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第7章445話:領地26
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「もちろん、鉱山資源の問題が解決しても、つるはしの販売計画を停止する必要はありませんわ。どちらも同時並行で出来ますもの」
「た、たしかに、それが叶うのであれば、願ってもないことですが……極めて危険なことです。第5層は、Aランク冒険者でも踏破できなかったフロアですよ。攻略するにしても、別の方に任せるべきで、ルチル様ご自身が潜るのは、おやめになったほうが……」
ごもっともな意見だ。
領主である私が乗り込んで、もしものことがあったら、多方面に迷惑がかかる。
しかし。
「市長。クランネル王国では、上に立つ者ほど、進んで無茶をするものですわ」
貴族は最前線で戦い、戦果を挙げなければならない――――そこで敗北する者など、貴族にふさわしくない。
これがクランネル王国に通底する精神だ。
めちゃくちゃな理論ではあるが、私は嫌いじゃない。
なぜなら、私が冒険したいときに、この精神論を盾にできるからだ。
「というわけで、第5層の攻略をおこないたいと思います」
と私は再度、明言した。
かくして、私たちは鉱山に入る。
案内は市長に任せることにした。
とりあえず第1層。
ここは狭く、作業用の道具が多数、置かれている。
第1層の一番奥から、2層へと降りた。
途中、採掘作業に励む鉱夫たちの姿があった。
それを横目に、私たちは下へ続く階段を降りていく。
やがて。
第4層の最奥までやってきた。
ボス部屋とおぼしき広い空間。
その一番奥の壁に、下へと続く階段があった。
階段の入り口には、縄が張られ、立ち入り禁止の看板が置かれている。
市長が説明した。
「あの階段から第5層へとゆくことができます。危険なので、現在ご覧のとおり、立ち入り禁止としています」
「なるほど、ここから5層に……」
私は納得した。
視察はいったん中断することになるが……
まあ、なるべく早く終わらせられる錬金アイテムがある。
それを作って使えば、今日中の攻略も可能であろう。
「た、たしかに、それが叶うのであれば、願ってもないことですが……極めて危険なことです。第5層は、Aランク冒険者でも踏破できなかったフロアですよ。攻略するにしても、別の方に任せるべきで、ルチル様ご自身が潜るのは、おやめになったほうが……」
ごもっともな意見だ。
領主である私が乗り込んで、もしものことがあったら、多方面に迷惑がかかる。
しかし。
「市長。クランネル王国では、上に立つ者ほど、進んで無茶をするものですわ」
貴族は最前線で戦い、戦果を挙げなければならない――――そこで敗北する者など、貴族にふさわしくない。
これがクランネル王国に通底する精神だ。
めちゃくちゃな理論ではあるが、私は嫌いじゃない。
なぜなら、私が冒険したいときに、この精神論を盾にできるからだ。
「というわけで、第5層の攻略をおこないたいと思います」
と私は再度、明言した。
かくして、私たちは鉱山に入る。
案内は市長に任せることにした。
とりあえず第1層。
ここは狭く、作業用の道具が多数、置かれている。
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途中、採掘作業に励む鉱夫たちの姿があった。
それを横目に、私たちは下へ続く階段を降りていく。
やがて。
第4層の最奥までやってきた。
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その一番奥の壁に、下へと続く階段があった。
階段の入り口には、縄が張られ、立ち入り禁止の看板が置かれている。
市長が説明した。
「あの階段から第5層へとゆくことができます。危険なので、現在ご覧のとおり、立ち入り禁止としています」
「なるほど、ここから5層に……」
私は納得した。
視察はいったん中断することになるが……
まあ、なるべく早く終わらせられる錬金アイテムがある。
それを作って使えば、今日中の攻略も可能であろう。
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