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第8章550話:王都の騒乱43

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そして。

中央広場にたどりつく。

広場は悲惨な状態になっていた。

いつも中央広場には市場が開かれている。

しかし店に置かれていただろう商品は、壊れたり、ひしゃげたりした状態で、むなしく地面に転がっていた。

中央広場の周囲にある建物も、倒壊したり、瓦礫がれき残骸ざんがいになっている。

私の記憶にある王都の中央広場は、もはや見る影もない。

乾いた風が吹きぬけ、血の匂いもただよっている。

――――そんな広場の中心にたたずんでいたのが、アレックスであった。

上半身をはだけており、筋肉質な肉体を露出していた。

下半身は囚人に与えられるズボンを履いている。

おそらく牢屋からそのまま飛び出してきたのだろう。

彼の肉体には、魔力回路のすじが浮かび上がっていた。

魔力が暴走状態になったときに現れる【魔力線まりょくせん】だ。

まるでボディペイントのごとく、腹筋や胸部、腕、首、顔に至るまで、その魔力線が走っていた。

「ようやく来たか。ルチル」

「しばらく見ない間に、ずいぶんまがまがしい姿になりましたわね」

現在のアレックスは、ジルガーンよりもずっと魔王らしい姿だ。

「いったい何があってそうなったんですの?」

「ゼリスから貰ったものがあってな。鉱石のような、宝石のようなそのアイテムが、私の真の力を目覚めさせたのだ」

……ゼリス?

アレックスを覚醒させたのがゼリスと?

何か違和感のある話だ。

おそらくゼリスが黒幕ではない。

あくまでゼリスは"仲介役ちゅうかいやく"として利用されたのだろう。

足がつかないように、いくつもの仲介役を挟んで悪事をおこなうのは、犯罪者がよくやる手口だ。
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