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第6章235話:抵抗
しおりを挟むチサトンの激しくも美しい斬撃。
それを受けながら、ルミは思う。
(……私には勝つ資格がないんでしょうね)
チサトンがここまで強くなった理由。
それは、応援の力だ。
チサトンは、配信者として、大事な資質を持っていた。
ファンのために戦うこと。
ファンを笑顔にすること。
……思えばチサトンは、試合が始まる前から、やたらファンを意識したメッセージを発していた。
開会の宣言でも。
決勝直前の挨拶でも。
きっとチサトンは、いざというときには、ファンが自分を勝たせてくれると、良く理解していたのだろう。
だって自分たちは、配信者なのだから。
(私は、チサトンさんほどの積み重ねはありません)
自分は、ファンをそこまで大事にしてきただろうか?
……自信がない。
だから、ここで負けるのだろう。
戦闘能力の優劣よりも、まず、配信者としてチサトンに劣っているのだから。
ファンとともに勝利を掴もうとするチサトンは、とても美しい。
尊い。
優勝するのに相応しいと思う。
ああ……
だから年間ランカーなのかと、ルミは納得した。
勝てないわけだ。
そこまで理解していても、ルミはチサトンの斬撃を受け続ける。
防御し続けているのは、ただの惰性だ。
だが、もう無意味だろう。
ルミは敗北を受け入れようと。
抵抗をやめようとして―――――
「ルミちゃん!!!」
と、会場に響き渡る声がした。
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