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心許せる親友
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「朱里ー、学食行こっ!」
午前中の講義を終えると、仲の良い香澄に声をかけられた。
「うん、ちょっと待ってね」
教科書とノートをカバンに入れ、朱里は立ち上がって香澄と一緒に食堂へ向かう。
急いで向かったが、既にほとんどの席が埋まっていた。
なんとか二人分の席を見つけ、カバンを置いてから注文カウンターでメニューを選ぶ。
「今日の日替わりランチ、チキンカツ丼だって。それにしようっと」
そう言って朱里は券売機で食券を買う。
香澄はハンバーグ定食にすると言って、離れたコーナーに注文しに行った。
それぞれトレイを手にテーブルに戻る。
「ね、朱里ってさ。就職先どこにするの?やっぱり桐生ホールディングス?」
香澄に聞かれ、朱里は食べかけのご飯が喉に詰まりそうになる。
「ど、どうしてそうなるの?」
コップの水を飲んで落ち着いてからそう言うと、香澄はハンバーグをナイフで切りながらサラッと言う。
「だって、普通ならそうするでしょ?あんな大企業とお近づきになってるんだから、そのままそこで雇ってもらおうって」
慌てて朱里は否定する。
「そんなこと、考えてもみなかったよ」
「嘘でしょ?私のゼミの子達もこの間ヒソヒソ話してたよ。栗田さんって、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染らしいよ。羨ましいーとかなんとか」
「だからってそんな。私、教育学部だよ?それにたまたま瑛と幼馴染ってだけで、桐生ホールディングスとどうとかって関係じゃないもん」
すると香澄は、ひえっと仰け反る。
「瑛?!って、呼び捨てなの?桐生ホールディングスの御曹司を」
「それはまあ、幼馴染だもん」
「たとえそうでも、御曹司を呼び捨てに出来るなんて、朱里くらいだよ。ご両親とも知り合いなんでしょ?」
「うん、まあね」
煮え切らない口調の朱里に、香澄はグッと顔を寄せる。
「朱里さ、今はまだ余裕ぶってられるけど、いざ就職活動始まったら考え変わると思うよ。私の彼、大変だったもん。本命はおろか、第五希望くらいまであっという間に不採用でさ。どんどん追い詰められていって、もうそばで見てる私まで辛かったもん」
香澄の彼は、大学のサークルで2つ上の先輩だった人で、この春から新社会人となった。
香澄の言葉からも、その彼の就職活動がどんなに大変だったかは想像つく。
だが、朱里はどうしても自分の就職と瑛を繋げて考えることは出来なかった。
昼休みが終わり、朱里は香澄と別れて講義室へ向かう。
すると後ろから、君、ちょっといい?と声をかけられた。
振り向くと、爽やかな笑顔を浮かべた男性が朱里を見ている。
「はい、何でしょうか?」
朱里は向き合って尋ねた。
「うん、あのさ。さっき俺、学食で君達の後ろのテーブルにいて、偶然会話が聞こえてきたんだ。君、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染なんだって?」
嫌な予感がして、朱里は表情を曇らせる。
「俺、今四年生で、ちょうど就職活動してるところなんだけど、本命は桐生ホールディングスなんだ。もし良かったら、君の幼馴染を紹介してくれないかな?一緒に遊ぶ時に、俺も誘ってくれたら嬉しいんだけど」
朱里はうつむいて小さくため息をついてから顔を上げる。
「あの、申し訳ないのですが、それは出来かねます。私とあなたは友人でもなんでもないですし、そんな理由で彼に紹介することは出来ません」
「じゃあさ、君、まずは俺とつき合ってくれない?」
…は?と、朱里は目を見開く。
「いったいなぜ、私があなたと?」
「いいじゃない。俺、これでも結構モテる方なんだよ」
「な、何を言ってるんですか?だからってどうして…」
「俺、今まで自分から告白して断られたこと一度もないんだぜ。それとも君、今誰かとつき合ってるとか?」
いえ、と小さく朱里が下を向いて答えると、じゃあいいじゃない!と、男性は嬉しそうに笑う。
朱里はきゅっと口元を引き締めてから、顔を上げた。
「お断りします。私はあなたとおつき合いする気も、幼馴染をあなたに紹介するつもりもありません。それでは」
あ、待って!と呼び止める声を聞きながら、朱里は足早に立ち去った。
*****
(なんだか眠れないな…)
ベッドの上で朱里は寝返りを打つ。
時計を見ると、深夜の1時だった。
昼間、香澄に言われたことと、男性に呼び止められたことを思い出す。
(そんなふうに見られるなんて…。なんだか悲しいな)
桐生ホールディングスとは無関係の自分ですらそうなのだ。
きっと瑛や雅は、もっともっとこんな気持ちを味わい続けてきたのだろう。
(お姉さんが自動車メーカーの大企業の御曹司と結婚したのも、なんだか頷ける。感覚の違いと言うか、やっぱり何の気兼ねもなく話せる相手じゃないとね)
自分は一般庶民で良かったな、とふと思う。皆と一緒なのが一番楽なのかもしれない。
(いつか瑛も、家柄が釣り合うどこかのご令嬢と結婚するのかしら…。やだ!なんだか想像つかない)
気品あふれる優雅な雰囲気のお嬢様と、その隣に並ぶ瑛を想像して、思わず朱里は苦笑いを浮かべる。
(大丈夫なのかしら、瑛。なんて、人のこと心配してる場合じゃないわよね、私も)
あれこれ考えているうちに目が冴えてしまった。
朱里は身体を起こし、ベッドの横の窓を半分開けて外を眺める。
(わあ、今日は満月なのね。綺麗…)
するとその時、塀を隔てた桐生家の一番端の部屋の窓が、スッと音もなく開いた。
「朱里さん」
「菊川さん!」
黒いTシャツ姿の菊川が窓から顔を出し、朱里は驚いて大きな声を上げてしまう。
「あ、ごめんなさい」
慌てて小声で謝る朱里に、菊川が笑いかける。
「眠れませんか?」
「え?あの、少し考え事をしていて…。もしかして、菊川さんのこと起こしちゃいましたか?」
「いえ、とんでもない。まだ起きてましたから。それより朱里さん、眠れない程考え事を?」
あ、いえ…と朱里は視線を落とす。
「今日大学で、ちょっと考えさせられる事があって」
菊川は窓の桟に両腕を置き、朱里に先を促すように頷いた。
「桐生ホールディングスに就職したいと思っている男の人から声をかけられたんです。私と瑛が幼馴染だと聞いて、瑛を紹介して欲しいって。私が、友人でもないあなたを紹介出来ないと断ったら、それならまずは私とつき合いたいって。それって私と瑛を利用するってことでしょう?だからなんだか落ち込んでしまって。他の人にも、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染なんて羨ましいって思われてるみたいです、私…」
少し間を置いてから、菊川がゆっくりと話し出す。
「親しくない人からは、そんなふうに見られてしまうかもしれません。ですが私は、朱里さんがどんな人か良く知っています。朱里さんだけでなく、瑛さんや雅お嬢様のことも、私は肩書で見ることはありません。私にとって皆さんは、優しくて明るくて、私の大切な方ばかりです。朱里さん、どうか見ず知らずの人にかけられた言葉ではなく、あなたを良く知る私の言葉を信じていただけませんか?あなたはいつも瑛さんやお嬢様に、何の壁も偏見も持たずに接してくださいます。お二人があなたにどんなに救われているか、私は桐生家に仕える者としても、あなたに感謝しています」
朱里は、菊川の言葉を少し考えてみた。
「菊川さん。やっぱり瑛やお姉さんは、今まで色々な偏見の目にさらされてきたの?」
菊川は小さく頷く。
「ええ。物心つく頃から、からかわれたり冷やかされたり、嫌がらせを受けることもありました。思春期になると心を許せる友人も減っていき、特に雅お嬢様はふさぎこまれることもありました。学校でおしゃべりする相手はいても、親友と呼べる人はいないと。瑛さんもお嬢様も、いわゆる普通の公立高校に通われていましたからね。もちろんお二人が望んでそうされたのですが、やはり同級生に壁を作られてしまうこともあったようです。今も瑛さんは、大学でそれこそ毎日色々な人に声をかけられています。就職を斡旋して欲しいと」
朱里はうつむいた。
瑛と一緒だったのは中学が最後。
そこからは別々の高校と大学に通っていた為、学校での様子は朱里には分からなかった。
「そんな、私、知らなくて。だって瑛は会うたびにふざけてて明るいし、お姉さんもいつも私に笑顔で話しかけてくれるから」
「それはあなただからですよ、朱里さん。あなたが、お二人が心を許せる唯一の存在だからです」
思わず朱里は菊川を見つめる。
「私が?二人にとって唯一の?」
「ええ。お二人をそのまま受け止めてくださる、大切な親友なのです」
朱里の心が、ほんわかと温かくなる。
「朱里さん。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかこれからもお二人の親友でいてくださいませんか?」
菊川にそう言われ、朱里は笑顔で頷いた。
「ええ。見ず知らずの人の言葉なんか気にしません。私はいつだって、瑛とお姉さんの味方です。二人がどんな人か良く知っているから」
そう言うと、菊川は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、朱里さん」
「いいえ。菊川さんに話を聞いてもらって、私も心が軽くなりました。ありがとうございました」
月の光の中、二人で微笑み合う。
「それじゃあ、おやすみなさい。菊川さん」
「おやすみなさい、朱里さん。良い夢を」
ふふっと笑いかけてから、朱里は頷いて窓を閉めた。
午前中の講義を終えると、仲の良い香澄に声をかけられた。
「うん、ちょっと待ってね」
教科書とノートをカバンに入れ、朱里は立ち上がって香澄と一緒に食堂へ向かう。
急いで向かったが、既にほとんどの席が埋まっていた。
なんとか二人分の席を見つけ、カバンを置いてから注文カウンターでメニューを選ぶ。
「今日の日替わりランチ、チキンカツ丼だって。それにしようっと」
そう言って朱里は券売機で食券を買う。
香澄はハンバーグ定食にすると言って、離れたコーナーに注文しに行った。
それぞれトレイを手にテーブルに戻る。
「ね、朱里ってさ。就職先どこにするの?やっぱり桐生ホールディングス?」
香澄に聞かれ、朱里は食べかけのご飯が喉に詰まりそうになる。
「ど、どうしてそうなるの?」
コップの水を飲んで落ち着いてからそう言うと、香澄はハンバーグをナイフで切りながらサラッと言う。
「だって、普通ならそうするでしょ?あんな大企業とお近づきになってるんだから、そのままそこで雇ってもらおうって」
慌てて朱里は否定する。
「そんなこと、考えてもみなかったよ」
「嘘でしょ?私のゼミの子達もこの間ヒソヒソ話してたよ。栗田さんって、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染らしいよ。羨ましいーとかなんとか」
「だからってそんな。私、教育学部だよ?それにたまたま瑛と幼馴染ってだけで、桐生ホールディングスとどうとかって関係じゃないもん」
すると香澄は、ひえっと仰け反る。
「瑛?!って、呼び捨てなの?桐生ホールディングスの御曹司を」
「それはまあ、幼馴染だもん」
「たとえそうでも、御曹司を呼び捨てに出来るなんて、朱里くらいだよ。ご両親とも知り合いなんでしょ?」
「うん、まあね」
煮え切らない口調の朱里に、香澄はグッと顔を寄せる。
「朱里さ、今はまだ余裕ぶってられるけど、いざ就職活動始まったら考え変わると思うよ。私の彼、大変だったもん。本命はおろか、第五希望くらいまであっという間に不採用でさ。どんどん追い詰められていって、もうそばで見てる私まで辛かったもん」
香澄の彼は、大学のサークルで2つ上の先輩だった人で、この春から新社会人となった。
香澄の言葉からも、その彼の就職活動がどんなに大変だったかは想像つく。
だが、朱里はどうしても自分の就職と瑛を繋げて考えることは出来なかった。
昼休みが終わり、朱里は香澄と別れて講義室へ向かう。
すると後ろから、君、ちょっといい?と声をかけられた。
振り向くと、爽やかな笑顔を浮かべた男性が朱里を見ている。
「はい、何でしょうか?」
朱里は向き合って尋ねた。
「うん、あのさ。さっき俺、学食で君達の後ろのテーブルにいて、偶然会話が聞こえてきたんだ。君、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染なんだって?」
嫌な予感がして、朱里は表情を曇らせる。
「俺、今四年生で、ちょうど就職活動してるところなんだけど、本命は桐生ホールディングスなんだ。もし良かったら、君の幼馴染を紹介してくれないかな?一緒に遊ぶ時に、俺も誘ってくれたら嬉しいんだけど」
朱里はうつむいて小さくため息をついてから顔を上げる。
「あの、申し訳ないのですが、それは出来かねます。私とあなたは友人でもなんでもないですし、そんな理由で彼に紹介することは出来ません」
「じゃあさ、君、まずは俺とつき合ってくれない?」
…は?と、朱里は目を見開く。
「いったいなぜ、私があなたと?」
「いいじゃない。俺、これでも結構モテる方なんだよ」
「な、何を言ってるんですか?だからってどうして…」
「俺、今まで自分から告白して断られたこと一度もないんだぜ。それとも君、今誰かとつき合ってるとか?」
いえ、と小さく朱里が下を向いて答えると、じゃあいいじゃない!と、男性は嬉しそうに笑う。
朱里はきゅっと口元を引き締めてから、顔を上げた。
「お断りします。私はあなたとおつき合いする気も、幼馴染をあなたに紹介するつもりもありません。それでは」
あ、待って!と呼び止める声を聞きながら、朱里は足早に立ち去った。
*****
(なんだか眠れないな…)
ベッドの上で朱里は寝返りを打つ。
時計を見ると、深夜の1時だった。
昼間、香澄に言われたことと、男性に呼び止められたことを思い出す。
(そんなふうに見られるなんて…。なんだか悲しいな)
桐生ホールディングスとは無関係の自分ですらそうなのだ。
きっと瑛や雅は、もっともっとこんな気持ちを味わい続けてきたのだろう。
(お姉さんが自動車メーカーの大企業の御曹司と結婚したのも、なんだか頷ける。感覚の違いと言うか、やっぱり何の気兼ねもなく話せる相手じゃないとね)
自分は一般庶民で良かったな、とふと思う。皆と一緒なのが一番楽なのかもしれない。
(いつか瑛も、家柄が釣り合うどこかのご令嬢と結婚するのかしら…。やだ!なんだか想像つかない)
気品あふれる優雅な雰囲気のお嬢様と、その隣に並ぶ瑛を想像して、思わず朱里は苦笑いを浮かべる。
(大丈夫なのかしら、瑛。なんて、人のこと心配してる場合じゃないわよね、私も)
あれこれ考えているうちに目が冴えてしまった。
朱里は身体を起こし、ベッドの横の窓を半分開けて外を眺める。
(わあ、今日は満月なのね。綺麗…)
するとその時、塀を隔てた桐生家の一番端の部屋の窓が、スッと音もなく開いた。
「朱里さん」
「菊川さん!」
黒いTシャツ姿の菊川が窓から顔を出し、朱里は驚いて大きな声を上げてしまう。
「あ、ごめんなさい」
慌てて小声で謝る朱里に、菊川が笑いかける。
「眠れませんか?」
「え?あの、少し考え事をしていて…。もしかして、菊川さんのこと起こしちゃいましたか?」
「いえ、とんでもない。まだ起きてましたから。それより朱里さん、眠れない程考え事を?」
あ、いえ…と朱里は視線を落とす。
「今日大学で、ちょっと考えさせられる事があって」
菊川は窓の桟に両腕を置き、朱里に先を促すように頷いた。
「桐生ホールディングスに就職したいと思っている男の人から声をかけられたんです。私と瑛が幼馴染だと聞いて、瑛を紹介して欲しいって。私が、友人でもないあなたを紹介出来ないと断ったら、それならまずは私とつき合いたいって。それって私と瑛を利用するってことでしょう?だからなんだか落ち込んでしまって。他の人にも、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染なんて羨ましいって思われてるみたいです、私…」
少し間を置いてから、菊川がゆっくりと話し出す。
「親しくない人からは、そんなふうに見られてしまうかもしれません。ですが私は、朱里さんがどんな人か良く知っています。朱里さんだけでなく、瑛さんや雅お嬢様のことも、私は肩書で見ることはありません。私にとって皆さんは、優しくて明るくて、私の大切な方ばかりです。朱里さん、どうか見ず知らずの人にかけられた言葉ではなく、あなたを良く知る私の言葉を信じていただけませんか?あなたはいつも瑛さんやお嬢様に、何の壁も偏見も持たずに接してくださいます。お二人があなたにどんなに救われているか、私は桐生家に仕える者としても、あなたに感謝しています」
朱里は、菊川の言葉を少し考えてみた。
「菊川さん。やっぱり瑛やお姉さんは、今まで色々な偏見の目にさらされてきたの?」
菊川は小さく頷く。
「ええ。物心つく頃から、からかわれたり冷やかされたり、嫌がらせを受けることもありました。思春期になると心を許せる友人も減っていき、特に雅お嬢様はふさぎこまれることもありました。学校でおしゃべりする相手はいても、親友と呼べる人はいないと。瑛さんもお嬢様も、いわゆる普通の公立高校に通われていましたからね。もちろんお二人が望んでそうされたのですが、やはり同級生に壁を作られてしまうこともあったようです。今も瑛さんは、大学でそれこそ毎日色々な人に声をかけられています。就職を斡旋して欲しいと」
朱里はうつむいた。
瑛と一緒だったのは中学が最後。
そこからは別々の高校と大学に通っていた為、学校での様子は朱里には分からなかった。
「そんな、私、知らなくて。だって瑛は会うたびにふざけてて明るいし、お姉さんもいつも私に笑顔で話しかけてくれるから」
「それはあなただからですよ、朱里さん。あなたが、お二人が心を許せる唯一の存在だからです」
思わず朱里は菊川を見つめる。
「私が?二人にとって唯一の?」
「ええ。お二人をそのまま受け止めてくださる、大切な親友なのです」
朱里の心が、ほんわかと温かくなる。
「朱里さん。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかこれからもお二人の親友でいてくださいませんか?」
菊川にそう言われ、朱里は笑顔で頷いた。
「ええ。見ず知らずの人の言葉なんか気にしません。私はいつだって、瑛とお姉さんの味方です。二人がどんな人か良く知っているから」
そう言うと、菊川は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、朱里さん」
「いいえ。菊川さんに話を聞いてもらって、私も心が軽くなりました。ありがとうございました」
月の光の中、二人で微笑み合う。
「それじゃあ、おやすみなさい。菊川さん」
「おやすみなさい、朱里さん。良い夢を」
ふふっと笑いかけてから、朱里は頷いて窓を閉めた。
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