18 / 24
妻として、母として
しおりを挟む
「恵真。天気もいいし、少しベビーカーで散歩しない?」
今日も大和はオフ。
12月にしてはポカポカと温かい陽気で、なかなか寝ない双子を見て、大和が提案する。
「いいですね。二人とも、外の空気に触れさせてあげたいし」
「じゃあ、授乳終わったら行こうか」
「はい」
暖かい服を着せ、ベビーカーに乗せてからブランケットをかける。
二人とも、外に出た途端に眩しそうに目を細め、手をパタパタさせた。
「お外は気持ちいいねー」
双子に声をかけながら、のんびりと近所を歩く。
「恵真。ここで待ってるから、好きな物買っておいで」
カフェの前で、大和が立ち止まる。
「あ、はい。じゃあすぐ戻ります」
恵真は店内のカウンターに行くと、ディカフェのモカと、オリジナルブレンドをテイクアウトした。
「はい、大和さん」
「お、ありがとう」
温かい飲み物を片手にまた歩き始めると、ポツポツと並ぶショップは、どこもきれいにクリスマスの飾り付けがされていた。
近くの公園のベンチに座って、ドリンクを飲む。
「はあー、なんかいいな。こんなふうに時間をのんびり使うのって」
「そうですね。のどかでゆったりしてて、なんだかおばあちゃんになった気分」
「おいおい、勘弁してくれよ」
ふふっと恵真は笑う。
「そうですよね。これから双子が大きくなったら、一緒にブランコに乗ったり、滑り台滑ったりしないといけませんよね」
「ああ、そうだよ。俺達、子ども時代をもう一度やり直す感じだな」
「確かに。体力つけておかないと!」
恵真は張り切ってガッツポーズをする。
「楽しみだな。この子達の成長」
「ええ」
二人で双子の顔を覗き込む。
元気いっぱいに手足を動かす双子に、大和と恵真は顔を見合わせて微笑んだ。
◇
「大和さん。今夜は寝室で寝てください」
お風呂上がりに白湯を飲ませていると、ふいに恵真が声をかけてきた。
「え?寝室って、俺が?」
「はい。明日フライトですよね?キャプテンが寝不足で飛ぶ訳にはいきません。双子のお世話は私一人で大丈夫なので、大和さんは寝室でしっかり睡眠を取ってください」
でも…と大和はためらう。
「私はパイロットの妻です。きちんとその役目も果たさなければいけません。それに寝不足で乗務するのが、どんなに危険な事かも理解しています。大和さん、しっかり身体を休めてください。もしどうしても私一人では無理だったら、その時は少しお願いさせてください」
真剣な恵真の表情に、大和も最後は頷いた。
「分かった。いつでも呼んでね」
夜、双子は一度眠ってから、23時に泣き始めた。
二人に授乳し、寝かしつけてから大和は寝室へ向かう。
「じゃあ、恵真。いつでも声かけてね」
「はい、おやすなさい」
「おやすみ」
大和は優しく恵真にキスをしてから、リビングをあとにした。
◇
翼の泣き声が聞こえてきて、恵真は目を覚ます。
「はーい、今ミルク作るね」
翼にミルクをあげながら時計を見ると、明け方の4時だった。
(4時間はまとめて寝てくれるようになったかな)
すると舞も、ホワーホワーと泣き始める。
(うっ、手が足りない…)
恵真は授乳クッションに寝かせた翼にミルクを上げながら、もう一つの授乳クッションを腰にはめ、舞を寝かせて母乳をあげる。
(一人でもなんとかなるもんよね、ふふ)
なんだか自分が逞しくなったような気がして、恵真は嬉しくなった。
◇
「おはよう、恵真」
翌朝、目が覚めると大和が舞にミルクをあげていた。
「おはようございます。今何時ですか?」
「7時だよ。俺がこっちに来たら、舞も目を開けたから、ミルクあげてたんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
恵真は洗顔と着替えをしてから、キッチンに行き朝食の支度をする。
ついでに翼のミルクも作っていると、タイミング良く泣き始めた。
「俺がやるよ。舞も飲み終えたし」
大和にミルクを渡し、恵真はソファのローテーブルに朝食を並べた。
ベビーキャリーをソファのそばに置き、双子を寝かせて顔を見ながら朝食を食べる。
「恵真、夜中は大丈夫だった?」
「ええ。一度起きただけだったの。大和さんも、良く眠れましたか?」
「ああ、お陰でぐっすり。でもなんだか寂しかったよ。いつもなら目が覚めてすぐ、隣に寝てる翼が変顔してくれて、朝から楽しかったのに」
変顔?!と恵真は笑い出す。
「確かに。翼ってなんだかこう、アピールが凄いですよね」
「そう。ねえねえ、見て見てー!って」
あはは!と恵真は笑いながら翼を見る。
翼は、キョトンとした目で手足をばたつかせた。
「楽しみだなあ。どんな子になるんだろう、翼も舞も」
「そうですね。早く大きくなって欲しい気もするけど、まだまだ赤ちゃんのままでいて欲しい気もします」
「そうだね。一日一日が宝物だな」
「はい」
日に日に家族の絆が深まっていく。
その事を恵真はしみじみと感じていた。
◇
双子にとって、初めてのクリスマスとお正月を迎えた。
双方の祖父母から、たくさんのクリスマスプレゼントをもらい、ツリーの前で写真を撮る。
お正月には、両家の両親がマンションに来て、皆で賑やかに新年を迎えた。
母親達は手作りのおせち料理を持って来てくれ、父親達は代わる代わる翼と舞にミルクをあげてくれる。
お陰で恵真も大和も、ゆっくり休む事が出来た。
すくすくと大きくなっていく翼と舞。
身体もしっかりしてきて、うつ伏せにすると、両手を広げてブーンと飛行機のポーズをする。
「おっ、翼も舞も上手いぞ!Fly heading 180. Climb and maintain 3000」
一緒にうつ伏せになった大和が、隣で興奮気味に声をかける。
そんな大和に苦笑いしながら、恵真は三人の写真を撮った。
ある日、恵真が手に持ったガラガラを振って見せていると、手を伸ばした翼がコロンと寝返りを打った。
「あっ!翼、寝返り出来たね!やったー!凄い凄い」
コツを掴んだのか、仰向けに戻すと、すぐまたコロンとうつ伏せになる。
隣の舞に手が当たりそうで、恵真は二人の間に大きなイルカのぬいぐるみを置いた。
すると今度は、イルカに手を伸ばした舞が、コロンと寝返りを打つ。
「わー!舞も出来たね!二人とも凄い!」
恵真は早速、乗務に行っている大和に動画を送った。
「ふふ、パパびっくりするよー、きっと」
翼と舞は、自分で動けるのが楽しいようで、寝返りを打ってはおもちゃを手に遊んでいる。
恵真がスノードームを逆さにしてオルゴールのネジを巻くと、うつ伏せの二人は頭を寄せ合って見入っていた。
「あー」「うー」と、おしゃべりしながらスノードームを見ている二人の後ろ姿を、恵真は微笑みながら写真に収めた。
◇
二人の成長を、毎日育児日記に書き留めていた恵真は、最近二人が夜は6時間連続で寝ている事に気づく。
「大和さん」
「ん?どうしたの」
恵真は、ダイニングテーブルで夕食を食べながら大和に話し出す。
「翼も舞も、離乳食を始めて夜は6時間寝るようになったの。だからもう大丈夫。大和さん、短日数乗務ではなく、通常のシフトに戻してもらってください」
「え…、もう?1歳の誕生日を過ぎてからでいいと思うけど」
恵真は首を振る。
「それだと、海外のフライトは1年以上飛ばない事になります」
「ああ、確かに。でも、また訓練してから少しずつ戻ってもいいんだし」
「いえ、もう戻ってください。でないと私、気がかりで…。大和さんが復帰してくれた方が、私の気持ちとしても安心なんです」
大和はじっと考え込んでから、もう一度恵真の顔を見る。
考えを変える気がないのを感じ取ると、ふうと小さく息をついてから頷いた。
「分かった。そうするよ」
「ほんとですか?良かった!」
「恵真の頑固さには適わないからな。ありがとう、恵真。でも、大変だったらすぐに教えてね」
「はい」
そして大和は、国内ステイや海外のフライトも担当するようになった。
数日間、大和が帰って来ない日もあるが、恵真はもう不安にはならなかった。
(だって、翼と舞がいてくれるんだもん。ちっとも寂しくない)
いつの間にか恵真は、双子のお世話をする立場から、双子に励まされる側になっていた。
育児の合間に、彩乃やこずえと電話で話すのも良い息抜きになった。
彩乃とは、お互いの子どもの成長具合を報告し合う。
誕生日も5日違いなので、離乳食や母乳の回数に関しても、とても良い相談相手だった。
また、こずえは4月に結婚式を挙げた事を報告してくれた。
送ってくれた写真には、マーメイドラインの大人っぽいドレスを着こなすこずえと、シックなタキシード姿の伊沢がかっこ良く写っていた。
「こずえちゃん、とってもきれい!良かったね、結婚式挙げられて」
恵真が電話でそう言うと、こずえはいつもと変わらない口調で言う。
「まあねー、うるさいんだもん。どうしても式挙げたいって、ゆう…あっ」
急に言葉を止めたこずえに、恵真は、ん?と首をひねる。
「ゆう…って?あ!もしや優太ってこと?!」
大きな声を出してしまい、慌てて寝ている双子を振り返る。
幸い二人ともぐっすり眠ったままだった。
恵真は改めて声のトーンを落として聞く。
「ふふっ、こずえちゃん、ついに伊沢くんのこと、名前で呼び始めたのね」
「ちょっと、そこはスルーしてよー」
「えー?だって気になるんだもん。で、どうだった?初めて名前で呼んであげた時の反応は?」
「んー、恵真が言ってた通りの反応だった」
「あ、ドキュン?」
「そう。まさにそんな感じ」
あはは!と恵真は明るく笑う。
「嬉しかっただろうなあ、伊沢くん」
「て言うか、しつこかった。もう一回!とかせがんできて」
「やだー!もう、なんか聞いてるだけで照れちゃう。ラブラブだね!」
とにもかくにも、幸せそうな二人の様子に、恵真も嬉しくなった。
今日も大和はオフ。
12月にしてはポカポカと温かい陽気で、なかなか寝ない双子を見て、大和が提案する。
「いいですね。二人とも、外の空気に触れさせてあげたいし」
「じゃあ、授乳終わったら行こうか」
「はい」
暖かい服を着せ、ベビーカーに乗せてからブランケットをかける。
二人とも、外に出た途端に眩しそうに目を細め、手をパタパタさせた。
「お外は気持ちいいねー」
双子に声をかけながら、のんびりと近所を歩く。
「恵真。ここで待ってるから、好きな物買っておいで」
カフェの前で、大和が立ち止まる。
「あ、はい。じゃあすぐ戻ります」
恵真は店内のカウンターに行くと、ディカフェのモカと、オリジナルブレンドをテイクアウトした。
「はい、大和さん」
「お、ありがとう」
温かい飲み物を片手にまた歩き始めると、ポツポツと並ぶショップは、どこもきれいにクリスマスの飾り付けがされていた。
近くの公園のベンチに座って、ドリンクを飲む。
「はあー、なんかいいな。こんなふうに時間をのんびり使うのって」
「そうですね。のどかでゆったりしてて、なんだかおばあちゃんになった気分」
「おいおい、勘弁してくれよ」
ふふっと恵真は笑う。
「そうですよね。これから双子が大きくなったら、一緒にブランコに乗ったり、滑り台滑ったりしないといけませんよね」
「ああ、そうだよ。俺達、子ども時代をもう一度やり直す感じだな」
「確かに。体力つけておかないと!」
恵真は張り切ってガッツポーズをする。
「楽しみだな。この子達の成長」
「ええ」
二人で双子の顔を覗き込む。
元気いっぱいに手足を動かす双子に、大和と恵真は顔を見合わせて微笑んだ。
◇
「大和さん。今夜は寝室で寝てください」
お風呂上がりに白湯を飲ませていると、ふいに恵真が声をかけてきた。
「え?寝室って、俺が?」
「はい。明日フライトですよね?キャプテンが寝不足で飛ぶ訳にはいきません。双子のお世話は私一人で大丈夫なので、大和さんは寝室でしっかり睡眠を取ってください」
でも…と大和はためらう。
「私はパイロットの妻です。きちんとその役目も果たさなければいけません。それに寝不足で乗務するのが、どんなに危険な事かも理解しています。大和さん、しっかり身体を休めてください。もしどうしても私一人では無理だったら、その時は少しお願いさせてください」
真剣な恵真の表情に、大和も最後は頷いた。
「分かった。いつでも呼んでね」
夜、双子は一度眠ってから、23時に泣き始めた。
二人に授乳し、寝かしつけてから大和は寝室へ向かう。
「じゃあ、恵真。いつでも声かけてね」
「はい、おやすなさい」
「おやすみ」
大和は優しく恵真にキスをしてから、リビングをあとにした。
◇
翼の泣き声が聞こえてきて、恵真は目を覚ます。
「はーい、今ミルク作るね」
翼にミルクをあげながら時計を見ると、明け方の4時だった。
(4時間はまとめて寝てくれるようになったかな)
すると舞も、ホワーホワーと泣き始める。
(うっ、手が足りない…)
恵真は授乳クッションに寝かせた翼にミルクを上げながら、もう一つの授乳クッションを腰にはめ、舞を寝かせて母乳をあげる。
(一人でもなんとかなるもんよね、ふふ)
なんだか自分が逞しくなったような気がして、恵真は嬉しくなった。
◇
「おはよう、恵真」
翌朝、目が覚めると大和が舞にミルクをあげていた。
「おはようございます。今何時ですか?」
「7時だよ。俺がこっちに来たら、舞も目を開けたから、ミルクあげてたんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
恵真は洗顔と着替えをしてから、キッチンに行き朝食の支度をする。
ついでに翼のミルクも作っていると、タイミング良く泣き始めた。
「俺がやるよ。舞も飲み終えたし」
大和にミルクを渡し、恵真はソファのローテーブルに朝食を並べた。
ベビーキャリーをソファのそばに置き、双子を寝かせて顔を見ながら朝食を食べる。
「恵真、夜中は大丈夫だった?」
「ええ。一度起きただけだったの。大和さんも、良く眠れましたか?」
「ああ、お陰でぐっすり。でもなんだか寂しかったよ。いつもなら目が覚めてすぐ、隣に寝てる翼が変顔してくれて、朝から楽しかったのに」
変顔?!と恵真は笑い出す。
「確かに。翼ってなんだかこう、アピールが凄いですよね」
「そう。ねえねえ、見て見てー!って」
あはは!と恵真は笑いながら翼を見る。
翼は、キョトンとした目で手足をばたつかせた。
「楽しみだなあ。どんな子になるんだろう、翼も舞も」
「そうですね。早く大きくなって欲しい気もするけど、まだまだ赤ちゃんのままでいて欲しい気もします」
「そうだね。一日一日が宝物だな」
「はい」
日に日に家族の絆が深まっていく。
その事を恵真はしみじみと感じていた。
◇
双子にとって、初めてのクリスマスとお正月を迎えた。
双方の祖父母から、たくさんのクリスマスプレゼントをもらい、ツリーの前で写真を撮る。
お正月には、両家の両親がマンションに来て、皆で賑やかに新年を迎えた。
母親達は手作りのおせち料理を持って来てくれ、父親達は代わる代わる翼と舞にミルクをあげてくれる。
お陰で恵真も大和も、ゆっくり休む事が出来た。
すくすくと大きくなっていく翼と舞。
身体もしっかりしてきて、うつ伏せにすると、両手を広げてブーンと飛行機のポーズをする。
「おっ、翼も舞も上手いぞ!Fly heading 180. Climb and maintain 3000」
一緒にうつ伏せになった大和が、隣で興奮気味に声をかける。
そんな大和に苦笑いしながら、恵真は三人の写真を撮った。
ある日、恵真が手に持ったガラガラを振って見せていると、手を伸ばした翼がコロンと寝返りを打った。
「あっ!翼、寝返り出来たね!やったー!凄い凄い」
コツを掴んだのか、仰向けに戻すと、すぐまたコロンとうつ伏せになる。
隣の舞に手が当たりそうで、恵真は二人の間に大きなイルカのぬいぐるみを置いた。
すると今度は、イルカに手を伸ばした舞が、コロンと寝返りを打つ。
「わー!舞も出来たね!二人とも凄い!」
恵真は早速、乗務に行っている大和に動画を送った。
「ふふ、パパびっくりするよー、きっと」
翼と舞は、自分で動けるのが楽しいようで、寝返りを打ってはおもちゃを手に遊んでいる。
恵真がスノードームを逆さにしてオルゴールのネジを巻くと、うつ伏せの二人は頭を寄せ合って見入っていた。
「あー」「うー」と、おしゃべりしながらスノードームを見ている二人の後ろ姿を、恵真は微笑みながら写真に収めた。
◇
二人の成長を、毎日育児日記に書き留めていた恵真は、最近二人が夜は6時間連続で寝ている事に気づく。
「大和さん」
「ん?どうしたの」
恵真は、ダイニングテーブルで夕食を食べながら大和に話し出す。
「翼も舞も、離乳食を始めて夜は6時間寝るようになったの。だからもう大丈夫。大和さん、短日数乗務ではなく、通常のシフトに戻してもらってください」
「え…、もう?1歳の誕生日を過ぎてからでいいと思うけど」
恵真は首を振る。
「それだと、海外のフライトは1年以上飛ばない事になります」
「ああ、確かに。でも、また訓練してから少しずつ戻ってもいいんだし」
「いえ、もう戻ってください。でないと私、気がかりで…。大和さんが復帰してくれた方が、私の気持ちとしても安心なんです」
大和はじっと考え込んでから、もう一度恵真の顔を見る。
考えを変える気がないのを感じ取ると、ふうと小さく息をついてから頷いた。
「分かった。そうするよ」
「ほんとですか?良かった!」
「恵真の頑固さには適わないからな。ありがとう、恵真。でも、大変だったらすぐに教えてね」
「はい」
そして大和は、国内ステイや海外のフライトも担当するようになった。
数日間、大和が帰って来ない日もあるが、恵真はもう不安にはならなかった。
(だって、翼と舞がいてくれるんだもん。ちっとも寂しくない)
いつの間にか恵真は、双子のお世話をする立場から、双子に励まされる側になっていた。
育児の合間に、彩乃やこずえと電話で話すのも良い息抜きになった。
彩乃とは、お互いの子どもの成長具合を報告し合う。
誕生日も5日違いなので、離乳食や母乳の回数に関しても、とても良い相談相手だった。
また、こずえは4月に結婚式を挙げた事を報告してくれた。
送ってくれた写真には、マーメイドラインの大人っぽいドレスを着こなすこずえと、シックなタキシード姿の伊沢がかっこ良く写っていた。
「こずえちゃん、とってもきれい!良かったね、結婚式挙げられて」
恵真が電話でそう言うと、こずえはいつもと変わらない口調で言う。
「まあねー、うるさいんだもん。どうしても式挙げたいって、ゆう…あっ」
急に言葉を止めたこずえに、恵真は、ん?と首をひねる。
「ゆう…って?あ!もしや優太ってこと?!」
大きな声を出してしまい、慌てて寝ている双子を振り返る。
幸い二人ともぐっすり眠ったままだった。
恵真は改めて声のトーンを落として聞く。
「ふふっ、こずえちゃん、ついに伊沢くんのこと、名前で呼び始めたのね」
「ちょっと、そこはスルーしてよー」
「えー?だって気になるんだもん。で、どうだった?初めて名前で呼んであげた時の反応は?」
「んー、恵真が言ってた通りの反応だった」
「あ、ドキュン?」
「そう。まさにそんな感じ」
あはは!と恵真は明るく笑う。
「嬉しかっただろうなあ、伊沢くん」
「て言うか、しつこかった。もう一回!とかせがんできて」
「やだー!もう、なんか聞いてるだけで照れちゃう。ラブラブだね!」
とにもかくにも、幸せそうな二人の様子に、恵真も嬉しくなった。
1
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は一途に私に恋をする~ after story
けいこ
恋愛
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は一途に私に恋をする~
のafter storyになります😃
よろしければぜひ、本編を読んで頂いた後にご覧下さい🌸🌸
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる