恋とキスは背伸びして

葉月 まい

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先鋭部隊

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翌日。
定時で仕事を終えた美怜は、いそいそと着替えてからカバンを手にした。

「それではお先に失礼します!」
「あら、早いね美怜。デート?って、そんな訳ないか」
「なんですか、それー?」
「じゃあデートなの?」
「…違いますけど」

やっぱりね!と笑う先輩達に、美怜はふくれっ面になる。

「どうせまた卓くんでしょ?」
「え、美沙先輩。どうして分かるんですか?」
「分かるわよー。昨日、卓くんの法人のお客様から契約もらった代わりに、ホテルのディナーおごらせるんでしょ?いつものことじゃない」
「おごらせるって、そんな。卓がご馳走してくれるって言うから…」

ほら、おごらせるんじゃない、と先輩達は顔を見合わせて笑う。

「もう!私、別に脅してないですよ?」
「分かってるって。卓くんだって、美怜のおかげで営業成績上がるし、歩合制でお給料もアップする訳だしね。ディナーくらいご馳走してもらって当然よ。ほら、早く行きなさい」

背中を押されて美怜はドアに向かう。

「じゃあ、お先に失礼します。お疲れ様でした」
「はいはーい!行ってらっしゃい」

皆に手を振って見送られ、今度こそ美怜はオフィスを出た。

***

「卓!」

待ち合わせしたホテルのロビーで、美怜は卓の姿を見つけてタタッと近づいた。

「ごめん、お待たせ」
「いや、俺も今着いたとこ」
「そう?良かった」

二人並んでエレベーターホールに向かい、フロアの案内表示を確認する。

「えーっと、今日は点心のお店だよな?二十三階か」
「うん!種類もいっぱいあるし、美味しいんだって。佳代先輩から教えてもらったの。楽しみにしてたんだー。ご馳走になります、卓様」
「はいはい。お安いご用ですよ」

異国情緒溢れるレストランの入口を入ると、店内は比較的空いていた。

「窓際のお席にご案内いたします」

チャイナドレスのスタッフに笑顔で促され、二人は綺麗な夜景が見下ろせる大きな円卓に腰を落ち着けた。

点心のコースをオーダーして、まずは紹興酒で乾杯する。

「かんぱーい!今日もお疲れ様」
「お疲れ。昨日はありがとな、美怜」
「ううん。どうたった?その後の契約は」

内容も双方納得いくものに決まったのかと、美怜は気がかりだった。

「ああ、喜んでもらえたよ。あのコンベンションセンターは、オープン前から既に一年先まで予約がある程度入ってるんだ。早速その主催者と打ち合わせのスケジュールを組むことになった。うちのインテリアコーディネーター達に引き継ぐけど、最初は俺も立ち会って様子を見るよ」

そうなのね、と言って美怜はしばし考え込む。

「どうかしたか?」
「うん。その打ち合わせ、最初の一回目は私も同席していい?」
「え?それは構わないけど。なんで?」
「やっぱり気になって。倉庫をご案内した時、私、タブレットで色んなバージョンのコーディネートをお見せしたでしょ?先方にそのイメージが残ってるかもしれないし、それをうちのコーディネーターさんは把握していない訳だから」

なるほど、それもそうか、と言って卓は腕を組む。

「そうしてくれると俺も助かるけど、そっちは大丈夫なのか?」
「入江課長に相談してみるね。多分いいよって言ってくれると思う」

すると頭上から「呼んだ?」と声がして、二人は驚いて振り仰ぐ。

「課長?!どうしてここに?」

慌てて立ち上がり、頭を下げた。

「私も食事しに来たんだよ。相田さんがこのお店の点心が美味しいって言ってたからね。それより、私の噂話?聞いちゃいけないやつだった?」
「いえ、まさかそんな。富樫さんが昨日契約を結んだコンベンションセンターの件で、最初の打ち合わせに私も同席させて欲しいって話してたんです。倉庫にご案内したのは私ですし、先方のイメージも、ある程度昨日私が話した内容かもしれないので」
「ああ、確かにそれはそうだね」
「行ってもよろしいでしょうか?それを課長に確認したくて」
「うん、いいよ。行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございます」

課長は美怜に頷くと、卓にも声をかける。

「富樫くん、契約おめでとう。なかなかがんばってるね」
「いえ、ミュージアムの皆様のおかげです。自分一人では、まだ何もできません」
「いや。他の営業マンはプライドが許さないのか、頑なに自分一人で契約を取ろうとするが、君は先方の希望に合わせて柔軟に対応する。ミュージアムにお連れするのが最適だと判断すれば、私達に頼んでくる。そうやって素直に仕事に向き合えるのは、君の良いところだよ」
「ありがたいお言葉、恐れ入ります。入江課長」
「またいつでも頼ってくれ。おっと、立ち話し過ぎたな。それじゃあ、二人でごゆっくり」
「はい、ありがとうございます」

スタッフに先導されて歩き始めた課長を見送っていると、すぐ後ろから「お疲れ様」と低い声がした。

え?と振り向いた美怜は、目の前に立ちはだかる背の高い男性の顔を見て驚いた。

「隼斗さん!課長とご一緒だったんですね」
「ああ、偶然だな。それじゃあ」
「はい、失礼いたします」

お辞儀して見送っていると、卓が慌てふためいたように美怜に顔を寄せた。

「ちょ、美怜!」
「ん?なに?」
「お前まさか、今成瀬さんのことを下の名前で呼んだのか?」

成瀬さん?と首を傾げてから、あ!と美怜は目を見開く。

「成瀬さんか!そうだ、やっと思い出した。成瀬さんだ」
「は?どういうこと?」
「ちょっと名字が思い出せなくてさ。えへへ」
「えへへってお前…。それで本部長を下の名前で呼ぶなんて、正気かよ?」
「本部長?って、本部の長?どこなの?本部って」

はあー?と卓は思わず大きな声を出してしまい、周りを気にしながら急いで美怜を座らせた。

「お前、成瀬さんのこと何も知らないのか?」
「知ってるよ?昨日、本社に異動になったんでしょ。営業部に六年いたけど、ミュージアムのことは分からないみたいで、勉強させてもらいますって言ってたよ」
「言ってたよ、じゃない!いいか?あの方は営業で六年間常に上位の成績で、海外事業部に異動してからは五年間で五つの海外支社を立ち上げて帰国。異動時期としては異例の昨日から本部長になった、もはや我が社の伝説の方だぞ?」
「伝説ってそんな。今も普通に現役の方だし、何より若いじゃない。大げさだなあ、卓は」
「おまっ…、なにを呑気な」

卓は思わず頭を抱える。

「美怜、ひょっとして本部長がどういう役職か知らないのか?組織図でどこに当たるか分かる?」
「だから本部のトップってことでしょ?どこかの部署?それとも店舗?」
「違うわ!本部ってのは、ズバリこの会社全体のこと!本部長は我々実務の社員のトップ、役員とほぼ同レベルの人だ」

うひゃ?!と美怜の口から妙な声がもれる。

「それって私達現場の社員からすれば、社長みたいなものってこと?」
「ああ。そんな方を下の名前で呼ぶなんて、お前クビが飛んでも知らんぞ?」

ヒー!!と両手を頬に当てて美怜は仰け反る。

「どうしよう、今すぐ謝ってくる!」

立ち上がろうとする美怜の腕を、卓が掴んで止めた。

「今はやめておけ。ほら、入江課長と深刻なお話されてる。邪魔になるだけだ」

二つ先の円卓にいる課長達に目を向けると、何やら真剣な顔で言葉を交わしている。

「うん、そうだね。今はやめておく。それからもう二度と下の名前で呼んだりしない。良かった、今日卓に教えてもらって。そんなにすごい方だったんだね、本部長って。入江課長よりもはるかに上ってこと?」
「まあ、そうなるな。でも入江課長は前任の本部長だろ?それなら成瀬本部長の先輩ってことだ。だから今、引き継ぎの話をされてるのかもな。ほら、会社だと課長が本部長に引き継ぎなんて、やりにくいだろうから」

言われて美怜は頷く。

「そっか。入江課長も本部長だったんだよね。あ、だから私誤解してたんだよ。だって入江課長、本部長も兼任してるって聞いてたから、てっきり課長と同レベルの役職なんだろうなって」
「ああ、確かに混乱するよな。そもそも入江課長が異例なんだ。本部長になって二年目の時に企業ミュージアムを作るって発案したのが入江さんでさ。その立ち上げから軌道に乗るまでを見届けるってことで、ミュージアムチームの課長も兼任することになったんだ。ミュージアムオープンから四年経って、そろそろ本部長の方に本腰入れるのかと思ってたら、なんとミュージアムの方をメインにしたいって、本部長の椅子を降りたんだ。で、急いで後任として呼び寄せられたのが成瀬さんってことらしいぞ」

なるほど、と頷きながら美怜はちらりと課長達の様子をうかがった。

(いつもニコニコ温和な入江課長が、まさかそんなに偉いお方だったとは。それに成瀬さんも、あんなにお若いのに課長や部長よりも格上だなんて)

これからは気を引き締めて、失礼のないように振る舞おうと美怜は心に誓った。

***

「わあ、どれもこれも美味しそう!」

やがて運ばれてきたたくさんの小さな蒸籠を覗き込んで、美怜は笑顔になる。

小龍包やホタテの焼売、ちまきにエビの蒸し餃子など、どれから食べようかと目移りした。

「熱いうちに食べなよ。あ、お前確か猫舌だったよな。気をつけろよ、特にこの小龍包とチャーシューまん。いいか?中身熱いからかぶりつくなよ。って、聞いてるのか?」
「うん、美味しそうよね。いただきまーす!」

美怜はパクッと小龍包をひと口で頬張ると、次の瞬間、んーーー!と悶絶して涙を浮かべる。

「だから言ったのに!ほら、お水」

差し出されたグラスを急いで受け取ると冷たい水を口に含み、ようやくゴクンと飲み込んだ。

「はあー、びっくりした。口の中が火事になったかと思った」
「まったくもう。舌、やけどするぞ?なんでゆっくり食べないんだよ」
「だって美味しそうなんだもん」
「だからって、料理は逃げないぞ」
「卓に全部食べられちゃうじゃない?」
「食べねーよ!ったく」

ブツブツ呟く卓の小言を聞き流し、美怜は今度こそ落ち着いてゆっくり味わった。

***

「美味しかった!デザートも色々あってもう大満足」
「すごい量食べてたもんな。空になった蒸籠を積み上げたら、二メートルは超えそうだったぞ」
「まっさかー!嘘でしょ?!」
「明日、制服のファスナー閉まるといいけどな」
「ギクッ!それは冗談に聞こえない」

食後のジャスミンティーを飲みながら、美怜は店内を改めて見渡す。

「ここのインテリアも素敵ね。うちは西洋家具と国産家具に力入れてるけど、アジアンテイストのオリエンタルな家具ももっとあったらいいな」
「そうだな。ホテルや中華街にあるレストランにも売り込めそうだし」
「雑貨屋さんにもいいかも。あとは、家庭のちょっとしたコーナーに置ける照明や棚とか。今度社内コンペに出してみようかな」

そう言うと美怜はカバンの中から手帳を取り出し、サラサラと鉛筆を走らせる。

「こういうちょっとした織物とかタペストリーもいいかも。オリエンタルな模様と色合いで…」

その手元を覗き込んだ卓は、思わず吹き出した。

「なんだよこれ?ひとだまに、こっちは化け物?」
「違うわよ!どこからどう見ても、まが玉とゾウでしょう」
「ええー?この不気味な丸い物体が?お前、画伯系だな。はい、コンペ即落ち」
「ひっどーい!いいもん。もしこれが商品化されても、卓には絶対に売らせないもんね」
「それは助かる。売れる自信が微塵もないからな」

むーっ!と美怜が睨むと、卓は勝ち誇ったように、へへん!と反り返る。

「なーに?その幼稚園児みたいなえっへんポーズは」
「なんだと?!」
「あら卓ちゃん、可愛いでしゅねー」
「やめんかい!」

あはは!と美怜は明るい笑い声を上げていた。

***

そんな美怜達から少し離れたテーブルでは、入江と成瀬が真剣に語り合っていた。

「入江さん。昨日ミュージアムを見学させていただいたあと、早速本社に戻ってデータの収集を始めました。製品の売り上げや契約には、ミュージアムが大きく関わっていると感じたからです。具体的には、ミュージアムのオンラインショッピングコーナーにある自社ECサイトから注文されたデータ、営業がミュージアムを利用した案件とその契約内容、また、ミュージアムを訪れたお客様のクチコミサイトへの投稿内容などです。まだ全ては収集し切れていませんが、ある程度のことは見えてきました」

そう言って成瀬は資料を入江に差し出す。

「まず店舗とミュージアムの顧客データベースを一元化してみますと、一定の動きがありました。リピーターのお客様は、小物などは店舗で購入されますが、大型の家具はミュージアムにある自社ECサイトでオーダーされるケースが多いです。これは、店舗に置いてある製品を見るだけではイメージが湧かず、ミュージアムのバーチャルレイアウトやモデルルームで実際の雰囲気を確かめてから、購入を決められるからだと推察します。更に、シリーズ化されているものをまとめて購入されることが多く、ベッドやダイニングセット、ソファやカーテンなど、ECサイトから一度に高額のオーダーがあります」

入江は資料をめくりながら、成瀬の話にじっと聞き入っている。

「また昨日の富樫くんのケースのように、法人のお客様の契約に、ミュージアムが大いに貢献していることも事実です。営業部では、契約の前にお客様を自分でミュージアムにお連れする社員もいるようですが、その場合契約に至るのはおよそ八割程度。ですが、富樫くんのようにミュージアムの案内をミュージアムチームに一任した場合、全ての案件が契約に至りました。つまり百パーセントです。しかしこの事実を把握している社員は、ほとんどいないかと思われます。最後に、クチコミサイトについてです」

成瀬が自分の資料をめくり、入江も同じように次のページに目をやる。

「現代は若者のテレビ離れが進んでおり、かつてのように企業の宣伝、イコール、テレビCMだった時代は終わりました。何億という大金を使って有名人を起用したテレビCMを作っても、それに見合う効果は期待できません。一方、企業ミュージアムの場合、実際に訪れた人達のクチコミは、瞬く間にSNSを通じて広がっていきます。そしてそのクチコミは、参考にされやすい。『この製品が良かった』と書かれたものは、その後売り上げも伸びています。書き込みをしても何も利益を得られない人が書くからこそ、信憑性がある。テレビCMで自社の製品がいかに良い物かをアピールしても、それは当たり前だと聞き流されます。恥ずかしながら、私は我が社の企業ミュージアムが出来たと知っても、ここまで大きな影響を及ぼすものだとは思っておりませんでした。せいぜいPR活動の一環だと。ですがそれは、とんでもない誤解であったと恥じております。そしてこの企業ミュージアムの価値を誰よりも早く見抜き、我が社に取り入れた入江さんに、尊敬と敬服の念を抱かずにはいられませんでした。僭越ながら入江さん、私はあなたのことを今もなお本部長の座にいらっしゃる方だと思っております」

そう言い切ってじっと入江を見つめていると、しばしの沈黙の後、ふっと入江は口元を緩めた。

「いやいや、まさかたった一日でこれだけのデータを集めるとは。何よりも、あのミュージアムの存在意義をすぐに見抜くとは。さすがとしか言いようがないよ、成瀬くん」

資料から顔を上げて、入江は成瀬に目尻を下げる。

「君がすごい逸材だという噂は本当だったな。あのミュージアムを発案した時、それはもう大反対されたよ。娯楽施設を作るのか?何のブームに乗ってるつもりなんだ?なんて言われてね。だが私は社員人生の全てをかけて取り組んだ。他の誰かに任せる気にもなれなくて、自ら課長に名乗り出た。そしてうちのチームのメンバーを一から育てたんだ。どうだい?彼女達。すごいだろう?」
「はい。まさに先鋭部隊という言葉がぴったりかと」
「ああ。もう私にとっては娘も同然だよ。いい子に育ってくれた。自分がこの会社の顔だという責任を背負って、日々切磋琢磨し、常に自分の頭で考えて行動してくれる。ぼんやり定時になるまでやり過ごすなんて仕事の仕方は、あの子達にはまったく当てはまらない。謙虚に己を見つめ直し、最善の方法を考え、チーム一丸となって向上しようと一生懸命だ。あの子達と一緒に仕事ができるなら、本部長の椅子なんていらないと放り出したのさ。課長になったと女房に報告したら、呆れて開いた口が塞がらないようだったけど、あなたらしいわとため息ついて受け入れてくれたよ。あはは!」

楽しそうに笑う入江だが、成瀬はますます胸を熱くさせていた。

「そういう訳で、私の後任に急遽君が招かれたんだ。こんな時期外れに異動なんて、振り回してしまって悪かったね」
「いえ!とんでもない。ですが入江さん。ミュージアムの意義をもっと役員や社員に理解してもらう必要があると思います。入江さんもチームのメンバーも、もっともっと高く評価され、優遇されるべきです。私は今後、その為にあらゆる手段で…」

すると初めて入江が口を挟んだ。

「成瀬くん、それはいらぬお世話だ」
「え…」

冷たく拒否されたような気持ちになり、成瀬は言葉を失う。

「ああ、ごめん。君の気持ちは嬉しいよ。だが私もあの子達も、そんなことは望んでいないんだ。だから本当に気にしないでくれ」
「…はい」
「理解者がいてくれるだけでありがたいよ。よかったら今度、時間がある時にでも我々のミーティングに参加してくれないか?」
「ミーティング、ですか?」
「そう。チーム全員で情報の共有をしたり、お客様への受け答えを統一したり、改善点を話し合ったりしてるんだ。少なくとも週に一回はやってるよ。もし興味があれば、君も顔を出してくれない?」
「はい、ぜひ!よろしくお願いいたします」
「うん。じゃあ、次回の予定をあとでメールしておくね」
「承知いたしました。必ず伺います」

そしてようやく二人は料理に手をつける。

「おお、やっぱり相田さんの言った通りだな。どれも美味しいし身体にも良さそうだ。この歳になると、健康診断の結果にヒヤヒヤしてね。成瀬くんはまだまだ大丈夫だろうけど。ほら、どんどん食べなさい」
「ありがとうございます」

入江は上機嫌で成瀬の前に蒸籠を並べる。

じっくり味わっていると、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

目を向けると、美怜と卓が顔を寄せ合い、手帳か何かを覗き込んで笑っている。

(仲良さそうだな。つき合ってるんだろうな。若いカップルは楽しそうでいい)

そう思っていると、入江も同じく視線をやって目尻を下げた。

「富樫くんもいい子でね。営業部にいるとどうしても先輩達からきつく当たられたり、叱られたりすることもあるだろうけど、いつもにこやかに明るく振る舞ってくれる。彼も我々ミュージアムチームを認めてくれる、数少ない味方の一人なんだよ」
「そうですか」

その時、ひときわ明るい声で卓が何か言い、美怜が拗ねたようにむっと卓を睨む。

だがすぐにまた顔を見合わせて笑い出した。

そんな二人の様子に成瀬はますます、お似合いだな、と微笑ましく見守っていた。
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