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第8章479話:ルーガの訪問2
しおりを挟む私は続けて、述べる。
「わたくしは、しばらく結婚などに惑わされず、自由に生きたいと考えておりますわ。政略結婚は、正直もうこりごりです」
今後、誰かと恋愛をすることがあったとしても、政略結婚だけは御免だと伝えておきたい。
……さすがに今の発言には、ルーガは肯定的ではなかったものの、最終的は以下のように述べた。
「まあ……もともと、お前とアレックスの仲は良くなかったようだしな。そう思っても仕方ないか」
ルーガは、アレックスがゼリスばかりにお熱だったことを知っている。
そのため私がヤキモキしたのだと勘違いしているようだ。
(ま、勘違いしていてもらったほうが都合がいいね)
私はアレックスの浮気じみた行動に激しく嫉妬し、その嫉妬に疲れていた……というシナリオでいこう。
そうして政略結婚にトラウマを覚えたということにすれば、父上も今後、結婚の話は持ち出しにくくなるだろう。
「まあ、結婚の話については、このぐらいにしておこう」
とルーガは告げて、話題を変えてきた。
「今日はもう一つ、お前に話があったのだ」
「なんでしょう?」
「……実は、隣国であるダルリス帝国の動向が、きな臭くなってきている。わが国に敵対的な行動を取るようになってきているのだ」
ダルリス帝国……
なかなか大きい中堅国家である。
私は尋ねた。
「つまり……また戦争が起こりかねないと?」
「可能性はある。クランネル王国はジルフィンドに勝利したことで、得られるものも大きかったが、しばらくは国力が弱っている。回復するまでの間、諸外国からすれば付け入るチャンスでもある」
戦争は勝っても負けても国力は消費する。
一番大きいのは兵士が戦死したことで、単純に戦力が減ることだ。
クランネル王国は戦争が終わって、まだ一年も経っていない。
戦争によって疲弊したクランネル王国を叩くなら今だ……と思う勢力があってもおかしくない。
「もしかすると、またお前にも指揮を執ってもらうかもしれない。それは覚悟しておいてほしい」
「わかりました。もちろん戦場に立つことに否はありませんので、いつでも頼ってくださいませ」
「ああ。頼りにしている」
ルーガはそう告げて、微笑んだ。
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