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第2章88話:海岸

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カルッシャ海岸は、何もない浜辺だ。

カルッシャ海岸という地名も、ゲームにはあったが、この世界にあるかはわからない。

近くに街があるわけではない。

港があるわけでもない。

ただのフィールドである。

ひとけのない砂浜。

正面を海、背面を山と森に囲まれた海岸。

海は静かだ。

海鳥うみどりの鳴く声が穏やかに聞こえてくる。

あるかなきかの潮風しおかぜと、潮騒しおさいの旋律。

寂寥感せきりょうかんさえ感じさせるような……そんな浜辺であった。

そしてここに、とある魔物が現れるはずなのだが。

(うーん、いないっぽいね)

必ず出現するわけではない。

確率がランダムなのだ。

今は、どうやら出現していないようだ。

「ここが目的地なのですよね?」

エドゥアルトが聞いてきた。

私はうなずく。

「そうですわ。ここに人型の魔物が現れるはずなのですが」

「それらしき姿はありませんね」

エドゥアルトがぐるりと周囲を見渡しながら、言った。

一方、フランカは視線をじっと海に向けていた。

物憂ものうげな目をしている。

「これが海、ですか……すごいですね。ずっと向こうまで続いていて、果てが見えません」

「そういえばフランカは、海を見るのが初めてなんですわよね」

「はい。本で読んだことはありますが、実物を見るのは初めてです」

フランカは砂浜に立って、茫洋ぼうようとした海を眺めた。

私とエドゥアルトもそれにつられて、静かに海を見つめる。

寄せては返す波の音。

心が洗われていくようである。

……と。

そのときだった。

「……!」

ふいに気配を感じた。

砂浜の向こうから、何者かが近づいてくる。

――――全身を禍々まがまがしい鎧に包んだ戦士。

大剣を背中に掲げ、砂浜を悠然と歩いている。

こいつだ。

私が探していた相手は。



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