142 / 250
第4章142話:他者視点3
しおりを挟む
<角刈り・坊主頭視点・続き>
そのあと、坊主頭が言った。
「と、ところでよ。俺は、ルミさんのファンなわけでよ、その……は、話しかけたい、っていうか? こ、声かけていい、かな?」
「……なんか急にキョドりはじめたな、お前」
「お、お前は話しかけたくないのかよ?」
「ん……まあ、そりゃ俺だってルミさんと話してみたい気持ちはあるけどよ」
「だろ? でも、もし無視されたらって思うと怖いじゃん? 俺、3日は寝込むぞ」
「お前が寝込むとか知るかよ。お前の3日間が、人類にとってそんなに重要だとでも?」
「じ、人類レベルの話をするなら、ほとんどの人の3日間は重要じゃないだろ!」
そんな話をしていたとき。
「あの……」
「!!?」
ルミが二人に話しかけてきた。
ルミは、人や魔物の気配を察知する能力が非常に高い。
この二人は、気配を消す能力に長けていたが、それでもルミの感知能力からは逃れられなかった。
ルミは言った。
「ええと、少し話が聞こえてたんですけど……リスナーの方ですか?」
「あ、は、はいいいい!」
坊主頭がビビりまくりながら答えた。
ルミは仮面をかぶっている。
表情がわからないのだ。
怒っているのか、無表情なのか、警戒しているのか。
とにかく角刈りは謝る。
「え、えっと、なんか、邪魔しちまったみたいっすね。その、すいません……」
「いいえ。私がここで筋トレをしてたのが悪いですから」
しかし、どうやらその筋トレも終わったらしく、ベンチもバーベルも片付けられていた。
角刈りが尋ねる。
「で、でも、どうしてダンジョンで筋トレを? なんか目的とかあるんすか?」
「いえ……私は正体を隠している身ですからね。ひとけのある場所でトレーニングを行うのはまずいと思ったんです」
「ああ……なるほど」
「それで……できれば二人にも、ココのことは黙っていただけると助かるのですが」
ルミがそう頼むと、坊主頭がまるで敬礼せんばかりに言った。
「もちろんです! 絶対言いふらしたりしませんし、もしこの階層に近づくやつを見かけたら、ぶち殺しておきますので!」
「いや殺しちゃダメですよ!? 吹聴しないでいただけたらそれでいいですから!」
ルミが慌ててそう言ったので、坊主頭はうなずいた。
ルミが告げる。
「私はそろそろ帰ります。二人も、ダンジョン探索頑張ってくださいね。では」
一礼して去っていくルミ。
彼女の姿が完全に消えてから、坊主頭が言った。
「や、やべええええええ! ルミさんとじかに話してしまったぞ! こ、こここれはもう、一生の思い出だ!」
「マジで緊張したな!! でも結構良い人だったな」
二人はしばらく、ルミと出会った感動を語り合うのだった。
そのあと、坊主頭が言った。
「と、ところでよ。俺は、ルミさんのファンなわけでよ、その……は、話しかけたい、っていうか? こ、声かけていい、かな?」
「……なんか急にキョドりはじめたな、お前」
「お、お前は話しかけたくないのかよ?」
「ん……まあ、そりゃ俺だってルミさんと話してみたい気持ちはあるけどよ」
「だろ? でも、もし無視されたらって思うと怖いじゃん? 俺、3日は寝込むぞ」
「お前が寝込むとか知るかよ。お前の3日間が、人類にとってそんなに重要だとでも?」
「じ、人類レベルの話をするなら、ほとんどの人の3日間は重要じゃないだろ!」
そんな話をしていたとき。
「あの……」
「!!?」
ルミが二人に話しかけてきた。
ルミは、人や魔物の気配を察知する能力が非常に高い。
この二人は、気配を消す能力に長けていたが、それでもルミの感知能力からは逃れられなかった。
ルミは言った。
「ええと、少し話が聞こえてたんですけど……リスナーの方ですか?」
「あ、は、はいいいい!」
坊主頭がビビりまくりながら答えた。
ルミは仮面をかぶっている。
表情がわからないのだ。
怒っているのか、無表情なのか、警戒しているのか。
とにかく角刈りは謝る。
「え、えっと、なんか、邪魔しちまったみたいっすね。その、すいません……」
「いいえ。私がここで筋トレをしてたのが悪いですから」
しかし、どうやらその筋トレも終わったらしく、ベンチもバーベルも片付けられていた。
角刈りが尋ねる。
「で、でも、どうしてダンジョンで筋トレを? なんか目的とかあるんすか?」
「いえ……私は正体を隠している身ですからね。ひとけのある場所でトレーニングを行うのはまずいと思ったんです」
「ああ……なるほど」
「それで……できれば二人にも、ココのことは黙っていただけると助かるのですが」
ルミがそう頼むと、坊主頭がまるで敬礼せんばかりに言った。
「もちろんです! 絶対言いふらしたりしませんし、もしこの階層に近づくやつを見かけたら、ぶち殺しておきますので!」
「いや殺しちゃダメですよ!? 吹聴しないでいただけたらそれでいいですから!」
ルミが慌ててそう言ったので、坊主頭はうなずいた。
ルミが告げる。
「私はそろそろ帰ります。二人も、ダンジョン探索頑張ってくださいね。では」
一礼して去っていくルミ。
彼女の姿が完全に消えてから、坊主頭が言った。
「や、やべええええええ! ルミさんとじかに話してしまったぞ! こ、こここれはもう、一生の思い出だ!」
「マジで緊張したな!! でも結構良い人だったな」
二人はしばらく、ルミと出会った感動を語り合うのだった。
27
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる