476 / 593
第8章475話:商売について、アリアと
しおりを挟む
<ルチル視点>
王都。
屋敷にて。
私はしばらく学園には通わず、ダラダラと過ごすことにした。
しかし、そんな私のもとへ、さまざまな人物が訪問してくることになった。
一番最初に訪れたのはアリアである。
とりあえず2階のリビングへと通す。
椅子に座って、お茶を手に、二人で話を始める。
アリアはどうやら商売に関して、いくつかの現状報告をおこないに来たらしい。
ちょうどよい、と私は思った。
私もアリアに話したいことがあったからだ。
1つはメイルデント鉱山の件。
1つは元辺境伯領に商品を卸す件。
以上の二つについて、アリアに伝えることにした。
「――――というわけで、メイルデント鉱山の件に、一枚噛んでもらいたいのですわ。また辺境伯領には、マヨネーズやシャンプーなどの物品を卸し、交易を活性化させていただきたいんですの」
「なるほど。委細、承知いたしました」
とアリアが応じる。
私は告げる。
「領主として出来るサポートはさせていただきますわ――――と言いたいところですが、わたくしはもう領主ではありません。商売において領主の力を借りたい場合、フランチェスカを頼ってくださいませ」
「はい。……それにしても」
とアリアは前置きしてから告げた。
「領主と商会、どちらもルチル様がトップということは、ルチル領の政治も経済も、完全に掌握していることになりますね。いえ、それだけではありません。元大公領を含むルチル領は、ジルフィンドの中枢でもありますから、実質的にはジルフィンド全体をコントロールする立場にあるといえます」
「大げさな言い方……とは言えませんわね。今でも一番ヒトが集まってくるのは元大公領ですもの」
「はい。これはもう、ルチル商会がジルフィンド地方を完全制圧するしかありませんね」
とアリアが意気込んだ。
しかし、私は警告する。
「確かに、ルチル商会は、やろうと思えばジルフィンド地方でいくらでもお金儲けができるでしょう。しかし、一人勝ちはいけませんわよ」
「ダメなのですか?」
「経済の基本は、循環ですわ。しかし一人勝ちをする商会というのは、その循環をせき止めてしまい、経済全体に悪影響を与えてしまいますの」
「ふむ」
「自分たちだけ儲ければいいという考えを、中小商会が持つぶんには構わないのですが、ルチル商会のような大手がそれをやってしまうと、弊害のほうが大きいです。ですから、経済の自然な循環の中で、適度に稼ぐことを意識してください」
ルチル商会は、ジルフィンドの経済全体に影響を与える存在になっていく。
だとしたら、ルチル商会の儲けばかりでなく、経済への影響も考えながら商売をやっていかなければならない。
あと単純に、富の過剰な一極集中は、恨みも買うからね。
「なるほど。ご慧眼、感服いたしました。今のお言葉を、肝に銘じます」
「ええ。よろしくお願いいたしますわ」
話がひと段落する。
あとは従業員の募集や、販売計画に関する、細かい話し合いなどをするのだった。
王都。
屋敷にて。
私はしばらく学園には通わず、ダラダラと過ごすことにした。
しかし、そんな私のもとへ、さまざまな人物が訪問してくることになった。
一番最初に訪れたのはアリアである。
とりあえず2階のリビングへと通す。
椅子に座って、お茶を手に、二人で話を始める。
アリアはどうやら商売に関して、いくつかの現状報告をおこないに来たらしい。
ちょうどよい、と私は思った。
私もアリアに話したいことがあったからだ。
1つはメイルデント鉱山の件。
1つは元辺境伯領に商品を卸す件。
以上の二つについて、アリアに伝えることにした。
「――――というわけで、メイルデント鉱山の件に、一枚噛んでもらいたいのですわ。また辺境伯領には、マヨネーズやシャンプーなどの物品を卸し、交易を活性化させていただきたいんですの」
「なるほど。委細、承知いたしました」
とアリアが応じる。
私は告げる。
「領主として出来るサポートはさせていただきますわ――――と言いたいところですが、わたくしはもう領主ではありません。商売において領主の力を借りたい場合、フランチェスカを頼ってくださいませ」
「はい。……それにしても」
とアリアは前置きしてから告げた。
「領主と商会、どちらもルチル様がトップということは、ルチル領の政治も経済も、完全に掌握していることになりますね。いえ、それだけではありません。元大公領を含むルチル領は、ジルフィンドの中枢でもありますから、実質的にはジルフィンド全体をコントロールする立場にあるといえます」
「大げさな言い方……とは言えませんわね。今でも一番ヒトが集まってくるのは元大公領ですもの」
「はい。これはもう、ルチル商会がジルフィンド地方を完全制圧するしかありませんね」
とアリアが意気込んだ。
しかし、私は警告する。
「確かに、ルチル商会は、やろうと思えばジルフィンド地方でいくらでもお金儲けができるでしょう。しかし、一人勝ちはいけませんわよ」
「ダメなのですか?」
「経済の基本は、循環ですわ。しかし一人勝ちをする商会というのは、その循環をせき止めてしまい、経済全体に悪影響を与えてしまいますの」
「ふむ」
「自分たちだけ儲ければいいという考えを、中小商会が持つぶんには構わないのですが、ルチル商会のような大手がそれをやってしまうと、弊害のほうが大きいです。ですから、経済の自然な循環の中で、適度に稼ぐことを意識してください」
ルチル商会は、ジルフィンドの経済全体に影響を与える存在になっていく。
だとしたら、ルチル商会の儲けばかりでなく、経済への影響も考えながら商売をやっていかなければならない。
あと単純に、富の過剰な一極集中は、恨みも買うからね。
「なるほど。ご慧眼、感服いたしました。今のお言葉を、肝に銘じます」
「ええ。よろしくお願いいたしますわ」
話がひと段落する。
あとは従業員の募集や、販売計画に関する、細かい話し合いなどをするのだった。
398
お気に入りに追加
3,376
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる