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驚き

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「では、はじめ!」

ユズナさんが号令をかける。

瞬間。

ヘンリックくんが、地を蹴った。

一気に接近してくる。

さきほどと同じ展開になるか……と思いきや。

「……!」

ヘンリックくんが途中で横に飛んだ。

と見せかけて、また突っ込んでくる。

ジグザグな動き。

初戦と同じではなく、さすがに変化をつけてきたか。

ヘンリックくんは頭が良い。

戦術もかなり考え抜かれている。

知力勝負に持ち込まれる前に、決めてしまおう。

(いくよ、チョコレート魔法……!)

私は、ついに、

チョコレート魔法を発動する。

「ん……ッ!?」

ヘンリックくんの進路を妨害するように。

私はチョコレートの壁――――【チョコレート・ウォール】を出現させる。

ヘンリックくんが足を止めたようだ。

壁の向こうで、ヘンリックくんがいったん後退し、距離を取る気配がした。

私はチョコレート・ウォールを解除する。

「なるほど、チョコレート魔法とは、壁を張る能力ということか」

などとヘンリックくんが分析している。

「さて、それはどうでしょうか」

と、私は不敵に告げる。

もちろんチョコレート魔法は壁だけじゃない。

私は、次なる一手を繰り出した。

左右両方の肩口から、にょきっ、とチョコレートを生やし、ぐいーんっと伸ばす。

「っ!?」

ヘンリックくんや、ギャラリーのみんなも目を見開いた。

ムチのように伸びた2本のチョコレートの先端に、人型の巨大な手が現れる。

1メートルぐらいの巨大な手のひら。

その手が、拳を握るような形になった。

「チョコレート・パンチ」

二つのパンチがヘンリックくんに襲いかかる。

「!!?」

ヘンリックくんが驚愕する。

右のパンチをなんとか避ける。

しかし左のパンチは避けられず、ヘンリックくんは正面から剣で受けた。

「うっ!!?」

パンチの衝撃は重い。

真正面から綺麗に受けたにもかかわらず、ヘンリックくんはザザザッと後退させられていく。

後退を食い止めるべく、ヘンリックくんが気合で、なんとかパンチを弾き返した。

しかし。

次なるパンチが、休まずヘンリックくんに襲いかかる。

それだけじゃない。

【チョコレート・パンチ】の手首から、新たに2つの手が、にょきっと生えてくる。

左右の手首から生えてきているので、計4つの手が増えた。

殴りかかる2つのパンチに対し、新たに増えた4つのハンドたち。

ヘンリックくんを捕まえようと掴みにかかる。

「なんだこの能力は!? くっ、この!!」

計6つのハンドたちに襲撃されるヘンリックくんは、さすがに防戦一方となった。






<他者視点>

チョコレート魔法を目にしたテオが、目を輝かせて感激した。

「すげー!! なんだあの能力!?」

「ヘンリックが押されてるわよ!?」

と、ラミサも同調する。

みんなが驚いているのをみて、アイリスは満足げだった。

ユズナも驚いていた。

「チョコレート魔法、でしたか。ずいぶんと風変わりな能力ですね」

それに、セレナの魔法操作能力に瞠目どうもくさせられる。

魔法を細かく操作するのは簡単ではない。

セレナは、文字通り魔法を、自分の身体から生えた手や腕のごとく扱っているが……

あそこまで自由自在に魔力をコントロールするとなると、相当の実力が必要だ。

「一見すると、土魔法のようにも見えますが」

とユズナは分析を口にした。

「土魔法ではないな」

クレアベルはそう否定する。

続けて、クレアベルは告げた。

「あれはいわゆる【固有魔法こゆうまほう】だろう」

「固有魔法……」

魔法とは通常、誰でも使えるものだが……

稀に、個人しか使用することができない魔法が発現する。

それが固有魔法だ。

チョコレート魔法は、おそらく固有魔法に該当する代物。

「まあ、私もセレナのような固有魔法は初めて見たがな」

とクレアベルは言った。

セレナと一緒に暮らしてきたクレアベルは、チョコレート魔法のさまざまな一面を目にしている。

形状は変幻自在。

斬撃性を持たせたり、液体化させたり、硬化させたり……性質の変化も自由自在。

しかも食べれば美味しいという謎めいた仕様。

セレナのチョコレート魔法は、とらえどころがなく、まさしくビックリ箱のようなものである。

「固有魔法は奇怪な魔法が多い。まあセレナを神殿に連れて行けば、何かわかることもあるかもしれんが」

神殿では魔法の鑑定をおこなうことができる。

しかし、とユズナは告げる。

「最近の神殿はキナ臭いところもありますから……やめておいたほうがいいのではありませんか? 目をつけられたら、何をされるかわかりませんよ」

「……そうだな」

とクレアベルは同意した。





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