グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)

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第8章458話:殿下

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ティールームに入る。

「ここも久しぶりですわね」

半年ほど訪れていなかった。

ちなみに休学していたときは、メイドを雇い、ティールームの管理をおこなわせていた。

きちんと清掃などもしてもらっていたので、部屋は綺麗である。

以前に利用していたときより綺麗かと思うぐらいだ。

さて……

私たちはくつろぎはじめる。

お茶とお菓子を用意して、雑談をする。

私は、秋学期に受ける講義について、決めなければならない。

なので先輩であるエドゥアルトと、学園に通い続けていたマキに、アドバイスを受けることにした。

エドゥアルトとマキがおすすめの講義を教えてくれる。

私はありがたく参考にさせてもらいながら、コマ割りを決めていく。

――――1時間ほどが経過したときだった。

トントン。

ティールームの玄関扉げんかんとびらがノックされた。

「どなたかしら?」

と私は首をかしげる。

「私が扉をあけます」

とフランカが立ち上がり、扉に向かった。

扉を開ける。

すると、そこに立っていたのは……

(……殿下?)

なんとクラウス殿下である。

アレックスの弟であり、第二王子だ。

久しぶりに顔を見たかもしれない。

「ルチル……ここにいたか」

王子の来訪――――恐縮したマキが立ち上がって、一礼した。

私も立ち上がって、告げる。

「殿下……ようこそお越しくださいました。ご用件は?」

「アレックスの件について、話がある」

「……!」

アレックスのことか。

まあ、いろいろあったからね。

アレックスの弟として、話をしたいということだろう。

私は答えた。

「わかりました。場所を変えましょうか」

「そうだな。そうしてもらえると助かる」

私はフランカとエドゥアルトを連れて、部屋を出た。

個室棟こしつとう】の裏手うらてへと移動する。

フランカとエドゥアルトには少し離れた場所で待機していただくことにした。

クラウス殿下も、取り巻きの護衛を離れた場所に待機させて、私と向かい合った。

「最初に申し上げておきたい。ルチル嬢……私の兄が大変ご迷惑をおかけした。本当に申し訳ない」

クラウス殿下が、目を伏せて礼をした。

私は肩をすくめて、告げた。

「クラウス殿下に謝っていただかなくても……」

「アレックスは君に謝罪をしたのか?」

「……いいえ」

「あのバカが」

と吐き捨てるようにクラウス殿下が言った。

さらに続ける。

「昔から、アレックスの人格には問題があると思っていた。自己中心的で、思い込みが激しく、権力を盾にすることを躊躇ちゅうちょしない」

まあ、アレックスと一緒にいれば、その悪辣《あくらつ》さを目にすることはいくらでもあっただろうね。

ふとクラウス殿下が尋ねてきた。

「今回のアレックスが、どのような処罰を受けるか……知っているか?」

「はい。とある監獄へ収監されるそうですわね」

「聞いていたか。母上があそこまでお怒りになるとは、よほどのことだ」

王族が監獄送りになるというのは、異例の事態。

貴族社会に、かん口令が敷かれているので、一部の人間しか知らない話だ。

「もしかすると、女王陛下はアレックスを次期国王じきこくおうとしてお認めにならないかもしれませんわ」

と私は推測を述べた。

たとえ、かんこうれいいていても、人の口に戸は立てられない。

前科者の第一王子……というステータスは、永遠について回る。

それがわかっていて、女王が監獄かんごくおくりをもうわたしたということは……アレックスへの王位継承を考えていないのかもしれない。

「クラウス殿下からすれば、ある意味、たなぼたですわね。わたくしもアレックスより、殿下のほうが国王に向いていると思いますもの」

「……私は、王になどなるつもりはないのだが」

クラウス殿下は、本当にうんざりしてそうな顔である。

私は苦笑しながら言った。

「少なくとも、アレックスが王となっても混乱がもたらされるだけでしょう。……ですから、お覚悟はなさっておいたほうがよろしいのではなくて?」

クラウス殿下はため息をついていた。

そして話を切り替えるように告げた。

「しかし……それだけアレックスに手厳しい意見を述べるぐらいだから、君がアレックスに婚約破棄を突きつけたというのは、事実のようだな」

「はい、事実ですわ。アレックス本人に直接伝えたわけではなく、ミジェラ女王に具申ぐしんした形ですが」

「そうか。まあ、婚約破棄は当然だろう。私も、君の決断を支持しよう」

「……ありがとうございます」

と私は礼を述べた。

婚約破棄に関しては、良くも悪くも、政治の勢力図が変わる。

今回の婚約破棄をって、私やミアストーン家と敵対する勢力もいるだろう。

だから支持してくれる味方は多いほうがいい。

特にクラウス殿下のような、まさに王家の中の人間とは、仲良くしておきたいところである。
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