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第3章82話:盗賊―三人称視点3

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《三人称視点・続き》

「グオオオオッ!!」

と、くぐもった咆哮ほうこうをあげながら、チョコレート・ゴーレムが方向転換ほうこうてんかんをする。

ザカルと並走をするのをやめて、ザカルに突進をしかけてきたのだ。

ザカルは慌てて【剣風】を放つ。

チョコレート・ゴーレムの首から上が吹き飛んだ。

だが、止まらない。

首を失ったまま、チョコレート・ゴーレムが接近してくる。

「ウソだろ!?」

チョコレート・ゴーレムがパンチを繰り出してきた。

ザカルは慌てて避ける。

空振からぶったチョコレート・ゴーレムのパンチが、背後の樹木に直撃して、木のみきをへし折った。

「ッ!!」

咄嗟とっさの判断で、ザカルは続けざまに【剣風】を2発放つ。

狙うは足。

剣風が、チョコレート・ゴーレムの足に命中し、ひざから下を切断した。

足を失ったゴーレムは倒れる。

チョコレート・ゴーレムを実質的に無力化できたザカル。

しかし、そのことに喜ぶ暇はなかった。

「あ――――」

すぐ後ろに、チョコレートの本体が迫っていたからだ。

チョコレート・ゴーレムに逃亡を妨害された一瞬の時間。

その刹那のあいだに、目と鼻の先にまで接近されてしまった。

もうザカルは逃げられない。

「……っ……」

ザカルの目の前で、チョコレートの液体がぶくぶくとあらぶっていた。

しかし、その液体が意思を持ったように動き出す。

一つの形を取っていく。

その形とは……

チョコレートで出来た、人間の顔であった。

3メートルはあるかというほど、巨大な顔。

胴体はない。

首から上だけである。

その顔は、目と口が空洞になっており、おどろおどろしい見た目であった。

「あ、あぁ……っ」

ザカルはすでに死の恐怖に怯えていた。

そして、ここにきて、恐怖心は臨界点りんかいてんを越えてきた。

チョコレートの顔は、空洞になった口から声らしき音を発した。

「きひゃぁはぁあああああああ」

その音は言語ではなく、まさしく音。

人が聞いてはいけないような、発狂に値する奇音きおんだった。

もう、無理だった。

ザカルの心は、限界を超えた。

「ああああっ、ああああああああアアアアアアアッ!!」

恐怖で絶叫し、尻餅をついて。

ジタバタあばれながら逃げ出そうとするザカル。

だが、チョコレートの顔から無数に生えてきた手が、ザカルの腕を、足を、押さえつける。

完全に捕縛ほばくされてしまったザカルは、さらに発狂を強めた。





キトレル山に絶叫が響き渡る。

こうして。

盗賊たち4人は、みな、行方不明になった。




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