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第8章534話:王都の騒乱27:別視点4

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ミジェラは命じる。

近衛長このえちょう

「は、はいっ!」

「わが槍を用意せよ。宝物庫ほうもつこにある」
  
「ははっ!」

命令を受けた近衛長このえちょうが退場していく。

さらにミジェラは命ずる。

「騎士団長」

「はっ!」

第一騎士団だいいちきしだんの出動を許可する。王国軍おうこくぐん全てを指揮して、王都で暴れている者どもを制圧せよ。冒険者ギルドや傭兵ギルドなどにも呼びかけて、戦える者たちをかき集めろ。報酬は存分な額を用意するが、協力を拒否した場合は処罰すると伝えておけ」

御意ぎょいッ!」

命令を受けた第一騎士団長が退場していく。

さらにミジェラは命ずる。

「大臣」

「はっ」

非常事態宣言ひじょうじたいせんげんを発令しろ。王都市民の避難や救助に対して、あるいは"敵"との戦闘行為に対して、超法規的ちょうほうきてき軍事行動ぐんじこうどうを許可する。本来なら戦時でのみ適用される宣言であるが……事ここに至っては、仕方あるまい」

たとえば建物を壊したり、許可なく人の家に侵入するなどは、法律違反である。

が……非常事態宣言を発令したあとでは、そういった軍事行動も容認されるようになる。

王都で起こっている騒乱をしずめるために、法による統制は邪魔であると、ミジェラは判断した。

だから一時的に法律は凍結するということであった。

「承知いたしました」

と大臣がうやうやしく礼をした。

そして最後にミジェラは、自分の息子へと視線を向ける。
  
「クラウス。お前も出陣しろ」

「わ、私も……ですか」

「ああ。王族の一員として、陣頭指揮じんとうしきを取り、最前線で戦え」

人々の上に立つ王族は、最前線で戦わなければならない。

最も厳しい戦場に立ち、そのうえで勝利を収めてくることこそが、王たる器の証明である―――――

「―――――先に言っておく。次期国王の座はお前に譲ろうと考えている」

「……!」

「王族として恥じぬ結果を残せ」

「……はい」

クラウスは気乗りはしなかった。

しかし、いつまでもそうは言っていられないだろう。

(愚かな兄を持つと、苦労するものだ)

と心底うんざりしつつも、彼は覚悟を決める。

一方、ミジェラは思った。

(こんなときにルーガが居ないとはな)

軍事的な挑発行動を繰り返すダルリス帝国への対応のため、ルーガには、国境へとおもむいてもらっていた。

ゆえに王都にいないのだ。

(いや、ルーガがいないタイミングを見計らって、この騒動を引き起こした者がいるのか?)

とミジェラは考える。

今は判断がつかない。

ただ、ルーガはおらずとも、王都にはルチルがいる。

今回、ルチルに軍の采配さいはいってもらうつもりはないが……

(まあルチルならば、己の判断で、何かしらの働きをしてくれるだろう)

ミジェラは英雄ルチルの活躍に、大きな期待を寄せるのだった。

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