486 / 517
最初の壁
しおりを挟む<ルチル視点>
私。
レオン。
ラクティア。
以上3人で、変身中のジルガーンに猛攻する。
だが。
ジルガーンは倒れない。
3人で40発以上の斬撃を与えたが、それでも削りきれない。
(でも、あともう少し!!)
ぎりぎりまで諦めるつもりはない。
攻撃を叩き込み続ける。
そして。
いよいよジルガーンの第二形態への移行が完了する。
「――――――――ッ!」
第二形態になったジルガーンから衝撃波が放たれる。
「ぐっ!?」
「きゃっ!?」
「っ!!」
私たち3人は、衝撃波をぶつけられて吹っ飛ばされた。
三人同時攻撃を強制的に停止させられる。
――――ジルガーンの第二形態。
首なしの将軍だったジルガーンに、頭部が出現していた。
濃い灰色の粘土で固めたような頭部だ。
歴戦の戦士といった強面。
ほつれたような髪のロンゲ。
二本のねじれた角。
さらに鎧からも、肘や肩の部位に、角のような突起が生えている。
この第二形態は、大魔将ジルガーンあらため【王魔ジルガーン】と呼ばれている。
「こいつはやべえぞ……」
とレオンがつぶやいた。
ラクティアも身震いしている。
ジルガーン第二形態の偉容と、まがまがしい魔力に、2人は圧倒されていた。
私は歯噛みする。
(倒しきれなかった……でも!)
ジルガーンのHPはもう、残り少ないはず。
私はそう確信していた。
だから、最後の希望をかけて武器を投擲する。
「ハァアアッ!!」
さきほど作ったAランク剣【グレイスワンダー】。
それをジルガーンに向かって放り投げる。
グレイスワンダーがジルガーンの額に向かって、まっすぐ飛んでいく。
空を切って飛来するグレイスワンダーが、ジルガーンの額に突き刺さった。
次の瞬間。
ふいにジルガーンがビクッと大きく痙攣した。
「グォオオオオオオオッ!!!?」
直後に、断末魔のような咆哮を上げる。
やがて咆哮を終えると、ジルガーンがじっと硬直する。
ジルガーンの威圧感が消えていく。
ややあって、ジルガーンが力なく倒れ……
ぴくりとも動かなくなった。
「はぁ……はぁ……倒した、のか?」
とレオンがつぶやいた。
私はうなずきながら答える。
「ええ。討伐完了ですわ」
するとラクティアが安堵と達成感を込めて言った。
「やった……ッ!」
私たち3人は、肩で息をしていた。
汗もかいている。
しかし、今はそれすらも爽快に感じた。
大きな難関を越えたからである。
と、そのとき。
「ルチル様!」
エドゥアルトが声を上げる。
さらにフランカが言ってきた。
「すみません……こちらの援護をお願いできませんか!?」
まだエドゥアルトとフランカが闇の兵士長と交戦中である。
ジルガーンを倒しても、召喚された魔物たちが消えるわけではない。
闇の兵士長はソロで戦うにはなかなか手強い相手だ。
私たちも加勢する必要があるだろう。
「すぐにいくぜ!」
とレオンが言って、エドゥアルトと戦っていた闇兵士長に斬りかかった。
闇兵士長はレオンの接近に気づいたので、すぐさまガードする。
だがレオンに気を取られたことで、闇兵士長は隙をさらした。
そこをエドゥアルトが見逃さず、攻撃を刺し込む。
「グ、グググッ……!!!」
エドゥアルトの剣が首に突き刺さり、闇兵士長がくぐもった声をもらす。
「せいッ!!」
エドゥアルトが剣を引き抜き、さらに二撃目を放った。
その二撃目によって、闇兵士長が絶命する。
あと一匹。
「ハァアアアッ!!」
とラクティアが声をあげて魔法を発動する。
聖属性魔法の連弾が炸裂し、フランカと戦っていた闇兵士長に飛来した。
「!?」
闇兵士長は攻撃をなんとか回避しようとする。
魔法弾の一つ、二つは回避できたが、三つ目が足に直撃した。
闇兵士長が膝をつく。
そこにフランカがバトルアックスを振り上げ――――
「鋭ッ!!!」
と喝破の声をあげて、振り下ろす。
バトルアックスがまるでギロチンのごとく、闇兵士長の首をスパッと刎ね飛ばした。
もちろん絶命である。
これで2体の闇兵士長を処理することはできた。
268
お気に入りに追加
3,360
あなたにおすすめの小説

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。
とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。
こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。
土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど!
一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる