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ローズボックス
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車に戻ると、いよいよホテルに向かう。
「前に来た時は、この車を試乗したあとでしたよね」
「ああ。あの時はまだスポーツカーだったな。今頃は富樫と友香さんに乗ってもらってるだろうか」
「ふふ、きっとそうですよ」
まだ恋人になる前に訪れたホテルを、今はこうして婚約者として戻って来られたことに、美怜は感慨深くなった。
バレーパーキングで車を預けると、すぐさまスタッフが荷物を受け取る。
「一泊で予約した成瀬です」
「成瀬様ですね。本日はようこそお越しくださいました。エグゼクティブラウンジで専任スタッフがお待ちしております。どうぞこちらへ」
身のこなしも美しい男性スタッフに案内されて、十五階へ上がる。
「わあ、素敵なラウンジですね。高級感があって、落ち着いた雰囲気で。カウンターとかテーブルもダークブラウンでまとめられてシックですね」
「そうだな。できればメゾンテールの家具を取り入れて欲しいところだが」
「ふふっ、今度卓に営業に行ってもらいましょうか」
そんなことを話していると、大きなテーブルに促された。
専任の女性スタッフがにこやかにチェックインの手続きを進める。
美怜はその間もラウンジの様子をそっと横目でうかがい、奥にドリンクや美味しそうな軽食があるのに気づいた。
デニッシュやカナッペ、キッシュやプチガトーが見た目も美しく豪華に並んでいる。
(美味しそう…)
見とれていると、グルグルーと美怜のお腹が鳴った。
「あはは!美怜、分かりやすいな」
成瀬に笑われて、美怜は真っ赤になる。
「もう!だって朝から何も食べてないんだもん。それにあんなに美味しそうだし」
「そうだな、ごめん。実はアフターヌーンティーを予約してあるんだ」
「そうなの?この間のロビーラウンジの?」
「いや、宿泊者限定のラウンジで、特別なメニューなんだって。早速行こう」
「はい!」
荷物は部屋に運んでくれるとのことで、ルームキーだけ受け取り、プレミアムラウンジへと向かった。
「すごい!さっきの迎賓館にも負けないくらいゴージャスですね」
大きな窓から美しい景色が見渡せるラウンジは、ソファ席やテーブル席など様々な家具が並び、好きな場所を選んでゆっくりとくつろぐことができる。
美怜達はソファ席に並んで座った。
「失礼いたします。成瀬様、本日はプレミアムアフターヌーンティーをご予約いただき、誠にありがとうございます。こちらでは、トリュフ・フォアグラ・キャビアの世界三大珍味を使ったセイボリーや、本場英国の『フォートナム・アンド・メイソン』の紅茶をご用意しております。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
グラスにミネラルウォーターを注いでから、にこやかな女性スタッフに説明されて、美怜は目を丸くする。
「ト、ト、トリュフ?フォアグラにキャビアも?幻のお三方と今日ここで一気にお会いするなんて」
スタッフが去ってから小声で話しかけると、成瀬は声を上げて笑った。
「美怜、幻って珍獣じゃないんだから。それに宇宙人と遭遇するような身構え方だな」
やがて三段のプレートスタンドとティーポットが運ばれてくる。
「わあ、美味しそう!」
上段にはひと口サイズのタルトやモンブラン、小さなカップのパフェやムースなど。
中段にはスコーンやパウンドケーキ、クッキーサンド。
そして下段には、フランス料理の前菜のような美しい品が並んでいる。
「こちらのオマール海老はキャビアと一緒にお召し上がりください。神戸ビーフのローストには本わさびを添えて。そしてこちらがフォアグラのテリーヌ。こちらはトリュフが香るスコーンでございます」
一つ一つ丁寧に手で差し示してくれるスタッフの言葉に、美怜は目を見開いた。
「え、海老とキャビア?キャビアってどちらにいらっしゃるの?本わさびって本部長の本?テリーヌさんってフォアグラの名前?トリュフが香るって、スパイスだったの?」
頭の中がハテナで一杯の美怜の言葉に、成瀬は笑いが止まらなくなる。
「美怜、キャビアはこちらのつぶつぶのお方だよ。本わさびは本部長とは無関係、だと思いたい。テリーヌさんはひょっとしたらいるかもしれないけど、人の名前じゃなくて料理の名前。あと、トリュフはスパイスではなく、きのこの一種。他に質問はある?」
「つぶつぶ?きのこ??全くの予想外!え、あとフォアグラさんは?」
「こちらのお方」
「テリーヌさんね」
「だから違うって」
真剣にじっくりと眺めてから、美怜は恐る恐る食べてみた。
「どう?美怜。初めましてのご感想は」
「な、なんだか。想像してたんと違う、みたいな」
「ははっ!まあ、俺もそんなに美味しいとは思えないんだよね。好き好んでは食べないかな。特にフォアグラさんはかわいそうだし」
「えっ、テリーヌさんってかわいそうな方なのね?」
「まあ、そうかな。違うけど。ほら、他にもたくさんあるよ。どんどん食べな」
「うん。あー、神戸ビーフ美味しい!さすが本わさび添え。ね?本部長」
美怜の言葉に、成瀬はしょぼんと肩を落とす。
(今日はずっと隼斗さんって名前で呼んでくれてたのに。本わさびで気を取られたな)
肉だけに、憎々しく思いながらローストビーフを口に入れる。
「う、旨い!」
「でしょう?さすがは本わさび。本がつくと何でもすごいのね、本部長」
もう本わさびのことは忘れて欲しい。
なんとか隼斗を思い出すワードはないものかと、成瀬は考え込んでいた。
***
美味しく食べ終わると部屋に入室できる時間になり、美怜はわくわくしながらドアを開けた。
「ひゃあ!なんて素晴らしいの」
正面の大きな窓から見えるパノラマの景色。
広いリビングには高級な家具が取り揃えられ、映画の世界のようだった。
「こんなに広くて素敵なお部屋に泊まってもいいの?」
「もちろん。気に入ってくれた?」
「うん!もうずっとここにいたい」
「それは良かった。でも美怜、せっかくだからエステサロンに行って来れば?明日は結婚式に参列するし、ネイルなんかもやりたいだろう?」
「それは、やってみたいけど。でもその間、本部長はどうするの?」
「ん?ちょっとパソコンいじってようかな。仕事が残ってるからさ」
適当にごまかすと、美怜は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい。お仕事忙しいのに私の為に…」
「違うよ!美怜。単にメールが届いてないかチェックするだけだから。あとは適当にゴロゴロしながら昼寝でもしてるよ」
「そう。お疲れでしょうし、ゆっくりしてくださいね」
「ああ。じゃあエステサロンまで送るよ」
「はい。ありがとうございます」
一緒に部屋を出てサロンまで行くと、自分の名前で予約が入っていて美怜はびっくりする。
「結城様。本日はボディケアとフェイシャルケア、それからジェルとオイルを使った全身トリートメントの二時間コースでお間違いないですか?そのあとネイルサロンにもご案内いたします」
「えっと、どんなコースなのかよく分からないのですが。まな板の上の鯉で大丈夫なコースでよろしくお願いします」
「は?ええ、はい。承知いたしました。ではまず初めにスパの中にある温泉にご案内いたしますね」
「温泉?!わあ、嬉しい」
笑顔の美怜に、成瀬は「行ってらっしゃい」と見送って別れる。
その足で一階にあるフラワーショップに向かった。
美怜にはああ言ったが、仕事をする気も昼寝する気もなく、やらなければいけないことがあったのだ。
「いらっしゃいませ。お花をお探しですか?」
花を数本手にした女性スタッフがにこやかに成瀬に声をかける。
「えっと、赤いバラを」
「赤いバラですね。プレゼントでしょうか?」
「はい。彼女の誕生日なので」
「そうなのですね、おめでとうございます。お花の他に何かご一緒にお渡しになるご予定は?」
「そうですね、指輪を」
するとスタッフは何かを察したように頷く。
「でしたら、花束にする以外にローズボックスをご用意することもできます。どちらがよろしいでしょうか?」
「ローズボックス、ですか?」
「はい。こちらの四角いケースにバラの花を敷き詰め、真ん中に指輪を入れることができます。このような感じで」
スタッフは成瀬に写真を見せた。
正方形のケースに赤いバラが上下に四輪ずつ、左右に二輪ずつ敷き詰められ、その中央に置かれたビロードの台に指輪が輝いている。
「こちらは十二本のバラ、つまりダズンローズと呼ばれていて、十二本それぞれに意味があるんです。愛情・感謝・尊敬・信頼・真実・誠実・情熱・努力・栄光・希望・幸福・永遠」
ゆっくりと指折り数える女性スタッフの言葉に、成瀬は耳を傾ける。
「たくさんの想いを込めてプレゼントを渡すことができます」
「たくさんの、想い…」
成瀬は小さく繰り返した。
(そうだ。俺は美怜にたくさんの想いを伝えたい。美怜と出逢えてどんなに幸せか、どれ程美怜に感謝しているか。そして心から美怜を愛していると)
顔を上げると、女性スタッフに告げる。
「このローズボックスを贈りたいです」
「かしこまりました」
スタッフはにっこりと微笑み、成瀬は促されてケースの色やリボンを選んでいく。
十二本のバラを切り、丁寧にケースに並べると、スタッフは成瀬に説明した。
「この真ん中の台にリングをセットしてくださいね。それからこのボックスにふたをします。最後にこちらのリボンを掛けてください。あらかじめ結んでおきますので、こうやって少しずつずらしながらボックスに掛けていきます。もし上手くできないようでしたら、またこちらにお持ちください」
「分かりました。ありがとう」
成瀬は支払いを済ませると、大事にボックスが入ったペーパーバッグを受け取る。
「素敵なお誕生日になりますように」
「ありがとう」
笑顔のスタッフに見送られて、成瀬は急いで部屋に戻った。
***
美怜がサロンに行ってからまだ四十分しか経っていない。
二時間のコースにネイルまでやるのだから、まだまだ充分時間はある。
落ち着け、と深呼吸してから、成瀬はベッドルームのクローゼットを開けた。
美怜に見つからないように隠しておいた、小さなリングケースを取り出す。
そこにも綺麗な白いリボンが掛けてあって心が痛んだが、仕方なく詫びつつリボンを解く。
そっとケースを開けると、ダイヤモンドがキラキラとまばゆく輝いていた。
美怜の誕生日にプロポーズをーーー
成瀬はそう決めて、この日の為に準備をしてきた。
卓と友香に協力してもらい、友香に美怜の指のサイズを確かめてもらう。
「美怜さん、私が卓さんからもらった婚約指輪をはめていたら、綺麗ねって言ってくれたんです。友香ちゃんの指によく似合ってるねって。その時さり気なく、六号なんですって言ったら、私と一緒だ!って」
「おおー、友香でかした!」
そう言って二人は、「成瀬さん、がんばって!」と拳を握って励ましてくれたっけ。
指輪を選ぶのにもあれこれと頭を悩ませた。
ジュエリーショップを何軒も回り、大きな一粒ダイヤの左右に小さくバラをモチーフにしたダイヤがついた指輪を見て、これだ!と決めた。
このバラなら、失くす心配もなく、ずっと美怜が身に着けていられる。
この指輪を、自分の愛の証として美怜に贈りたい。
もう一度じっと指輪を見つめ、想いを込めると、成瀬はそっと指輪を手に取った。
そしてローズボックスの真ん中のリング台に差し込む。
真っ赤なバラに囲まれて燦然と輝く美しい指輪。
美怜は喜んでくれるだろうか?
以前、美怜のマンションで結婚を約束した。
だが改めて今夜、この指輪と共にプロポーズする。
成瀬は表情を引き締めて頷いた。
***
「お帰り、美怜。どうだった?」
「もう最高だった!トロトロに溶けちゃうかと思った」
エステとネイルを終えた美怜は、すっきりした顔で部屋に戻って来た。
心なしか肌は艶っぽく潤い、何よりとても美しい。
成瀬ははやる気持ちを抑えながら、美怜に紅茶を淹れた。
「夕食は少し早めに六時からフレンチレストランでいいかな?」
「はい!もうお腹ペコペコなの」
「え、もう?若さってすごいな」
「それは関係ないと思うけど?単に私が食いしん坊なだけで」
「そっか。それなら食いしん坊さん。綺麗な俺の美怜に変身してくれる?」
「…は?」
キョトンとする美怜に、成瀬はやれやれと肩をすくめる。
「美怜、忘れた?赤いバラのドレス。ホテルでディナーの時に、俺の前だけで着て欲しいって」
「ああ!もちろん、覚えてますとも。ちゃんと今思い出しましたよ」
「それを忘れてたって言うんだよ」
「あはは!とにかく今から着替えますね。あ、覗いちゃだめですからね!」
「分かったよ。じゃあ俺はリビングで支度してる」
「はーい」
明るく返事をすると、美怜はベッドルームに向かった。
***
「わー、やっぱりこれ、どう見ても大胆だな」
ドレスに着替えると、美怜は鏡に映る自分をまじまじと見つめる。
胸元にふんわりとしたバラが並ぶのは可愛いが、胸の谷間が見えそうな程ギリギリのラインで、背中も大きく開いている。
身体にピタッと沿うデザインは、ウエストやヒップラインも拾ってしまい、おまけにスリットからは左のふとももが見えていた。
「うーん、寒い。色々な意味で寒い」
美怜は明日の為に持って来ておいたシルバーのラメ入りのショールを大きく肩に掛けることにした。
パウダールームで髪をアップにまとめ、メイクも色をしっかり使って華やかに仕上げる。
ピンクのワンカラーグラデーションのネイルの手に、バラのチャームのブレスレットを着けた。
「準備できました」
ドアを開けてリビングに行くと、ソファに座ってパソコンを開いていた成瀬が顔を上げ、驚いたように目を見張る。
「美怜…、すごく綺麗だ。こっちにおいで」
「あ、はい」
おずおずと近づくと、成瀬は立ち上がって美怜を両腕に抱きしめる。
「こんなに綺麗だなんて。どうして今まで隠してたの?」
「いえ、その。隠すつもりもだますつもりもありませんが…」
「俺だけの美怜でいてくれ。他の誰にも知られたくない」
「ええ?私の身元はもう色んな人にバレてますけど?」
「さっきから何を言っている?」
「本部長こそ、何をおっしゃいますやら」
噛み合わないと諦めたのか、成瀬は美怜の顎をそっと下から掬い上げると顔を寄せた。
「美怜、絶対に誰にも渡さない。美怜に触れられるのは俺だけだ」
独占欲をむき出しにしたような、ギラッとした男の色気を含む成瀬の瞳に捕えられ、美怜は息を呑む。
「愛してる、俺の美怜」
そう呟くとゆっくり顔を近づけ、美怜の柔らかくふっくらした唇に口づけた。
軽く押し当てただけの唇に美怜の唇の弾力が伝わり、美怜がもらす甘く切ない吐息も拾う。
成瀬は美怜の小さく可愛らしい唇をついばむようにチュッと音を立てると、ようやく身体を離した。
「これ以上は止められなくなる。行こうか」
そう言って、ソファに掛けておいたジャケットに腕を通す。
ホワンとしたままの美怜にクスッと笑い、ウエストを抱き寄せると、そのまま二人で部屋を出た。
***
「成瀬様、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
最上階のフレンチレストランで、二人は個室に案内される。
コース料理と食後のバースデーケーキは事前に頼んでおり、成瀬はワインメニューだけ受け取った。
美怜の希望も聞きながら、ロゼワインをオーダーする。
「美怜、お誕生日おめでとう」
「ありがとう!とっても嬉しいです」
ワインで乾杯して、美味しいフランス料理を味わう。
窓からはライトアップされた庭園が綺麗に見下ろせた。
「私ね、山梨の田舎で育ったから、ずっと都会に憧れてたんです」
ナイフとフォークを美しく使いながら、美怜が伏し目がちに話し出す。
「インターネットで色んなホテルや、今日の迎賓館のホームページを見て、いいなあ、こんな素敵なところにいつか行ってみたいなって」
「それで東京で働こうと思ったの?」
「はい。洋風の素敵な家具を買いたくても、山梨の和風の家には似合わないから。どうしても都会の洗練された空間を見てみたかったんです。メゾンテールに就職してミュージアムに配属された時は、毎日たくさんの家具に囲まれて仕事ができるって、とっても嬉しかったのを覚えています」
「そう。今も楽しい?」
「ええ、もちろん。このホテルの家具もとっても素敵でしょう?刺激を受けて、こんなデザインの家具がいいなって、アイデアが一杯浮かんできました。うちの家具のこれとこれを組み合わせたら良さそうだなって、お客様にもご提案したいって」
そう言って微笑む美怜は美しく、九歳も離れているとは思えない。
成瀬にとってこれ以上ない程、魅力にあふれた女性だった。
コース料理の最後にスタッフがホールケーキを美怜の前に置くと、美怜は目を真ん丸にして驚く。
その姿は、思わず笑みがこぼれる程あどけなく可愛らしかった。
どんな美怜も愛おしい。
美怜の全てを愛している。
成瀬は湧き上がるその気持ちを胸に、美怜の肩をしっかり抱いて部屋に戻った。
「前に来た時は、この車を試乗したあとでしたよね」
「ああ。あの時はまだスポーツカーだったな。今頃は富樫と友香さんに乗ってもらってるだろうか」
「ふふ、きっとそうですよ」
まだ恋人になる前に訪れたホテルを、今はこうして婚約者として戻って来られたことに、美怜は感慨深くなった。
バレーパーキングで車を預けると、すぐさまスタッフが荷物を受け取る。
「一泊で予約した成瀬です」
「成瀬様ですね。本日はようこそお越しくださいました。エグゼクティブラウンジで専任スタッフがお待ちしております。どうぞこちらへ」
身のこなしも美しい男性スタッフに案内されて、十五階へ上がる。
「わあ、素敵なラウンジですね。高級感があって、落ち着いた雰囲気で。カウンターとかテーブルもダークブラウンでまとめられてシックですね」
「そうだな。できればメゾンテールの家具を取り入れて欲しいところだが」
「ふふっ、今度卓に営業に行ってもらいましょうか」
そんなことを話していると、大きなテーブルに促された。
専任の女性スタッフがにこやかにチェックインの手続きを進める。
美怜はその間もラウンジの様子をそっと横目でうかがい、奥にドリンクや美味しそうな軽食があるのに気づいた。
デニッシュやカナッペ、キッシュやプチガトーが見た目も美しく豪華に並んでいる。
(美味しそう…)
見とれていると、グルグルーと美怜のお腹が鳴った。
「あはは!美怜、分かりやすいな」
成瀬に笑われて、美怜は真っ赤になる。
「もう!だって朝から何も食べてないんだもん。それにあんなに美味しそうだし」
「そうだな、ごめん。実はアフターヌーンティーを予約してあるんだ」
「そうなの?この間のロビーラウンジの?」
「いや、宿泊者限定のラウンジで、特別なメニューなんだって。早速行こう」
「はい!」
荷物は部屋に運んでくれるとのことで、ルームキーだけ受け取り、プレミアムラウンジへと向かった。
「すごい!さっきの迎賓館にも負けないくらいゴージャスですね」
大きな窓から美しい景色が見渡せるラウンジは、ソファ席やテーブル席など様々な家具が並び、好きな場所を選んでゆっくりとくつろぐことができる。
美怜達はソファ席に並んで座った。
「失礼いたします。成瀬様、本日はプレミアムアフターヌーンティーをご予約いただき、誠にありがとうございます。こちらでは、トリュフ・フォアグラ・キャビアの世界三大珍味を使ったセイボリーや、本場英国の『フォートナム・アンド・メイソン』の紅茶をご用意しております。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
グラスにミネラルウォーターを注いでから、にこやかな女性スタッフに説明されて、美怜は目を丸くする。
「ト、ト、トリュフ?フォアグラにキャビアも?幻のお三方と今日ここで一気にお会いするなんて」
スタッフが去ってから小声で話しかけると、成瀬は声を上げて笑った。
「美怜、幻って珍獣じゃないんだから。それに宇宙人と遭遇するような身構え方だな」
やがて三段のプレートスタンドとティーポットが運ばれてくる。
「わあ、美味しそう!」
上段にはひと口サイズのタルトやモンブラン、小さなカップのパフェやムースなど。
中段にはスコーンやパウンドケーキ、クッキーサンド。
そして下段には、フランス料理の前菜のような美しい品が並んでいる。
「こちらのオマール海老はキャビアと一緒にお召し上がりください。神戸ビーフのローストには本わさびを添えて。そしてこちらがフォアグラのテリーヌ。こちらはトリュフが香るスコーンでございます」
一つ一つ丁寧に手で差し示してくれるスタッフの言葉に、美怜は目を見開いた。
「え、海老とキャビア?キャビアってどちらにいらっしゃるの?本わさびって本部長の本?テリーヌさんってフォアグラの名前?トリュフが香るって、スパイスだったの?」
頭の中がハテナで一杯の美怜の言葉に、成瀬は笑いが止まらなくなる。
「美怜、キャビアはこちらのつぶつぶのお方だよ。本わさびは本部長とは無関係、だと思いたい。テリーヌさんはひょっとしたらいるかもしれないけど、人の名前じゃなくて料理の名前。あと、トリュフはスパイスではなく、きのこの一種。他に質問はある?」
「つぶつぶ?きのこ??全くの予想外!え、あとフォアグラさんは?」
「こちらのお方」
「テリーヌさんね」
「だから違うって」
真剣にじっくりと眺めてから、美怜は恐る恐る食べてみた。
「どう?美怜。初めましてのご感想は」
「な、なんだか。想像してたんと違う、みたいな」
「ははっ!まあ、俺もそんなに美味しいとは思えないんだよね。好き好んでは食べないかな。特にフォアグラさんはかわいそうだし」
「えっ、テリーヌさんってかわいそうな方なのね?」
「まあ、そうかな。違うけど。ほら、他にもたくさんあるよ。どんどん食べな」
「うん。あー、神戸ビーフ美味しい!さすが本わさび添え。ね?本部長」
美怜の言葉に、成瀬はしょぼんと肩を落とす。
(今日はずっと隼斗さんって名前で呼んでくれてたのに。本わさびで気を取られたな)
肉だけに、憎々しく思いながらローストビーフを口に入れる。
「う、旨い!」
「でしょう?さすがは本わさび。本がつくと何でもすごいのね、本部長」
もう本わさびのことは忘れて欲しい。
なんとか隼斗を思い出すワードはないものかと、成瀬は考え込んでいた。
***
美味しく食べ終わると部屋に入室できる時間になり、美怜はわくわくしながらドアを開けた。
「ひゃあ!なんて素晴らしいの」
正面の大きな窓から見えるパノラマの景色。
広いリビングには高級な家具が取り揃えられ、映画の世界のようだった。
「こんなに広くて素敵なお部屋に泊まってもいいの?」
「もちろん。気に入ってくれた?」
「うん!もうずっとここにいたい」
「それは良かった。でも美怜、せっかくだからエステサロンに行って来れば?明日は結婚式に参列するし、ネイルなんかもやりたいだろう?」
「それは、やってみたいけど。でもその間、本部長はどうするの?」
「ん?ちょっとパソコンいじってようかな。仕事が残ってるからさ」
適当にごまかすと、美怜は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい。お仕事忙しいのに私の為に…」
「違うよ!美怜。単にメールが届いてないかチェックするだけだから。あとは適当にゴロゴロしながら昼寝でもしてるよ」
「そう。お疲れでしょうし、ゆっくりしてくださいね」
「ああ。じゃあエステサロンまで送るよ」
「はい。ありがとうございます」
一緒に部屋を出てサロンまで行くと、自分の名前で予約が入っていて美怜はびっくりする。
「結城様。本日はボディケアとフェイシャルケア、それからジェルとオイルを使った全身トリートメントの二時間コースでお間違いないですか?そのあとネイルサロンにもご案内いたします」
「えっと、どんなコースなのかよく分からないのですが。まな板の上の鯉で大丈夫なコースでよろしくお願いします」
「は?ええ、はい。承知いたしました。ではまず初めにスパの中にある温泉にご案内いたしますね」
「温泉?!わあ、嬉しい」
笑顔の美怜に、成瀬は「行ってらっしゃい」と見送って別れる。
その足で一階にあるフラワーショップに向かった。
美怜にはああ言ったが、仕事をする気も昼寝する気もなく、やらなければいけないことがあったのだ。
「いらっしゃいませ。お花をお探しですか?」
花を数本手にした女性スタッフがにこやかに成瀬に声をかける。
「えっと、赤いバラを」
「赤いバラですね。プレゼントでしょうか?」
「はい。彼女の誕生日なので」
「そうなのですね、おめでとうございます。お花の他に何かご一緒にお渡しになるご予定は?」
「そうですね、指輪を」
するとスタッフは何かを察したように頷く。
「でしたら、花束にする以外にローズボックスをご用意することもできます。どちらがよろしいでしょうか?」
「ローズボックス、ですか?」
「はい。こちらの四角いケースにバラの花を敷き詰め、真ん中に指輪を入れることができます。このような感じで」
スタッフは成瀬に写真を見せた。
正方形のケースに赤いバラが上下に四輪ずつ、左右に二輪ずつ敷き詰められ、その中央に置かれたビロードの台に指輪が輝いている。
「こちらは十二本のバラ、つまりダズンローズと呼ばれていて、十二本それぞれに意味があるんです。愛情・感謝・尊敬・信頼・真実・誠実・情熱・努力・栄光・希望・幸福・永遠」
ゆっくりと指折り数える女性スタッフの言葉に、成瀬は耳を傾ける。
「たくさんの想いを込めてプレゼントを渡すことができます」
「たくさんの、想い…」
成瀬は小さく繰り返した。
(そうだ。俺は美怜にたくさんの想いを伝えたい。美怜と出逢えてどんなに幸せか、どれ程美怜に感謝しているか。そして心から美怜を愛していると)
顔を上げると、女性スタッフに告げる。
「このローズボックスを贈りたいです」
「かしこまりました」
スタッフはにっこりと微笑み、成瀬は促されてケースの色やリボンを選んでいく。
十二本のバラを切り、丁寧にケースに並べると、スタッフは成瀬に説明した。
「この真ん中の台にリングをセットしてくださいね。それからこのボックスにふたをします。最後にこちらのリボンを掛けてください。あらかじめ結んでおきますので、こうやって少しずつずらしながらボックスに掛けていきます。もし上手くできないようでしたら、またこちらにお持ちください」
「分かりました。ありがとう」
成瀬は支払いを済ませると、大事にボックスが入ったペーパーバッグを受け取る。
「素敵なお誕生日になりますように」
「ありがとう」
笑顔のスタッフに見送られて、成瀬は急いで部屋に戻った。
***
美怜がサロンに行ってからまだ四十分しか経っていない。
二時間のコースにネイルまでやるのだから、まだまだ充分時間はある。
落ち着け、と深呼吸してから、成瀬はベッドルームのクローゼットを開けた。
美怜に見つからないように隠しておいた、小さなリングケースを取り出す。
そこにも綺麗な白いリボンが掛けてあって心が痛んだが、仕方なく詫びつつリボンを解く。
そっとケースを開けると、ダイヤモンドがキラキラとまばゆく輝いていた。
美怜の誕生日にプロポーズをーーー
成瀬はそう決めて、この日の為に準備をしてきた。
卓と友香に協力してもらい、友香に美怜の指のサイズを確かめてもらう。
「美怜さん、私が卓さんからもらった婚約指輪をはめていたら、綺麗ねって言ってくれたんです。友香ちゃんの指によく似合ってるねって。その時さり気なく、六号なんですって言ったら、私と一緒だ!って」
「おおー、友香でかした!」
そう言って二人は、「成瀬さん、がんばって!」と拳を握って励ましてくれたっけ。
指輪を選ぶのにもあれこれと頭を悩ませた。
ジュエリーショップを何軒も回り、大きな一粒ダイヤの左右に小さくバラをモチーフにしたダイヤがついた指輪を見て、これだ!と決めた。
このバラなら、失くす心配もなく、ずっと美怜が身に着けていられる。
この指輪を、自分の愛の証として美怜に贈りたい。
もう一度じっと指輪を見つめ、想いを込めると、成瀬はそっと指輪を手に取った。
そしてローズボックスの真ん中のリング台に差し込む。
真っ赤なバラに囲まれて燦然と輝く美しい指輪。
美怜は喜んでくれるだろうか?
以前、美怜のマンションで結婚を約束した。
だが改めて今夜、この指輪と共にプロポーズする。
成瀬は表情を引き締めて頷いた。
***
「お帰り、美怜。どうだった?」
「もう最高だった!トロトロに溶けちゃうかと思った」
エステとネイルを終えた美怜は、すっきりした顔で部屋に戻って来た。
心なしか肌は艶っぽく潤い、何よりとても美しい。
成瀬ははやる気持ちを抑えながら、美怜に紅茶を淹れた。
「夕食は少し早めに六時からフレンチレストランでいいかな?」
「はい!もうお腹ペコペコなの」
「え、もう?若さってすごいな」
「それは関係ないと思うけど?単に私が食いしん坊なだけで」
「そっか。それなら食いしん坊さん。綺麗な俺の美怜に変身してくれる?」
「…は?」
キョトンとする美怜に、成瀬はやれやれと肩をすくめる。
「美怜、忘れた?赤いバラのドレス。ホテルでディナーの時に、俺の前だけで着て欲しいって」
「ああ!もちろん、覚えてますとも。ちゃんと今思い出しましたよ」
「それを忘れてたって言うんだよ」
「あはは!とにかく今から着替えますね。あ、覗いちゃだめですからね!」
「分かったよ。じゃあ俺はリビングで支度してる」
「はーい」
明るく返事をすると、美怜はベッドルームに向かった。
***
「わー、やっぱりこれ、どう見ても大胆だな」
ドレスに着替えると、美怜は鏡に映る自分をまじまじと見つめる。
胸元にふんわりとしたバラが並ぶのは可愛いが、胸の谷間が見えそうな程ギリギリのラインで、背中も大きく開いている。
身体にピタッと沿うデザインは、ウエストやヒップラインも拾ってしまい、おまけにスリットからは左のふとももが見えていた。
「うーん、寒い。色々な意味で寒い」
美怜は明日の為に持って来ておいたシルバーのラメ入りのショールを大きく肩に掛けることにした。
パウダールームで髪をアップにまとめ、メイクも色をしっかり使って華やかに仕上げる。
ピンクのワンカラーグラデーションのネイルの手に、バラのチャームのブレスレットを着けた。
「準備できました」
ドアを開けてリビングに行くと、ソファに座ってパソコンを開いていた成瀬が顔を上げ、驚いたように目を見張る。
「美怜…、すごく綺麗だ。こっちにおいで」
「あ、はい」
おずおずと近づくと、成瀬は立ち上がって美怜を両腕に抱きしめる。
「こんなに綺麗だなんて。どうして今まで隠してたの?」
「いえ、その。隠すつもりもだますつもりもありませんが…」
「俺だけの美怜でいてくれ。他の誰にも知られたくない」
「ええ?私の身元はもう色んな人にバレてますけど?」
「さっきから何を言っている?」
「本部長こそ、何をおっしゃいますやら」
噛み合わないと諦めたのか、成瀬は美怜の顎をそっと下から掬い上げると顔を寄せた。
「美怜、絶対に誰にも渡さない。美怜に触れられるのは俺だけだ」
独占欲をむき出しにしたような、ギラッとした男の色気を含む成瀬の瞳に捕えられ、美怜は息を呑む。
「愛してる、俺の美怜」
そう呟くとゆっくり顔を近づけ、美怜の柔らかくふっくらした唇に口づけた。
軽く押し当てただけの唇に美怜の唇の弾力が伝わり、美怜がもらす甘く切ない吐息も拾う。
成瀬は美怜の小さく可愛らしい唇をついばむようにチュッと音を立てると、ようやく身体を離した。
「これ以上は止められなくなる。行こうか」
そう言って、ソファに掛けておいたジャケットに腕を通す。
ホワンとしたままの美怜にクスッと笑い、ウエストを抱き寄せると、そのまま二人で部屋を出た。
***
「成瀬様、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
最上階のフレンチレストランで、二人は個室に案内される。
コース料理と食後のバースデーケーキは事前に頼んでおり、成瀬はワインメニューだけ受け取った。
美怜の希望も聞きながら、ロゼワインをオーダーする。
「美怜、お誕生日おめでとう」
「ありがとう!とっても嬉しいです」
ワインで乾杯して、美味しいフランス料理を味わう。
窓からはライトアップされた庭園が綺麗に見下ろせた。
「私ね、山梨の田舎で育ったから、ずっと都会に憧れてたんです」
ナイフとフォークを美しく使いながら、美怜が伏し目がちに話し出す。
「インターネットで色んなホテルや、今日の迎賓館のホームページを見て、いいなあ、こんな素敵なところにいつか行ってみたいなって」
「それで東京で働こうと思ったの?」
「はい。洋風の素敵な家具を買いたくても、山梨の和風の家には似合わないから。どうしても都会の洗練された空間を見てみたかったんです。メゾンテールに就職してミュージアムに配属された時は、毎日たくさんの家具に囲まれて仕事ができるって、とっても嬉しかったのを覚えています」
「そう。今も楽しい?」
「ええ、もちろん。このホテルの家具もとっても素敵でしょう?刺激を受けて、こんなデザインの家具がいいなって、アイデアが一杯浮かんできました。うちの家具のこれとこれを組み合わせたら良さそうだなって、お客様にもご提案したいって」
そう言って微笑む美怜は美しく、九歳も離れているとは思えない。
成瀬にとってこれ以上ない程、魅力にあふれた女性だった。
コース料理の最後にスタッフがホールケーキを美怜の前に置くと、美怜は目を真ん丸にして驚く。
その姿は、思わず笑みがこぼれる程あどけなく可愛らしかった。
どんな美怜も愛おしい。
美怜の全てを愛している。
成瀬は湧き上がるその気持ちを胸に、美怜の肩をしっかり抱いて部屋に戻った。
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