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第5章243話:食事3

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私は慌てて口を挟んだ。

「その必要はございませんわ」

「ん……」

「わたくしにとってゼリスは、取るに足らない相手ですもの。決闘のときの彼女は、それはそれはひどいものでした。あのような方ならば、むしろ、いてくれたほうが都合が良いこともありますわ」

私の言葉に、父上は少し考えるような顔をした。

私は今、言外に、こう告げたのだ。

『ゼリスは、都合のいい引き立て役だから、このまま泳がせたほうがよい』

と。

すると父上は、こう考えるだろう。

『ゼリスが無様をさらせば、相対的に、ルチルの価値は上がる』

『もしアレックスがルチルを切り捨ててゼリスを選ぼうとすれば、その不義理を理由に、ミアストーン家は王家に対して優位に立てる』

『アレックスとゼリスが暴れるぶんには、ミアストーン家が損をすることはない』

と。

ややあって父上は言った。

「わかった。ゼリスに干渉はしないでおこう。だが……足元をすくわれるようなことはするなよ?」

「もちろんですわ」

と、私は答えた。

そのとき。

父上は新しい話題を振ってきた。

「ああ、そうそう。お前に話すべきことがあったのだ」

「……? なんですの?」

「お前に兵隊を授けようと思っている」

「兵隊?」

私は首をかしげる。

「お前にも、兵士を束ねる経験を積ませておきたいと思ってな」

父上は言う。

「お前はいずれ国を背負う王妃となるのだから、リーダーシップを磨くことも重要であるし、王族は、軍を動かす実力があったほうがいい」

ふむ。

まあ、王族は通常、軍総司令官ぐんそうしれいかんと並ぶ、軍のツートップだからね。

王が戦争の指揮を執ることも、異世界ではザラにある。

今のうちに、その経験をさせておこうというのが、父上の狙いか。

私はアレックスと破局する予定なので、王妃になるつもりはないが、現段階では、次期王妃を目指すフリをしておくべきだろう。

それに。

(自分が好きにできる兵隊を、いつか持ちたいと思ってたからね)

戦争の多い異世界。

いざというときに動かせる、自分だけの部隊が欲しいと考えていた。

なので、私は、父上の話を承諾することにした。
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