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第8章500話:アレックス視点5

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負の感情は一定レベルを超えると、魔力にも大きな影響を及ぼす。

極度きょくどの憎悪は、魔力を汚染し、暴走を引き起こすのだ。

本来、人がそこまで負の感情を抱え込むことはない。

よって【魔力暴走まりょくぼうそう】というのは起こり得るはずがないのだが……

スヴァルコアは、人間の精神のリミッターを外し、常人では到達できないレベルの感情爆発かんじょうばくはつを引き起こすのだった。

そしてアレックスのルチルに対する憎しみは、極限にまで達し、彼の魔力を暴走状態ぼうそうじょうたいへと追いやった。

「あ、あがあああああっ!!?」

制御することができないほどの魔力の奔流ほんりゅうが、アレックスの中でくるう。

魔力回路がり切れて壊れてしまうほどである。

彼の身体に血管が浮き上がり、目が血走り、口からはよだれを垂れ流す。

この瞬間にアレックスは正気を失い、彼の目的は『ルチルへ復讐すること』のみに絞られた。

そして、ついにアレックスの魔力が、限界を超えた。

「アレックス様―――――」

「ぐあああああああああああああッッッ!!!」

ゼリスの心配の声は、アレックスの咆哮ほうこうにかき消される。

次の瞬間、アレックスの魔力が、衝撃波しょうげきはを引き起こした。

「きゃああああっ!!?」

強烈な衝撃波が、周囲にあるものを吹き飛ばす。

天井を、壁を、おりを吹き飛ばし、床には大きな亀裂を走らせる。

牢獄中ろうごくじゅうから悲鳴が上がった。

「うわ、あああっ!!?」

「なんだいきなり!?」

「すごい突風とっぷうだ」

「建物が壊れたわよ!?」

「誰かに襲撃されたのか!?」

たった一撃の衝撃波で、そこそこ広い牢屋が半壊はんかいするほどだった。

牢屋にいた衛兵や囚人は、いきなり生じた異常事態に、混乱とパニックになる。

何人かは怪我をしたり、倒壊とうかいした瓦礫がれきに押しつぶされて死んだ。

ゼリスはアレックスの一番近くで衝撃波を食らったので、派手に吹っ飛んだが……

悪運あくうんが強いのか、打撲だぼく程度のダメージで済んでいた。

「うう……アレックス、様……?」

よろめきながらゼリスが起き上がる。
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