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第3章115話:制圧
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残り時間――8時間02分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
――――――――――――――――
ヒロユキは愛莉を人質にとって、二階のレストランにいた。護送車から逃げ出してからずっと飲まず食わずでいたので、腹が空いていたのだ。レストランならなにかしらの食べ物があるかもしれないと考えてのことだった。
「厨房に行って、なにか食えそうな物を探してこい」
ヒロユキは一番奥のイスにふんぞり返った姿勢で、愛莉に指示を出した。
「何様のつもり? あんたのお手伝いさんじゃないんだけど」
「そうだな。お前はお手伝いじゃなくて、オレの奴隷だからな」
「サイテー」
愛莉がバカにしたように棒読みで言った。
「撃ってもらいたいみたいだな」
ヒロユキは銃口を愛莉に向けた。引き金を少しだけ絞る仕草をすると、愛莉は顔を強張らせて、厨房の中に走っていった。
「けっ、はじめから言うこと訊きゃいいんだよ」
拳銃をテーブルの上にバンと音をたてて置いた。さっき瓜生に言われたことを思い出す。弾は残り四発しかない。これからは有効に使わないと、こちらがやられことになる。そういう事態だけは避けたかった。
人質のあの女をを上手く使うしかないな。
愛莉の消えた厨房の方を見た。これからのことを真剣に考えていたはずが、すぐに愛莉の後ろ姿を思い出して、顔がにやけてきた。
愛莉は自分からキャバ嬢だと言っていたが、実際のところ、顔は派手目で体のラインはセクシーで、水商売のニオイをプンプンさせていた。警察に逮捕されてからというもの、下半身を使う機会が一切なかったので、溜まるものが溜まっていた。
そうか、奴隷ってことは、オレの命令に従わせることが出来るんだよな。
たちまち卑猥な妄想が浮かんでくる。
「――これしかなかったわ」
愛莉が厨房から戻ってきた。缶コーヒーとスナック菓子が載った銀トレイを手にしている。
「ちぇっ、しけてんな」
ショボイ食事に思わず舌打ちが出てしまったが、ないよりはマシである。
「よし、こっちに持ってこい」
ヒロユキは横柄に言った。愛莉が無言のまま料理を運んでくる。
「ここに置け」
銃口でテーブルをコンコンと叩いた。
「金は持っているけど、性格は捻じ曲がっているオヤジ客と同じだね」
ヒロユキの傲慢な態度に、愛莉はすごく嫌そうな表情をした。
「キャバ嬢ならキャバ嬢らしく、客を楽しませる接客をしろよな。いつ客が怒るか分からないぜ」
ヒロユキは手にした拳銃をこれ見よがしに突きつけた。
「このゲームが終わったら、すぐにキャバ嬢なんてやめてやる」
「このゲームが終わるときまで、生きていられるとは限らないぜ」
ヒロユキが見下すように言うと、愛莉はキッと強い目で見返してきた。
いい表情をしやがるぜ。ますますコーフンしてきたな。でも、まずは腹ごしらえが先だ。食欲が満たされあとで、次は性欲を満たすとするか。
ヒロユキはスナック菓子を噛りながら、愛莉の全身を舐めるように見つめた。
ヒロユキの脳裏からは、すでに命を懸けたゲームのことは消えていた。今目の前にいる女の肉体のことで、頭の中は一杯だったのである。
ヒロユキの頭の中では、愛莉はもう全裸姿であった。
――――――――――――――――
ヒロユキが淫靡な妄想を膨らませていた頃、ヒロトは二階をくまなく調べまわっていた。足音を立てないように気をつけながら、ヒロユキの居場所を探す。
どうしてもヒロユキを捜しださなければならなかった。ヒロトもあのニュース速報を見るまでは分からなかったが、あの男は親友の仇だったのである。
親友のハルマは深夜のコンビニであの男――ヒロユキに難癖を付けられて、ケンカになり、いきなりナイフで刺されたのだ。
オレがもう少し早く着いていれば……。
その夜、ヒロトはハルマとコンビニで待ち合わせの約束をしていた。しかし、バイトの残業が入ってヒロトの到着は遅れてしまい、その間にハルマは事件に巻き込まれてしまった。
もしもヒロトが時間通りにコンビニに着いていたら、ヒロユキとのケンカに巻き込まれることはなかったかもしれない。
ハルマは今病院のベッドの上で、昏睡状態のまま眠ったきりである。
ヒロトはハルマを助ける為に、このゲームに参加したのだった。だが、犯人であるヒロユキがこのゲームに参加していると知った以上は、このままなにもせずにいることは出来なかった。
例えアイツが拳銃を持っていたとしても、このまま見過ごすわけにはいかねえよな。
ヒロトの心はもう決まっていた。一発でもいいからヒロユキを殴って、そしてその場で土下座をさせて、謝罪をさせるのだ。
ハルマ、お前の仇は絶対にうってやるからな。
ヒロトはヒロユキが隠れているレストランまで、もうすぐそこまで迫っていた。
――――――――――――――――
さきほどから愛莉はその視線の正体に気が付いていた。キャバクラで接客しているときに感じる視線と同じものである。
服の上から裸を想像している猥雑な視線。
この男も他の男たちと一緒なのだ。この状況下だというのに、エロにしか興味がないのだ。だったら、そこを上手く突いてやればいい。
この手のやり取りならば、キャバクラでイヤというくらいに経験している。自分の方に分がある。こんな男とセックスをするつもりなんてない。セックスの最中にデストラップが発動して、それで死んだとなったら死んでも死に切れない。
とにかくこの男とセックスをせずに、なおかつデストラップにかからないように逃げ出つつもりだった。
だが、問題がひとつある。この男の持っている拳銃だ。それをなんとかしないとならない。
「おい、なに睨んでるんだよ!」
ヒロユキの様子を観察していたらすごまれた。
「アタシだってお腹空いてるんだけど」
愛莉は当たり障りのないように注意しながら返答した。
「腹減ってんのか。へへ、そうだな。だったらオレの言うことを聞けよ。そうしたらメシぐらい好きに食わせてやってもいいぜ」
途端にヒロユキの顔にいやらしそうな笑みが浮かんだ。
「言うことって、なにを聞けばいいの?」
「簡単さ。そこのテーブルの上で横になれよ」
「横になって、どうするの?」
「純情ぶってんじゃねえよ! キャバ嬢なら枕営業ぐらいお手のもんだろうが」
「――分かったわ。でも約束は守ってもらうからね」
愛莉はわざとヒロユキの卑猥な取り引きに応じる素振りを見せた。
「よし。この缶コーヒーを飲み終わったら、食後の運動を楽しむか」
ヒロユキが遠慮のないギラついた目で、愛莉の体をジロジロと凝視する。
すぐにその汚らしいツラをブチのめしてやるから待ってな。
顔にはとっておきのキャバ嬢スマイルを浮かべながら、心中では物騒なことを考えている愛莉だった。
――――――――――――――――
ヒロトはレストランの入り口まで来たところで立ち止まり、ドアに隠れながら室内の様子をうかがった。廊下を歩いているときに、男女の声が聞こえたので近付いてみたら当たりだった。問題はこの後である。どうやって中に入るかだ。
拳銃さえなければ、すぐに突入出来るんだけどな。
なにか武器代わりになるような物がないか辺りを見回した。廊下のある一点で視線が止まる。学生時代にヤンチャをしていたころ、『コレ』を教室内で使って停学処分をくらったのを思い出した。
「よし、『コレ』を使ってみるか。なにもないよりはマシだろうからな。あとは出たとこ勝負だ」
ヒロトは覚悟を決めた。あとは中に突入するタイミングを見極めるだけだった。
その場でじっと待機の態勢に入った。
残り時間――8時間02分
残りデストラップ――9個
残り生存者――10名
死亡者――2名
重体によるゲーム参加不能者――1名
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ヒロユキは愛莉を人質にとって、二階のレストランにいた。護送車から逃げ出してからずっと飲まず食わずでいたので、腹が空いていたのだ。レストランならなにかしらの食べ物があるかもしれないと考えてのことだった。
「厨房に行って、なにか食えそうな物を探してこい」
ヒロユキは一番奥のイスにふんぞり返った姿勢で、愛莉に指示を出した。
「何様のつもり? あんたのお手伝いさんじゃないんだけど」
「そうだな。お前はお手伝いじゃなくて、オレの奴隷だからな」
「サイテー」
愛莉がバカにしたように棒読みで言った。
「撃ってもらいたいみたいだな」
ヒロユキは銃口を愛莉に向けた。引き金を少しだけ絞る仕草をすると、愛莉は顔を強張らせて、厨房の中に走っていった。
「けっ、はじめから言うこと訊きゃいいんだよ」
拳銃をテーブルの上にバンと音をたてて置いた。さっき瓜生に言われたことを思い出す。弾は残り四発しかない。これからは有効に使わないと、こちらがやられことになる。そういう事態だけは避けたかった。
人質のあの女をを上手く使うしかないな。
愛莉の消えた厨房の方を見た。これからのことを真剣に考えていたはずが、すぐに愛莉の後ろ姿を思い出して、顔がにやけてきた。
愛莉は自分からキャバ嬢だと言っていたが、実際のところ、顔は派手目で体のラインはセクシーで、水商売のニオイをプンプンさせていた。警察に逮捕されてからというもの、下半身を使う機会が一切なかったので、溜まるものが溜まっていた。
そうか、奴隷ってことは、オレの命令に従わせることが出来るんだよな。
たちまち卑猥な妄想が浮かんでくる。
「――これしかなかったわ」
愛莉が厨房から戻ってきた。缶コーヒーとスナック菓子が載った銀トレイを手にしている。
「ちぇっ、しけてんな」
ショボイ食事に思わず舌打ちが出てしまったが、ないよりはマシである。
「よし、こっちに持ってこい」
ヒロユキは横柄に言った。愛莉が無言のまま料理を運んでくる。
「ここに置け」
銃口でテーブルをコンコンと叩いた。
「金は持っているけど、性格は捻じ曲がっているオヤジ客と同じだね」
ヒロユキの傲慢な態度に、愛莉はすごく嫌そうな表情をした。
「キャバ嬢ならキャバ嬢らしく、客を楽しませる接客をしろよな。いつ客が怒るか分からないぜ」
ヒロユキは手にした拳銃をこれ見よがしに突きつけた。
「このゲームが終わったら、すぐにキャバ嬢なんてやめてやる」
「このゲームが終わるときまで、生きていられるとは限らないぜ」
ヒロユキが見下すように言うと、愛莉はキッと強い目で見返してきた。
いい表情をしやがるぜ。ますますコーフンしてきたな。でも、まずは腹ごしらえが先だ。食欲が満たされあとで、次は性欲を満たすとするか。
ヒロユキはスナック菓子を噛りながら、愛莉の全身を舐めるように見つめた。
ヒロユキの脳裏からは、すでに命を懸けたゲームのことは消えていた。今目の前にいる女の肉体のことで、頭の中は一杯だったのである。
ヒロユキの頭の中では、愛莉はもう全裸姿であった。
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ヒロユキが淫靡な妄想を膨らませていた頃、ヒロトは二階をくまなく調べまわっていた。足音を立てないように気をつけながら、ヒロユキの居場所を探す。
どうしてもヒロユキを捜しださなければならなかった。ヒロトもあのニュース速報を見るまでは分からなかったが、あの男は親友の仇だったのである。
親友のハルマは深夜のコンビニであの男――ヒロユキに難癖を付けられて、ケンカになり、いきなりナイフで刺されたのだ。
オレがもう少し早く着いていれば……。
その夜、ヒロトはハルマとコンビニで待ち合わせの約束をしていた。しかし、バイトの残業が入ってヒロトの到着は遅れてしまい、その間にハルマは事件に巻き込まれてしまった。
もしもヒロトが時間通りにコンビニに着いていたら、ヒロユキとのケンカに巻き込まれることはなかったかもしれない。
ハルマは今病院のベッドの上で、昏睡状態のまま眠ったきりである。
ヒロトはハルマを助ける為に、このゲームに参加したのだった。だが、犯人であるヒロユキがこのゲームに参加していると知った以上は、このままなにもせずにいることは出来なかった。
例えアイツが拳銃を持っていたとしても、このまま見過ごすわけにはいかねえよな。
ヒロトの心はもう決まっていた。一発でもいいからヒロユキを殴って、そしてその場で土下座をさせて、謝罪をさせるのだ。
ハルマ、お前の仇は絶対にうってやるからな。
ヒロトはヒロユキが隠れているレストランまで、もうすぐそこまで迫っていた。
――――――――――――――――
さきほどから愛莉はその視線の正体に気が付いていた。キャバクラで接客しているときに感じる視線と同じものである。
服の上から裸を想像している猥雑な視線。
この男も他の男たちと一緒なのだ。この状況下だというのに、エロにしか興味がないのだ。だったら、そこを上手く突いてやればいい。
この手のやり取りならば、キャバクラでイヤというくらいに経験している。自分の方に分がある。こんな男とセックスをするつもりなんてない。セックスの最中にデストラップが発動して、それで死んだとなったら死んでも死に切れない。
とにかくこの男とセックスをせずに、なおかつデストラップにかからないように逃げ出つつもりだった。
だが、問題がひとつある。この男の持っている拳銃だ。それをなんとかしないとならない。
「おい、なに睨んでるんだよ!」
ヒロユキの様子を観察していたらすごまれた。
「アタシだってお腹空いてるんだけど」
愛莉は当たり障りのないように注意しながら返答した。
「腹減ってんのか。へへ、そうだな。だったらオレの言うことを聞けよ。そうしたらメシぐらい好きに食わせてやってもいいぜ」
途端にヒロユキの顔にいやらしそうな笑みが浮かんだ。
「言うことって、なにを聞けばいいの?」
「簡単さ。そこのテーブルの上で横になれよ」
「横になって、どうするの?」
「純情ぶってんじゃねえよ! キャバ嬢なら枕営業ぐらいお手のもんだろうが」
「――分かったわ。でも約束は守ってもらうからね」
愛莉はわざとヒロユキの卑猥な取り引きに応じる素振りを見せた。
「よし。この缶コーヒーを飲み終わったら、食後の運動を楽しむか」
ヒロユキが遠慮のないギラついた目で、愛莉の体をジロジロと凝視する。
すぐにその汚らしいツラをブチのめしてやるから待ってな。
顔にはとっておきのキャバ嬢スマイルを浮かべながら、心中では物騒なことを考えている愛莉だった。
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ヒロトはレストランの入り口まで来たところで立ち止まり、ドアに隠れながら室内の様子をうかがった。廊下を歩いているときに、男女の声が聞こえたので近付いてみたら当たりだった。問題はこの後である。どうやって中に入るかだ。
拳銃さえなければ、すぐに突入出来るんだけどな。
なにか武器代わりになるような物がないか辺りを見回した。廊下のある一点で視線が止まる。学生時代にヤンチャをしていたころ、『コレ』を教室内で使って停学処分をくらったのを思い出した。
「よし、『コレ』を使ってみるか。なにもないよりはマシだろうからな。あとは出たとこ勝負だ」
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