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クリスマスコンサート
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「やあやあみんな。メリークリスマース!」
サンタに扮した奏が、白い大きな袋を抱えて客席の前に現れる。
「わあ、サンタさんだー」
早速子ども達の可愛い声が上がった。
「みんな、良い子にしてたかな?」
「うん!」
「そうかそうか。それならサンタさんがプレゼントを配らないとな。おーい!トナカイー!あれ?いないなあ。みんな、トナカイ見た?」
「ううん、見てなーい」
奏サンタは、仕方ないなーと言って、白い袋からスレイベルを取り出した。
「よし、これでトナカイを呼んでみよう!来るかなー?」
そしてシャンシャンとスレイベルを鳴らし始める。
子ども達が注目する中、トナカイに扮した光一が現れた。
だが、可愛げもなくヨタヨタとやって来て、子ども達は、ええー?!と笑い声を上げる。
光一トナカイは、そのまま椅子に座ると居眠りを始めた。
「寝ちゃったよー?どうするのー?」
子ども達が奏サンタに聞く。
「困ったなー。おい、起きろ!みんながプレゼントを待っているんだぞ?」
奏サンタが揺すると、光一トナカイはわざとプイッとあしらった。
あはは!と子ども達はおもしろそうに笑う。
「仕方ない。じゃあまずはみんなに、音楽をプレゼントしようかの。ほーら!サンタさんが楽器を持って来たぞ」
奏サンタが白い袋を広げると、中からチェロが現れた。
「うわー、凄い!」
「凄いじゃろ?これからサンタさんがみんなの知っている曲を演奏するから、よーく聴いていてね」
奏サンタがおもむろにスレイベルを高く掲げる。
シャンシャンと鳴り始めたベルを2小節間聴いてから、朱里と美園が大きなクリスマスツリーの後ろから現れて、ヴァイオリンで『ジングルベル』を弾き始める。
うあ!と客席から歓声が上がり、人々は手拍子と共に歌い出す。
サンタ帽をかぶり、赤いスカートと白いニット姿の朱里と美園は、左右に分かれて、客席の近くを歩きながら笑顔で演奏する。
奏サンタがチェロを弾く手を止めて光一トナカイを揺すると、はっ!と起き上がった光一トナカイが、椅子の後ろからヴィオラを取り出して弾き始めた。
「ああー、トナカイさんも!」
子ども達は光一トナカイを指差して笑う。
が、サビの部分になると光一トナカイはヴィオラを置き、スレイベルを鳴らし始めた。
意外な行動に、また子ども達は笑い出す。
朱里も歌いながら、客席のすぐ横を歩いて演奏する。
「あーちゃー!」
優が笑いかけてくれ、朱里も笑顔で頷いた。
やがて朱里と美園も前に戻り、四人揃ってジングルベルを弾き終えた。
大きな拍手が起こる。
「皆さーん、メリークリスマース!」
メリークリスマス!と、返事が返ってくる。
「桐生ホールディングスがお届けするクリスマスコンサートへようこそ!今日はもうすぐやって来るクリスマスを楽しみにしながら、ワクワクした気持ちで一緒に音楽を楽しんでくださいね」
朱里のMCのあと、早速2曲目に入る。
何の曲か分かった子ども達が、楽しそうに歌ってくれた。
今度は光一トナカイも、客席の近くまで行ってヴィオラを弾く。
子ども達は、光一トナカイのおかしな動きに釘付けになり、指を指したり笑いながら聴いている。
第一部は、明るく楽しい雰囲気で盛り上がり、10分の休憩を挟むことになった。
控え室で朱里達はシックな装いに着替える。
雅も、原稿を手に念入りに最終チェックをしていた。
「ああー、緊張してきた。朱里ちゃん、大丈夫かな?私」
「大丈夫ですよー」
「そうそう。何かあったら、トナカイの俺がフォローしますから」
光一が言うと奏が笑う。
「お前それ、余計に事態が悪化するだけだと思うぞ」
あはは!と皆で笑い合う。
「お姉さん、一緒に楽しみましょう!優くんに素敵なお話を聞かせてあげてください」
「うん、そうね。がんばる!」
そして五人で円陣を組んで気合いを入れた。
*****
第二部は照明を落とし、壁際にキャンドルを並べた中で始まる。
まずはカルテットの四人で『きよしこの夜』を演奏した。
しっとりとした雰囲気と、客席から聴こえてくる綺麗な歌声に、朱里は思わずうっとりした。
「それでは皆様、第二部は雰囲気を変えて、クリスマス・イブのお話を、音楽と共にお楽しみください。さあ、どんな物語が始まるのでしょうか」
そう言って朱里が雅にアイコンタクトを送る。
少し離れた所にいた雅が、客席の前に歩み出てお辞儀をすると、用意されたハイチェアに座った。
隣に置いてある譜面台には『くるみ割り人形』と絵本の表紙のように書かれた大きな画用紙が置いてある。
雅が作ってくれた手描きの絵本だ。
ゆっくりと雅が語り出す。
「これは、クリスマス・イブの物語。プレゼントを心待ちにしている女の子、クララの不思議なお話です。さあ、では早速始めましょう。『くるみ割り人形』の始まり、始まり」
雅のセリフが終わったタイミングで素早く朱里が合図し、楽器を構えていた皆で一斉に演奏を始める。
最初の曲は『小序曲』
おもちゃのオーケストラのような可愛らしい曲だ。
物語への期待をワクワクと高まらせるこの曲が終わると、雅が絵本をめくり、物語が始まる。
「今日はクリスマス・イブ。クララの家にもたくさんのお客様が次々とやって来ました。ドロッセルマイヤーおじさんは、今年もクララにプレゼントを渡してくれます。
『メリークリスマス!クララ。さあ、プレゼントだよ』
『ありがとう!おじ様。これはなあに?』
『くるみ割り人形だよ。固いくるみの殻をカリッと噛んで割ってくれるんだ』
クララは初めて見る、ちょっと不格好なくるみ割り人形をひと目で気に入りました」
ここで『行進曲』を演奏する。
弾むようなメロディに、子ども達がうきうきとツリーの周りを踊っている姿が目に浮かぶ。
雅の絵にもその情景が愛らしく描かれていた。
曲が終わると、雅は絵をめくりながら語りを続ける。
「クララが大事にくるみ割り人形を胸に抱いていると、兄のフランツにからかわれ、もみ合っているうちに人形を床に落として壊してしまいました。
『大変!くるみ割り人形が、壊れちゃった!』
クララの目から涙が溢れます。
壊れたくるみ割り人形をハンカチでそっとくるみ、ツリーのそばに寝かせました。
真夜中。くるみ割り人形が心配になったクララは、ベッドからそっと抜け出します。するとクララの体は小さくなり、ねずみ達に取り囲まれてしまいました。
『どうしよう、だれか助けて!』
そこへ、くるみ割り人形が他の人形を引き連れて助けに来てくれました。クララを守ってねずみ達と戦います。
『あぶない!』
クララも勇気を出して、くるみ割り人形に襲いかかろうとしたねずみの王様にスリッパをぶつけました。
ねずみ達が退散していなくなると、くるみ割り人形は王子様の姿になりました。
『ありがとう、クララ。私はねずみの魔法で人形に変えられていた、お菓子の国の王子です。お礼にあなたをお菓子の国に招待しましょう』
王子はクララの手を取って、お菓子の国へといざないました」
雅が絵本をめくりながら話を続ける。
「最初に現れたのは金平糖の女王様。金平糖達がクララに踊りを見せてくれます」
そして『金平糖の精の踊り』を演奏する。
幻想的で可愛らしい一曲だ。
続いては、アップテンポで力強い、ロシアの踊り『トレパーク』
それからアラビアの『コーヒーの精の踊り』
中国の『お茶の精の踊り』では、妖精が飛んだり跳ねたりする様子をピチカートで表す。
フランスの『葦笛の踊り』
そして最後は『花のワルツ』で華やかに優雅に締めくくる。
「クララはベッドの中で目を覚ましました。そばにはあのくるみ割り人形が。クララは、素敵な夢を見せてくれたくるみ割り人形を大切に抱きしめました。おしまい」
ゆっくりと雅が絵本を閉じ、客席から拍手が起こる。
雅はお辞儀をして微笑み、朱里達を振り返る。
促されて四人も立ち上がりお辞儀をした。
鳴り止まない拍手に応えて、アンコールは皆で楽しめる定番のクリスマスソングを演奏する。
子ども達に、ペットボトルにビーズを入れた手作りマラカスを配り、一緒に鳴らしてもらいながら、大いに盛り上がってコンサートは幕を閉じた。
「メリークリスマス!サンタさんからプレゼントがあるよー」
再びサンタに扮した奏が、今度こそプレゼントをたくさん入れた白い袋を持って現れると、子ども達はあっという間に奏サンタを取り囲む。
「はーい、順番にね。ちゃんとみんなの分あるからね」
奏は一人一人、頭をなでながらプレゼントを渡していく。
「ありがとう!サンタさん」
子ども達の明るい声を聞きながら、朱里も嬉しさに目を細める。
すると、女の子の手を引いたお母さんが、朱里と雅に声をかけてきた。
「あの、とっても楽しかったです。コンサートホールに行くのは敷居が高くて、なかなか行けなくて。でもこんなふうに身近で素晴らしい演奏会をしていただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ。聴いてくださってありがとうございました。お姉ちゃん、楽しんでくれたかな?」
朱里がしゃがんで女の子に尋ねると、はにかんだ笑顔で、うん!と頷いてくれた。
「良かった!これからも音楽を楽しんでね」
「うん!また演奏しに来てね」
朱里と雅は、笑顔で女の子に頷いた。
「ママー!」
優が可愛い声で雅に駆け寄る。
「優!ママのお話、聞いてくれた?」
「うん!」
そして雅の手を引っ張り、どこかに連れて行こうとする。
「ん?どこに行くの?優」
「サンタさん」
朱里は思わず笑った。
「そっか。優くんもサンタさんにプレゼントもらわなきゃね」
雅に抱かれて奏サンタからプレゼントを受け取った優は、満面の笑みで朱里を見る。
「あーちゃ!みてー」
「良かったねー、優くん。サンタさんにプレゼントもらえたね」
「うん!」
朱里は頷くと、まだ熱気に包まれている会場を見渡した。
子どもも大人も、皆が晴れ晴れとした表情で笑い合っている。
そんな光景がただただ嬉しくて、朱里はもう一度微笑んだ。
サンタに扮した奏が、白い大きな袋を抱えて客席の前に現れる。
「わあ、サンタさんだー」
早速子ども達の可愛い声が上がった。
「みんな、良い子にしてたかな?」
「うん!」
「そうかそうか。それならサンタさんがプレゼントを配らないとな。おーい!トナカイー!あれ?いないなあ。みんな、トナカイ見た?」
「ううん、見てなーい」
奏サンタは、仕方ないなーと言って、白い袋からスレイベルを取り出した。
「よし、これでトナカイを呼んでみよう!来るかなー?」
そしてシャンシャンとスレイベルを鳴らし始める。
子ども達が注目する中、トナカイに扮した光一が現れた。
だが、可愛げもなくヨタヨタとやって来て、子ども達は、ええー?!と笑い声を上げる。
光一トナカイは、そのまま椅子に座ると居眠りを始めた。
「寝ちゃったよー?どうするのー?」
子ども達が奏サンタに聞く。
「困ったなー。おい、起きろ!みんながプレゼントを待っているんだぞ?」
奏サンタが揺すると、光一トナカイはわざとプイッとあしらった。
あはは!と子ども達はおもしろそうに笑う。
「仕方ない。じゃあまずはみんなに、音楽をプレゼントしようかの。ほーら!サンタさんが楽器を持って来たぞ」
奏サンタが白い袋を広げると、中からチェロが現れた。
「うわー、凄い!」
「凄いじゃろ?これからサンタさんがみんなの知っている曲を演奏するから、よーく聴いていてね」
奏サンタがおもむろにスレイベルを高く掲げる。
シャンシャンと鳴り始めたベルを2小節間聴いてから、朱里と美園が大きなクリスマスツリーの後ろから現れて、ヴァイオリンで『ジングルベル』を弾き始める。
うあ!と客席から歓声が上がり、人々は手拍子と共に歌い出す。
サンタ帽をかぶり、赤いスカートと白いニット姿の朱里と美園は、左右に分かれて、客席の近くを歩きながら笑顔で演奏する。
奏サンタがチェロを弾く手を止めて光一トナカイを揺すると、はっ!と起き上がった光一トナカイが、椅子の後ろからヴィオラを取り出して弾き始めた。
「ああー、トナカイさんも!」
子ども達は光一トナカイを指差して笑う。
が、サビの部分になると光一トナカイはヴィオラを置き、スレイベルを鳴らし始めた。
意外な行動に、また子ども達は笑い出す。
朱里も歌いながら、客席のすぐ横を歩いて演奏する。
「あーちゃー!」
優が笑いかけてくれ、朱里も笑顔で頷いた。
やがて朱里と美園も前に戻り、四人揃ってジングルベルを弾き終えた。
大きな拍手が起こる。
「皆さーん、メリークリスマース!」
メリークリスマス!と、返事が返ってくる。
「桐生ホールディングスがお届けするクリスマスコンサートへようこそ!今日はもうすぐやって来るクリスマスを楽しみにしながら、ワクワクした気持ちで一緒に音楽を楽しんでくださいね」
朱里のMCのあと、早速2曲目に入る。
何の曲か分かった子ども達が、楽しそうに歌ってくれた。
今度は光一トナカイも、客席の近くまで行ってヴィオラを弾く。
子ども達は、光一トナカイのおかしな動きに釘付けになり、指を指したり笑いながら聴いている。
第一部は、明るく楽しい雰囲気で盛り上がり、10分の休憩を挟むことになった。
控え室で朱里達はシックな装いに着替える。
雅も、原稿を手に念入りに最終チェックをしていた。
「ああー、緊張してきた。朱里ちゃん、大丈夫かな?私」
「大丈夫ですよー」
「そうそう。何かあったら、トナカイの俺がフォローしますから」
光一が言うと奏が笑う。
「お前それ、余計に事態が悪化するだけだと思うぞ」
あはは!と皆で笑い合う。
「お姉さん、一緒に楽しみましょう!優くんに素敵なお話を聞かせてあげてください」
「うん、そうね。がんばる!」
そして五人で円陣を組んで気合いを入れた。
*****
第二部は照明を落とし、壁際にキャンドルを並べた中で始まる。
まずはカルテットの四人で『きよしこの夜』を演奏した。
しっとりとした雰囲気と、客席から聴こえてくる綺麗な歌声に、朱里は思わずうっとりした。
「それでは皆様、第二部は雰囲気を変えて、クリスマス・イブのお話を、音楽と共にお楽しみください。さあ、どんな物語が始まるのでしょうか」
そう言って朱里が雅にアイコンタクトを送る。
少し離れた所にいた雅が、客席の前に歩み出てお辞儀をすると、用意されたハイチェアに座った。
隣に置いてある譜面台には『くるみ割り人形』と絵本の表紙のように書かれた大きな画用紙が置いてある。
雅が作ってくれた手描きの絵本だ。
ゆっくりと雅が語り出す。
「これは、クリスマス・イブの物語。プレゼントを心待ちにしている女の子、クララの不思議なお話です。さあ、では早速始めましょう。『くるみ割り人形』の始まり、始まり」
雅のセリフが終わったタイミングで素早く朱里が合図し、楽器を構えていた皆で一斉に演奏を始める。
最初の曲は『小序曲』
おもちゃのオーケストラのような可愛らしい曲だ。
物語への期待をワクワクと高まらせるこの曲が終わると、雅が絵本をめくり、物語が始まる。
「今日はクリスマス・イブ。クララの家にもたくさんのお客様が次々とやって来ました。ドロッセルマイヤーおじさんは、今年もクララにプレゼントを渡してくれます。
『メリークリスマス!クララ。さあ、プレゼントだよ』
『ありがとう!おじ様。これはなあに?』
『くるみ割り人形だよ。固いくるみの殻をカリッと噛んで割ってくれるんだ』
クララは初めて見る、ちょっと不格好なくるみ割り人形をひと目で気に入りました」
ここで『行進曲』を演奏する。
弾むようなメロディに、子ども達がうきうきとツリーの周りを踊っている姿が目に浮かぶ。
雅の絵にもその情景が愛らしく描かれていた。
曲が終わると、雅は絵をめくりながら語りを続ける。
「クララが大事にくるみ割り人形を胸に抱いていると、兄のフランツにからかわれ、もみ合っているうちに人形を床に落として壊してしまいました。
『大変!くるみ割り人形が、壊れちゃった!』
クララの目から涙が溢れます。
壊れたくるみ割り人形をハンカチでそっとくるみ、ツリーのそばに寝かせました。
真夜中。くるみ割り人形が心配になったクララは、ベッドからそっと抜け出します。するとクララの体は小さくなり、ねずみ達に取り囲まれてしまいました。
『どうしよう、だれか助けて!』
そこへ、くるみ割り人形が他の人形を引き連れて助けに来てくれました。クララを守ってねずみ達と戦います。
『あぶない!』
クララも勇気を出して、くるみ割り人形に襲いかかろうとしたねずみの王様にスリッパをぶつけました。
ねずみ達が退散していなくなると、くるみ割り人形は王子様の姿になりました。
『ありがとう、クララ。私はねずみの魔法で人形に変えられていた、お菓子の国の王子です。お礼にあなたをお菓子の国に招待しましょう』
王子はクララの手を取って、お菓子の国へといざないました」
雅が絵本をめくりながら話を続ける。
「最初に現れたのは金平糖の女王様。金平糖達がクララに踊りを見せてくれます」
そして『金平糖の精の踊り』を演奏する。
幻想的で可愛らしい一曲だ。
続いては、アップテンポで力強い、ロシアの踊り『トレパーク』
それからアラビアの『コーヒーの精の踊り』
中国の『お茶の精の踊り』では、妖精が飛んだり跳ねたりする様子をピチカートで表す。
フランスの『葦笛の踊り』
そして最後は『花のワルツ』で華やかに優雅に締めくくる。
「クララはベッドの中で目を覚ましました。そばにはあのくるみ割り人形が。クララは、素敵な夢を見せてくれたくるみ割り人形を大切に抱きしめました。おしまい」
ゆっくりと雅が絵本を閉じ、客席から拍手が起こる。
雅はお辞儀をして微笑み、朱里達を振り返る。
促されて四人も立ち上がりお辞儀をした。
鳴り止まない拍手に応えて、アンコールは皆で楽しめる定番のクリスマスソングを演奏する。
子ども達に、ペットボトルにビーズを入れた手作りマラカスを配り、一緒に鳴らしてもらいながら、大いに盛り上がってコンサートは幕を閉じた。
「メリークリスマス!サンタさんからプレゼントがあるよー」
再びサンタに扮した奏が、今度こそプレゼントをたくさん入れた白い袋を持って現れると、子ども達はあっという間に奏サンタを取り囲む。
「はーい、順番にね。ちゃんとみんなの分あるからね」
奏は一人一人、頭をなでながらプレゼントを渡していく。
「ありがとう!サンタさん」
子ども達の明るい声を聞きながら、朱里も嬉しさに目を細める。
すると、女の子の手を引いたお母さんが、朱里と雅に声をかけてきた。
「あの、とっても楽しかったです。コンサートホールに行くのは敷居が高くて、なかなか行けなくて。でもこんなふうに身近で素晴らしい演奏会をしていただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ。聴いてくださってありがとうございました。お姉ちゃん、楽しんでくれたかな?」
朱里がしゃがんで女の子に尋ねると、はにかんだ笑顔で、うん!と頷いてくれた。
「良かった!これからも音楽を楽しんでね」
「うん!また演奏しに来てね」
朱里と雅は、笑顔で女の子に頷いた。
「ママー!」
優が可愛い声で雅に駆け寄る。
「優!ママのお話、聞いてくれた?」
「うん!」
そして雅の手を引っ張り、どこかに連れて行こうとする。
「ん?どこに行くの?優」
「サンタさん」
朱里は思わず笑った。
「そっか。優くんもサンタさんにプレゼントもらわなきゃね」
雅に抱かれて奏サンタからプレゼントを受け取った優は、満面の笑みで朱里を見る。
「あーちゃ!みてー」
「良かったねー、優くん。サンタさんにプレゼントもらえたね」
「うん!」
朱里は頷くと、まだ熱気に包まれている会場を見渡した。
子どもも大人も、皆が晴れ晴れとした表情で笑い合っている。
そんな光景がただただ嬉しくて、朱里はもう一度微笑んだ。
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