対参加したいです!!」
本当にこの間は楽しめなかったのだろう。一度で懲りたんだろうか?
大人しくし過ぎたんじゃないか?
無理に大人ぶったあのとぼとぼ歩きの日の事だ。
「二人はどう?」
「そうですね、何より宗像さんの相手に興味がありますが。」
「それは私もあります。どんなタイプですか?」
野本さんが加わる。
「どんなと言っても・・・わりとのんびりした雰囲気かもしれない。サラリーマンもちょっとは経験してるみたいだけど、やっぱり自由業だから。」
「そうなんですね。」
「だから逆に江戸川君なんてスーツってだけでもずいぶん大人に見えそうだし、二人もしっかりして見えるかもね。」
「本当ですか?」
大人女子に焦がれてやまないらしい緋色が食いつく。
『かもね』とはついてたし、『パッと見』の印象のことだろうに。
信じたい言葉を信じるのも幸せに生きる方法だ。
後はお酒はやめておけ、せめてものアドバイスをしてあげたくなる。
「じゃあ聞いてみるね。」
落ちこぼれ雀の懇願の目を見てそう動くらしい。
いいんじゃないか?
そんな集団は宗像さんのコネじゃなきゃ出会えないかもしれない。
次はお酒はやめさせようと思ったけど、ここにきてペースダウンしたらしい。
食べ物もまだあるので追加で自分の分を頼む。
目の前の三人だけだとしても女性もいろんなタイプがいるということで。
野本さんが宗像さんと話をして、緋色が一人ボンヤリして、自分はそんな三人を見て。
まだ二ヶ月くらいしか経ってないのに、すっかり異動先に慣れてる自分。
今のところ問題もないと思うからいい。
いつものように二人で別室にいた。
広げる資料の量が多くて、テーブルを使って作業してる。
さっきからその資料の間を野本さんが行き来してる。
足りないものでもあるのか、それとも決定的な穴を見つけたのか。
しばらく見ていたらやはり眉間にしわを寄せてる感じだ。
「どうかした?」
そう聞いたら顔をあげた野本さん。
「一緒に確認していただいていいですか?」
そう言って資料を並べた。
数字の羅列はまだ数字に見えている。
大丈夫だ。
隣に椅子を持ってこられて、数枚の紙を広げられた。
それだけじゃあよく見方も慣れなくて。
一つ一つ説明を受けながら数字を見て行くと・・・・・。
そう説明受けたらあれ?って思うけど、何か理由があってそうなる場合があるのかどうなのか、それも分からない。
余りにも自然に不自然現象が起こってるから、何かあるのかと思う。
逆にないとしたら問題だし。
「何か見落としたものがあるのかな?」
「多分違うと思います。」
「ちょっと遡って見てみます。」
そう言ってまた立ち上がり、用紙を差し込んで、大量の紙を捲り始めた。
あんまりいい予感はしない。
本当に穴だとしたら初めてだとは思えない。
しばらくして、大きくため息をついた野本さん。
顔を向けると残念そうな顔をした。
「宗像さんに言わないと。」
「呼んでくる?」
「はい。お願いします。」
宗像さんと部屋に戻ると珍しく上を向いて休憩していた野本さん。
「お疲れ様。野本さん、どうかした?」
急いで顔を戻して、リセット状態になったらしい。
三人でさっき見ていた資料の数字を追う。
「どうしてそうなる?」
宗像さんがつぶやく。
「多分、この領収書が問題です。並べてみると分かりますが同じ筆跡です。」
ずらりとスクロールされたもの。
社名には心当たりもなく。
「でも一人じゃ無理じゃない?問題ないとしたら何か理由があるか、関わった人が隠してるか、故意なのか。」
そんなのは平社員が出来る事じゃない。
今までのごまかしが可愛いくらいのものだった。
「とりあえず野本さんはきちんと分かりやすい形の書類にして、過去は出来るだけ追ってみて、あと他にも同じことをしてないか。江戸川君は実際にどんなところなのか出来るだけ情報を集めて。今日、明日はそれを始末しましょう。形になったら・・・・・私がやるしかないのよね。」
確かにちゃんとした監査役がいない。
そんな誤魔化すような大きなものは動かないし。
だから見過ごされてきたのか、すり抜けてきたのか。
宗像さんがため息をついた。
「じゃあ、形にできたらまた教えて。」
そう言って出て行った。
「大丈夫?」
野本さんに聞いた。所属の経理の誰かが関わらないとできない事だし。
うっすらとこの後の展開も見えてるんじゃないだろうか?
「しょうがないです。許せない事だとしたら、終わりにしてもらいたいです。」
そう強い顔で言った。緊張した顔かもしれない。
「そうだよね。嫌な役割を背負わせて申し訳ないね。」
自分が選んだわけじゃないけど、宗像さんや自分はまだいいけど、野本さんはまた経理に戻るんだし。
自分も大きくため息をついて打ち出された一枚の領収書を眺めた。
検索して振り出し続けてる相手先を調べる。
たいした情報が出てこない。
関係あるのかないのか。
都内の物だけに絞ったら三か所になって、明らかに関係ないと分かるところを除外したら何もなくなった。
「野本さん、やっぱり分からないんだけど。誰だろう?」
「本人について調べたら何か出て来るでしょうか?」
そう言っても出来ることはない。
いっそ本人に聞いてみたい。
だけどそんな簡単には出来ない。
今までだって話もしたこともないし。
無関係に都内に限らずに検索してみたらいくつかは出てくる。
一つ一つ業種を見たりして、今一つ分からないまま。
「ねえ、一番新しい領収書の日付と経費の請求を合わせてみる?」
「無理です。その日は何もないです。今一つ一つやってますが、あまり・・・期待は出来ないです。」
そうか。後はどうすればいいんだろう。
存在すればどこかに情報が載ってるはずなのだ。
存在すれば・・・。
一体どこまでさかのぼれるんだろう?
そしてこの話の行きつく先は?
結局自分の持ち分は上手く調べられず、途中野本さんにも頼んでみたけど同じようだった。
宗像さんに報告をした。
「そう。」
眉間にしわが寄る。
野本さんがまとめた書類を渡す。
「追えるのはこれくらいでした。古い領収書はどこかにあると思いますが、今はこれで十分だとも思います。」
「そうね。じゃあ・・・後は任せて。ご苦労様。野本さん疲れたでしょう?大丈夫?」
「はい、大丈夫です。あとはよろしくお願いします。」
その言葉に強さを見た気もした。
確かな人選だったらしい。
そして何が起こってるのか分かってるのか、近寄ってこない落ちこぼれ雀一人。
会話に入れないだろうけど、入っても気持ちいいものじゃない。
それも宗像さんに任せた。
「じゃあ、今日はこれで終わりでいいです。沙織ちゃんも終わりにしてね。」
すっかり時間は過ぎている。
部屋をかたずけて帰り支度をする。
エレベーターで野本さんと一緒になる。
玄関を出て、駅まで歩きながら話をした。
全く関係ない日常会話を。
「じゃあ、何か食べてく?」
疲れただろう、作る気もしないだろう。
いつもは自炊派だというけど、今日のスーパーはお菓子の割引の曜日で無駄に買わないように行かないらしい。ダイエットと無駄遣いが減っていいと言ってた。
冷蔵庫にある物でパパッと作れる技は持ってるらしい。
それでも軽く誘ってみた。
「じゃあ、お付き合いします。お腹空いてるとふらふらと誘惑に負けそうです。食事をして帰りたいです。」
「じゃあ、お酒より食事?」
「それはどちらも問題なしです。」
そう言って並んだお店の空いてるところに入った。
軽く飲んで食べれるところで、二人でいるのを目撃されたとしてもあまり色気のない所で。
「宗像さんの彼氏つながりの飲み会、実現しますかね?」
「緋色さんが楽しみにしてたからね。」
「江戸川さんも楽しみにしてますか?めずらしい業種の人かもしれませんよ。」
「そうだね。そう言う意味でも楽しみかも。」
緋色がどれだけ爆発するか見てみたい気もするし、単純に宗像さんの彼氏にも興味がある。
「江戸川さんは一目ぼれ派ですか?それともじっくり見極める派ですか?それとも誘われ待ち派ですか?」
そう聞かれても、どうだろう?
一目ぼれ・・・だろうか?
確かに美人が正面に座ると話しかける。
誰でもそうだろう。
好みじゃないときは二人きりの会話にはならないようにするかも。
今までのパターンを思い出す。
「どれもありそうですね。」
勝手に決められた。
確かに綺麗ってだけじゃ、ダメだろう。
話をして合いそうか判断して、そしてゆっくり時間を重ねて、きちんと言いたい派だ。
決していい加減なことはしないほうだ・・・・昔の話だけど。
「それに今は慎重さも加わったかもしれない、そこはちょっと大人になったし。」
「そうですか。」
「野本さんはどう?」
そう聞き返した。
「一目惚れからのじっくり片思いかもしれません。」
「どうやって攻めていくの?」
「チャンスを待ち、時間を重ねて・・・・。」
「チャンスはだんだんなくなるよ。本当にすっかり今はないもんなあ。どうしよう、緋色さんより楽しみにしてるのは自分かもしれない・・・なんて。」
笑ったら同じように笑顔にはなってもらえた。
「技術がある器用な人はいいよね。料理も作ってくれて掃除も洗濯も任せてもいいなんて。バリバリ働く宗像さんには理想的だろうね。」
「そうですね。これで相手が売れないミュージシャンだったらどうでしょうか?宗像さんの指のリングは毎回見てますが素敵ですよ。宗像さんも気に入るくらいの才能があるんでしょうね。出会いは聞いたんですか?」
「あれ・・・どうだったかな?友達つながりだった気がするよ。」
「じゃあ、もっと聞いてみたいです。」
「野本さんも楽しみになったんじゃない?」
「そうですね。」
仕事以外の話をして、今日の仕事の後始末がどうなるかは触れずに。
食事をして軽く飲んで終わりにした。
誘ったからと言って奢った。
「じゃあ、次は私がご馳走します。」
そう言われた。
自分たちの手を離れたことは心からも手放したい。
駅で別れて、部屋に帰った。
適当に済ませてテレビの前に横になる。
目を閉じて足をあげて腹筋を軽く締めて、ついでに肩の筋肉もほぐして、腕を伸ばして。
たまにやるストレッチ運動をしながら程よく疲れをとっていく。
手放したつもりでも明日がちょっと憂鬱だったりする。
どうなるんだろう?
次の日、いつものように部屋に集合して挨拶をして。
四人が揃ったので宗像さんから話をされた。
「昨日の書類は上に預けました。とりあえず後は任せましょう。今日はまた続きをお願いします。」
あっさり責任まで預けたらしい。
「はい、分かりました。」
二人で答えて、それ以外の報告を聞いてまた別室に行った。
挨拶以外緋色の声を聞いてない気がする。
たいてい二人で別室にいるからだけど、ちゃんと宗像さんの役に立ってるのか心配ではあった。
さっきもどんな顔をしていたのかちゃんと見ていない。
ちゃんと・・・・元気だろうか?
つい安堵した気持ちで、忘れていたもう一人の同僚の事を思った。
こっそり見てたらやはりノンアルコールカクテルにしたらしい緋色。
それでもこの間の目隠しや手探り法じゃなくて、ちゃんと選んでた。
奢りと変わらない経費なのに。
ちょっとモヤモヤする気分だ。
残りの三人は当然飲む。
久しぶりに無駄に元気で無駄に明るい声が近くでする。
最近離れていたので忘れてたくらいだった。
さり気なく情報を探られてる野本さん。
はっきり彼氏不在を表明した途端に緋色に同盟を組まれたように、頑張りましょうと言われてる。
そしてやはり宗像さんだけが幸せだと言いながら、勝手に上司の相手の事まで野本さんに教えてる。
野本さんの興味ある情報は緋色に勝手に教えられた形だ。
素面でこれをやるんだから、飲んだらあれくらいにはなるんだと、改めて納得したりした。そう思うしかないと。
「今日は彼氏さんが一人で夜ご飯ですか?」
「そうだと思う。一人だとそう作る気力も起きないみたいだから、残り物がなかったらふらりと食べに行ったり買ってきたりするみたい。」
「週末も仕事をしたりするんですか?」
野本さんも自宅仕事のクリエーターと言う部分に興味があるらしい。
「急いでこなさないといけない仕事の時はね。あとアイデアが浮かんだ時とか。その辺は急にスケッチしたり、仕事部屋に行ったりすることもあるし。そんなものじゃない?基本は週末のイベント以外は仕事してないけど。」
そう話す上司の指を見る。
やはり変わったデザインがあり、存在感もある。
「もしかしてそれは特別なものですか?」
緋色が聞いた。
「そう・・・一緒にデザインしてお揃いでつけてるの。まあそんな感じの物。」
そう言って手を立てて見せてくれた。
意味が分かった。
ああ・・・・。
「とうとう書類も書いたんですか?」
「週末に書くようにってもらってきたみたい。だから書くかもしれない。」
予定は未定という感じだろうか?
それでも進んだらしい。
「名前が変わりますよね、何て苗字になるんですか?」
「『石川』なの。書くのが簡単でいいけど、仕事ではそのままだと思う。」
「そうですか。『宗像』さんがなんとなくしっくりきてるのでちょっとシンプルになると物足りない感じです。」
勝手に言う緋色。
失礼コードギリギリだと思うけど心広く聞き流されたらしい。
確かにそう言われる印象もそうなんだよな。
「江戸川君は?どう?」
「何がですか?」
「報告することない?」
「全くないです。この間からそう日も経ってないです。宗像さんがやる気を出した方に驚きます。」
「これが出来たから、まあそのノリです。」
そう言って指輪を指す。
「じゃあ江戸川さんも先に指輪を買ったら、それに合う人を見つけようと思うんじゃないですか?」
緋色の無謀な提案だった。
「そんなやつはいない。空しいだけじゃないか。」
「まあそうですね、好みもあるし、サイズもあるし。」
誰もがそろそろ次の飲み物を、とそんな時で。
メニュー表を手に自分の分を決めてから回した。
緋色がやはり後ろのページを見てる。
「緋色さん、飲めるんだから二杯三杯くらいは飲めばいいんじゃないの?」
そう言ったら軽く睨まれるような眼をしたが誰か気が付いただろうか?
「沙織ちゃん、飲めるの?」
そう聞かれても口を閉じたまま。
「飲めるらしいです。せっかくだから飲めばいいのに。」
「二杯くらいです、付き合える程度です。」
そう言いながらジトッとした目をこっちによこした後、メニュー表を捲り真剣な目で探しながら決めた。誘われて飲むことにしたらしい。
すべてが揃って再び乾杯をする。
緋色は本当に嬉しそうに一口目を口にしてる。
どうなるんだろう・・・・・それが楽しみで口元が緩む。
さすがにすぐにはキャラ変はしないと思うが。
「アズルさん、彼氏さんは嬉しそうでした?」
「手続きの事?まあね。一緒に暮らして長いし、そろそろどうなのとは言われてたらしいし。転職が落ち着いたらとか何とか言ってたみたい。」
「良かったです。ドレス着ちゃいましょうよ、全然まだまだ大丈夫です。綺麗です。」
ああ、うっかり失言がとりあえず一つ。
やはり気がついてない本人。
周りはちょっと止まったけど聞き流すことにしたらしい。
本当に大人対応ができる自分たちに感謝しろっ。
「あと彼氏さんも痩せる励みが出ますよね。本当に禿げたら大変ですから、さっさとある内に写真を撮って主役になりましょう。」
失言は続いた。
「どうかなあ。沙織ちゃんみたいに何回も着たいって程のテンションもないしなあ。」
「そんなのはきっと本番だけ出せばいいです。さすがに周りが盛り上げてくれるんですよね。ドレスの裾を持ってもらって歩いて、芸能人ばりにカメラが向くなんて、あの日にしかないです。」
「野本さんはどのタイプ?盛大にやりたいか、まあまあやりたいか、それとも疲れることはしない主義か。」
「普通に小規模でいいです。二種類くらい着て、二時間くらいで終わらせる感じで十分です。」
「それは普通です。もっと夢を持ちましょうよ。そこは現実逃避でもいいし、本当の夢でもいいです。現実はお金と相談なので、はっきり決めるまでは夢をみたいです。」
分かってはいるらしい。
相手がお金持ちで招待客が暇だったらとんでもなく夢が広がるということでもある。
「彼氏さんだって王子様姿が意外に似合うかもしれませんよ。惚れ直すこともあるかもしれませんよ。」
失言コードギリギリだろうか?
「多分似合わないよ。なんなら和装でいいくらいのタイプだし。」
「江戸川さんは和装も似合いそうですね。」
「普通にタキシードも似合いそうだけどね。」
野本さんと宗像さんに褒められた。
誉め言葉に気分も上がりそうなのに・・・・。
「江戸川さんは別にいいです。全く興味ないらしいのですごく好きな相手だったら言いなりだろうし、そこそこだったら盛り上がりもせず褒めもせずの非協力的なタイプじゃないですか?」
ここにきて失言を越えて何て言い草なのか、発言がこっちに来るときは本当に容赦ないじゃないか。
心のムカつきを隠せない。
グラスを手にした。
だいたいなんでそこそこな相手と結婚しないといけないのか?
それは誰のせいで、何のためだというんだ!
先に小さな扶養家族を作るような失敗はしないぞ!!
いつの間にか三杯目を頼んだ緋色、一人だけお代わりを頼んでる。
宗像さんにはお酒を控えていた理由がバレただろう。
こっそり視線をやられた。
してやったりな気分だが、あんまり荒れるのも問題だ。
あと二杯くらいでやめさせよう。
「野本さんは同期の人とかに誘われて社内の飲み会には行ってるの?」
「いいえ、同期でも集まらないし、そんな誘いもないです。友達もそう参加するタイプじゃないんです。」
「そうか・・・・じゃあ彼氏のコネを使って皆飲みに行く?クリエーターは男女いるから適当に誰でも誰とでも。」
「行きたいです。もう普通のサラリーマンじゃない方が会話も楽しそうです。絶対参加したいです!!」
本当にこの間は楽しめなかったのだろう。一度で懲りたんだろうか?
大人しくし過ぎたんじゃないか?
無理に大人ぶったあのとぼとぼ歩きの日の事だ。
「二人はどう?」
「そうですね、何より宗像さんの相手に興味がありますが。」
「それは私もあります。どんなタイプですか?」
野本さんが加わる。
「どんなと言っても・・・わりとのんびりした雰囲気かもしれない。サラリーマンもちょっとは経験してるみたいだけど、やっぱり自由業だから。」
「そうなんですね。」
「だから逆に江戸川君なんてスーツってだけでもずいぶん大人に見えそうだし、二人もしっかりして見えるかもね。」
「本当ですか?」
大人女子に焦がれてやまないらしい緋色が食いつく。
『かもね』とはついてたし、『パッと見』の印象のことだろうに。
信じたい言葉を信じるのも幸せに生きる方法だ。
後はお酒はやめておけ、せめてものアドバイスをしてあげたくなる。
「じゃあ聞いてみるね。」
落ちこぼれ雀の懇願の目を見てそう動くらしい。
いいんじゃないか?
そんな集団は宗像さんのコネじゃなきゃ出会えないかもしれない。
次はお酒はやめさせようと思ったけど、ここにきてペースダウンしたらしい。
食べ物もまだあるので追加で自分の分を頼む。
目の前の三人だけだとしても女性もいろんなタイプがいるということで。
野本さんが宗像さんと話をして、緋色が一人ボンヤリして、自分はそんな三人を見て。
まだ二ヶ月くらいしか経ってないのに、すっかり異動先に慣れてる自分。
今のところ問題もないと思うからいい。
いつものように二人で別室にいた。
広げる資料の量が多くて、テーブルを使って作業してる。
さっきからその資料の間を野本さんが行き来してる。
足りないものでもあるのか、それとも決定的な穴を見つけたのか。
しばらく見ていたらやはり眉間にしわを寄せてる感じだ。
「どうかした?」
そう聞いたら顔をあげた野本さん。
「一緒に確認していただいていいですか?」
そう言って資料を並べた。
数字の羅列はまだ数字に見えている。
大丈夫だ。
隣に椅子を持ってこられて、数枚の紙を広げられた。
それだけじゃあよく見方も慣れなくて。
一つ一つ説明を受けながら数字を見て行くと・・・・・。
そう説明受けたらあれ?って思うけど、何か理由があってそうなる場合があるのかどうなのか、それも分からない。
余りにも自然に不自然現象が起こってるから、何かあるのかと思う。
逆にないとしたら問題だし。
「何か見落としたものがあるのかな?」
「多分違うと思います。」
「ちょっと遡って見てみます。」
そう言ってまた立ち上がり、用紙を差し込んで、大量の紙を捲り始めた。
あんまりいい予感はしない。
本当に穴だとしたら初めてだとは思えない。
しばらくして、大きくため息をついた野本さん。
顔を向けると残念そうな顔をした。
「宗像さんに言わないと。」
「呼んでくる?」
「はい。お願いします。」
宗像さんと部屋に戻ると珍しく上を向いて休憩していた野本さん。
「お疲れ様。野本さん、どうかした?」
急いで顔を戻して、リセット状態になったらしい。
三人でさっき見ていた資料の数字を追う。
「どうしてそうなる?」
宗像さんがつぶやく。
「多分、この領収書が問題です。並べてみると分かりますが同じ筆跡です。」
ずらりとスクロールされたもの。
社名には心当たりもなく。
「でも一人じゃ無理じゃない?問題ないとしたら何か理由があるか、関わった人が隠してるか、故意なのか。」
そんなのは平社員が出来る事じゃない。
今までのごまかしが可愛いくらいのものだった。
「とりあえず野本さんはきちんと分かりやすい形の書類にして、過去は出来るだけ追ってみて、あと他にも同じことをしてないか。江戸川君は実際にどんなところなのか出来るだけ情報を集めて。今日、明日はそれを始末しましょう。形になったら・・・・・私がやるしかないのよね。」
確かにちゃんとした監査役がいない。
そんな誤魔化すような大きなものは動かないし。
だから見過ごされてきたのか、すり抜けてきたのか。
宗像さんがため息をついた。
「じゃあ、形にできたらまた教えて。」
そう言って出て行った。
「大丈夫?」
野本さんに聞いた。所属の経理の誰かが関わらないとできない事だし。
うっすらとこの後の展開も見えてるんじゃないだろうか?
「しょうがないです。許せない事だとしたら、終わりにしてもらいたいです。」
そう強い顔で言った。緊張した顔かもしれない。
「そうだよね。嫌な役割を背負わせて申し訳ないね。」
自分が選んだわけじゃないけど、宗像さんや自分はまだいいけど、野本さんはまた経理に戻るんだし。
自分も大きくため息をついて打ち出された一枚の領収書を眺めた。
検索して振り出し続けてる相手先を調べる。
たいした情報が出てこない。
関係あるのかないのか。
都内の物だけに絞ったら三か所になって、明らかに関係ないと分かるところを除外したら何もなくなった。
「野本さん、やっぱり分からないんだけど。誰だろう?」
「本人について調べたら何か出て来るでしょうか?」
そう言っても出来ることはない。
いっそ本人に聞いてみたい。
だけどそんな簡単には出来ない。
今までだって話もしたこともないし。
無関係に都内に限らずに検索してみたらいくつかは出てくる。
一つ一つ業種を見たりして、今一つ分からないまま。
「ねえ、一番新しい領収書の日付と経費の請求を合わせてみる?」
「無理です。その日は何もないです。今一つ一つやってますが、あまり・・・期待は出来ないです。」
そうか。後はどうすればいいんだろう。
存在すればどこかに情報が載ってるはずなのだ。
存在すれば・・・。
一体どこまでさかのぼれるんだろう?
そしてこの話の行きつく先は?
結局自分の持ち分は上手く調べられず、途中野本さんにも頼んでみたけど同じようだった。
宗像さんに報告をした。
「そう。」
眉間にしわが寄る。
野本さんがまとめた書類を渡す。
「追えるのはこれくらいでした。古い領収書はどこかにあると思いますが、今はこれで十分だとも思います。」
「そうね。じゃあ・・・後は任せて。ご苦労様。野本さん疲れたでしょう?大丈夫?」
「はい、大丈夫です。あとはよろしくお願いします。」
その言葉に強さを見た気もした。
確かな人選だったらしい。
そして何が起こってるのか分かってるのか、近寄ってこない落ちこぼれ雀一人。
会話に入れないだろうけど、入っても気持ちいいものじゃない。
それも宗像さんに任せた。
「じゃあ、今日はこれで終わりでいいです。沙織ちゃんも終わりにしてね。」
すっかり時間は過ぎている。
部屋をかたずけて帰り支度をする。
エレベーターで野本さんと一緒になる。
玄関を出て、駅まで歩きながら話をした。
全く関係ない日常会話を。
「じゃあ、何か食べてく?」
疲れただろう、作る気もしないだろう。
いつもは自炊派だというけど、今日のスーパーはお菓子の割引の曜日で無駄に買わないように行かないらしい。ダイエットと無駄遣いが減っていいと言ってた。
冷蔵庫にある物でパパッと作れる技は持ってるらしい。
それでも軽く誘ってみた。
「じゃあ、お付き合いします。お腹空いてるとふらふらと誘惑に負けそうです。食事をして帰りたいです。」
「じゃあ、お酒より食事?」
「それはどちらも問題なしです。」
そう言って並んだお店の空いてるところに入った。
軽く飲んで食べれるところで、二人でいるのを目撃されたとしてもあまり色気のない所で。
「宗像さんの彼氏つながりの飲み会、実現しますかね?」
「緋色さんが楽しみにしてたからね。」
「江戸川さんも楽しみにしてますか?めずらしい業種の人かもしれませんよ。」
「そうだね。そう言う意味でも楽しみかも。」
緋色がどれだけ爆発するか見てみたい気もするし、単純に宗像さんの彼氏にも興味がある。
「江戸川さんは一目ぼれ派ですか?それともじっくり見極める派ですか?それとも誘われ待ち派ですか?」
そう聞かれても、どうだろう?
一目ぼれ・・・だろうか?
確かに美人が正面に座ると話しかける。
誰でもそうだろう。
好みじゃないときは二人きりの会話にはならないようにするかも。
今までのパターンを思い出す。
「どれもありそうですね。」
勝手に決められた。
確かに綺麗ってだけじゃ、ダメだろう。
話をして合いそうか判断して、そしてゆっくり時間を重ねて、きちんと言いたい派だ。
決していい加減なことはしないほうだ・・・・昔の話だけど。
「それに今は慎重さも加わったかもしれない、そこはちょっと大人になったし。」
「そうですか。」
「野本さんはどう?」
そう聞き返した。
「一目惚れからのじっくり片思いかもしれません。」
「どうやって攻めていくの?」
「チャンスを待ち、時間を重ねて・・・・。」
「チャンスはだんだんなくなるよ。本当にすっかり今はないもんなあ。どうしよう、緋色さんより楽しみにしてるのは自分かもしれない・・・なんて。」
笑ったら同じように笑顔にはなってもらえた。
「技術がある器用な人はいいよね。料理も作ってくれて掃除も洗濯も任せてもいいなんて。バリバリ働く宗像さんには理想的だろうね。」
「そうですね。これで相手が売れないミュージシャンだったらどうでしょうか?宗像さんの指のリングは毎回見てますが素敵ですよ。宗像さんも気に入るくらいの才能があるんでしょうね。出会いは聞いたんですか?」
「あれ・・・どうだったかな?友達つながりだった気がするよ。」
「じゃあ、もっと聞いてみたいです。」
「野本さんも楽しみになったんじゃない?」
「そうですね。」
仕事以外の話をして、今日の仕事の後始末がどうなるかは触れずに。
食事をして軽く飲んで終わりにした。
誘ったからと言って奢った。
「じゃあ、次は私がご馳走します。」
そう言われた。
自分たちの手を離れたことは心からも手放したい。
駅で別れて、部屋に帰った。
適当に済ませてテレビの前に横になる。
目を閉じて足をあげて腹筋を軽く締めて、ついでに肩の筋肉もほぐして、腕を伸ばして。
たまにやるストレッチ運動をしながら程よく疲れをとっていく。
手放したつもりでも明日がちょっと憂鬱だったりする。
どうなるんだろう?
次の日、いつものように部屋に集合して挨拶をして。
四人が揃ったので宗像さんから話をされた。
「昨日の書類は上に預けました。とりあえず後は任せましょう。今日はまた続きをお願いします。」
あっさり責任まで預けたらしい。
「はい、分かりました。」
二人で答えて、それ以外の報告を聞いてまた別室に行った。
挨拶以外緋色の声を聞いてない気がする。
たいてい二人で別室にいるからだけど、ちゃんと宗像さんの役に立ってるのか心配ではあった。
さっきもどんな顔をしていたのかちゃんと見ていない。
ちゃんと・・・・元気だろうか?
つい安堵した気持ちで、忘れていたもう一人の同僚の事を思った。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる