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第2章59話:滝

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やがて昼も過ぎたころ。

目的地の滝にたどり着く。

崖の上からザワザワと音を立てながら、滂沱ぼうだの水が流れ落ちている。

滝つぼの水も澄んでいて、水底が透き通って見えるほどだ。

「へえ……こんなところに滝があったんですね」

フランカが感嘆していた。

エドゥアルトが滝つぼを見ながらつぶやく。

「そこそこ大きな魚もいますね。50センチぐらいでしょうか。獲ったら良い食料になりそうですが」

ソレに対して、フランカが首をかしげて言った。

「これ以上、食料って必要でしょうか。ウルフなどの肉が大量に余っていると思いますが」

「それはそうですが、魚も欲しいと思いませんか?」

エドゥアルトの言葉には、どこか気迫が乗っていた。

魚が好物なのかもしれない。

私は苦笑して言う。

「だったら何匹か捕獲しますか。と、その前にわたくしは用事を済ませてきますわね」

するとフランカが尋ねてくる。

「用事ですか。何をなされるので?」

「あの滝の裏にスキル石があるのですわ」

「え、そうなんですか?」

「はい」

答えると、エドゥアルトが怪訝そうに聞いてきた。

「なるほど、それが目的でここに来たんですね。でも、よく滝の裏にスキル石があるとわかりましたね?」

「ギクッ」

「何か事前に調べる方法でもあるんですか?」

「えーと、それはそのっ、占い師ですの! 公爵家には、優秀な占い師のツテがあるのですわ!」

私はとっさに言い訳を述べた。

公爵家に大手の占い師のツテがあるのは本当だ。

ただ、さすがにスキル石の場所を予言するほどではないが……

(まあ、ゲーム知識だなんて正直に言えないしね……)

「なるほど。占い師にまでツテがあるなんて、さすがミアストーン家ですね」

エドゥアルトが納得したように言ってくる。

ふう、よかった。誤魔化せた。

「で、では、スキル石を回収してきますわねっ」

私はそう言って、そそくさと滝の裏へ向かう。

そこで【耐寒スキル】のスキル石をゲットした。

さっそく使用し、スキルを習得する。

このスキルは、いわゆる【パッシブスキル】だ。

詠唱せずとも常時発動するタイプのスキルである。

ただしオン・オフの切り替えができるようだ。

オンの場合は耐寒アリ。

オフの場合は耐寒ナシ。

まあ、耐寒ナシのほうがいいという状況は少ない。

だからとりあえず、オンにしておけば間違いないだろう。



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