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バレンタインデー
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「朱里ちゃん、もし新東京フィルから連絡来たら、メールで知らせればいい?」
「はい。メールでも電話でも大丈夫です。よろしくお願いします」
明日から始まる大学のテスト期間に備えて、朱里は仕事をある程度終わらせておこうと、あれこれ忙しくこなしていた。
しばらく職場に来られない為、留守中の対応を田畑と川辺にお願いする。
「朱里ちゃーん、スケジュール出来たらプリントアウトしてくれる?俺達で共有しておくね」
「はい!承知しました」
「朱里ちゃん、この書類チェックしてくれる?」
「はい!承知しました」
「朱里、こっちもチェック頼む」
「はい!承知しました」
矢継ぎ早にやり取りしたあと、四人はパソコン作業に戻る。
が、それぞれ頭の中に、ん?とハテナが浮かんでいた。
(なんか今、変な感じしたよね?)
朱里が首をひねった時、川辺が口を開いた。
「桐生部長。さっき朱里ちゃんのこと、朱里って呼び捨てにしませんでした?」
朱里はハッとする。
(そうだ、朱里って言ってた!おい、部長。何やってんのよー。どうするつもり?)
朱里がヤキモキしていると、瑛がきっぱりと答えた。
「いえ、してません」
はあー?と朱里は呆れる。
(何それ?しらばっくれちゃって、もう)
すると川辺は、納得いかないといった顔で今度は朱里を見る。
「朱里ちゃん。さっき桐生部長に朱里って呼ばれてなかった?」
「…いえ、呼ばれてません」
(くうー、結局私もしらばっくれちゃったよ)
澄ました顔でパソコンを打っていると、川辺は首をひねりながらも作業に戻った。
また静けさが戻ってきてホッとしていると、田畑がポツリと呟く。
「川辺。俺も聞いたぞ、朱里って」
「ですよねー!!」
そして二人は、瑛と朱里を交互に見る。
痛いほどその視線を感じながらも、朱里は澄ました顔で乗り切るしかなかった。
*****
「まったくもう!自分から、もう前みたいには話せないって言ったんでしょ?それなのに、あっさり自分がボロ出しちゃうなんて…」
休憩室の自動販売機でミルクティーを買いながら、朱里はブツブツ文句を言う。
ガコン!と落ちてきたペットボトルを手に廊下を歩き出すと、前から瑛が菊川と共にやってくるのが見えた。
「朱里さん、お疲れ様です」
「菊川さん、お疲れ様です」
にっこりと二人で挨拶する。
「今日は定時でお帰りですか?瑛さんと一緒に車でお送りします」
「いいえ、大丈夫です。平社員が部長と一緒に車で送っていただくなんて滅相もないですから」
すると、隣にいた瑛がボソッと言う。
「俺は親父と帰る。菊川、彼女を送ってくれ」
「かしこまりました」
朱里はムッとして語気を強める。
「いいえ。部長の秘書の方に送っていただく訳にもいきません!では、失礼します」
頭を下げてから横を通り過ぎようとすると、ちょっと待てって!と瑛が朱里の腕を掴んだ。
「はあー?部長、セクハラですよ」
「おまっ、何を言って…」
「それから、下の名前を呼び捨てにするのもやめてくださいね」
瑛はうつむいて、あれは悪かったと素直に詫びる。
「それでは失礼します」
もう一度頭を下げると、また瑛が呼び止めた。
「社長が君に、家で夕食を一緒にと言っていた。もちろん断ってくれてもいい」
社長が?と足を止めて振り返る。
「ああ。例の件の進捗状況を聞きたいと」
「承知しました。伺います」
「分かった。菊川、彼女をうちに送ってくれ」
「かしこまりました」
じゃあ、と瑛は踵を返す。
「朱里さん。定時になったらエントランスのロータリーでお待ちしていますね」
「はい、よろしくお願いします」
では、と菊川は笑顔を残して瑛のあとを追っていった。
*****
「朱里ちゃん、新東京フィルの事務局長から電話があったよ。今回の話、とても有り難いって。あの楽団なら、良いパートナーになりそうだね」
「はい。常任指揮者の東条さんも、お忙しい中、自ら打ち合わせに同席してくださいました。子ども達の為に良い音楽を届けたいとおっしゃって、選曲もしっかり考えたいと」
「へえ、そうなのかい?あのマエストロはまだ若いが、しっかりしているんだな。爽やかでマスコミ受けもいいし、ファンも多いからうちとしても助かるね」
瑛の父は終始にこにこと嬉しそうだった。
「はい。あ、それでおじ様。新東京フィルさんから次の公演のご招待チケットを頂いたんです。2月14日の夜の公演ですが、どうされますか?会場に桐生ホールディングスからお花を贈ろうとは思っていますが」
「うーん、行きたいが難しいと思う。朱里ちゃんは行けそうかい?」
「はい。大丈夫です」
「それなら、瑛と朱里ちゃんで行ってきてくれ」
えっ!と朱里は声を上げる。
「おじ様、それはだめですよ」
「ん?どうしてだい?」
「だって聖美さんがいらっしゃるでしょう?2月14日って、バレンタインデーですよ」
「あー、そうか」
朱里は今度は瑛に話しかける。
「部長。あとでチケットを2枚、フィアンセの方の分もお渡しします。私は一人で行きますので」
すると、瑛の母が驚いたように顔を上げた。
「ええー?朱里ちゃん、瑛のこと部長って呼んでるの?どうして?」
え…と朱里は面食らう。
「それは、職場でそういう立場ですし…」
「たからってそんな、ここは職場でもないのに。ねえ、あなた」
「そうだよ。それにうちの社は外国人スタッフも多いから、皆フランクに名前で呼んでるよ」
朱里は、いえいえと手で否定する。
「うちの部署はこの呼び方で通ってますので」
「まあ、なんだか寂しいわね。それに朱里ちゃん。そのバレンタインコンサート、一人で行くの?どなたか男性をお誘いしたら?」
「いえ、心当たりもありませんし。一人で行きます」
まあ…と、瑛の母は困ったように頬に手をやる。
「それならせめて、菊川が付き添ってちょうだい。朱里ちゃんみたいな年頃の可愛いお嬢さんを、一人でなんて行かせられないわ」
部屋の隅に控えていた菊川が、かしこまりましたと返事をする。
「え?でも、菊川さんは部長とフィアンセをお送りしないといけませんよね?私、本当に一人で大丈夫ですから」
朱里がそう言うと、それまでじっと黙ったままだった瑛が顔を上げた。
「一緒の車で行けばいい。彼女も君に会いたがっているし」
「あ、そうですか…」
朱里としても、ずっと聖美と連絡を取っていないのが気がかりだった。
カルテットの秋のコンサートもクリスマスコンサートも、聴きに来てくれたお礼だけメッセージを送ったが、それ以上のやり取りはしていなかった。
(元気なのかしら?春休みには結納だもんね。準備に忙しくしているのかな)
バレンタインコンサートで会ったら、久しぶりに話をしてみようと朱里は思った。
*****
「朱里さん、お久しぶりです!」
無事にテスト期間も終わり、迎えたバレンタインデーの夜。
菊川が開けたドアから車に乗り込んだ聖美が、嬉しそうに朱里に笑いかける。
「聖美さん、お久しぶり。元気だった?」
「ええ。朱里さんもお元気そうで」
助手席に瑛が座ると、運転席に回った菊川が車を発車させた。
「朱里さん、今日はコンサートへのお招きありがとうございます」
「ううん、私が手配した訳じゃないの。仕事の関係でチケットを頂いたのよ」
「まあ!朱里さん、コンサート関係のお仕事をされているのですか?」
え?と朱里は戸惑う。
(瑛、ひょっとして何も話してないのかしら?)
そうだとしたら、自分の口からは何も言えない。
「うん、少しツテがあって。たまたま頂いたの」
「そうなのですね!でも今日のプログラムも、私の好きな曲ばかりで楽しみです」
「バレンタインだものね。恋人同士で聴くにはピッタリの、甘い愛の曲が多いね」
そう言うと、聖美は顔を曇らせた。
「聖美さん?どうかした?」
「あ、いえ!」
(バレンタインの夜に瑛とコンサートに行けて喜んでいるのかと思ったのに、なんだか元気なさそう。どうしたのかしら?)
すると聖美が急に顔を上げて、朱里に向き直った。
「朱里さん。去年の秋の『愛の夢』とても素敵でした。あの曲にはどんな想いがあったのですか?」
「え?そうね、んー。最初はどう弾けばいいのか悩んだんだけど、先輩からアドバイスもらって、その通りに弾いたの」
「…そうなのですか」
朱里は、適当にごまかした事がばれないように、すぐさま視線を逸らす。
そっと横目で聖美の様子をうかがうと、浮かない表情でうつむいていた。
(んー、これは今日も、菊川さんとのラブラブ作戦発動ね)
朱里は気合いを入れて頷いた。
やがてコンサートホールに到着し、バレーパーキングのスタッフがドアを開けると、車から降りた瑛と菊川がそれぞれ聖美と朱里に手を差し伸べる。
そのまま2組で腕を組みながらエントランスに入った。
「菊川さん、はい!プログラム」
「あ、ありがとうございます」
「楽しみねえ。あ、ほら!この曲、私大好きなのー」
そう言って朱里は、菊川の顔を下から覗き込んで笑いかける。
菊川はギョッとしたように身を引いた。
朱里はグイッと菊川の腕を引き寄せて、小声で囁く。
「菊川さん。今夜もラブラブ作戦でお願いします」
「え?あ、はい」
背後の瑛と聖美の様子をチラリと振り返ってから、菊川は仕方なく頷いた。
「わー、カップルがたくさん!今日はバレンタインデーですものね。皆さんドレスアップしてて素敵!でも私の菊川さんが一番かっこいい♡」
「え、本当ですか?」
朱里は菊川の肩に手を置いて背伸びすると、耳元に口を寄せて呟く。
「嘘です。ごめんなさい」
「…は?」
目が点になる菊川をよそに、ロビーに桐生ホールディングスが贈った大きな花を見つけた朱里は、さりげなく花のそばに菊川を立たせた。
「菊川さん、写真撮りますよ。はい、笑ってー。あ、今度は二人で自撮りしましょ!」
菊川に顔を寄せ、嬉しそうにはしゃぐ朱里を、瑛と聖美は気恥ずかしくなりながら見守っていた。
「あの…、瑛さん」
「はい、何でしょう?」
「これ…よろしければどうぞ」
そう言って、聖美は小さな箱を瑛に差し出す。
え?と瑛は立ち止まった。
「バレンタインデーですので、私からもチョコを…」
「あ、ありがとうございます」
きっと受け取りやすいように考えてくれたのだろう、その小箱はジャケットの内ポケットに入る大きさだった。
「お口に合うとよろしいのですけど」
「いえ、お気持ちだけでも充分嬉しいです。では参りましょう」
瑛は、はにかんだ笑みでうつむく聖美をホールへと促した。
*****
「皆様、本日は新東京フィルハーモニー交響楽団のバレンタイン・ガラ・コンサートへようこそお越しくださいました」
開演時間になり、まずは赤いドレスの司会女性が挨拶する。
「今日はバレンタインデーということで、客席にもたくさんのカップルの方がいらしてくださっていますね。普段はあまりクラシック音楽をホールで聴く機会がないけれど、今日は恋人に誘われて来てみた、という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方々にも楽しんで頂けるよう、そして恋人との素敵なひと時を過ごしていただけるようにと、今夜は甘い愛の曲を取り揃えてお贈りいたします」
朱里はワクワクとプログラムに目を落とす。
第一部は、シューマンの『献呈』や、クライスラーの『美しきロスマリン』など、短く聴きやすい曲が続く。
休憩を挟んだ第二部では、司会女性と共にマエストロの東条もマイクを握った。
「えー、皆様すでに熱い恋の熱気に包まれているようですが、まだまだ曲は続きます。本当は長い曲なのですが、恋は盲目と申しますし、今夜は特別に甘いメロディを抜粋して演奏いたします。2023年に生誕150周年を迎えるラフマニノフが作曲した『交響曲第二番』より第三楽章、そして同じくラフマニノフ作曲『パガニーニの主題による狂詩曲』より第十八変奏、2曲続けてお聴きください」
一瞬たりとも聴き逃すまいと、朱里はステージを凝視する。
ホール中の空気を震わせる甘美な音色、うっとりと美しいメロディに、朱里は胸がいっぱいになる。
最後の曲はワーグナー作曲、歌劇『ローエングリン』より『エルザの大聖堂への行進』
これも朱里の大好きな曲だった。
静かに厳かに奏でられる冒頭から、ラストにかけて徐々に増していく壮大さに、朱里は感動で胸が震える。
曲が終わって拍手を送りながらも、朱里は涙を止めることが出来なかった。
*****
「あ、栗田さん!桐生さんも。本日はありがとうございました!」
ホールを出てロビーに下りた途端、楽団の事務局長に声をかけられた。
「良かった、見つけられて。一言ご挨拶しようと、お二人を探していたんです」
「あ、そうだったんですね」
朱里は菊川に目線を送り、聖美のエスコートを任せた。
「本日はお招きいただき、本当にありがとうございました。とても素晴らしい演奏で、感激いたしました」
朱里は瑛と並んで頭を下げる。
「こちらこそ。とても豪華なお花と祝電を頂き、ありがとうございました。あ、マエストロもお二人に出来れば挨拶したいと申しておりました。よろしければ控え室にご案内させてください」
「はい」
朱里は菊川を振り返る。
菊川はクロークに預けておいた差し入れを朱里に渡し、聖美さんは私が…と頷いてみせた。
「ありがとう。よろしくお願いします」
朱里と瑛は、事務局長に連れられて東条の控え室へ行く。
「マエストロ、桐生ホールディングスの桐生さんと栗田さんです」
「おー!どうぞどうぞ」
部屋の中から大きな声が返ってきて、事務局長がドアを開けた。
「失礼いたします。終演直後でお疲れのところ、恐れ入ります。本日は素晴らしい演奏会にお招きいただき、ありがとうございました。こちらはよろしければ皆様でどうぞ」
朱里が深々と頭を下げて差し入れを渡すと、これはこれは、お気遣いありがとう!と爽やかに笑いかけられる。
「いかがでしたか?楽しんでいただけましたか?」
「はい!それはもう…、感動で、胸が…」
そこまで言うと、朱里は思い出して言葉を詰まらせ、また涙をこぼし始めた。
「おやおや、綺麗な女性を泣かせてしまいましたね」
東条が苦笑いする。
「もう本当に、私の好きな曲ばかりで。とても幸せでした。ありがとうございました」
「こちらこそ。素敵な涙をありがとう!演奏者冥利に尽きます。朱里さんは心の綺麗な方ですね。どうぞこれからも、その純粋さを大事にしてくださいね」
「はい!」
朱里は泣き笑いの表情で頷いた。
*****
「それで、これが桐生ホールディングスから贈ったお花の写真です。ロビーの良く目立つ所に飾っていただいてました」
あれから菊川の運転する車で聖美を送って行き、瑛の屋敷に戻ってくると、朱里は瑛の父に今日のことを報告していた。
「うん、なかなかセンスの良いお花だね。どうして菊川が嬉しそうに一緒に写っているのか不思議だけど」
それはまあ、色々ありまして…と朱里は笑ってごまかす。
「終演後、事務局長とマエストロにお会いして、差し入れをお渡ししました。お花と祝電も、ありがとうございましたとおっしゃっていました。それでおじ様。来週中には、未来ハーモニーホールでの演奏会について、おじ様を交えて打ち合わせをしたいと話していまして…。演奏会は3月の終わりですから、そろそろ具体的なコンセプトや演奏会のタイトル、曲目を決めていければと」
「そうだね。私もスケジュールを調整するから、先方と日程を決めてくれるかい?」
「はい、承知しました」
その時、千代が朱里に小さなデザートプレートをサーブしてくれた。
「朱里お嬢様、よろしければどうぞ。バレンタインのトリュフチョコレートです」
「わあー!ありがとう、千代さん。そう言えば私、今日誰からももらわなかったから、嬉しい!」
パクッとチョコを頬張り満面の笑みで味わっていると、隣に座る瑛が、ん?と首をかしげた。
「おい、朱里。バレンタインってどういう日か分かってるか?」
途端に朱里はムッとする。
「部長。下の名前で呼ばない約束ですよね?」
「それはいいから…」
「よくないです!大体、部長からそう言われたのに、どうしていつも約束破るんですか?」
「分かったよ!栗田さん!バレンタインデーはどういう日か分かりますか?」
「分かりますよ!それくらい。チョコをもらう日です」
「誰から?」
「男の人から。あー、そう言えば私、会社で義理チョコすらもらってなーい」
瑛はやれやれとため息をつく。
「栗田さん。あなたがもし女性だとすると、勘違いしてますよ」
「はあー?部長、またセクハラですか?」
「違うっつーの!あーもう、めんどくせー。朱里、バレンタインデーは女の子が好きな男にチョコをあげる日だ!」
ん?と朱里は固まったまま瞬きを繰り返す。
「女の子が男の人に?ってことは、私から?」
「そう!ちなみにお前がさっき言ってた義理チョコ。今日、田畑さんも川辺さんも、お前からもらえるかなってソワソワしてたぞ」
「えー!!嘘でしょーー?!」
両手で頬を押さえて絶叫したあと、朱里は慌てて厨房に駆け込んだ。
「千代さーん!さっきのチョコ、まだ残ってるー?」
瑛は、はあ…と大きくため息をついた。
*****
「田畑さん!川辺さん!1日遅れちゃってすみません。はい、バレンタインのチョコ」
次の日。
出勤するなり朱里は二人に、にっこりと小さな箱を渡す。
「わー、ありがとう!てっきり朱里ちゃんからはもらえないのかと思ってたよ」
「そうそう。こう見えて昨日俺達ちょっとへこんでたんだよ」
「そうなんですかー?すみません、遅れちゃって。でももちろんお二人にお渡しするつもりでしたよ!」
瑛の視線が突き刺さるが、気にせず朱里は明るく振る舞う。
「嬉しいなあ。おっ、手作りチョコだ!」
「本当だ!だから朱里ちゃん、昨日は間に合わなかったの?」
「そうとも言いますかねー?お口に合うといいんですが」
二人は早速チョコを頬張った。
「んー!うまい!」
「これ、高級チョコレート店の味だよ!」
凄いな、朱里ちゃん、ともてはやされ、えへへーと朱里は笑う。
「はい、部長もどうぞ」
「どうも!」
嫌味たっぷりに言ってから受け取った瑛は、バリッと包装紙を破ってチョコを口に放り込む。
「どうですか?美味しいでしょ?」
「当たり前だ!!」
ニヤニヤする朱里と仏頂面の瑛に、田畑と川辺は顔を見合わせて首をひねっていた。
「はい。メールでも電話でも大丈夫です。よろしくお願いします」
明日から始まる大学のテスト期間に備えて、朱里は仕事をある程度終わらせておこうと、あれこれ忙しくこなしていた。
しばらく職場に来られない為、留守中の対応を田畑と川辺にお願いする。
「朱里ちゃーん、スケジュール出来たらプリントアウトしてくれる?俺達で共有しておくね」
「はい!承知しました」
「朱里ちゃん、この書類チェックしてくれる?」
「はい!承知しました」
「朱里、こっちもチェック頼む」
「はい!承知しました」
矢継ぎ早にやり取りしたあと、四人はパソコン作業に戻る。
が、それぞれ頭の中に、ん?とハテナが浮かんでいた。
(なんか今、変な感じしたよね?)
朱里が首をひねった時、川辺が口を開いた。
「桐生部長。さっき朱里ちゃんのこと、朱里って呼び捨てにしませんでした?」
朱里はハッとする。
(そうだ、朱里って言ってた!おい、部長。何やってんのよー。どうするつもり?)
朱里がヤキモキしていると、瑛がきっぱりと答えた。
「いえ、してません」
はあー?と朱里は呆れる。
(何それ?しらばっくれちゃって、もう)
すると川辺は、納得いかないといった顔で今度は朱里を見る。
「朱里ちゃん。さっき桐生部長に朱里って呼ばれてなかった?」
「…いえ、呼ばれてません」
(くうー、結局私もしらばっくれちゃったよ)
澄ました顔でパソコンを打っていると、川辺は首をひねりながらも作業に戻った。
また静けさが戻ってきてホッとしていると、田畑がポツリと呟く。
「川辺。俺も聞いたぞ、朱里って」
「ですよねー!!」
そして二人は、瑛と朱里を交互に見る。
痛いほどその視線を感じながらも、朱里は澄ました顔で乗り切るしかなかった。
*****
「まったくもう!自分から、もう前みたいには話せないって言ったんでしょ?それなのに、あっさり自分がボロ出しちゃうなんて…」
休憩室の自動販売機でミルクティーを買いながら、朱里はブツブツ文句を言う。
ガコン!と落ちてきたペットボトルを手に廊下を歩き出すと、前から瑛が菊川と共にやってくるのが見えた。
「朱里さん、お疲れ様です」
「菊川さん、お疲れ様です」
にっこりと二人で挨拶する。
「今日は定時でお帰りですか?瑛さんと一緒に車でお送りします」
「いいえ、大丈夫です。平社員が部長と一緒に車で送っていただくなんて滅相もないですから」
すると、隣にいた瑛がボソッと言う。
「俺は親父と帰る。菊川、彼女を送ってくれ」
「かしこまりました」
朱里はムッとして語気を強める。
「いいえ。部長の秘書の方に送っていただく訳にもいきません!では、失礼します」
頭を下げてから横を通り過ぎようとすると、ちょっと待てって!と瑛が朱里の腕を掴んだ。
「はあー?部長、セクハラですよ」
「おまっ、何を言って…」
「それから、下の名前を呼び捨てにするのもやめてくださいね」
瑛はうつむいて、あれは悪かったと素直に詫びる。
「それでは失礼します」
もう一度頭を下げると、また瑛が呼び止めた。
「社長が君に、家で夕食を一緒にと言っていた。もちろん断ってくれてもいい」
社長が?と足を止めて振り返る。
「ああ。例の件の進捗状況を聞きたいと」
「承知しました。伺います」
「分かった。菊川、彼女をうちに送ってくれ」
「かしこまりました」
じゃあ、と瑛は踵を返す。
「朱里さん。定時になったらエントランスのロータリーでお待ちしていますね」
「はい、よろしくお願いします」
では、と菊川は笑顔を残して瑛のあとを追っていった。
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「朱里ちゃん、新東京フィルの事務局長から電話があったよ。今回の話、とても有り難いって。あの楽団なら、良いパートナーになりそうだね」
「はい。常任指揮者の東条さんも、お忙しい中、自ら打ち合わせに同席してくださいました。子ども達の為に良い音楽を届けたいとおっしゃって、選曲もしっかり考えたいと」
「へえ、そうなのかい?あのマエストロはまだ若いが、しっかりしているんだな。爽やかでマスコミ受けもいいし、ファンも多いからうちとしても助かるね」
瑛の父は終始にこにこと嬉しそうだった。
「はい。あ、それでおじ様。新東京フィルさんから次の公演のご招待チケットを頂いたんです。2月14日の夜の公演ですが、どうされますか?会場に桐生ホールディングスからお花を贈ろうとは思っていますが」
「うーん、行きたいが難しいと思う。朱里ちゃんは行けそうかい?」
「はい。大丈夫です」
「それなら、瑛と朱里ちゃんで行ってきてくれ」
えっ!と朱里は声を上げる。
「おじ様、それはだめですよ」
「ん?どうしてだい?」
「だって聖美さんがいらっしゃるでしょう?2月14日って、バレンタインデーですよ」
「あー、そうか」
朱里は今度は瑛に話しかける。
「部長。あとでチケットを2枚、フィアンセの方の分もお渡しします。私は一人で行きますので」
すると、瑛の母が驚いたように顔を上げた。
「ええー?朱里ちゃん、瑛のこと部長って呼んでるの?どうして?」
え…と朱里は面食らう。
「それは、職場でそういう立場ですし…」
「たからってそんな、ここは職場でもないのに。ねえ、あなた」
「そうだよ。それにうちの社は外国人スタッフも多いから、皆フランクに名前で呼んでるよ」
朱里は、いえいえと手で否定する。
「うちの部署はこの呼び方で通ってますので」
「まあ、なんだか寂しいわね。それに朱里ちゃん。そのバレンタインコンサート、一人で行くの?どなたか男性をお誘いしたら?」
「いえ、心当たりもありませんし。一人で行きます」
まあ…と、瑛の母は困ったように頬に手をやる。
「それならせめて、菊川が付き添ってちょうだい。朱里ちゃんみたいな年頃の可愛いお嬢さんを、一人でなんて行かせられないわ」
部屋の隅に控えていた菊川が、かしこまりましたと返事をする。
「え?でも、菊川さんは部長とフィアンセをお送りしないといけませんよね?私、本当に一人で大丈夫ですから」
朱里がそう言うと、それまでじっと黙ったままだった瑛が顔を上げた。
「一緒の車で行けばいい。彼女も君に会いたがっているし」
「あ、そうですか…」
朱里としても、ずっと聖美と連絡を取っていないのが気がかりだった。
カルテットの秋のコンサートもクリスマスコンサートも、聴きに来てくれたお礼だけメッセージを送ったが、それ以上のやり取りはしていなかった。
(元気なのかしら?春休みには結納だもんね。準備に忙しくしているのかな)
バレンタインコンサートで会ったら、久しぶりに話をしてみようと朱里は思った。
*****
「朱里さん、お久しぶりです!」
無事にテスト期間も終わり、迎えたバレンタインデーの夜。
菊川が開けたドアから車に乗り込んだ聖美が、嬉しそうに朱里に笑いかける。
「聖美さん、お久しぶり。元気だった?」
「ええ。朱里さんもお元気そうで」
助手席に瑛が座ると、運転席に回った菊川が車を発車させた。
「朱里さん、今日はコンサートへのお招きありがとうございます」
「ううん、私が手配した訳じゃないの。仕事の関係でチケットを頂いたのよ」
「まあ!朱里さん、コンサート関係のお仕事をされているのですか?」
え?と朱里は戸惑う。
(瑛、ひょっとして何も話してないのかしら?)
そうだとしたら、自分の口からは何も言えない。
「うん、少しツテがあって。たまたま頂いたの」
「そうなのですね!でも今日のプログラムも、私の好きな曲ばかりで楽しみです」
「バレンタインだものね。恋人同士で聴くにはピッタリの、甘い愛の曲が多いね」
そう言うと、聖美は顔を曇らせた。
「聖美さん?どうかした?」
「あ、いえ!」
(バレンタインの夜に瑛とコンサートに行けて喜んでいるのかと思ったのに、なんだか元気なさそう。どうしたのかしら?)
すると聖美が急に顔を上げて、朱里に向き直った。
「朱里さん。去年の秋の『愛の夢』とても素敵でした。あの曲にはどんな想いがあったのですか?」
「え?そうね、んー。最初はどう弾けばいいのか悩んだんだけど、先輩からアドバイスもらって、その通りに弾いたの」
「…そうなのですか」
朱里は、適当にごまかした事がばれないように、すぐさま視線を逸らす。
そっと横目で聖美の様子をうかがうと、浮かない表情でうつむいていた。
(んー、これは今日も、菊川さんとのラブラブ作戦発動ね)
朱里は気合いを入れて頷いた。
やがてコンサートホールに到着し、バレーパーキングのスタッフがドアを開けると、車から降りた瑛と菊川がそれぞれ聖美と朱里に手を差し伸べる。
そのまま2組で腕を組みながらエントランスに入った。
「菊川さん、はい!プログラム」
「あ、ありがとうございます」
「楽しみねえ。あ、ほら!この曲、私大好きなのー」
そう言って朱里は、菊川の顔を下から覗き込んで笑いかける。
菊川はギョッとしたように身を引いた。
朱里はグイッと菊川の腕を引き寄せて、小声で囁く。
「菊川さん。今夜もラブラブ作戦でお願いします」
「え?あ、はい」
背後の瑛と聖美の様子をチラリと振り返ってから、菊川は仕方なく頷いた。
「わー、カップルがたくさん!今日はバレンタインデーですものね。皆さんドレスアップしてて素敵!でも私の菊川さんが一番かっこいい♡」
「え、本当ですか?」
朱里は菊川の肩に手を置いて背伸びすると、耳元に口を寄せて呟く。
「嘘です。ごめんなさい」
「…は?」
目が点になる菊川をよそに、ロビーに桐生ホールディングスが贈った大きな花を見つけた朱里は、さりげなく花のそばに菊川を立たせた。
「菊川さん、写真撮りますよ。はい、笑ってー。あ、今度は二人で自撮りしましょ!」
菊川に顔を寄せ、嬉しそうにはしゃぐ朱里を、瑛と聖美は気恥ずかしくなりながら見守っていた。
「あの…、瑛さん」
「はい、何でしょう?」
「これ…よろしければどうぞ」
そう言って、聖美は小さな箱を瑛に差し出す。
え?と瑛は立ち止まった。
「バレンタインデーですので、私からもチョコを…」
「あ、ありがとうございます」
きっと受け取りやすいように考えてくれたのだろう、その小箱はジャケットの内ポケットに入る大きさだった。
「お口に合うとよろしいのですけど」
「いえ、お気持ちだけでも充分嬉しいです。では参りましょう」
瑛は、はにかんだ笑みでうつむく聖美をホールへと促した。
*****
「皆様、本日は新東京フィルハーモニー交響楽団のバレンタイン・ガラ・コンサートへようこそお越しくださいました」
開演時間になり、まずは赤いドレスの司会女性が挨拶する。
「今日はバレンタインデーということで、客席にもたくさんのカップルの方がいらしてくださっていますね。普段はあまりクラシック音楽をホールで聴く機会がないけれど、今日は恋人に誘われて来てみた、という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方々にも楽しんで頂けるよう、そして恋人との素敵なひと時を過ごしていただけるようにと、今夜は甘い愛の曲を取り揃えてお贈りいたします」
朱里はワクワクとプログラムに目を落とす。
第一部は、シューマンの『献呈』や、クライスラーの『美しきロスマリン』など、短く聴きやすい曲が続く。
休憩を挟んだ第二部では、司会女性と共にマエストロの東条もマイクを握った。
「えー、皆様すでに熱い恋の熱気に包まれているようですが、まだまだ曲は続きます。本当は長い曲なのですが、恋は盲目と申しますし、今夜は特別に甘いメロディを抜粋して演奏いたします。2023年に生誕150周年を迎えるラフマニノフが作曲した『交響曲第二番』より第三楽章、そして同じくラフマニノフ作曲『パガニーニの主題による狂詩曲』より第十八変奏、2曲続けてお聴きください」
一瞬たりとも聴き逃すまいと、朱里はステージを凝視する。
ホール中の空気を震わせる甘美な音色、うっとりと美しいメロディに、朱里は胸がいっぱいになる。
最後の曲はワーグナー作曲、歌劇『ローエングリン』より『エルザの大聖堂への行進』
これも朱里の大好きな曲だった。
静かに厳かに奏でられる冒頭から、ラストにかけて徐々に増していく壮大さに、朱里は感動で胸が震える。
曲が終わって拍手を送りながらも、朱里は涙を止めることが出来なかった。
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「あ、栗田さん!桐生さんも。本日はありがとうございました!」
ホールを出てロビーに下りた途端、楽団の事務局長に声をかけられた。
「良かった、見つけられて。一言ご挨拶しようと、お二人を探していたんです」
「あ、そうだったんですね」
朱里は菊川に目線を送り、聖美のエスコートを任せた。
「本日はお招きいただき、本当にありがとうございました。とても素晴らしい演奏で、感激いたしました」
朱里は瑛と並んで頭を下げる。
「こちらこそ。とても豪華なお花と祝電を頂き、ありがとうございました。あ、マエストロもお二人に出来れば挨拶したいと申しておりました。よろしければ控え室にご案内させてください」
「はい」
朱里は菊川を振り返る。
菊川はクロークに預けておいた差し入れを朱里に渡し、聖美さんは私が…と頷いてみせた。
「ありがとう。よろしくお願いします」
朱里と瑛は、事務局長に連れられて東条の控え室へ行く。
「マエストロ、桐生ホールディングスの桐生さんと栗田さんです」
「おー!どうぞどうぞ」
部屋の中から大きな声が返ってきて、事務局長がドアを開けた。
「失礼いたします。終演直後でお疲れのところ、恐れ入ります。本日は素晴らしい演奏会にお招きいただき、ありがとうございました。こちらはよろしければ皆様でどうぞ」
朱里が深々と頭を下げて差し入れを渡すと、これはこれは、お気遣いありがとう!と爽やかに笑いかけられる。
「いかがでしたか?楽しんでいただけましたか?」
「はい!それはもう…、感動で、胸が…」
そこまで言うと、朱里は思い出して言葉を詰まらせ、また涙をこぼし始めた。
「おやおや、綺麗な女性を泣かせてしまいましたね」
東条が苦笑いする。
「もう本当に、私の好きな曲ばかりで。とても幸せでした。ありがとうございました」
「こちらこそ。素敵な涙をありがとう!演奏者冥利に尽きます。朱里さんは心の綺麗な方ですね。どうぞこれからも、その純粋さを大事にしてくださいね」
「はい!」
朱里は泣き笑いの表情で頷いた。
*****
「それで、これが桐生ホールディングスから贈ったお花の写真です。ロビーの良く目立つ所に飾っていただいてました」
あれから菊川の運転する車で聖美を送って行き、瑛の屋敷に戻ってくると、朱里は瑛の父に今日のことを報告していた。
「うん、なかなかセンスの良いお花だね。どうして菊川が嬉しそうに一緒に写っているのか不思議だけど」
それはまあ、色々ありまして…と朱里は笑ってごまかす。
「終演後、事務局長とマエストロにお会いして、差し入れをお渡ししました。お花と祝電も、ありがとうございましたとおっしゃっていました。それでおじ様。来週中には、未来ハーモニーホールでの演奏会について、おじ様を交えて打ち合わせをしたいと話していまして…。演奏会は3月の終わりですから、そろそろ具体的なコンセプトや演奏会のタイトル、曲目を決めていければと」
「そうだね。私もスケジュールを調整するから、先方と日程を決めてくれるかい?」
「はい、承知しました」
その時、千代が朱里に小さなデザートプレートをサーブしてくれた。
「朱里お嬢様、よろしければどうぞ。バレンタインのトリュフチョコレートです」
「わあー!ありがとう、千代さん。そう言えば私、今日誰からももらわなかったから、嬉しい!」
パクッとチョコを頬張り満面の笑みで味わっていると、隣に座る瑛が、ん?と首をかしげた。
「おい、朱里。バレンタインってどういう日か分かってるか?」
途端に朱里はムッとする。
「部長。下の名前で呼ばない約束ですよね?」
「それはいいから…」
「よくないです!大体、部長からそう言われたのに、どうしていつも約束破るんですか?」
「分かったよ!栗田さん!バレンタインデーはどういう日か分かりますか?」
「分かりますよ!それくらい。チョコをもらう日です」
「誰から?」
「男の人から。あー、そう言えば私、会社で義理チョコすらもらってなーい」
瑛はやれやれとため息をつく。
「栗田さん。あなたがもし女性だとすると、勘違いしてますよ」
「はあー?部長、またセクハラですか?」
「違うっつーの!あーもう、めんどくせー。朱里、バレンタインデーは女の子が好きな男にチョコをあげる日だ!」
ん?と朱里は固まったまま瞬きを繰り返す。
「女の子が男の人に?ってことは、私から?」
「そう!ちなみにお前がさっき言ってた義理チョコ。今日、田畑さんも川辺さんも、お前からもらえるかなってソワソワしてたぞ」
「えー!!嘘でしょーー?!」
両手で頬を押さえて絶叫したあと、朱里は慌てて厨房に駆け込んだ。
「千代さーん!さっきのチョコ、まだ残ってるー?」
瑛は、はあ…と大きくため息をついた。
*****
「田畑さん!川辺さん!1日遅れちゃってすみません。はい、バレンタインのチョコ」
次の日。
出勤するなり朱里は二人に、にっこりと小さな箱を渡す。
「わー、ありがとう!てっきり朱里ちゃんからはもらえないのかと思ってたよ」
「そうそう。こう見えて昨日俺達ちょっとへこんでたんだよ」
「そうなんですかー?すみません、遅れちゃって。でももちろんお二人にお渡しするつもりでしたよ!」
瑛の視線が突き刺さるが、気にせず朱里は明るく振る舞う。
「嬉しいなあ。おっ、手作りチョコだ!」
「本当だ!だから朱里ちゃん、昨日は間に合わなかったの?」
「そうとも言いますかねー?お口に合うといいんですが」
二人は早速チョコを頬張った。
「んー!うまい!」
「これ、高級チョコレート店の味だよ!」
凄いな、朱里ちゃん、ともてはやされ、えへへーと朱里は笑う。
「はい、部長もどうぞ」
「どうも!」
嫌味たっぷりに言ってから受け取った瑛は、バリッと包装紙を破ってチョコを口に放り込む。
「どうですか?美味しいでしょ?」
「当たり前だ!!」
ニヤニヤする朱里と仏頂面の瑛に、田畑と川辺は顔を見合わせて首をひねっていた。
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