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第8章492話:公爵家4

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「アレックス……? それって第一王子のこと?」

「そうだ。アレックスは、王家やミアストーン家における弱点だ。すきはそこにあり、そこにしかない」

本来、王家との婚姻は貴族にとってプラスである。

しかしアレックスは、王族きっての問題児であり、異常行動が目立つ。

完全無欠ともいえるルチルにとって、ミアストーン家にとって、唯一の急所はアレックスの存在だというのが、イリスフォルテの主張だった。

「これを使え」

イリスフォルテは、一個の魔石を差し出した。

銀色のきらめくを放つ綺麗な魔石であるが……

どこか不安になる輝きを秘めている。

ラミゼアは尋ねる。

「これは?」

「スヴァルコアと呼ぶ。心身が弱っている者に使えば、理性を失わせ、負の感情を増幅させることができるアイテムだ。同時に、大きな災いがもたらされる」

「災いって?」

「それは使ってみてのお楽しみだな。……とにかくこれをアレックスに使えば、アレックスを極度の暴走状態に追いやることができる。おそらくその暴走は、王都が壊滅するほどの衝撃となるだろう」

そんなに危険な代物なのか。

しかし、ラミゼアは考える。

もしイリスフォルテの言ったことが本当ならば……

アレックスに暴れさせて、王都を壊滅させることができれば……

(アレックスの婚約者であるルチルにも、大きなダメージを与えることができる?)

少なくとも王家とミアストーン家が所属する派閥に、巨大な打撃を与えることができるだろう。

「ふふふふ。いいじゃない? すごく、いいわ」

どんどんアイディアが浮かんでくる。

勝利の絵図えずが、ラミゼアの脳内に描かれる。

ラミゼアは不敵に笑った。

それは悪魔のささやきに魂を売った、悪女の微笑みであった。

「お前がやるなら、私もそれに合わせて行動しよう」

とイリスフォルテが告げた。

「ええ、お願いするわ。グラムスティード家が、このまま没落していくだけの負け犬ではないことを、知らしめてあげましょう」

そうラミゼアは、不敵に笑いながら宣言するのだった。
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