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第3章110話:ユズナたちの視点2

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「今回の戦いで、セレナを、とても遠く感じてしまいました。僕はセレナに追いつくことができるのでしょうか?」

ヘンリックの声には、まるで大きな壁にぶち当たってしまったかのような、うれいが含まれていた。

「それは……わかりませんね」

とユズナは答えた。

「セレナちゃんは、本当に、すごい子だと思います。お恥ずかしい話ですが、私でも勝てるかどうか、怪しいものですから」

ユズナは正直にそう告げた。

「じゃあ、やっぱり僕は――――」

「でも、あきらめる必要はないと思いますよ」

ユズナは言う。

「……いいですか、世の中には、セレナちゃんのような、とんでもない才能に恵まれた人間がいます。そういう才能を目にしたときは、まず、しょうがないと思いましょう」

「しょうがない……」

「はい。自分が相手を上回うわまわることができないのは、相手がすごいんだからしょうがない……そう割り切って、まずは自分のメンタルを温存しなさい」

メンタルの温存。

そんな考え方があることを、ヘンリックは初めて知った。

「そして才能を受け入れることができたら、努力の可能性を信じなさい。私は、努力が才能を打ち破る光景を何度も見てきました。実は、私が知る一番の実力者も、努力の人なんですよ―――――王国の騎士団長なんですけどね」

「そ、そうなんですか?」

「はい」

王国の第一騎士団長は、非凡と呼ばれた要素は一つもなかったが、たゆまぬ努力と研鑽で、現在の地位へと上り詰めたとされる。

王都では有名な話だ。

「だから、腐らずに努力することです。そもそもヘンリックくんだって、ちゃんと素質がありますから、一歩一歩着実に努力すれば、いつか才能に手が届く日だって来ると思いますよ」

「……はい」

ユズナの言葉を、ヘンリックは胸に刻む。

――――ヘンリックは、セレナをうらやましいと思っていた。

誰にもない個性と強さを持つ、セレナの在り方。

それは、自分がこうありたいと思うような姿だったからだ。

でも……

自分にないものをうらやんでもしょうがない。    

嫉妬したって強くなれない。

だから。

ヘンリックは、心のうれいを振り払い、決然とした意思を宿す。

「これからも頑張ります! いつか、セレナにだって勝てるように!」

「はい。頑張りなさい」

とユズナは微笑んだ。
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