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第4章125話:チョコレートの家7

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さて、リビングに戻る。

キッチンの横に足を運ぶ。

キッチン横の通路の先には階段があり、二階に上がることができる。

私は、二階へと上がる。

二階には部屋が三つ存在する。

それぞれ、

私の部屋。

クレアベルの部屋。

アイリスの部屋。

……である。

私は、自室の扉を開ける。

自室に入る。

自室は、まあまあ広い部屋だ。

丈の低いテーブルを一つ。

ベッドを一つ。

サイドテーブルを一つ。

……などなどを家具として設置している。

「うん、良い部屋ですね」

と、私は感想をこぼした。

「私専用の部屋があるなんてすごい!」

山小屋では、アイリスと私は同じ部屋で寝泊まりしていた。

しかしチョコレート・ハウスでは、アイリスの部屋と、私の部屋は分離している。

クレアベルは苦笑する。

「ますます山小屋より快適に思えてしまうな」

まあ……それは否定しない。

そのときクレアベルは気づいたようにつぶやく。

「ただ……窓がないのか」

「……」

そう、チョコレート・ハウスに窓はない。

さすがに窓をチョコレートで作るのは無理だからだ。

ガラスの透明感は、チョコレートで再現できない。

……でも、やっぱり窓が欲しいよね。

窓がない家というのは、思ったよりも閉塞感へいそくかんがあるし。

クレアベルは述べる。

「いや、まあ不満があるわけではないぞ。ちょっと気になっただけだ」

「いいえ。窓も、作りたいと思っています」

「作れるのか?」

「……窓ガラスがあれば」

「ふむ。ならば今度、街に買いにいこう。私のポケットマネーで買ってやる」

「いいんですか?」

「ああ。生活するなら必要だもんな」

というわけで後日、窓ガラスを買いにいくことが決まった。

そのときアイリスが疑問を口にした。

「お姉ちゃん? さっきからずっと思ってたんだけど」

「ん、なんですか?」

「この家、全部チョコレートでできてるんだよね? じゃあ、この白い部分はなに?」

アイリスが壁のココアバター色を示唆してくる。

私がホワイトチョコレートを使えるようになったことを、二人はまだ知らない。

「実は、新しいチョコレートを生み出せるようになったんです」

「え、そうなの!?」

とアイリスは目を見開く。

「はい。これです」

私は右手の手のひらを仰向あおむけにして。

その手のひらの上に、星型のホワイトチョコレートを2つ生成する。

「わぁ! 白いチョコレートだあ!」

「食べていいですよ。お母さんもどうぞ」

「ああ。ありがとう」

アイリスとクレアベルが、ホワイトチョコレートを手に取る。

アイリスが口に運ぶ。

「ん~! 美味しい! 甘い!」

クレアベルは、しげしげとホワイトチョコレートを眺めてから、口に運んだ。

もぐもぐと食べる。

「うん、美味しい! 確かに、甘いな」

「ホワイトチョコレートは甘さ特化ですからね」

カカオマスの苦味が抜けたホワイトチョコレートは、チョコの甘味が全面に出るようになっている。

甘すぎて苦手な人もいるだろう。

私は、ホワイトチョコレートも大好きだが。
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