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第7章438話:領地19
しおりを挟むするとフランカが尋ねてきた。
「領都から視察……ではないんですね?」
「まあ、領都は私のお膝元ですもの。領都の有力者たちとは既に挨拶を済ませておりますし」
実は、今日に至るまで、領都に滞在している有力者たちは、新領主である私のもとへ挨拶にやってきていた。
既に、領都をどう改革していくかは、ある程度、話がついている。
だから副都から巡っていくのは妥当な順路だ。
そのときエドゥアルトが告げる。
「それにしても、こうして領主としてルチル様が、民を治められるお姿を見ると、専属騎士として、とても誉れ高く思います」
私は肩をすくめて答えた。
「……まあ領主といっても、この視察が終わるころには、フランチェスカに代官を任せるつもりですけれどね」
私が領主として公務に励む日々は長くない。
年明けごろにはフランチェスカに全てを移譲して、私はまた、のんびりと学園のティールームでお茶をする生活に戻るだろう。
(学園は公欠を取っているから、成績には響かないけど、さすがにそろそろ戻りたいからね)
クランネルとジルフィンドの戦争があってから、ずっと学園には通えていない。
公欠が有効なので、単位などは問題ないにしても、あまりに学生生活から離れすぎるのも良くない気がする。
だから視察が終わったら、少しずつ学園に通い始めるつもりだ。
馬車が領都を出る。
街道を走り始める馬車。
窓の外には草原が広がる。
そのまま数日かけて、馬車を走らせ……
副都メイルデントのすぐ手前までたどり着いた。
崖の上から馬車を下りて、広がるメイルデントの都市を見晴らす。
メイルデントは岩石地帯の中心に存在しており、山のなだらかな斜面に沿って都市が作られている。
山の一番高いところにまで、青い屋根の家々が立ち並んでいる。
「とても良い景色ですね」
と馬車から下りたフランカが告げた。
山の断崖の上から見晴らすメイルデントの景色は、まさしく絵に描いたような絶景だ。
写真に撮って保存したくなるような気分である。
「ここの市長と会合をするご予定なんですよね」
とエドゥアルトが尋ねてきた。
私はうなずきつつ、答える。
「ええ。メイルデントは、鉱山からさまざまな鉱石を採掘して販売する、いわば【鉱山都市】として栄えてきた街ですが、最近は鉱山資源の産出量が、低減してきておりますの。その件に関して、副都の市長と話し合うつもりですわ」
この鉱山資源の減少問題については、戦争のせいでより加速してしまった面もある。
戦争に使う道具の生産に、大量の鉱石を消費したからである。
なるべくすぐに対応策を考えて、講じなければならない課題だ。
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