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第6章287話:ヒズナル・ナナバール視点

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<ヒズナル・ナナバール視点>

一方。

ジルフィンド本軍。

小高い丘の上から、戦場を眺める二人。

ヒズナル将軍と、ナナバール将軍である。

彼らは、勝利を微塵みじんも疑っていない、強気な表情を浮かべていた。

「野戦を仕掛けただけでも愚かだというのに」

とヒズナルは前置きしてから、告げた。

「わがジルフィンド軍の最精鋭、第一軍、第二軍に兵士をぶつけるとは……いやはや、相手がここまで愚鈍ぐどんだと、少し拍子抜けだな」

「そうですね。あのミアストーン総司令官の娘さんと聞きましたから、もう少し歯ごたえがある相手かと思いましたが……」

ナナバールは笑いながら言った。

「とんだ無能。戦下手いくさべた……ヒズナル将軍のおっしゃるとおり、拍子抜けですよ」

「……お前の目から見ても、勝利は確実か?」

「ええ。敗北の要素など、万に一つもありません」

ナナバールは一拍置いてから、説明する。

「これだけ兵数差へいすうさがあるなら、ジルフィンド軍は正面衝突で勝てます。一方、クランネル軍は、劣勢を打開するために奇策を打たなければいけない」

強者はただ正面から踏み潰せばよい。

一方、弱者はからめ手を使って、どこかで盤面をひっくり返さなければならない。

兵法の常識である。

「しかしクランネル軍が取った行動は、ジルフィンド軍との正面衝突。しかもジルフィンド第一軍・第二軍という、一番硬い部分への突撃です。正気とは思えない戦術ですね。せめて弓兵ゆみへい魔法兵まほうへいを効果的に使って、ヒットアンドアウェイを狙うなど――――頭を使うべきでしょうに」

「やはり奇襲や奇策はない……と?」

「ない、というより、それができる余地はあるでしょうか?」

とナナバールは疑問を呈した。
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