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66.アイランド内での事件
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『ヒビキアイランド』の王都アルンから馬で二日、山は緑が多く、山間から流れる川は清らかで、平地を潤すには十分な水量を供給していた。
ここであれば、一年の内には作物が豊かに実る事は、誰の目にも明らかであった。
あれから十日、コタン村の住人の為に、ランゲルンの町で空き家となっていた家のストックを、防衛と開拓目的に合わせて設置建築し、村人達が移り住んで行った。
言うまでもないが、『ヒビキアイランド』の住人には、『生体認証チップ』が首筋に埋め込まれ、思考、動向、生体監視と転送が可能となっているが、常時監視している訳でなく、呼吸、血流、心拍数などに異変が生じた時にのみ、作動するように作られている。
「響様、ここは良い土地ですな」
「アクラさん、食料・その他必要な物があれば、このメイドに申し付けて下さい。それと、村の管理は今まで同様、貴方にお任せします。問題無きようお願いします」
「そこまでお気遣い頂き、何とお礼を申したら………」
響とアクラは、設置建築の終わったコタン村の中を見て回る。
その後を、メイド、モンタナ、パ-ソンの三人が付いて来ていた。
「響様、我ら元タンバの警護、諜報、暗部、総勢七十名。思うようにお使い下さい」
「モンタナの言う通り、我ら命に代えましても、響様の命に従います」
跪きながらモンタナとパ-ソンは、響に忠誠を誓うと言うのであった。
「その時が来たらお願いします。ですが当面はこの村が成り立つように協力して下さい」
「「はっ!」」
自分の手足となって動いてくれる者が増える事は、ありがたい事である。
しかし、まだ国家として『ヒビキアイランド』は、機能しているとは決して言えなかった。
「マスタ-、ランゲルンで事件があったみたいだよ!」
響のリストコントロールから、琴祢の声が聞こえて来る。
いつ聞いても琴祢の声は緊張感がない。
しかし、アクラ達にとっては、リストコントロールから声がしている事の方が、気になるようだ。
「アクラさん、一緒に来てもらえますか?」
馬に乗る男が二人、その後ろには荷馬車に男三人と女二人が乗っている。
女達は、手足を縛られ荷物と一緒に、荷馬車に乗せられていた。
この二人は、ランゲルンの町に住む商家の娘達で、昨夜、屋敷の住人が寝静まった後、この五人組の男達が屋敷を密かに襲撃し、寝ている家族の心臓をナイフで貫き、娘達をさらったのだ。
「なぁ、ナミゴシ。上手くいったな~。食料も金も………女も手に入ったし、これからどうする?」
「どこかに隠れ家を見付けて、持ってる奴から………奪うだけさ。それに今夜は、色々と楽しめるぜ」
「そうだな! だけど、あんな便利な物何処で手に入れた?」
「たまたま、見付けた物だよ」
馬に乗る不良グル-プのリ-ダ-ナミゴシと、その仲間の一人は振り返り、荷馬車を見て目を輝かせるのであった。
ナミゴシの言う『見付けた物』とは、磁力の強い隕石であった。
ある時、馬から落ちたナミゴシが立ち上がると、首筋にたまご程の大きさの石が首に屈いていた。
その石を取ろうとすると、首筋で『ピシッ』と何かが壊れる音がした。
その後、ランゲルンに戻り配給品を受け取る際に、『生体認証チップ』の確認が取れないと言う出来事があり、『生体認証チップ』が破損している事が分かったのだ。
『生体認証チップ』には、体内電流の伝導率を上げるために、若干の鉄分を使っていたのだが、それが裏目に出た。
『生体認証チップ』が破損しているため、身体に異変があっても、『生体認証チップ』は起動しなくなっていたのだ。
それをいい事に、他の四人も『生体認証チップ』を壊して、悪事を重ねていた。
それも度を越して、今回のしぎとなったのだ。
そこには、響、ウルム公爵、アリス団長、ドヴェルグ村長、アクラ族長と言った『ヒビキアイランド』の責任者達が、顔を並べていった。
この集まりは、『ヒビキアイランド』での取り決めを行う。
『アイランド会議』のメンバ-達だ。
「コタン村のアクラさんと、初めて会うのは………ドルン村のドヴェルグ村長だけだな。ドヴェルグ村長、これから仲間になるコタン村のアクラさんだ」
ドヴェルグ村長とアクラ族長は、軽く言葉を交わし席に着く。
「今回の問題について、説明してくれ!」
「それでは、私からお伝えいたします。」
響の言葉をかわきりに、アリス団長が事の詳細を説明し始める。
ランゲルンの商家で、今朝、店に荷を届けに来た者から、『家の中で夫婦が死んでいる』と警備隊詰所に報告があり、現場に駆け付けた所夫婦の死亡を確認、一緒に住んでいた娘二人の行方が、今だ不明との事だった。
響は、話の内容を聞き納得いかない事があった。
『ヒビキアイランド』で、住人に何かあれば琴祢が気付くはずだ。
「琴祢、『生体認証チップ』の方はどうなっているんだ?」
「うん………それが、起動しないみたい………壊れてるのかなぁ?」
「えっ! 壊れる事あるんだ………」
体内に埋め込む認証チップが壊れると聞かされて、響は驚いた。
今、住人達は生活に不便を感じながらも、安心して生活している。
それは、『ヒビキアイランド』の住人が『生体認証チップ』が体内に埋め込まれている事で、危険があれば必ず助けて貰えると思っているからだ。
なのに今回、遺体を見付けるまで事件は発覚しなかった。
この事が知られれば、混乱は避けられないだろう。
『アイランド会議』のメンバ-にとって、原因の究明と早期解決が、必要な状況となっていた。
「琴祢、アイランド内全住人の安否確認をしてくれ」
「了解!」
外も内も問題だらけだな~
響が考える外とは、ランベル王国内外の事であり、内とは『ヒビキアイランド』の事である。
この様な事件が起きている時に、響の頭を過るのはアリシアとティスの事だった。
二人が居てくれたら………ん!
今まで気が付かなかったがテーブルの末席で、頬杖を付き潤んだ目で響を見ているア-リン・リドルの姿があった。
あっ、元気になったんだ!
女心の分からない響は、親指を立てて合図を送るのであった。
ここであれば、一年の内には作物が豊かに実る事は、誰の目にも明らかであった。
あれから十日、コタン村の住人の為に、ランゲルンの町で空き家となっていた家のストックを、防衛と開拓目的に合わせて設置建築し、村人達が移り住んで行った。
言うまでもないが、『ヒビキアイランド』の住人には、『生体認証チップ』が首筋に埋め込まれ、思考、動向、生体監視と転送が可能となっているが、常時監視している訳でなく、呼吸、血流、心拍数などに異変が生じた時にのみ、作動するように作られている。
「響様、ここは良い土地ですな」
「アクラさん、食料・その他必要な物があれば、このメイドに申し付けて下さい。それと、村の管理は今まで同様、貴方にお任せします。問題無きようお願いします」
「そこまでお気遣い頂き、何とお礼を申したら………」
響とアクラは、設置建築の終わったコタン村の中を見て回る。
その後を、メイド、モンタナ、パ-ソンの三人が付いて来ていた。
「響様、我ら元タンバの警護、諜報、暗部、総勢七十名。思うようにお使い下さい」
「モンタナの言う通り、我ら命に代えましても、響様の命に従います」
跪きながらモンタナとパ-ソンは、響に忠誠を誓うと言うのであった。
「その時が来たらお願いします。ですが当面はこの村が成り立つように協力して下さい」
「「はっ!」」
自分の手足となって動いてくれる者が増える事は、ありがたい事である。
しかし、まだ国家として『ヒビキアイランド』は、機能しているとは決して言えなかった。
「マスタ-、ランゲルンで事件があったみたいだよ!」
響のリストコントロールから、琴祢の声が聞こえて来る。
いつ聞いても琴祢の声は緊張感がない。
しかし、アクラ達にとっては、リストコントロールから声がしている事の方が、気になるようだ。
「アクラさん、一緒に来てもらえますか?」
馬に乗る男が二人、その後ろには荷馬車に男三人と女二人が乗っている。
女達は、手足を縛られ荷物と一緒に、荷馬車に乗せられていた。
この二人は、ランゲルンの町に住む商家の娘達で、昨夜、屋敷の住人が寝静まった後、この五人組の男達が屋敷を密かに襲撃し、寝ている家族の心臓をナイフで貫き、娘達をさらったのだ。
「なぁ、ナミゴシ。上手くいったな~。食料も金も………女も手に入ったし、これからどうする?」
「どこかに隠れ家を見付けて、持ってる奴から………奪うだけさ。それに今夜は、色々と楽しめるぜ」
「そうだな! だけど、あんな便利な物何処で手に入れた?」
「たまたま、見付けた物だよ」
馬に乗る不良グル-プのリ-ダ-ナミゴシと、その仲間の一人は振り返り、荷馬車を見て目を輝かせるのであった。
ナミゴシの言う『見付けた物』とは、磁力の強い隕石であった。
ある時、馬から落ちたナミゴシが立ち上がると、首筋にたまご程の大きさの石が首に屈いていた。
その石を取ろうとすると、首筋で『ピシッ』と何かが壊れる音がした。
その後、ランゲルンに戻り配給品を受け取る際に、『生体認証チップ』の確認が取れないと言う出来事があり、『生体認証チップ』が破損している事が分かったのだ。
『生体認証チップ』には、体内電流の伝導率を上げるために、若干の鉄分を使っていたのだが、それが裏目に出た。
『生体認証チップ』が破損しているため、身体に異変があっても、『生体認証チップ』は起動しなくなっていたのだ。
それをいい事に、他の四人も『生体認証チップ』を壊して、悪事を重ねていた。
それも度を越して、今回のしぎとなったのだ。
そこには、響、ウルム公爵、アリス団長、ドヴェルグ村長、アクラ族長と言った『ヒビキアイランド』の責任者達が、顔を並べていった。
この集まりは、『ヒビキアイランド』での取り決めを行う。
『アイランド会議』のメンバ-達だ。
「コタン村のアクラさんと、初めて会うのは………ドルン村のドヴェルグ村長だけだな。ドヴェルグ村長、これから仲間になるコタン村のアクラさんだ」
ドヴェルグ村長とアクラ族長は、軽く言葉を交わし席に着く。
「今回の問題について、説明してくれ!」
「それでは、私からお伝えいたします。」
響の言葉をかわきりに、アリス団長が事の詳細を説明し始める。
ランゲルンの商家で、今朝、店に荷を届けに来た者から、『家の中で夫婦が死んでいる』と警備隊詰所に報告があり、現場に駆け付けた所夫婦の死亡を確認、一緒に住んでいた娘二人の行方が、今だ不明との事だった。
響は、話の内容を聞き納得いかない事があった。
『ヒビキアイランド』で、住人に何かあれば琴祢が気付くはずだ。
「琴祢、『生体認証チップ』の方はどうなっているんだ?」
「うん………それが、起動しないみたい………壊れてるのかなぁ?」
「えっ! 壊れる事あるんだ………」
体内に埋め込む認証チップが壊れると聞かされて、響は驚いた。
今、住人達は生活に不便を感じながらも、安心して生活している。
それは、『ヒビキアイランド』の住人が『生体認証チップ』が体内に埋め込まれている事で、危険があれば必ず助けて貰えると思っているからだ。
なのに今回、遺体を見付けるまで事件は発覚しなかった。
この事が知られれば、混乱は避けられないだろう。
『アイランド会議』のメンバ-にとって、原因の究明と早期解決が、必要な状況となっていた。
「琴祢、アイランド内全住人の安否確認をしてくれ」
「了解!」
外も内も問題だらけだな~
響が考える外とは、ランベル王国内外の事であり、内とは『ヒビキアイランド』の事である。
この様な事件が起きている時に、響の頭を過るのはアリシアとティスの事だった。
二人が居てくれたら………ん!
今まで気が付かなかったがテーブルの末席で、頬杖を付き潤んだ目で響を見ているア-リン・リドルの姿があった。
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