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第1章19話:アレックスの訪問
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シャンプーと同時に、トリートメントも開発した。
この二つの専門店を開店する。
場所は公爵領ではなく、王侯貴族が多く集まる王都。
その一等地である貴族街に開店し、取扱説明書つきで販売することにした。
まあ、実務面は全てアリアに任せたが……。
そうしていよいよ明日から販売。
と思ったときに……
どういうわけか、アレックス王子が私の屋敷にやってきた。
いったい何しにきたのか?
とりあえず応接室に通すと、アレックスは私に対して言った。
「お前、錬金術師になったんだとな」
ああ……
そのことか。
何を言われるのか察して、げんなりした。
要は笑いにきたのだろう。
まあ、殿下が私に会いにくるなんて、ろくな理由ではないのはわかっていたが。
「公爵令嬢のくせに錬金術師が適職とは、情けない」
予想通りの発言だった。
アレックスは続けた。
「ちなみに私の適性職は【大剣術家】だ。どうだ? 格の違いがわかったか? これからは私に対して敬意を持つことだな」
「生憎とわたくし、あなたには一生かけても敬意を持つことができそうにありませんわ」
はっきりと言ってやった。
するとアレックスは、当然のように激怒した。
「なんだと!? 貴様、今どれほど無礼な言葉を口にしたかわかっているのか!?」
どういうわけか、そこまで言ってからアレックスは、何かに気づいたように一度怒りを収めた。
そしていったん深呼吸し、嫌味な顔を浮かべた。
「ああ、なるほどな。わかったぞ。つまりお前、私に嫉妬しているんだろう?」
「はぁ?」
「まあ不遇職のお前から見たら、私のような適性職は喉から手が出るほど欲しいだろうな?」
「別にわたくし、錬金術師で満足しておりますが」
「ははっ! 強がらなくていいぞ? 錬金術師に何ができる? お前みたいな無能は、初級ポーションを作るのが関の山だろう」
「さて、それはどうでしょうか?」
ふふっ、と微笑む私。
私は心の底から錬金術師でよかったと思っている。
この世界では実現不可能かもしれないと思っていた、科学が行き届いた暮らしを実現できるかもしれないのだから……。
私が虚勢を張っているわけではないとわかったのだろう、アレックス殿下から嫌味な笑みが消える。
それから憤慨したように言った。
「とにかくお前は不遇職なのだ! 己の分をわきまえろ! この無礼者が!」
殿下の予想では、私がもっと悔しがると思っていたのだろう。
しかし、思いのほか元気にやっているのを見て、腹が立ったのだ。
私はコロコロと笑った。
「殿下はいったい、何をそんなにお怒りなのですか?」
「なんだと!?」
「わたくし、殿下に怒りを向けられる理由に心当たりがありませんの」
「理由だと! 何度も言っているだろう。お前は生意気なんだよ! 私より格下のくせに、どうして身分相応の言葉遣いができない!?」
「婚約者になれば対等ですもの。言いたいことは言いますわ」
「お前ごときと私が対等だと!? そういうところが気に入らないと言っているのだ!」
「あらあら……物分かりが悪い王子ですこと」
「私を愚弄する気か!?」
「別に愚弄したつもりはありませんが」
くすくす笑うと、王子は立ち上がった。
「もういい。お前が婚約者として最低の女だということはよくわかった!」
そしてきびすを返す。
「私はお前を愛さない。正室として迎えるだけだ。今後私には必要なとき以外関わるなよ。いいな!?」
そう吐き捨てて、足早に去っていった。
部屋の隅に控えていたメイド長が、呆れた様子で私に言ってくる。
「なんですか、今のは? 聞いていて不快な気分になったのですが……あれが第一王子ですか」
「ふふ、この国の未来が思いやられますわね」
「というかあの方、何しに屋敷へやってきたんですか? 特に用事があったようには見えませんが」
「わたくしを煽りにきたのではなくて? はた迷惑なことですわ」
ただ、アレと結婚するのは、やっぱり有り得ない。
いずれは破談に持ち込まなくては。
私は、改めてそのことを強く実感するのだった。
この二つの専門店を開店する。
場所は公爵領ではなく、王侯貴族が多く集まる王都。
その一等地である貴族街に開店し、取扱説明書つきで販売することにした。
まあ、実務面は全てアリアに任せたが……。
そうしていよいよ明日から販売。
と思ったときに……
どういうわけか、アレックス王子が私の屋敷にやってきた。
いったい何しにきたのか?
とりあえず応接室に通すと、アレックスは私に対して言った。
「お前、錬金術師になったんだとな」
ああ……
そのことか。
何を言われるのか察して、げんなりした。
要は笑いにきたのだろう。
まあ、殿下が私に会いにくるなんて、ろくな理由ではないのはわかっていたが。
「公爵令嬢のくせに錬金術師が適職とは、情けない」
予想通りの発言だった。
アレックスは続けた。
「ちなみに私の適性職は【大剣術家】だ。どうだ? 格の違いがわかったか? これからは私に対して敬意を持つことだな」
「生憎とわたくし、あなたには一生かけても敬意を持つことができそうにありませんわ」
はっきりと言ってやった。
するとアレックスは、当然のように激怒した。
「なんだと!? 貴様、今どれほど無礼な言葉を口にしたかわかっているのか!?」
どういうわけか、そこまで言ってからアレックスは、何かに気づいたように一度怒りを収めた。
そしていったん深呼吸し、嫌味な顔を浮かべた。
「ああ、なるほどな。わかったぞ。つまりお前、私に嫉妬しているんだろう?」
「はぁ?」
「まあ不遇職のお前から見たら、私のような適性職は喉から手が出るほど欲しいだろうな?」
「別にわたくし、錬金術師で満足しておりますが」
「ははっ! 強がらなくていいぞ? 錬金術師に何ができる? お前みたいな無能は、初級ポーションを作るのが関の山だろう」
「さて、それはどうでしょうか?」
ふふっ、と微笑む私。
私は心の底から錬金術師でよかったと思っている。
この世界では実現不可能かもしれないと思っていた、科学が行き届いた暮らしを実現できるかもしれないのだから……。
私が虚勢を張っているわけではないとわかったのだろう、アレックス殿下から嫌味な笑みが消える。
それから憤慨したように言った。
「とにかくお前は不遇職なのだ! 己の分をわきまえろ! この無礼者が!」
殿下の予想では、私がもっと悔しがると思っていたのだろう。
しかし、思いのほか元気にやっているのを見て、腹が立ったのだ。
私はコロコロと笑った。
「殿下はいったい、何をそんなにお怒りなのですか?」
「なんだと!?」
「わたくし、殿下に怒りを向けられる理由に心当たりがありませんの」
「理由だと! 何度も言っているだろう。お前は生意気なんだよ! 私より格下のくせに、どうして身分相応の言葉遣いができない!?」
「婚約者になれば対等ですもの。言いたいことは言いますわ」
「お前ごときと私が対等だと!? そういうところが気に入らないと言っているのだ!」
「あらあら……物分かりが悪い王子ですこと」
「私を愚弄する気か!?」
「別に愚弄したつもりはありませんが」
くすくす笑うと、王子は立ち上がった。
「もういい。お前が婚約者として最低の女だということはよくわかった!」
そしてきびすを返す。
「私はお前を愛さない。正室として迎えるだけだ。今後私には必要なとき以外関わるなよ。いいな!?」
そう吐き捨てて、足早に去っていった。
部屋の隅に控えていたメイド長が、呆れた様子で私に言ってくる。
「なんですか、今のは? 聞いていて不快な気分になったのですが……あれが第一王子ですか」
「ふふ、この国の未来が思いやられますわね」
「というかあの方、何しに屋敷へやってきたんですか? 特に用事があったようには見えませんが」
「わたくしを煽りにきたのではなくて? はた迷惑なことですわ」
ただ、アレと結婚するのは、やっぱり有り得ない。
いずれは破談に持ち込まなくては。
私は、改めてそのことを強く実感するのだった。
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