グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)

文字の大きさ
上 下
172 / 517

第3章172話:部屋

しおりを挟む
「まぁ帰してやりたくても、転移魔法を使える魔法師がおらんからな。なんせお主らをこの世界に転移する時に、八人いた魔法師のうち四人が、魔力切れを起こし死んだ。生き残った残り四人も今も瀕死状態じゃ」

 なんだって!? 俺たちをこの世界に転移させるために、魔法師が死んだだと!?

 そんなリスクを犯してまで、この国は召喚師が欲しかったのか?

「分かるか? なのにこんなポンコツが来おって」

 驚いている俺に、お前のせいだとでも言っている様に、爺さんが俺をみる。

 俺のせいみたいに見るな! 
 俺はこんな世界に来たくて、来たんじゃないんだからな!

「まぁ魔法師が生きていたとしても、帰してやる事など出来んがの?」
「はぁ?!」
「じゃってお主らの世界など知らんからの。どこに帰していいか分からんわ。あははは」

 そう言って爺さんが、声を荒げて楽しそうに笑うが、全く笑えねーよ? 

 何が楽しんだよ?

 人を馬鹿にするのも大概にしろよ?

「ああそうじゃのう? 魔力があれば魔法師にでもして使ってやるか」
 
 爺さんがそう言うと、奥から丸い玉を持った青いローブを羽織った男が、俺に向かって歩いて来た。
 何だろう? 嫌な予感しかしないんだが?

「さあその水晶に触れ、お前の魔力数値を測って貰うといい」
「え? これに?」

 躊躇していると、俺に向かって水晶を押し付けてきた。

「この魔力測定装置の上に手をかざしてください」
「え? 手を?」

 なかなか触れないでいると、俺の事なんか無視して、水晶を持って来た男が勝手に右手を取り、丸い球に乗せた。

 少しの沈黙の後。

「なんと……これはっ、ブッッッ」

 俺を測定した男が結果を見て吹いた。

「こいつ魔力なしですよ! 測定不可能なんて書いてあるの初めて見ました! 下民でさえ十~二十程度の少しの魔力はあると言うのに……プクク」
「なっ!? 魔力なし!? 此奴はポンのコツで魔力もないと!?」
「これじゃあ此奴を呼び寄せるために死んでいった魔法師が報われん」

 爺さん達の会話を聞いた会場にいた奴らまで、俺をバカにしたように嘲笑う。

 何、勝手なことを言ってるんだ? 

 俺はこの国に召喚してほしいなんて、一言も言った覚えねーからな?
 なんでこんなにバカにされないといけねーんだよ!

「まさかポンコツ以下とはのう。魔法師を呼べ!」
「はっ!」

 爺さんが魔法師を呼べと手を上に上げると。
 奥から真っ黒のローブを羽織った男が歩いてきた。

「此奴に下民の紋を」
「分かりました」

 なんだ? 今何て言った? 下民の紋って聞こえたんだが!?

 男が何やら聞いた事のない呪文のような言葉を言うと……!!

「あぐっ!?」

 急に首が焼けるように熱い……まさかあの呪文は、俺に向けて言っていたのか?

「はっ、はぁ……」

 首が締め付けられる。

「よし紋が完成したな? お主はこれで一生下民じゃ! せいぜいワシらの為に生涯働け!」

 爺さんがいきなり俺を蹴り飛ばした。

「なっ、何するんだよ! あがっ」

 思わず殴り返そうとしたら、首に電気がビリリっと流れ、余りの痛みに顔が歪む。

「なっ?」

「ははは痛いじゃろう? お前の首には下民の紋が入ったのじゃよ。その紋がある限りお前ら下民は、我らに逆らうことなど出来ん」

 何だって!? そんなこと勝手に!? 

 だから俺をこの部屋に案内してくれたおっさん達が、下民は奴隷の様だと言っていたのか! 
 でもな? 奴隷のようだじゃなくて、これはもう奴隷だろうが!

「ではの? この場所から出て行け! ここはお前のような下民がくる場所ではないからの? グハハハ」

「イダっ!」

 俺は両腕を掴まれ乱暴に宴の広間から放り出された。

 バタンっとドアの閉まる音が聞こえる。

 くそ! くそ! 何だってんだよ。何でこんなことに。
 日本に帰してくれよ! まだまだ描きたい絵がいっぱいあるんだ。
 それなのに……。

 ふと足に描かれている琥珀が目に入る。

「はぁー琥珀。大変なことになっちまったぜ……」

 俺は琥珀が描かれた足を撫でながら、いつものように話しかける。

 すると琥珀が光り輝く……何だ!?

「眩しっ!」

 目が開けられないほどに眩しい光が落ち着くと

『やっとワレを呼んでくれまちたね? らんどーちゃま』

 なんとも間抜けな声が聞こえてきた。

★★★

次は朝6時に更新です。
しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...