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第4章201話:アレックス視点4
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「……何?」
「だって、そうじゃないですか。殿下を差し置いて、自分ばかり目立とうとするなんて。婚約者として、配慮が足りていないと思います!」
「……!」
アレックスは驚愕した。
今まで、王族に取り入りたくて、とりつくろった言葉を投げかけてくる者はいくらでもいた。
しかし。
そんな連中でも、ルチルを堂々と批判するような言葉を、口にした者はいなかった。
なにしろ、ルチルは公爵令嬢だ。
軍の名家、ミアストーンの肩書きを持っている。
そんな相手に陰口をたたいたことがバレたら、貴族社会では居場所を失う覚悟もしなければならない。
ルチルと対峙できるのは、王族か……もしくは公爵令嬢ルビーロッドのように、ルチルと同格の地位を持つ者だけだ。
だから子爵令嬢でありながら、ルチルを「ひどいお方だ」とハッキリ明言したゼリスに、アレックスは新鮮さを感じた。
ゼリスは、本当の意味で、アレックスの味方をしてくれているのだと、そう思った。
「お前……ゼリスと言ったな?」
「はい」
「名を覚えておく。明日も、この時間にここに来い。また、話をしよう」
「……! はい! 必ず、ここに参ります!」
「約束だぞ」
アレックスは微笑む。
久しぶりにアレックスは、心から笑えたように思った。
「だって、そうじゃないですか。殿下を差し置いて、自分ばかり目立とうとするなんて。婚約者として、配慮が足りていないと思います!」
「……!」
アレックスは驚愕した。
今まで、王族に取り入りたくて、とりつくろった言葉を投げかけてくる者はいくらでもいた。
しかし。
そんな連中でも、ルチルを堂々と批判するような言葉を、口にした者はいなかった。
なにしろ、ルチルは公爵令嬢だ。
軍の名家、ミアストーンの肩書きを持っている。
そんな相手に陰口をたたいたことがバレたら、貴族社会では居場所を失う覚悟もしなければならない。
ルチルと対峙できるのは、王族か……もしくは公爵令嬢ルビーロッドのように、ルチルと同格の地位を持つ者だけだ。
だから子爵令嬢でありながら、ルチルを「ひどいお方だ」とハッキリ明言したゼリスに、アレックスは新鮮さを感じた。
ゼリスは、本当の意味で、アレックスの味方をしてくれているのだと、そう思った。
「お前……ゼリスと言ったな?」
「はい」
「名を覚えておく。明日も、この時間にここに来い。また、話をしよう」
「……! はい! 必ず、ここに参ります!」
「約束だぞ」
アレックスは微笑む。
久しぶりにアレックスは、心から笑えたように思った。
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