上 下
335 / 578

第6章336話:ナナバール視点

しおりを挟む
<ナナバール視点>

ジルフィンド本陣。

天幕テントの中。

ナナバールたちのもとへ、伝令兵たちが次々とやってきていた。

報告がおこなわれる。



「ジルフィンド第五軍だいごぐん一部隊いちぶたいが、奇襲を受け、壊滅!」

「魔法銃撃隊によって、ジルフィンド第七軍が多大な被害を受けております!

「ジルフィンド第八軍、三班、四班が壊滅。五班についても、負傷者が多数! 援軍の要請が出ております!」



明るいしらせはない。

どれもこれも被害報告ばかり。

ナナバールは報告を聞きながら、こめかみに青筋を浮かべた。

「何が起こっている!!?」

怒声をあげるナナバール。

伝令兵の一人が答える。

「も、申し上げた通り、クランネル軍の魔法銃撃隊による攻撃を受けて――――」

「ああそれはわかった! だが何故、魔法銃撃隊と交戦しているんだ!? 奇襲とは何だ? どこから連中は現れた!? それを答えろ!」

怒鳴り声に、伝令兵はビビりながら述べる。

「ま、魔法銃撃隊は、フロヴィッツ峡谷に存在する抜け道を通って、奇襲をおこなっている模様です!」

「抜け道だと?」

「は、はい。どうやら洞穴どうけつや、表には見えない通路などが存在しているようで……」

「……!」

ナナバールは驚愕に目を見開く。

ヒズナル将軍が口を挟んで、尋ねた。

「ルチル・ミアストーンは、その通路の場所を把握しているというのか!?」

「ど、どうやらその様子です!」

伝令兵が答えた。

ナナバールもヒズナルも冷や汗をかいていた。

フロヴィッツ峡谷は、魔法銃を運用するには不向きな地形。

さらにナナバールが考えた天才的な配置によって、魔法銃を完封できるはずだった。

ところが……

ルチルは、隠し通路を利用することで、その不利を打ち破ろうとしている。

このままではジルフィンド軍は士気は大幅に下がり、やがて総崩そうくずれとなる。

フロヴィッツ草原でのいくさと同様に、大敗たいはいきっしかねない。

「さ、さらに、ルチル・ミアストーンは新型武器を投入した模様です!」

「な、なんだと」

ナナバールが青ざめた。

密偵みっていが持ち帰った情報によると、クランネル軍はソレを【魔法爆弾】と呼んでいたそうで」

「魔法爆弾……」

伝令兵が、爆弾の特徴を報告する。

ナナバールとヒズナルは戦慄せんりつした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

処理中です...