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第6章381話:復唱2

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ベアール将軍が叫ぶ。

「見ろジルフィンド軍!! お前たちの英雄、ナナバールが死んだぞ!!」

部下の兵士たちも復唱する。

「「「「ナナバールが死んだぞ! ナナバールが死んだぞ! ナナバールが死んだぞ!」」」」

将軍ナナバール。

ジルフィンド軍を何度も勝利へと導いてきた英雄。

その戦死がもたらす衝撃は、ジルフィンド兵の心を容赦なく折っていく。

クランネル軍は何度も何度も、ナナバールの死を連呼する。

戦いながら、クランネル兵たちはジルフィンド兵に言い聞かせる。




「はははは! お前たちの英雄は死んだぞ!!」

「何度でも言ってやるよ!! ナナバールは死んだ!!」

「英雄ナナバールは戦死! 英雄ナナバールは戦死!」

「ナナバールが討ち死にだぁあああ!!!」

「俺たちのうしろを見ろ!! ベアール様が、ナナバールの首をかかげてるぜ!!! ぎゃははははは!」




ナナバールが死んだことで、クランネル兵たちの士気がぐんぐん上がっていく。

逆に、英雄を失ったことで、ジルフィンド兵たちの士気は壊滅的だ。

「そ、そんな……ナナバール様が」

「ジルフィンドの英雄が……負けるなんて……」

ナナバールが死んでも、まだ兵数へいすうはジルフィンド軍の上であるが……

それを有効に指揮できる将軍たちも、みな、戦死している。

ゆえにジルフィンド兵たちは、恐怖と混乱と敗戦の予感に、少しずつ戦意を喪失し……

武器を捨てて、逃亡を始める者が続出ぞくしゅつした。

「逃がすな!」

とベアール将軍は命じる。

「クランネルの地をらした不届ふとどものは、国の果てまで追いかけて虐殺ぎゃくさつせよ!」

「「「「オオオオオオオォォォォォォー!!!」」」」

歓声が爆発する。

クランネル兵たちが意気揚々いきようようとジルフィンド軍に襲いかかる。

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