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第8章463話:公爵家3
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「また憂鬱な感傷に浸っているのか、ラミゼア」
と声をかけてきた者がいた。
イリスフォルテである。
影の鎧と、影の仮面を身につけた女性。
影の形をした女性……そう形容するしかない、異形の怪物であった。
「また勝手に入ってきたの? イリスフォルテ」
「ああ。窓が開いていたのでな」
とイリスフォルテが答える。
ラミゼアは、半年前、自室で本を読んでいたときにイリスフォルテと出会った。
そのときも同じように、勝手にイリスフォルテが部屋に忍び込んできた。
「そんな暗い顔をして、何を考えていた? ラミゼア」
「……別に。何もかもぶっ壊してやりたいな、って思ってただけよ」
「ぶっ壊す?」
「そうよ。貴族社会も、ミアストーン家も、ルチルも。全て……あたしを貶めるもの全て」
ラミゼアは暗鬱とした顔で告げる。
「グラムスティード家は終わりよ。これからはミアストーン家の時代だわ。結局あたしは一生、ルチルの引き立て役でしかなかった」
そしてラミゼアは牙をむきだしにした。
「あいつさえいなければ、ここまで惨めな感情を抱くこともなかったのに!!! あああ、鬱陶しい!! 殺してやりたい! あいつの大事なものを、目の前で破壊してやりたい! そしたら、どんなに気がすくでしょうね!?」
ラミゼアは興奮気味に、憎しみの感情をあらわにする。
それを黙って聞いていたイリスフォルテが尋ねた。
「この状況を変えたいか?」
「……」
「ルチルを潰し、ミアストーン優勢の空気をひっくり返すためならば、人生の全てを賭ける覚悟があるか?」
イリスフォルテの問いかけ。
ラミゼアは、舌打ちをしながら答えた。
「思うわよ。でも、どうしようもないじゃない!」
「いや、ある。たった一つだけ、方法が」
「……!」
イリスフォルテの言葉に、ラミゼアが沈黙する。
ややあって、尋ねた。
「その方法って……?」
「アレックスを利用するのだ」
とイリスフォルテが告げた。
と声をかけてきた者がいた。
イリスフォルテである。
影の鎧と、影の仮面を身につけた女性。
影の形をした女性……そう形容するしかない、異形の怪物であった。
「また勝手に入ってきたの? イリスフォルテ」
「ああ。窓が開いていたのでな」
とイリスフォルテが答える。
ラミゼアは、半年前、自室で本を読んでいたときにイリスフォルテと出会った。
そのときも同じように、勝手にイリスフォルテが部屋に忍び込んできた。
「そんな暗い顔をして、何を考えていた? ラミゼア」
「……別に。何もかもぶっ壊してやりたいな、って思ってただけよ」
「ぶっ壊す?」
「そうよ。貴族社会も、ミアストーン家も、ルチルも。全て……あたしを貶めるもの全て」
ラミゼアは暗鬱とした顔で告げる。
「グラムスティード家は終わりよ。これからはミアストーン家の時代だわ。結局あたしは一生、ルチルの引き立て役でしかなかった」
そしてラミゼアは牙をむきだしにした。
「あいつさえいなければ、ここまで惨めな感情を抱くこともなかったのに!!! あああ、鬱陶しい!! 殺してやりたい! あいつの大事なものを、目の前で破壊してやりたい! そしたら、どんなに気がすくでしょうね!?」
ラミゼアは興奮気味に、憎しみの感情をあらわにする。
それを黙って聞いていたイリスフォルテが尋ねた。
「この状況を変えたいか?」
「……」
「ルチルを潰し、ミアストーン優勢の空気をひっくり返すためならば、人生の全てを賭ける覚悟があるか?」
イリスフォルテの問いかけ。
ラミゼアは、舌打ちをしながら答えた。
「思うわよ。でも、どうしようもないじゃない!」
「いや、ある。たった一つだけ、方法が」
「……!」
イリスフォルテの言葉に、ラミゼアが沈黙する。
ややあって、尋ねた。
「その方法って……?」
「アレックスを利用するのだ」
とイリスフォルテが告げた。
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