グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)

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ジルガーン

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魔物を倒しながら西門にしもんを抜ける。

西門から見える範囲には、ジルガーンの姿はない。

「それらしきボスの姿は見えませんね」

とエドゥアルトが言った。

するとシエラ様が現れて、そっと告げてきた。

『強い気配のヌシは、あっちにいるわよ』

シエラ様が指をさす方角。

しかしシエラ様の声や姿は、他の者たちには見えないし、聞こえない。

強いていうなら聖巫女として覚醒したラクティアには聞こえているだけだろう。

だから私は、シエラ様の言葉を代弁することにした。

「あちらの方角に向かいましょう!」

私の指示にしたがい、全員でシエラ様のゆびさした方角へと向かう。




やがて。

その姿が見えてきた。

5メートルもの巨体と邪悪な大剣を持つ騎士――――

大魔将ジルガーン。

首なしの将軍と呼ばれた、ゲームのラスボスである。

クランネル平原のうえに、ただ一人、たたずんでいる。

「あ、あれが……王都に魔物を召喚した主かよ」

とレオンが戦慄せんりつしていた。

まだ距離にして100メートルはあるが、それでもジルガーンの凄まじい魔力を肌で感じられるからだ。

エドゥアルト、フランカ、ラクティアも冷や汗を浮かべている。

「あんなの……倒せるんですか?」

とフランカがおびえながら言った。

「おぞましい気配が、ここまで伝わってきます。今まで感じたことのない気迫ですね」

とエドゥアルト。

ラクティアが告げる。

「でも……倒さないと、国が大変なことになります」

レオンも同意した。

「そうだな。怖気おじけづいてる場合じゃねえ。こうしている間にも、王都では魔物が暴れまわってるんだ。さっさとあいつを討伐して、王都の平和を取り戻そう」

さすがゲームの主人公たちだ。

良い心意気こころいきである。

この二人は、誰かの命令で動いているわけじゃない。

ただ人としての正義感や道徳観で、行動している。

こういう性格だから、聖剣士・聖巫女に選ばれたのだろう。

「いきますわよ!」

と私は告げた。

全員がうなずいた。

私たちはジルガーンに近づく。

私は言った。

「まずは、わたくし一人で戦いますわ」

「っ!?」

「えっ!?」

と、レオンとラクティアが困惑の声を漏らした。

「何か狙いがあるんですか?」

とエドゥアルトが尋ねてきた。

「わたくしが戦っているあいだに、あなたがた4人は、ジルガーンの動きを覚えてほしいんですの」

「動きを……ですか」

とフランカ。

「はい。ジルガーンはクセのある動き方をするので、暗記してください。覚えることができれば、逆にこちらの攻撃チャンスができますもの」

いきなりレオンたちをジルガーンとの戦いにぶちこむのは危険だ。

だからまずは私が先に戦い、レオンたちにジルガーンの動きを観察させる。

そのうえでジルガーンとの戦いに参戦してもらう……という流れだ。

「覚えるのはいいけどよ……マジで一人で大丈夫かよ?」

とレオンが言ってきた。

「もちろんですわ」

と私は首肯する。

ジルガーン戦も散々ゲームでやったからね。

動きは完璧に覚えているつもりだ。





大魔将ジルガーンのすぐ近くまでやってきた。

二本足で立つ5メートルの巨体。

近くまでやってくると、その巨大さがよくわかる。

そして渦巻く魔力と、発せられる威圧感。

戦わずともジルガーンが強大な魔物であることは、誰の目にも明らかであった。

「ワレ……ハ……ジルガーン(我はジルガーン)」

とジルガーンがぽつりぽつりと語りだす。

首がなく、声帯がないはずのジルガーンだが、音を作る魔法によって声を発しているのだ。

「サイヤクノ……ショウニシテ……レキセンノセンキ(災厄の将にして歴戦の戦鬼)」

まさに厄災といっていい強さを持つラスボス。

それがジルガーンだ。

「ワレノモタラス……サイカヲ……トメテミヨ……ニンゲン(我のもたらす災禍を止めてみよ、人間)」

ジルガーンが大剣を構えた。

「言ったように、最初はみなさんは下がっていてください」

と私は他の4人にそう命ずる。

4人は心配げな顔を浮かべるも、指示にしたがって後ろに下がった。

―――――さあ、ラスボス戦の開幕だ。

私もジルガーンと相対するように、剣を構える。

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