配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)

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第6章224話:剣の境地

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ファンが応援してくれる。

それがチサトンの力に変わる。

ギアがどんどん上がる。

激しくて、苦しい戦いでも。

その逆境が、むしろチサトンを熱くする。

(ああ、そうや。ウチはこんなふうに戦ってたな)

と、チサトンは懐かしい想いに包まれる。

(思い出させてくれてありがとな、ルミ)

チサトンの剣から、無駄な力が消えていく。

心には炎のように猛《たけ》る想い。

しかし一方で、その剣は凪《なぎ》のように、静けさを保っていく。

振るわれる一撃。

チサトンが放った、その斬撃は、恐ろしくキレがあり――――静かであった。

「……!!」

ルミが受ける。

ルミの手首や腕に走った衝撃。

チサトンの斬撃の質が、決定的に変わったことがわかる。

「ハァアアアアッ!!!」

チサトンのさらなる斬撃。

驚愕するほど滑らかな剣。

仮面の下の、ルミの顔色が変わる。

(これは……)

ルミは気づいた。

チサトンは"入っている"

一流の剣士ならば、誰しも一度は入ったことのある境地に。








試合を観戦していたノノコとあやねぽん。

あやねぽんは言った。

「チサトン、無我の境地に入ったわね~」

「ああ。そうじゃな」

と、ノノコは答える。

「でも、よく入れたわね~。さっきまでボロボロだったのに~」

「自分の原点を思い出したんじゃろ」

「原点~?」

「自分が、ダンジョン配信者だということじゃ」

ノノコは、語る。

「年間ランカーは、探索者と違うんじゃ――――配信者なんじゃ。配信者というのは、強さだけで優劣が決まるわけやない。いかにリスナーに愛されたか、信者に愛されたかで決まる商売じゃ」

ノノコは、チサトンを見つめながら、続けて言った。

「じゃけん、これがチサトンの真価。己の強さに、応援の力を乗せて、戦う。こうなったチサトンは、ホンマに強いで」
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