2 / 175
第1章2話:山小屋
しおりを挟む
私を保護してくれた女剣士は、クレアベルという名前らしい。
クレアベルは、どうやら旅の途中のようだった。
私を連れて、馬車に乗り……
森を越え、
山を越え、
草原を越え
峠を越え……
宿での宿泊、あるいは野宿を繰り返し……
やがて彼女の実家とおぼしき山小屋《やまごや》へと到着した。
一階建ての小さな家である。
「―――――。――――――、―――――(ここが私の家だ。狭いかもしれないが、住み心地は悪くないぞ)」
山小屋の右側には井戸と畑がある。
山小屋の左側には果実のなった樹木。
そして山小屋の裏には半径50メートルぐらいの巨大なグラウンドがあった。
山小屋の周囲は森と山に囲まれている。
クレアベルが玄関扉に手をかける。
玄関を開けたら、いきなりリビングだ。
リビングの右の壁には個室に続く扉が2つ。
リビングの左の壁にはトイレに続く扉が1つ。
リビングの正面の壁には窓が二つと、扉があり、その扉を開ければ、山小屋の裏に出られるようになっている。
リビングの内装としては、四人がけの木製のテーブルがある。
テーブルには四つの椅子が配置されていた。
暖炉はないが、部屋のすみには薪などの資材が置かれている。
あとキッチンもリビングの中にあり、フライパンや包丁などが揃っていた。
リビングには、いろいろな匂いがした。
木の匂い。石の匂い。
使い古された家具や、キッチンの匂い。
あたたかく、陽気な春の匂い。
どれもこれも、優しい匂いであった。
さて、個室について。
先述の通り、個室は2つあるが、どちらも寝室のようだ。
しかし使われているのは一つだけである。
大した内装ではなく、ベッドとサイドテーブルがあるだけだ。
「―――、―――――――(そうだ。お前の名前を決めてやらないとな)」
寝室のベッドに私を寝かせたクレアベルは、そう言った。
「――――、セレナ(お前は、セレナだ)」
どうしてだろうか。
言葉はわからないのに……
それが、私の新しい名前であると、理解できた。
「―――――、セレナ(よろしくな、セレナ)」
私の名前は、セレナ。
苗字はない。
ただのセレナである。
うん、悪くないかも。
セレナというのがどういう意味なのかは知らない。意味などないかもしれない。
しかし、私はこの名前が、無性に気に入った。
春が過ぎて……
夏が来た。
山小屋で、クレアベルと二人暮らしの生活。
クレアベルと私は、本当の親子ではないが……
今のところクレアベルは、私のことをとても大事に育ててくれている。
で。
山小屋で暮らしはじめてから、私がしていたことといえば。
チートスキルとおぼしき【チョコレート魔法】の操作ぐらいだった。
――――私は暇を見つけては、【チョコレート魔法】の練習をした。
練習の中で、わかったことがいくつかある。
まず、魔法は進化するということだ。
魔法というのは使えば使うほど、成長する。
まるでレベルアップするかのように。
進化すれば、より巧みな操作が可能になる。
たとえば私の【チョコレート魔法】で出したチョコレートを、
変形して、花の形にするだとか……
ツルのような形にしたうえで、遠くにある食べ物を掴んで取ってくるとか……
チョコレートで作ったボールで遊ぶとか……
いろんな使い方が可能である。
他に魔法についてわかったことといえば。
己の魔法は、使うほどに理解が深まるということ。
たとえば、私は【チョコレート魔法】で出したチョコレートが、魔力で出来た塊である……ということを知っている。
だから人が食べても大丈夫だということも、わかっている。
このことは誰に教わったわけではない。
なんとなくそうだ、とわかるのだ。
おかげで、チョコレート魔法への理解は、スムーズに進んだ。
クレアベルは、どうやら旅の途中のようだった。
私を連れて、馬車に乗り……
森を越え、
山を越え、
草原を越え
峠を越え……
宿での宿泊、あるいは野宿を繰り返し……
やがて彼女の実家とおぼしき山小屋《やまごや》へと到着した。
一階建ての小さな家である。
「―――――。――――――、―――――(ここが私の家だ。狭いかもしれないが、住み心地は悪くないぞ)」
山小屋の右側には井戸と畑がある。
山小屋の左側には果実のなった樹木。
そして山小屋の裏には半径50メートルぐらいの巨大なグラウンドがあった。
山小屋の周囲は森と山に囲まれている。
クレアベルが玄関扉に手をかける。
玄関を開けたら、いきなりリビングだ。
リビングの右の壁には個室に続く扉が2つ。
リビングの左の壁にはトイレに続く扉が1つ。
リビングの正面の壁には窓が二つと、扉があり、その扉を開ければ、山小屋の裏に出られるようになっている。
リビングの内装としては、四人がけの木製のテーブルがある。
テーブルには四つの椅子が配置されていた。
暖炉はないが、部屋のすみには薪などの資材が置かれている。
あとキッチンもリビングの中にあり、フライパンや包丁などが揃っていた。
リビングには、いろいろな匂いがした。
木の匂い。石の匂い。
使い古された家具や、キッチンの匂い。
あたたかく、陽気な春の匂い。
どれもこれも、優しい匂いであった。
さて、個室について。
先述の通り、個室は2つあるが、どちらも寝室のようだ。
しかし使われているのは一つだけである。
大した内装ではなく、ベッドとサイドテーブルがあるだけだ。
「―――、―――――――(そうだ。お前の名前を決めてやらないとな)」
寝室のベッドに私を寝かせたクレアベルは、そう言った。
「――――、セレナ(お前は、セレナだ)」
どうしてだろうか。
言葉はわからないのに……
それが、私の新しい名前であると、理解できた。
「―――――、セレナ(よろしくな、セレナ)」
私の名前は、セレナ。
苗字はない。
ただのセレナである。
うん、悪くないかも。
セレナというのがどういう意味なのかは知らない。意味などないかもしれない。
しかし、私はこの名前が、無性に気に入った。
春が過ぎて……
夏が来た。
山小屋で、クレアベルと二人暮らしの生活。
クレアベルと私は、本当の親子ではないが……
今のところクレアベルは、私のことをとても大事に育ててくれている。
で。
山小屋で暮らしはじめてから、私がしていたことといえば。
チートスキルとおぼしき【チョコレート魔法】の操作ぐらいだった。
――――私は暇を見つけては、【チョコレート魔法】の練習をした。
練習の中で、わかったことがいくつかある。
まず、魔法は進化するということだ。
魔法というのは使えば使うほど、成長する。
まるでレベルアップするかのように。
進化すれば、より巧みな操作が可能になる。
たとえば私の【チョコレート魔法】で出したチョコレートを、
変形して、花の形にするだとか……
ツルのような形にしたうえで、遠くにある食べ物を掴んで取ってくるとか……
チョコレートで作ったボールで遊ぶとか……
いろんな使い方が可能である。
他に魔法についてわかったことといえば。
己の魔法は、使うほどに理解が深まるということ。
たとえば、私は【チョコレート魔法】で出したチョコレートが、魔力で出来た塊である……ということを知っている。
だから人が食べても大丈夫だということも、わかっている。
このことは誰に教わったわけではない。
なんとなくそうだ、とわかるのだ。
おかげで、チョコレート魔法への理解は、スムーズに進んだ。
24
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる