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11 今まさに急展開にした自分。
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さっきまでの沈み込みとは比べられないけど、人の目がないってどこまでも余所行きを捨てられる。
だらんとしてくつろいでしまう二度目の後輩の部屋。
富田林君はいそいそとグラスを準備してる。
コンビニで買った甘いお酒は三種類。
積算量ではリミッターを越えてるけどランチの時間からはずいぶん時間も経ってるし、大丈夫だろう。
お店で出されるものに比べたらジュースみたいなものだと思う。
「どれを飲みますか?」
そう聞かれて適当に一缶を手にした。
残りは冷蔵庫に。
富田林君が隣に座って、缶を開ける音が重なった。
そのまま口にしてごくごくと飲む富田林君。
「どのくらい飲んだら、どうなるの?」
「どうもならないので眠くなるまで飲めます。」
飲み放題でお店に嫌がられるタイプだ。
最初からピッチャーかボトルで頼んだら楽なタイプだ。
「逆にすぐに赤くなるのがいいです。そんな風に無防備に変わっていくのがいいって思えます。」
「なんでよ、とことん飲める方がいいじゃない。」
奢りだったら、絶対そう。
「自分はそうじゃないから、そんなところを見てると余計に放っとけなくなりました。」
「そうなんだ。お酒が強い人がお酒に弱い人に弱いなんて、初めて聞いた。」
「絶対飲めそうな呉さんがそうだなんて思わなかったんです。ガンガン飲めるだろうから一緒に飲みに行きたいって誘おうって思ってたのに。でもそこもギャップがあっていいなって思ったんです。」
会話の合間にちびちびと飲んでる私の方を見て言う。
他人の目がないって言うのは富田林君にも言えるみたいだ。
距離感にはある遠慮が言葉と視線にない。
さすがに引き延ばすのも限界。
「で、どうしようか?」
缶から口と視線を離して出た言葉がそれだった。
「決着をつけたいです。せめて方向性と可能性の有り無しの部分は。」
「そうだね。」
私も誰かに相談したい。
そう言っても出来る人は限られてるし、全く知らない人に相談しても自分で考えるしかないという結論にしかならない。
「ちなみに大垣はなんて言ってたの?」
「大丈夫だからちゃんと答えをもらえって。」
どうやら焚きつけたらしい。
大丈夫と言うその根拠はなんだ?
私がフリーになったばかりだという事実以外何がある。
「貫井さんも、同じことを言ってるって、だから大丈夫だって。」
美羽・・・・・そこもやはり・・・そう来たか。
外張りを埋めるタイプだったのか、『大丈夫。』を拾い集めたとしか思えない。
二つで自信をもって満足してくれたことに感謝だ。
課内で多数決なんてとってると言われたら殴りたくなる、速攻断る。
「大丈夫の根拠を何か言ってた?」
「まあ、いろいろと。」
あったの?いろいろというそれが聞きたい。何でそこ言葉を濁したの?
顔を見ると赤くなってる。
急に聞きたくなくなった。
なんだろう?全く私はそこに自信がないのに。
手を伸ばして缶に口をつけた。
今は口を閉じよう、そのために飲もう。
隣でも同じように景気のいい音がした。
ゴクゴクとおいしそうな音が響く。
お酒が飲める人はそんなに美味しそうに音を鳴らして飲めるらしい。
一気に缶が傾いてる。
飲み切った缶がテーブルに置かれた。
あっという間だったからずっと見てた。
缶を置いてこっちを見た富田林君が近寄ってきた。
酔ってるの?
まさかだ。そんな事がその身に起こることはない人だ。
最後の一瞬までゆっくり近寄ってきて、本当に寸前で少し止まった。
動かない私と視線を合わせてあと少しの距離をゼロにした。
返事をする前に、一人で勝手に決着をつけたらしい。
嵯峨野さんが三ヶ月もかけて微動だにしなかった距離を、あっという間に詰めた。
そんなタイプだったの?
目を開けて、やっぱり近い距離で見つめ合う。
「この間は我慢しました。あの時、起きてましたよね。」
あの時、起きてはいた、寝てはいなかった。
「はぁ~。」
ため息をついて倒れこんできた。
「酷いですね、あの一言がどんなに僕を傷つけるか分かってなかったですか?」
「ごめん。」
そう言ったら顔をあげて目を見られた。
「本当にわざとだったんですね。大垣さんが絶対そんな事を言うタイプじゃないから、起きてたんじゃないかって。すごいですね、すっかり見抜かれてるんですから。」
「寝てる時の様子なんて大垣さんに断言されたら逆にそっちが怪しいって思うのに。」
「なんでよ、あいつが適当に言ったのよ。それがたまたま当たっただけでしょう?」
「そうかもしれませんね。もうそれはいいです。わざとだったとしたら、それは良かったと思うことにします。」
納得してもらえたらそれでいい。
これ以上余計なロクデナシ男候補を作りたくない。
「この間の物はそのままあります。使ってください。」
「何?」
「化粧品です。使ってもらわないと、せっかく買ったのが無駄になります。」
「いつ買ったの?」
「・・・・・この間、一度目の相談で飲みに誘った日です。」
早くない?
そこは本当にそんなタイプなの?
「なんですか?」
「そんなタイプなんだと思って。」
「だってなかなか手を出されないと落ち込むタイプだって、それは貫井さんが教えてくれました。」
「二人にばらしたのはつい先日でしょう?」
「そうです。」
その前に買ってたんじゃない。
「別にその時は部屋飲みしたいって思っただけです。そんなに急激に進めようとは思ってなかったですし、そんな展開になれる自信もなかったです。」
「だからうれしいです。」
それは懐かしいくらいにいい笑顔だった。
最近向けられてなかったかもしれない。
あの最初の時に見た笑顔・・・・やられたって・・・・・そう思った笑顔。
それは向けられたこっちまで嬉しくなる笑顔で。
そんな笑顔をしてもらえたって喜びたくなるような笑顔だった。
その顔に手をやった、軽く引き寄せたかもしれない。
小指が顎に引っかかって、本当に誘うように軽く・・・くらい。
お互いが少し斜めになりキスをする、目を時々開けて、視線を合わせて。
静かな部屋に二人が重なる音がする。
それだけじゃなくて息も上がって、テーブルに足をぶつけながら移動してきた富田林君の気配も。
まだ夕方だ。
さっき泊まる話はしたんだと思う。
じゃあ、このままくっついてもいいけど、どう?
体はとっくにくっついてる。お互い膝を曲げながら相手の体に近寄って、上半身は引き付けられて限界までくっついてる。
「香純さん、好きなんです。僕を選んでください。」
この期に及んで嫌だと言うわけないのに。
「とっくに選んでるじゃない。」
顔を離して答えた。
「好きなんです。」
真剣な目をされて、ちゃんと応えるべきだと思った。
多分言葉にしたら、もっと楽になれそうな気もしてる。
「私も・・・・好きだったみたい。」
「どうしようもない鈍感な女だって・・・・。」
まさかそんな評価を今?
眉間に怒りが乗ったのを見て急いで言い訳する。
「大垣さんが・・・・そう言ってました。貫井さんはそこははっきりは言えないって言ってたけど。」
どっちも当たってるのかもしれない。
ただ何も起こらなければそのまま見ないでやりすごせただろう気持ちを、さっきはっきり言葉にしたら明らかに質量を持って自分の中で形になった。
もう見ない振りも出来ない。
「間に合って良かったです、旅行の前にって・・・そう思ってました。」
旅行に行ってたら、多分こうはならなかったと思う。
とりあえずしばらくはそのまま嵯峨野さんの隣にいたと思う。
そんな事にならなかったことを今は感謝したい。
結局嵯峨野さんに罪悪感を持つなら、まだ何もない今でよかった。
せっかくいい人だったのに。
富田林君に抱きついて体温を感じながら、ちょっとだけすれ違った別の人の事を思ってる。
「今夜、抱き合いたいです。ちゃんと自分が隣にいるって感じてください。」
爽やかに言われた。
今までもそんな恋愛をしてきたんだろうか?
さっきまで違う男の人の事を思い浮かべてた自分なのに、無性に富田林君の過去に嫌な気分になった。
『夜まで待てない。』
小さく言った、聞こえなくてもいいかと思ったくらい。
つい本心をさらけ出したけど、気が付かないでほしいって思ったくらいの本心。
でもさすがに聞こえたみたいで、体を思いっきり離された。
立ち上がられて手を取られて、途中止まられた。
「シャワーは?」
「貸して。」
そう言ったら押し込まれるように浴室に連れていかれて、バスタオルだけ渡されてドアが閉まった。
閉まったドアを見つめて、ああ・・・・・と少し後悔した。
勿論自分から言い出したことを。
服を脱いでシャワーを借りてバスタオルを巻いて出た。
すぐに入れ替わった富田林君が指さした方の部屋に入って一人でベッドに座って息をついた。
いくらノロノロとした展開に不安だったとはいえ、さすがにここまでの急展開はない。
今までだって何度かデートをした後だった。
友達からの彼氏でも、数回は外で会って時間を重ねたのに。
早すぎる展開って富田林君に行ったけど、さらに加速度をつけて数時間早めたのは自分だ。
あの日のトイレの女の子の事を少しは思い出しただろうか?
モヤッとした過去の中にそんな可愛い子がいたことを考えたんだろうか?
だらんとしてくつろいでしまう二度目の後輩の部屋。
富田林君はいそいそとグラスを準備してる。
コンビニで買った甘いお酒は三種類。
積算量ではリミッターを越えてるけどランチの時間からはずいぶん時間も経ってるし、大丈夫だろう。
お店で出されるものに比べたらジュースみたいなものだと思う。
「どれを飲みますか?」
そう聞かれて適当に一缶を手にした。
残りは冷蔵庫に。
富田林君が隣に座って、缶を開ける音が重なった。
そのまま口にしてごくごくと飲む富田林君。
「どのくらい飲んだら、どうなるの?」
「どうもならないので眠くなるまで飲めます。」
飲み放題でお店に嫌がられるタイプだ。
最初からピッチャーかボトルで頼んだら楽なタイプだ。
「逆にすぐに赤くなるのがいいです。そんな風に無防備に変わっていくのがいいって思えます。」
「なんでよ、とことん飲める方がいいじゃない。」
奢りだったら、絶対そう。
「自分はそうじゃないから、そんなところを見てると余計に放っとけなくなりました。」
「そうなんだ。お酒が強い人がお酒に弱い人に弱いなんて、初めて聞いた。」
「絶対飲めそうな呉さんがそうだなんて思わなかったんです。ガンガン飲めるだろうから一緒に飲みに行きたいって誘おうって思ってたのに。でもそこもギャップがあっていいなって思ったんです。」
会話の合間にちびちびと飲んでる私の方を見て言う。
他人の目がないって言うのは富田林君にも言えるみたいだ。
距離感にはある遠慮が言葉と視線にない。
さすがに引き延ばすのも限界。
「で、どうしようか?」
缶から口と視線を離して出た言葉がそれだった。
「決着をつけたいです。せめて方向性と可能性の有り無しの部分は。」
「そうだね。」
私も誰かに相談したい。
そう言っても出来る人は限られてるし、全く知らない人に相談しても自分で考えるしかないという結論にしかならない。
「ちなみに大垣はなんて言ってたの?」
「大丈夫だからちゃんと答えをもらえって。」
どうやら焚きつけたらしい。
大丈夫と言うその根拠はなんだ?
私がフリーになったばかりだという事実以外何がある。
「貫井さんも、同じことを言ってるって、だから大丈夫だって。」
美羽・・・・・そこもやはり・・・そう来たか。
外張りを埋めるタイプだったのか、『大丈夫。』を拾い集めたとしか思えない。
二つで自信をもって満足してくれたことに感謝だ。
課内で多数決なんてとってると言われたら殴りたくなる、速攻断る。
「大丈夫の根拠を何か言ってた?」
「まあ、いろいろと。」
あったの?いろいろというそれが聞きたい。何でそこ言葉を濁したの?
顔を見ると赤くなってる。
急に聞きたくなくなった。
なんだろう?全く私はそこに自信がないのに。
手を伸ばして缶に口をつけた。
今は口を閉じよう、そのために飲もう。
隣でも同じように景気のいい音がした。
ゴクゴクとおいしそうな音が響く。
お酒が飲める人はそんなに美味しそうに音を鳴らして飲めるらしい。
一気に缶が傾いてる。
飲み切った缶がテーブルに置かれた。
あっという間だったからずっと見てた。
缶を置いてこっちを見た富田林君が近寄ってきた。
酔ってるの?
まさかだ。そんな事がその身に起こることはない人だ。
最後の一瞬までゆっくり近寄ってきて、本当に寸前で少し止まった。
動かない私と視線を合わせてあと少しの距離をゼロにした。
返事をする前に、一人で勝手に決着をつけたらしい。
嵯峨野さんが三ヶ月もかけて微動だにしなかった距離を、あっという間に詰めた。
そんなタイプだったの?
目を開けて、やっぱり近い距離で見つめ合う。
「この間は我慢しました。あの時、起きてましたよね。」
あの時、起きてはいた、寝てはいなかった。
「はぁ~。」
ため息をついて倒れこんできた。
「酷いですね、あの一言がどんなに僕を傷つけるか分かってなかったですか?」
「ごめん。」
そう言ったら顔をあげて目を見られた。
「本当にわざとだったんですね。大垣さんが絶対そんな事を言うタイプじゃないから、起きてたんじゃないかって。すごいですね、すっかり見抜かれてるんですから。」
「寝てる時の様子なんて大垣さんに断言されたら逆にそっちが怪しいって思うのに。」
「なんでよ、あいつが適当に言ったのよ。それがたまたま当たっただけでしょう?」
「そうかもしれませんね。もうそれはいいです。わざとだったとしたら、それは良かったと思うことにします。」
納得してもらえたらそれでいい。
これ以上余計なロクデナシ男候補を作りたくない。
「この間の物はそのままあります。使ってください。」
「何?」
「化粧品です。使ってもらわないと、せっかく買ったのが無駄になります。」
「いつ買ったの?」
「・・・・・この間、一度目の相談で飲みに誘った日です。」
早くない?
そこは本当にそんなタイプなの?
「なんですか?」
「そんなタイプなんだと思って。」
「だってなかなか手を出されないと落ち込むタイプだって、それは貫井さんが教えてくれました。」
「二人にばらしたのはつい先日でしょう?」
「そうです。」
その前に買ってたんじゃない。
「別にその時は部屋飲みしたいって思っただけです。そんなに急激に進めようとは思ってなかったですし、そんな展開になれる自信もなかったです。」
「だからうれしいです。」
それは懐かしいくらいにいい笑顔だった。
最近向けられてなかったかもしれない。
あの最初の時に見た笑顔・・・・やられたって・・・・・そう思った笑顔。
それは向けられたこっちまで嬉しくなる笑顔で。
そんな笑顔をしてもらえたって喜びたくなるような笑顔だった。
その顔に手をやった、軽く引き寄せたかもしれない。
小指が顎に引っかかって、本当に誘うように軽く・・・くらい。
お互いが少し斜めになりキスをする、目を時々開けて、視線を合わせて。
静かな部屋に二人が重なる音がする。
それだけじゃなくて息も上がって、テーブルに足をぶつけながら移動してきた富田林君の気配も。
まだ夕方だ。
さっき泊まる話はしたんだと思う。
じゃあ、このままくっついてもいいけど、どう?
体はとっくにくっついてる。お互い膝を曲げながら相手の体に近寄って、上半身は引き付けられて限界までくっついてる。
「香純さん、好きなんです。僕を選んでください。」
この期に及んで嫌だと言うわけないのに。
「とっくに選んでるじゃない。」
顔を離して答えた。
「好きなんです。」
真剣な目をされて、ちゃんと応えるべきだと思った。
多分言葉にしたら、もっと楽になれそうな気もしてる。
「私も・・・・好きだったみたい。」
「どうしようもない鈍感な女だって・・・・。」
まさかそんな評価を今?
眉間に怒りが乗ったのを見て急いで言い訳する。
「大垣さんが・・・・そう言ってました。貫井さんはそこははっきりは言えないって言ってたけど。」
どっちも当たってるのかもしれない。
ただ何も起こらなければそのまま見ないでやりすごせただろう気持ちを、さっきはっきり言葉にしたら明らかに質量を持って自分の中で形になった。
もう見ない振りも出来ない。
「間に合って良かったです、旅行の前にって・・・そう思ってました。」
旅行に行ってたら、多分こうはならなかったと思う。
とりあえずしばらくはそのまま嵯峨野さんの隣にいたと思う。
そんな事にならなかったことを今は感謝したい。
結局嵯峨野さんに罪悪感を持つなら、まだ何もない今でよかった。
せっかくいい人だったのに。
富田林君に抱きついて体温を感じながら、ちょっとだけすれ違った別の人の事を思ってる。
「今夜、抱き合いたいです。ちゃんと自分が隣にいるって感じてください。」
爽やかに言われた。
今までもそんな恋愛をしてきたんだろうか?
さっきまで違う男の人の事を思い浮かべてた自分なのに、無性に富田林君の過去に嫌な気分になった。
『夜まで待てない。』
小さく言った、聞こえなくてもいいかと思ったくらい。
つい本心をさらけ出したけど、気が付かないでほしいって思ったくらいの本心。
でもさすがに聞こえたみたいで、体を思いっきり離された。
立ち上がられて手を取られて、途中止まられた。
「シャワーは?」
「貸して。」
そう言ったら押し込まれるように浴室に連れていかれて、バスタオルだけ渡されてドアが閉まった。
閉まったドアを見つめて、ああ・・・・・と少し後悔した。
勿論自分から言い出したことを。
服を脱いでシャワーを借りてバスタオルを巻いて出た。
すぐに入れ替わった富田林君が指さした方の部屋に入って一人でベッドに座って息をついた。
いくらノロノロとした展開に不安だったとはいえ、さすがにここまでの急展開はない。
今までだって何度かデートをした後だった。
友達からの彼氏でも、数回は外で会って時間を重ねたのに。
早すぎる展開って富田林君に行ったけど、さらに加速度をつけて数時間早めたのは自分だ。
あの日のトイレの女の子の事を少しは思い出しただろうか?
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