131 / 175
第4章130話:フクロウ2
しおりを挟む58-①
「……なるほど、そういう事ですか」
フリードの連続攻撃を躱しながらシルエッタは、そう呟いた。
……彼女は気付いた。影魔獣に命を吸われて、死ぬ寸前だった目の前の実験動物が突如として生気を取り戻した理由を。
「吸命剣の力ね……」
吸命剣・妖月は、斬った相手の生命力を吸い、使い手に注ぎ込む……先程、あの実験動物の少年は、私が召喚した影魔獣を妖月で刺した。
おそらく、妖月は突き刺した影魔獣の生命力を吸い取り、あの少年に注ぎ込んだはずだ。
……あの実験動物の体内に入り込んだ影魔獣も、宿主が死ねば自分も消えてしまう事くらいは本能的に理解しているはずだ。あの少年に巣食う影魔獣は、宿主の生命力の代わりに……妖月を通じて流れ込んできた生命力を餌として喰らったのだ。
そして、体内の影魔獣が宿主の生命力を喰らうのを止めた事によって、あの少年は元気を取り戻した……と、大方そんな所であろう。
「あら?」
フリードの攻撃をひらりと躱し続けていたシルエッタだったが、とうとう壁際まで追い詰められてしまった。
「追い詰めたぞ、シルエッタ!!」
恐竜型影魔獣、《黒王》の頭部と化したフリードの右拳が “グルル……” と低く唸る。
「おう、観念せぇコラァ!!」
「そうです、もう逃げられませんよ!!」
武光とナジミも包囲に加わった。
だが、シルエッタは微塵も焦る様子を見せず、静かに微笑んだ。
「な……何がおかしい!?」
「ふふ……今に分かりますよ」
武光とフリードがシルエッタに飛びかかろうとしたその時だった。
「隊長ーーー!!」
工房の入り口を固めていたはずのクレナ、ミナハ、キクチナの三人が大慌てで工房内に入ってきた。
「たたたた大変ですっ!!」
「どないした、クレナ!?」
慌てふためくクレナ達を見て、シルエッタはニコリと微笑んだ。
奴らは私を追い詰めたと思っているかもしれないが……それは違う。既にこの工房は……私の召喚した三十体もの影魔獣達によって完全に包囲されているのだ。ジワジワとなぶり殺しに──
だが、シルエッタの思考はクレナが発した言葉によって遮られた。
「て……天驚魔刃団です……天驚魔刃団が!!」
「「……は?」」
奇しくも、武光とシルエッタが同じタイミングで同じリアクションをした次の瞬間……
“バコーーーーーン!!”
工房の壁をぶち破って一つの影が飛び込んできた。
「お、お前は……!!」
「よう、本体!! 吸命剣・妖月……返してもらうぞッッッ!!」
影光が 現れた!!
66
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!


一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる