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パーティーへ②
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私とセレンの前に現れたのは、名をロベルト・ノワールという……セレンの父だった。
「兄上は?」
「向こうで話しているよ……厄介な者に捕まったみたいだ」
ロベルト様は冗談めかして笑うようにそう言った。そして私の方を見ると、穏やかに微笑んだ。
「……こうしてお話するのは十年程前、セレンを連れて屋敷にお邪魔した時以来かな。随分と立派に成長した」
「お久しぶりでございます。ロベルト様……」
十年前もそうだが、ロベルト様は相変わらず年を感じさせない。そして穏やかだ。セレンの性格は彼譲りのものかもしれない。
「……我が息子が、ご迷惑をおかけした」
突然の言葉に面食らう。むしろロベルト様が、我が息子を誑かして、と文句を言ってきてもおかしくないのに。目を丸くする私の横で、セレンは少しバツの悪い表情を浮かべた。
「君がコルトにいることが分かってからというもの、そこに行くと言ってきかなくてね。怪我ををいいことに、無理矢理そこに派遣してもらえるよう画策したんだよ」
「……一年の約束だから」
「いくら静養と言っても、これでは帰ってきてからの積りに積もった仕事が大変だ」
「しっかり務めさせて頂きますから、心配ご無用ですよ」
そもそもこちらに来たのは、仕事よりも、私に会うためだったのか。その事実に驚き、目を見張った。
きっと私が想像しているより、セレンは私に執着している。……私が彼の愛を信じられなかったことが馬鹿みたいだと思う程に。
……それに、私の方が薄情?かもしれない。セレンのことは初恋だったと完結させてしまっていたし、会うために努力もしていなかった。むしろセレンの方が、私からの愛に不安を持つのが筋ではないか?
急に反省の念が込み上げてきた。彼からの沢山の愛情、それを疑われて、きっととても悲しかったはずだ。
「セレンが君を忘れていないことは分かっていた。でも、別の令嬢との婚約も決まっていたし、私は忘れてくれれば良いと思っていた。だから居場所も教えなかった……」
「父上は知っていたんだね」
セレンの寂しそうな表情に、ロベルト様は申し訳なさそうに目を伏せた。
「まさか、婚約破棄になるとは……。セレン、お前が駆け落ちの手引きをしたんだろう?」
「お互いに不幸せになるより、ずっと良いでしょう」
「……お前には負けたよ」
ロベルト様は肩をすくめると、私の方に向き合って軽く頭を下げた。
「ロベルト様、そんな……辞めてください」
「君をメイドとして雇ったと聞いた時、無理矢理そんなことを……」
「いいえ、私も彼の側にいたかったんです」
はっきりとそう口にする。これは私の本心だ。
「だから、側にいることを許してくださって、むしろありがとう御座います」
「アルト……」
セレンがぽつりと私の名を呟く。私は彼の目を見て微笑んだ。私もちゃんと言葉にしよう、セレンがいつもそうしてくれるように。
見つめ合う私達の姿を見たロベルト様は、どこか安心したような顔をしていた。
「……君のお父上は、元気かな?」
「はい、とても。今では立派に果物を育てていますよ」
「それはよかった。君のお父上とは良き友人だった……手紙のやり取りもいつしか途絶えてしまった。また会おうと伝えてくれないか」
「分かりました」
ロベルト様は軽く片手を挙げて挨拶をした後、私達の前から離れ、人の群れの中に戻っていった。
「後で貴方のお兄様にも挨拶をしなくちゃね」
「……アルト、ありがとう」
セレンの目には僅かに涙が滲んでいた。私は彼の手をそっと握り、力を込めた。握り返されると、彼の体温が熱く感じられて、胸がぎゅっとなるような感じがした。
「私の方こそ、ありがとう」
今なら自分からキスできるような気がした。……こんな人混みで無けれはの話だが。
「まだ兄上は話し中みたいだから、少し食べようか」
「うん!」
「兄上は?」
「向こうで話しているよ……厄介な者に捕まったみたいだ」
ロベルト様は冗談めかして笑うようにそう言った。そして私の方を見ると、穏やかに微笑んだ。
「……こうしてお話するのは十年程前、セレンを連れて屋敷にお邪魔した時以来かな。随分と立派に成長した」
「お久しぶりでございます。ロベルト様……」
十年前もそうだが、ロベルト様は相変わらず年を感じさせない。そして穏やかだ。セレンの性格は彼譲りのものかもしれない。
「……我が息子が、ご迷惑をおかけした」
突然の言葉に面食らう。むしろロベルト様が、我が息子を誑かして、と文句を言ってきてもおかしくないのに。目を丸くする私の横で、セレンは少しバツの悪い表情を浮かべた。
「君がコルトにいることが分かってからというもの、そこに行くと言ってきかなくてね。怪我ををいいことに、無理矢理そこに派遣してもらえるよう画策したんだよ」
「……一年の約束だから」
「いくら静養と言っても、これでは帰ってきてからの積りに積もった仕事が大変だ」
「しっかり務めさせて頂きますから、心配ご無用ですよ」
そもそもこちらに来たのは、仕事よりも、私に会うためだったのか。その事実に驚き、目を見張った。
きっと私が想像しているより、セレンは私に執着している。……私が彼の愛を信じられなかったことが馬鹿みたいだと思う程に。
……それに、私の方が薄情?かもしれない。セレンのことは初恋だったと完結させてしまっていたし、会うために努力もしていなかった。むしろセレンの方が、私からの愛に不安を持つのが筋ではないか?
急に反省の念が込み上げてきた。彼からの沢山の愛情、それを疑われて、きっととても悲しかったはずだ。
「セレンが君を忘れていないことは分かっていた。でも、別の令嬢との婚約も決まっていたし、私は忘れてくれれば良いと思っていた。だから居場所も教えなかった……」
「父上は知っていたんだね」
セレンの寂しそうな表情に、ロベルト様は申し訳なさそうに目を伏せた。
「まさか、婚約破棄になるとは……。セレン、お前が駆け落ちの手引きをしたんだろう?」
「お互いに不幸せになるより、ずっと良いでしょう」
「……お前には負けたよ」
ロベルト様は肩をすくめると、私の方に向き合って軽く頭を下げた。
「ロベルト様、そんな……辞めてください」
「君をメイドとして雇ったと聞いた時、無理矢理そんなことを……」
「いいえ、私も彼の側にいたかったんです」
はっきりとそう口にする。これは私の本心だ。
「だから、側にいることを許してくださって、むしろありがとう御座います」
「アルト……」
セレンがぽつりと私の名を呟く。私は彼の目を見て微笑んだ。私もちゃんと言葉にしよう、セレンがいつもそうしてくれるように。
見つめ合う私達の姿を見たロベルト様は、どこか安心したような顔をしていた。
「……君のお父上は、元気かな?」
「はい、とても。今では立派に果物を育てていますよ」
「それはよかった。君のお父上とは良き友人だった……手紙のやり取りもいつしか途絶えてしまった。また会おうと伝えてくれないか」
「分かりました」
ロベルト様は軽く片手を挙げて挨拶をした後、私達の前から離れ、人の群れの中に戻っていった。
「後で貴方のお兄様にも挨拶をしなくちゃね」
「……アルト、ありがとう」
セレンの目には僅かに涙が滲んでいた。私は彼の手をそっと握り、力を込めた。握り返されると、彼の体温が熱く感じられて、胸がぎゅっとなるような感じがした。
「私の方こそ、ありがとう」
今なら自分からキスできるような気がした。……こんな人混みで無けれはの話だが。
「まだ兄上は話し中みたいだから、少し食べようか」
「うん!」
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