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第8章504話:イリスフォルテ視点

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<イリスフォルテ視点>

王都をぐるりと取り囲む外壁がいへき

その外壁の向こうにはクランネル平原が広がっている。

なだらかな草原が広がり、小さな花が咲き、樹木や岩石が点在し、雑木林ぞうきばやしが立ち並ぶ平原だ。

そんなクランネル平原に、一人の女性が立っていた。

影の女――――イリスフォルテである。

彼女は、平原の草のうえにたたずみながら、王都のある方向を見つめていた。

現在、クランネル王都には二つの竜巻たつまきくるっている。

スヴァルコアに魅入みいられたアレックスが暴走しているのだ。

「始まったか」

とイリスフォルテはつぶやいた。

「ならば、こちらも始めるとしよう」

うたうように独白してから、手を前に突き出す。

すると、彼女の眼前に巨大な魔法陣が展開された。

闇の色をした召喚魔法陣しょうかんまほうじんだ。

魔物を召喚する魔法陣。

イリスフォルテの圧倒的な魔力から作られた召喚陣しょうかんじんから出現したのは、一匹の将軍であった。

大魔将だいましょうジルガーン。

ゲームにおいてラスボスと呼ばれた魔物である。

身長5メートルもある巨躯きょく

全身を包む闇色やみいろの鎧。マント。

右手に持った大剣。

ジルガーンには首がない。

ゆえに『くびなしの将軍しょうぐん』という二つ名を持っている。

イリスフォルテは大魔将ジルガーンを見上げて、満足げにつぶやいた。

「さあ、破滅のうたげの始まりだ。存分に暴れるといい」

するとジルガーンは、呼応こおうするように咆哮ほうこうを放った。

「ヅォオオオオオオオオオッッッ!!!」

首がなく、声帯せいたいもないのに発せられる巨大な咆哮。

そのさけごえは物理的な衝撃をともなっており、樹木の葉を吹き散らし、大地に亀裂を走らせ、周囲の岩石を破砕はさいする。
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