458 / 517
第8章457話:レオン
しおりを挟む学生窓口へとやってきた。
私は窓口にいた職員に、復学届を提出した。
復学が無事に受理される。
そして職員から、復学後に受講する講義を決めておくようにと言われた。
講義か……
嫌いじゃない講義も多いのだが、単位をしっかり確保しようとすると、受けたくもない講義を受けなければならない。
それは面倒だ。
またデュアラリー試験を受けて、単位をパスしてもいいかもね。
学生窓口を立ち去る。
ティールームのある【個室棟】へと向かう。
その途中。
ふと私たちの正面に、立ちはだかる人物がいた。
レオンである。
「よう」
とレオンは私に声をかけてきた。
「お久しぶりですわね」
「ああ」
とレオンがぶっきらぼうにあいづちを打つ。
レオンは告げる。
「以前、居酒屋であんたが俺に依頼をしただろ? 古鏡をとってこいって」
「そんなこともありましたわね」
ずいぶん前のことで忘れていたが、レオンには【ホーリスの森】にて古鏡を取ってくるように依頼したのだ。
レオンは古鏡を無事に取ってきたが、私は古鏡を受け取らず、そのままレオンに預かってもらうことにした。
さらに『定期的に古鏡を確認しなさい』とも伝えておいた。
なぜなら古鏡は、レオンを【聖剣士】へと覚醒させる効果があるからだ。
いずれ機が熟すと、古鏡は光りかがやき、レオンの内なる能力を目指めさせる。
そうすることでレオンは勇者たるチカラを得るのだ。
「あの古鏡……いきなり光りだしてな。そのあと、俺は不思議な力を得た」
「……!」
私は目を見開く。
そして尋ねた。
「聖剣士になったということですの!?」
「聖剣士……というのか? とにかく、不思議な力だ。剣を振ってると光のオーラが出たり、聖属性のスキルが次々と使えるようになった」
間違いなく【聖剣士】だ。
聖剣士になると、通常攻撃時に低確率で聖属性が付与される。
剣を振っていると光のオーラが出る――――というのは、まさに聖属性のエフェクトだろう。
「おめでとうございます。あなたは、類まれなる剣士の才能に目覚めたのですわ」
「そうなのか」
とレオンは応じる。
そして尋ねてくる。
「……あんた、わかってて俺に、古鏡を取りに行かせたのか?」
「さて、どうでしょうか」
と私は答えた。
レオンは特に追及してくることはなく、告げた。
「とにかく、このチカラを得てから、すこぶる調子が良い。冒険がはかどっている。だからあんたには感謝を伝えておきたくてな。……それだけだ」
そう言って、レオンは立ち去っていった。
私はその背中を静かに見送る。
――――ラクティアは聖巫女に目覚めた。
――――レオンも聖剣士に目覚めた。
ラスボスと戦う準備が、ようやく整った。
まだラスボスが現れるのはずいぶん先になるだろうが、いつ来ても大丈夫な状態にはなった。
「相変わらず、礼儀や言葉遣いがなっていない御仁ですね」
とマキが、レオンの去ったほうを見つめながらつぶやいていた。
私は苦笑しながら、告げた。
「さあ、ティールームへ向かいますわよ」
かくして私たち4人は歩みを再開した。
358
お気に入りに追加
3,360
あなたにおすすめの小説

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
向原 行人
ファンタジー
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。
とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。
こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。
土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど!
一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる