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母の強さ
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「翼、舞、お誕生日おめでとう!」
11月5日、二人は無事に1歳の誕生日を迎えた。
これまで大きな病気やケガもなく、すくすくと大きくなってくれた事に、恵真と大和は改めて感謝する。
卵や牛乳を使わないカップケーキを作り、フルーツで飾ってロウソクを1本立てる。
恵真と大和がハッピーバースデーの歌を歌い、代わりにロウソクを吹き消して拍手すると、二人も真似をしてぱちぱちと手を叩いた。
「もう1歳か。早いなあ」
「本当に。二人ともつかまり立ちや伝い歩きもするから、もうすぐ歩き始めるかも」
「そうか。手を繋いで散歩に行ける日も近いな」
「ええ。でも走り出したら、追いかけるのも大変になりますね」
「そうだな。俺もいいトレーニングになりそうだ」
最近は、翼と舞を両手に抱っこする事も多くなり、大和は恵真と、まるで筋トレだな、と笑い合っていた。
ソファの前に置いていたローテーブルも、頭を打っては危険なので、別の部屋に撤去していた。
熱いコーヒーを飲む時は、双子の手が届かないようにダイニングテーブルの真ん中に置く。
玄関やダイニング、キッチンなどあちこちにアルコール消毒液を置き、帰宅したらすぐ手を消毒、そして双子が触れる物もこまめに拭いた。
キッチンにベビーゲートを付けたり、低い位置に物を置かない、など、双子の成長に合わせて少しずつ部屋の中の配置も変えていた。
「恵真、昨日部長から聞かれたんだけどね」
美味しそうにバナナを頬張る双子の写真を撮っている恵真に、大和がふいに話し出した。
「恵真の復帰、いつになりそうか?って。子どもの1歳の誕生日を機に復帰する人も多いから、恵真もそろそろなのか?って言ってた」
思いがけない話に、恵真は驚く。
「復帰…ですか?私、まだ考えてもなくて」
「俺としては、いつでもいいよ。恵真の復帰訓練に合わせて、またシフトを調整してもらうから」
うーん…と、恵真は双子に目をやる。
「私、今はまだこの子達のそばにいたいです。いつまで、とは決められないですけど、少なくともまだもう少しは」
「そう、分かった。恵真の好きな時期で構わないからね」
「はい、ありがとうございます」
パイロットとしては、少しでも早く復帰してブランクを短くした方がいい。
分かってはいるが、恵真はどうしてもまだ双子のそばにいて、成長を見守りたかった。
◇
双子の誕生日が過ぎてしばらく経った頃。
大和がフランスへのフライトで不在中の、2日目の事だった。
「おはよう、舞。お腹空いた?」
朝6時に起きた舞に母乳をあげていると、恵真は異変を感じる。
(舞、口の中が熱い…)
ハッとしておでこに触れると、やはりいつもより熱かった。
恵真は急いで体温計で測る。
「嘘、39度もある…」
思わず呆然としてしまい、我に返ると今度は焦り出す。
「どうしよう…。えっと、とにかく病院に。待って、まだ朝早すぎる。あ、翼は?どうしたら…」
落ち着け、と自分に言い聞かせて深呼吸すると、まずは舞の様子をじっくりうかがう。
顔は赤く、呼吸も速いが、母乳はしっかり飲んでいる。
(今すぐ救急で診てもらわなきゃって感じじゃないわね。それなら、いつも予防接種でお世話になってるサン・ハート クリニックに行こう。朝7時になったらオンラインで予約出来るから、すぐに予約を入れて…)
舞は母乳を飲み終わると、また布団に横になる。
「舞、しんどいね。病院に行こうね」
舞の様子を気にかけながら、恵真は起きてきた翼に離乳食を食べさせた。
舞にも、ベビー用のイオン水を飲ませる。
7時になるとすぐに予約システムにアクセスして、1番早い8時半の予約を入れた。
バタバタと急いで身支度を整えると、舞の母子手帳や診察券などの荷物をまとめる。
「うーん、少し早いけど行こう!」
8時になると、恵真は二人を車に乗せてクリニックに向かった。
10分程で着き、さすがに早すぎるかなと思いながら、ベビーカーに二人を乗せてクリニックの玄関に向かうと、準備をしていた看護師が気づいてドアを開けてくれる。
「あら、佐倉さんの双子ちゃん。どうしたの?」
「あ、はい。妹が、39度の熱を出して…。8時半に予約を入れたんですが、まだ早いですよね?」
「分かったわ。とにかく入って」
「はい」
待合室に入ると、事務の人があれこれと手伝ってくれ、恵真は助けてくれる人がいる事にホッとして涙が出そうになる。
「佐倉さん、先生がもう診察室に入っていいって」
「あ、はい!ありがとうございます」
先程の看護師が声をかけてくれ、恵真は舞を抱いて診察室に入る。
翼は、事務の人が隣で抱っこしてくれていた。
「おー、舞ちゃんに翼くん。おはよう!舞ちゃん、お熱が出ちゃったのかな?」
優しい萩原先生が、にこにこしながら話しかける。
「お母さん、様子を教えてもらえる?」
「はい。今朝、6時に母乳を飲ませていたら、口の中が熱いのに気づいて熱を測りました。その時に39度ちょうどでした。母乳はいつも通り飲みましたが、そのあとしんどそうに布団に横になっていました。呼吸も速かったです。7時前にイオン水を少し飲みました」
「なるほど」
先生は、カタカタとカルテに入力しながら頷く。
「舞ちゃん、ちょっとお熱測らせてね」
看護師が体温計で測り、38度8分ですと先生に伝える。
「お母さん、ゆうべ寝る前は普通だった?」
「はい、何も変わった事はありませんでした」
「分かりました。舞ちゃーん、ちょっと『もしもし』させてね」
先生は聴診器を当ててから、今度はアーンしてね、と舞に笑いかける。
「舞、アーン出来る?」
恵真が横から顔を覗き込むと、舞は真似をして先生に口を開けてみせた。
「お、上手だなー、舞ちゃん」
すると何を思ったのか、隣で見ていた翼も、アーンと口を開ける。
「え?翼はいいのよ?」
「あはは!翼くんも上手だな。どれどれ?うん、翼くんは元気だ」
先生は翼の頭をなでてから、恵真に話し出す。
「お母さん。舞ちゃんは今のところ、単なる風邪の症状です。熱も、子どもなら40度になるのも珍しい事ではありません。のどが少し赤いけど、母乳やイオン水も飲めているなら大丈夫でしょう。お薬を出しておきますが、とにかくゆっくり寝かせてあげてください。おでこだけでなく、脇の下を冷やしてみてもいいですよ」
「はい、分かりました」
「意識もはっきりしているし、目もしっかり合うから、心配し過ぎずこのままおうちで様子を見てください。もし、ぐったりして反応しなかったり、目がうつろになったり、水分も取れず、おむつも濡れなくなったら、いつでも電話してきてください。夜中でも大丈夫ですよ。何か気になる事があったら、すぐに連絡くださいね」
「はい、ありがとうございます」
恵真は深々と頭を下げる。
「じゃあね、舞ちゃん。お大事に。翼くんも、またね。バイバイ!」
先生が手を振ると、舞も翼も手を振り返した。
「おー、バイバイ上手だな。お母さん、お子さん初めての熱なのに、よく冷静に一人で二人連れて来たね。お母さんも倒れないように、舞ちゃんと一緒にしっかり横になってね」
「はい。本当にありがとうございました」
先生の気遣いが嬉しく、恵真は思わず涙ぐむ。
会計を済ませると、隣の薬局で代わりに手続きしてくれた事務の人が、薬を渡して説明してくれる。
そして車まで翼を抱っこして連れて来てくれた。
「じゃあね、舞ちゃん、翼くん。お大事にね」
「ありがとうございました」
恵真は何度も頭を下げてから、マンションへと帰って来た。
「舞、お薬飲んだら寝ようね」
甘いシロップの薬を飲ませると、恵真は舞を布団に寝かせる。
トントンと添い寝して寝かしつけると、舞はすーっと眠りに落ちた。
「良かった…。このままゆっくり寝て、早く熱が下がりますように」
恵真は舞の頭をなでてから、翼を抱いてソファの前に座った。
「翼、しばらくここで遊ぼうね」
一緒に積み木やミニカーで遊びながら、舞の様子を気にかける。
ぐっすり寝入った舞は、スヤスヤと呼吸も安定しているし、汗もかいている。
(うん、大丈夫そう)
少しホッとして、恵真は翼に離乳食を食べさせた。
(えーっと、舞はしばらく食欲もないだろうから、赤ちゃんゼリーとかかな)
食べやすそうな物をネットスーパーで注文する。
離乳食のあと翼に母乳をあげると、眠そうに目をこすり始め、少しあやすとコテンと眠ってくれた。
舞から少し離して翼を寝かせ、恵真は舞の様子をうかがう。
(あれ?また熱が上がったみたい…)
ウイルスと戦っている証拠だ、と自分に言い聞かせてみるものの、やはり心配になる。
ふいに、熱性けいれん、突発性発疹といった言葉が頭をよぎった。
恵真は落ち着いて自分に言い聞かせる。
(大丈夫。何かあったら、萩原先生に電話すればいいんだから)
それに萩原先生は、双子を妊娠してすぐ、マリア・ハート クリニックでお世話になった優しい萩原先生の旦那様だ。
双子が産まれて間もない頃から、何度も予防接種や健診でお世話になっている。
奥様の萩原先生も覗きに来てくれ、いつも翼と舞を気にかけてくれていた。
(ネットであれこれ検索するより、萩原先生の言葉を信じよう)
恵真は自分に頷くと、舞の頭を優しくなでた。
「舞、大丈夫よ。必ず守るからね」
そうだ、必ず守るんだ。
私と大和さんの大切な子ども達を。
恵真は、力強く頷いた。
◇
「37度2分、良かった!」
夕方になると、舞の熱は少しずつ下がり始めた。
汗もしっかりかき、恵真は何度も肌着を着替えさせる。
母乳やイオン水も良く飲み、夜には少しゼリーも食べた。
「今夜一晩ぐっすり眠れば、明日には元気になるかな?」
恵真は少し安心する。
お風呂の時間になると、翼はシャワーで済ませ、舞は濡らしたガーゼで身体を拭くだけにした。
「舞、もう少し頑張ろうね」
頭をなでながらそう声をかけると、舞はにこにこと笑顔で恵真を見上げる。
「ふふ、ありがとう、舞」
恵真は、逆に舞から励まされたようで嬉しくなった。
「36度7分!やったー!舞、もうお熱ないね」
翌朝。
一晩ぐっすりと眠った舞は、スッキリした顔で起きてきた。
体温計で平熱に下がった事を確認すると、恵真は思わずバンザイして喜ぶ。
すると舞も真似をしてバンザイしたあと、床に手を付き、足を踏ん張ったかと思ったら、次の瞬間すくっと立ち上がった。
「え、えっ、ええ?!」
恵真は目を見開いてから、何度も瞬きをする。
「ま、舞?今、一人でたっちしたの?」
ただの幻か?と首をひねる恵真の前で、舞は立ったままぱちぱちと拍手している。
「立ったよね?今、一人で立ったのよね?凄い!舞、風邪から完全復活どころか、レベルアップした?」
凄いよー、舞!と恵真も拍手をする。
舞は嬉しそうに、きゃっきゃっと声を上げて笑った。
◇
次の日の夕方。
「ただいまー」
玄関から大和の声がして、恵真はパッと笑顔になる。
翼も舞も、あー!と声を出して玄関の方を見た。
「大和さん、お帰りなさい!」
「ただいま、恵真。翼も舞も、ただいま!いい子にしてたかー?」
恵真の頬にキスをしたあと、大和が両手で双子を抱き上げると、二人ともご機嫌でにこにこと笑う。
「あー、やっと会えた。みんなに会えなくて、もう寂しくてさ。恵真、大変だったでしょ?ありがとう」
「ううん。舞が熱を出して焦ったけど、すっかり元気になったし、それに一人で立てるようになったの!しかも今日は2、3歩歩いたのよ」
は?え…、な、何?と、大和はあまりの情報量に混乱する。
「ね、熱?!舞、熱が出たのか?」
「そう、39度。でも萩原先生がすぐ診てくださって、単なる風邪だから、ゆっくり寝かせてって。本当にその通りで、一晩ぐっすり寝たら、平熱になったの。良かったねーって喜んでたら、いきなり舞がすくっと立ち上がったのよ。もうびっくりしちゃった」
「ちょ、待って、恵真。熱がある舞を、恵真が一人で病院に連れて行ったの?」
「そう、翼も一緒に。看護師さんや事務の人も、皆さん助けてくれて、とっても助かったの」
「恵真…」
大和は双子を下ろすと、恵真を抱き寄せる。
「ごめん、恵真。肝心な時にそばにいなくて。恵真一人に大変な思いさせて、本当にごめんな。教えてくれたら良かったのに。ステイ先から電話した時も、そんな話しなかったから」
「ごめんなさい、黙ってて。大和さんに心配させたくなかったの」
そんな…と、大和はますます恵真を強く抱きしめる。
「突然熱出すなんて、びっくりしたし不安だっただろ?」
「うん、まあ。でもね、萩原先生に診てもらったら安心したし、舞もちゃんと寝てくれたの。翼もいい子だったから助かったし。これで私も、母親として少しは経験値上がったかな?」
ふふっと笑う恵真を、大和はまたぎゅっと抱きしめる。
「恵真、ありがとう。二人をちゃんと守ってくれて」
「うん。私と大和さんの大切な宝物だもん。何が何でも守らなきゃって、自然と力が湧いてきたの」
「ありがとう。俺、ほんとに恵真には頭が上がらない。俺にとって最高の奥さんで、翼と舞にとっては最強のお母さんだ」
「えー、また最強?私、怪獣じゃないのにー!」
口を尖らせる恵真に、ふっと笑いかけてから、大和は優しくキスをした。
とにかく恵真はゆっくり休んで!と寝室に追いやられ、恵真は有り難く一人で休ませてもらう。
3時間ぐっすり眠ってからリビングに戻ると、大和と翼と舞が川の字で眠っていた。
その様子に、ふふっと目尻を下げてから、恵真は夕食の支度をする。
目を覚ました三人と一緒に、恵真は久しぶりの家族での食事を楽しんだ。
大和に双子をお風呂に入れてもらい、恵真はゆっくりと一人でバスタイムを満喫する。
「はあー、ホッとするなあ」
心も身体も温まり、ここ数日間の緊張もすっかり解れてお風呂から出る。
リビングから大和の興奮した声が聞こえてきて、何事かと覗くと、舞がよちよちと歩くのを大和が手を叩いて見守っていた。
「舞、頑張れ!もう少し、凄いぞ!」
舞は、5歩歩いたあと、ぺたんと尻もちをつく。
「頑張ったなー、舞!」
大和が笑顔で舞を抱き上げ、高い高いをする。
すると、自分も!と思ったのか、翼も両手を床に付き、よいしょっ!と言わんばかりに立ち上がった。
「わあ!翼も立った!」
「本当だ、凄いぞ、翼!」
翼は、えへん!とばかりに胸を反らせて笑っている。
「嬉しいなー、決定的瞬間が見られて。なんか俺、感動したよ」
大和は両腕に双子を抱いて、満面の笑みを浮かべる。
夜は寝室で四人一緒に寝る事にした。
双子が寝つくと、大和が恵真に話し出す。
「恵真。俺はちゃんとみんなを守れているのかな。大変な時に、俺はフランスにいて恵真のそばにいてやれなかった。必ず守るって誓ったのに、俺は恵真を…」
苦しそうな表情の大和に、恵真は静かに微笑む。
「大和さん。私はどんなに離れていても、大和さんとの絆を感じます。指輪やネックレスに手を触れると、大和さんの気持ちがしっかり伝わってきて、私は守られているんだって思えます。それに何より、翼と舞は私達の大事な命です。この子達を守る為なら、私はとてつもないパワーが湧いてくるんです。必ず守ってみせるって。だから安心してください。私はちゃんとこの子達を守ります。大和さんの深い愛情を、いつも感じながら」
「恵真…」
大和は込み上げる想いをグッと堪えながら、恵真を抱き寄せる。
「俺の方こそ、いつも恵真に助けられてる。いつも恵真に幸せにしてもらっている。翼と舞を産んでくれて、大切に育ててくれて、そして俺にも変わらない気持ちで真っ直ぐに見つめてくれて。本当にありがとう、恵真」
恵真は、微笑みながら頷く。
「二人で一緒に、大切に翼と舞を育てていきましょう」
「ああ。俺達の宝物だもんな」
「はい」
大和は恵真の頭を胸に抱き寄せ、何度も優しくキスをした。
11月5日、二人は無事に1歳の誕生日を迎えた。
これまで大きな病気やケガもなく、すくすくと大きくなってくれた事に、恵真と大和は改めて感謝する。
卵や牛乳を使わないカップケーキを作り、フルーツで飾ってロウソクを1本立てる。
恵真と大和がハッピーバースデーの歌を歌い、代わりにロウソクを吹き消して拍手すると、二人も真似をしてぱちぱちと手を叩いた。
「もう1歳か。早いなあ」
「本当に。二人ともつかまり立ちや伝い歩きもするから、もうすぐ歩き始めるかも」
「そうか。手を繋いで散歩に行ける日も近いな」
「ええ。でも走り出したら、追いかけるのも大変になりますね」
「そうだな。俺もいいトレーニングになりそうだ」
最近は、翼と舞を両手に抱っこする事も多くなり、大和は恵真と、まるで筋トレだな、と笑い合っていた。
ソファの前に置いていたローテーブルも、頭を打っては危険なので、別の部屋に撤去していた。
熱いコーヒーを飲む時は、双子の手が届かないようにダイニングテーブルの真ん中に置く。
玄関やダイニング、キッチンなどあちこちにアルコール消毒液を置き、帰宅したらすぐ手を消毒、そして双子が触れる物もこまめに拭いた。
キッチンにベビーゲートを付けたり、低い位置に物を置かない、など、双子の成長に合わせて少しずつ部屋の中の配置も変えていた。
「恵真、昨日部長から聞かれたんだけどね」
美味しそうにバナナを頬張る双子の写真を撮っている恵真に、大和がふいに話し出した。
「恵真の復帰、いつになりそうか?って。子どもの1歳の誕生日を機に復帰する人も多いから、恵真もそろそろなのか?って言ってた」
思いがけない話に、恵真は驚く。
「復帰…ですか?私、まだ考えてもなくて」
「俺としては、いつでもいいよ。恵真の復帰訓練に合わせて、またシフトを調整してもらうから」
うーん…と、恵真は双子に目をやる。
「私、今はまだこの子達のそばにいたいです。いつまで、とは決められないですけど、少なくともまだもう少しは」
「そう、分かった。恵真の好きな時期で構わないからね」
「はい、ありがとうございます」
パイロットとしては、少しでも早く復帰してブランクを短くした方がいい。
分かってはいるが、恵真はどうしてもまだ双子のそばにいて、成長を見守りたかった。
◇
双子の誕生日が過ぎてしばらく経った頃。
大和がフランスへのフライトで不在中の、2日目の事だった。
「おはよう、舞。お腹空いた?」
朝6時に起きた舞に母乳をあげていると、恵真は異変を感じる。
(舞、口の中が熱い…)
ハッとしておでこに触れると、やはりいつもより熱かった。
恵真は急いで体温計で測る。
「嘘、39度もある…」
思わず呆然としてしまい、我に返ると今度は焦り出す。
「どうしよう…。えっと、とにかく病院に。待って、まだ朝早すぎる。あ、翼は?どうしたら…」
落ち着け、と自分に言い聞かせて深呼吸すると、まずは舞の様子をじっくりうかがう。
顔は赤く、呼吸も速いが、母乳はしっかり飲んでいる。
(今すぐ救急で診てもらわなきゃって感じじゃないわね。それなら、いつも予防接種でお世話になってるサン・ハート クリニックに行こう。朝7時になったらオンラインで予約出来るから、すぐに予約を入れて…)
舞は母乳を飲み終わると、また布団に横になる。
「舞、しんどいね。病院に行こうね」
舞の様子を気にかけながら、恵真は起きてきた翼に離乳食を食べさせた。
舞にも、ベビー用のイオン水を飲ませる。
7時になるとすぐに予約システムにアクセスして、1番早い8時半の予約を入れた。
バタバタと急いで身支度を整えると、舞の母子手帳や診察券などの荷物をまとめる。
「うーん、少し早いけど行こう!」
8時になると、恵真は二人を車に乗せてクリニックに向かった。
10分程で着き、さすがに早すぎるかなと思いながら、ベビーカーに二人を乗せてクリニックの玄関に向かうと、準備をしていた看護師が気づいてドアを開けてくれる。
「あら、佐倉さんの双子ちゃん。どうしたの?」
「あ、はい。妹が、39度の熱を出して…。8時半に予約を入れたんですが、まだ早いですよね?」
「分かったわ。とにかく入って」
「はい」
待合室に入ると、事務の人があれこれと手伝ってくれ、恵真は助けてくれる人がいる事にホッとして涙が出そうになる。
「佐倉さん、先生がもう診察室に入っていいって」
「あ、はい!ありがとうございます」
先程の看護師が声をかけてくれ、恵真は舞を抱いて診察室に入る。
翼は、事務の人が隣で抱っこしてくれていた。
「おー、舞ちゃんに翼くん。おはよう!舞ちゃん、お熱が出ちゃったのかな?」
優しい萩原先生が、にこにこしながら話しかける。
「お母さん、様子を教えてもらえる?」
「はい。今朝、6時に母乳を飲ませていたら、口の中が熱いのに気づいて熱を測りました。その時に39度ちょうどでした。母乳はいつも通り飲みましたが、そのあとしんどそうに布団に横になっていました。呼吸も速かったです。7時前にイオン水を少し飲みました」
「なるほど」
先生は、カタカタとカルテに入力しながら頷く。
「舞ちゃん、ちょっとお熱測らせてね」
看護師が体温計で測り、38度8分ですと先生に伝える。
「お母さん、ゆうべ寝る前は普通だった?」
「はい、何も変わった事はありませんでした」
「分かりました。舞ちゃーん、ちょっと『もしもし』させてね」
先生は聴診器を当ててから、今度はアーンしてね、と舞に笑いかける。
「舞、アーン出来る?」
恵真が横から顔を覗き込むと、舞は真似をして先生に口を開けてみせた。
「お、上手だなー、舞ちゃん」
すると何を思ったのか、隣で見ていた翼も、アーンと口を開ける。
「え?翼はいいのよ?」
「あはは!翼くんも上手だな。どれどれ?うん、翼くんは元気だ」
先生は翼の頭をなでてから、恵真に話し出す。
「お母さん。舞ちゃんは今のところ、単なる風邪の症状です。熱も、子どもなら40度になるのも珍しい事ではありません。のどが少し赤いけど、母乳やイオン水も飲めているなら大丈夫でしょう。お薬を出しておきますが、とにかくゆっくり寝かせてあげてください。おでこだけでなく、脇の下を冷やしてみてもいいですよ」
「はい、分かりました」
「意識もはっきりしているし、目もしっかり合うから、心配し過ぎずこのままおうちで様子を見てください。もし、ぐったりして反応しなかったり、目がうつろになったり、水分も取れず、おむつも濡れなくなったら、いつでも電話してきてください。夜中でも大丈夫ですよ。何か気になる事があったら、すぐに連絡くださいね」
「はい、ありがとうございます」
恵真は深々と頭を下げる。
「じゃあね、舞ちゃん。お大事に。翼くんも、またね。バイバイ!」
先生が手を振ると、舞も翼も手を振り返した。
「おー、バイバイ上手だな。お母さん、お子さん初めての熱なのに、よく冷静に一人で二人連れて来たね。お母さんも倒れないように、舞ちゃんと一緒にしっかり横になってね」
「はい。本当にありがとうございました」
先生の気遣いが嬉しく、恵真は思わず涙ぐむ。
会計を済ませると、隣の薬局で代わりに手続きしてくれた事務の人が、薬を渡して説明してくれる。
そして車まで翼を抱っこして連れて来てくれた。
「じゃあね、舞ちゃん、翼くん。お大事にね」
「ありがとうございました」
恵真は何度も頭を下げてから、マンションへと帰って来た。
「舞、お薬飲んだら寝ようね」
甘いシロップの薬を飲ませると、恵真は舞を布団に寝かせる。
トントンと添い寝して寝かしつけると、舞はすーっと眠りに落ちた。
「良かった…。このままゆっくり寝て、早く熱が下がりますように」
恵真は舞の頭をなでてから、翼を抱いてソファの前に座った。
「翼、しばらくここで遊ぼうね」
一緒に積み木やミニカーで遊びながら、舞の様子を気にかける。
ぐっすり寝入った舞は、スヤスヤと呼吸も安定しているし、汗もかいている。
(うん、大丈夫そう)
少しホッとして、恵真は翼に離乳食を食べさせた。
(えーっと、舞はしばらく食欲もないだろうから、赤ちゃんゼリーとかかな)
食べやすそうな物をネットスーパーで注文する。
離乳食のあと翼に母乳をあげると、眠そうに目をこすり始め、少しあやすとコテンと眠ってくれた。
舞から少し離して翼を寝かせ、恵真は舞の様子をうかがう。
(あれ?また熱が上がったみたい…)
ウイルスと戦っている証拠だ、と自分に言い聞かせてみるものの、やはり心配になる。
ふいに、熱性けいれん、突発性発疹といった言葉が頭をよぎった。
恵真は落ち着いて自分に言い聞かせる。
(大丈夫。何かあったら、萩原先生に電話すればいいんだから)
それに萩原先生は、双子を妊娠してすぐ、マリア・ハート クリニックでお世話になった優しい萩原先生の旦那様だ。
双子が産まれて間もない頃から、何度も予防接種や健診でお世話になっている。
奥様の萩原先生も覗きに来てくれ、いつも翼と舞を気にかけてくれていた。
(ネットであれこれ検索するより、萩原先生の言葉を信じよう)
恵真は自分に頷くと、舞の頭を優しくなでた。
「舞、大丈夫よ。必ず守るからね」
そうだ、必ず守るんだ。
私と大和さんの大切な子ども達を。
恵真は、力強く頷いた。
◇
「37度2分、良かった!」
夕方になると、舞の熱は少しずつ下がり始めた。
汗もしっかりかき、恵真は何度も肌着を着替えさせる。
母乳やイオン水も良く飲み、夜には少しゼリーも食べた。
「今夜一晩ぐっすり眠れば、明日には元気になるかな?」
恵真は少し安心する。
お風呂の時間になると、翼はシャワーで済ませ、舞は濡らしたガーゼで身体を拭くだけにした。
「舞、もう少し頑張ろうね」
頭をなでながらそう声をかけると、舞はにこにこと笑顔で恵真を見上げる。
「ふふ、ありがとう、舞」
恵真は、逆に舞から励まされたようで嬉しくなった。
「36度7分!やったー!舞、もうお熱ないね」
翌朝。
一晩ぐっすりと眠った舞は、スッキリした顔で起きてきた。
体温計で平熱に下がった事を確認すると、恵真は思わずバンザイして喜ぶ。
すると舞も真似をしてバンザイしたあと、床に手を付き、足を踏ん張ったかと思ったら、次の瞬間すくっと立ち上がった。
「え、えっ、ええ?!」
恵真は目を見開いてから、何度も瞬きをする。
「ま、舞?今、一人でたっちしたの?」
ただの幻か?と首をひねる恵真の前で、舞は立ったままぱちぱちと拍手している。
「立ったよね?今、一人で立ったのよね?凄い!舞、風邪から完全復活どころか、レベルアップした?」
凄いよー、舞!と恵真も拍手をする。
舞は嬉しそうに、きゃっきゃっと声を上げて笑った。
◇
次の日の夕方。
「ただいまー」
玄関から大和の声がして、恵真はパッと笑顔になる。
翼も舞も、あー!と声を出して玄関の方を見た。
「大和さん、お帰りなさい!」
「ただいま、恵真。翼も舞も、ただいま!いい子にしてたかー?」
恵真の頬にキスをしたあと、大和が両手で双子を抱き上げると、二人ともご機嫌でにこにこと笑う。
「あー、やっと会えた。みんなに会えなくて、もう寂しくてさ。恵真、大変だったでしょ?ありがとう」
「ううん。舞が熱を出して焦ったけど、すっかり元気になったし、それに一人で立てるようになったの!しかも今日は2、3歩歩いたのよ」
は?え…、な、何?と、大和はあまりの情報量に混乱する。
「ね、熱?!舞、熱が出たのか?」
「そう、39度。でも萩原先生がすぐ診てくださって、単なる風邪だから、ゆっくり寝かせてって。本当にその通りで、一晩ぐっすり寝たら、平熱になったの。良かったねーって喜んでたら、いきなり舞がすくっと立ち上がったのよ。もうびっくりしちゃった」
「ちょ、待って、恵真。熱がある舞を、恵真が一人で病院に連れて行ったの?」
「そう、翼も一緒に。看護師さんや事務の人も、皆さん助けてくれて、とっても助かったの」
「恵真…」
大和は双子を下ろすと、恵真を抱き寄せる。
「ごめん、恵真。肝心な時にそばにいなくて。恵真一人に大変な思いさせて、本当にごめんな。教えてくれたら良かったのに。ステイ先から電話した時も、そんな話しなかったから」
「ごめんなさい、黙ってて。大和さんに心配させたくなかったの」
そんな…と、大和はますます恵真を強く抱きしめる。
「突然熱出すなんて、びっくりしたし不安だっただろ?」
「うん、まあ。でもね、萩原先生に診てもらったら安心したし、舞もちゃんと寝てくれたの。翼もいい子だったから助かったし。これで私も、母親として少しは経験値上がったかな?」
ふふっと笑う恵真を、大和はまたぎゅっと抱きしめる。
「恵真、ありがとう。二人をちゃんと守ってくれて」
「うん。私と大和さんの大切な宝物だもん。何が何でも守らなきゃって、自然と力が湧いてきたの」
「ありがとう。俺、ほんとに恵真には頭が上がらない。俺にとって最高の奥さんで、翼と舞にとっては最強のお母さんだ」
「えー、また最強?私、怪獣じゃないのにー!」
口を尖らせる恵真に、ふっと笑いかけてから、大和は優しくキスをした。
とにかく恵真はゆっくり休んで!と寝室に追いやられ、恵真は有り難く一人で休ませてもらう。
3時間ぐっすり眠ってからリビングに戻ると、大和と翼と舞が川の字で眠っていた。
その様子に、ふふっと目尻を下げてから、恵真は夕食の支度をする。
目を覚ました三人と一緒に、恵真は久しぶりの家族での食事を楽しんだ。
大和に双子をお風呂に入れてもらい、恵真はゆっくりと一人でバスタイムを満喫する。
「はあー、ホッとするなあ」
心も身体も温まり、ここ数日間の緊張もすっかり解れてお風呂から出る。
リビングから大和の興奮した声が聞こえてきて、何事かと覗くと、舞がよちよちと歩くのを大和が手を叩いて見守っていた。
「舞、頑張れ!もう少し、凄いぞ!」
舞は、5歩歩いたあと、ぺたんと尻もちをつく。
「頑張ったなー、舞!」
大和が笑顔で舞を抱き上げ、高い高いをする。
すると、自分も!と思ったのか、翼も両手を床に付き、よいしょっ!と言わんばかりに立ち上がった。
「わあ!翼も立った!」
「本当だ、凄いぞ、翼!」
翼は、えへん!とばかりに胸を反らせて笑っている。
「嬉しいなー、決定的瞬間が見られて。なんか俺、感動したよ」
大和は両腕に双子を抱いて、満面の笑みを浮かべる。
夜は寝室で四人一緒に寝る事にした。
双子が寝つくと、大和が恵真に話し出す。
「恵真。俺はちゃんとみんなを守れているのかな。大変な時に、俺はフランスにいて恵真のそばにいてやれなかった。必ず守るって誓ったのに、俺は恵真を…」
苦しそうな表情の大和に、恵真は静かに微笑む。
「大和さん。私はどんなに離れていても、大和さんとの絆を感じます。指輪やネックレスに手を触れると、大和さんの気持ちがしっかり伝わってきて、私は守られているんだって思えます。それに何より、翼と舞は私達の大事な命です。この子達を守る為なら、私はとてつもないパワーが湧いてくるんです。必ず守ってみせるって。だから安心してください。私はちゃんとこの子達を守ります。大和さんの深い愛情を、いつも感じながら」
「恵真…」
大和は込み上げる想いをグッと堪えながら、恵真を抱き寄せる。
「俺の方こそ、いつも恵真に助けられてる。いつも恵真に幸せにしてもらっている。翼と舞を産んでくれて、大切に育ててくれて、そして俺にも変わらない気持ちで真っ直ぐに見つめてくれて。本当にありがとう、恵真」
恵真は、微笑みながら頷く。
「二人で一緒に、大切に翼と舞を育てていきましょう」
「ああ。俺達の宝物だもんな」
「はい」
大和は恵真の頭を胸に抱き寄せ、何度も優しくキスをした。
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