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62.族長会議
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一夜明けて、朝からコタン村の責任者達が族長の所に集まり、今後の方針について話し合っている。
部外者の響は、一人の武装した男に『村の中を案内する』と言うお決まりの言葉で、朝食後連れ出され村の中を歩き回っていた。
この村は山の中腹にあり、一方は切り立った崖が外敵の侵入を防いでいる。
村に入るためには、昨日通った石造りの砦を通るか、山を越えて来るしか方法はない。
しかし、山越えは道も険しく、山の向こうには魔獣が住むトブリオ大森林が広がっているため、そこから来る事はまず不可能だった。
村の中には、二十軒の家の他に、テントが二十四張り建てられ、武装した者達が寝泊まりしているようだった。
多分、マゼンタが言っていた。
ガズール帝国の秘密機関タンバで、働いていた村の者達が戻って来ているのであろう。
響が歩く姿を、それとなく目で追っていた。
「昨夜出してくれた料理は、ここで採れない物も多いようだったが、外からの流通が止まっても、ここで取れる作物だけで、村人は食べて行けるのか?」
「あんたに出された料理は、非常用の備蓄品だ。村の者は、塩味のジャガイモスープしか食べちゃいねぇ。あんたは特別って事だよ。仲間の依頼を受けて、ここまで来てくれたんだからな」
そっぽを向きながら話すこの若者も、ここまで来た響に感謝をしているようだった。
「あそこで座っている子供達は、何をしているんだ?」
響が見る先には、十五人程の十歳前後の子供達が、壁に向かって座り込んでいた。
「ああ、あれは、投げナイフの練習だ。師匠が会議中だから待っているんだろう」
「よし!」
これより、響のお節介タイムの始まりだ。
『オートコンバットモード』を使って、投げナイフの扱い方を子供達に教えて行くのだった。
「族長、私の部隊で第二王子を暗殺して、王と第一王子を助け出しましょう」
暗部の責任者マエラは、謀反を起こした第二王子の暗殺し、元の帝国に戻そうと主張する。
「王と第一王子の命なく、第二王子を暗殺すると、我らは謀反人になるそ。王と第一王子は、病にかかっていると言うが、実際には行方不明で、第二王子が正式に後を継いでいるんだ。王と第一王子の行方を、探るのが先だ!」
秘密機関タンバが探索したが、王と第一王子の行方は分からなかった。
王と第一王子の捜索を主張する。彼は、諜報活動の責任者パ-ソンである。
「二人とも、今決めないといけない事は、密書の内容が第二王子に知られたかもしれないと言う事だ。もしもそうであれば、この村を襲う可能性が高い………戦うか、この村を捨てるか、決めなくてはいけない」
マエラとパ-ソンの話を遮り話しているのが、昨日、響を族長の所に連れて来た片目の男、警護部隊の責任者モンタナである。
「だが、密書の内容が知られたと言う、確証はないのだろ! ならば、私の部隊だけでも捜索に、出てもよいのではないか、族長!」
パ-ソンは、諜報活動の責任者らしく、捜索する場所を書き留めた地図を、テ-ブルの上に広げる。
「よし、パ-ソン、準備出来次第捜索に行け。マエラ、非戦闘員と子供合わせて百二十七名を、安全に隠せる所を探すのだ! モンタナよ、村の警備体制の強化と、食料の手配をするのだ。出て行く者も残る物も、食料は必要だからな。」
族長アクラは、決断を下す。一族の血を残し、名誉を守る為に二つの決断をする。
「その前に、今日はお客様もいる事ですし、備蓄の食材を使って、村の者にも真面な食事を振る舞いましょうか」
「それはいい、子供達も喜ぶ!」
族長夫婦は、子供達に腹いっぱい食べさせる事が出来ない事を、日頃から悩んでいた。
と言うのも、第二王子が政権を取り、秘密機関タンバが解散する前までは、食料や物資を十日に一度は運び入れていたのだが、今は、買い付ける先が無いのである。
村人は、一日一食か二食、ジャガイモスープか塩味の干し芋を食べていた。
「何事だ?」
会議を終えた族長達が家から出てみると、そこでは村人達が集まり食事をしていた。
一部の者は、この食事を喜び、樽を叩き女達が踊りを踊る。
その脇では、子供達が初めて口にするジュ-スを飲み、チョコケ-キを食べて嬉しそうに燥いでいた。
族長達が、村人達の中に入って行くと、テ-ブルの上にトレイに乗った暖かい、パン・温野菜・ハンバ-グ・デザートケ-キ、その他にスナック・ドリンク・調味料が立ち並んでいた。
テ-ブルの横では響が、ダンボ-ルからアクセサリ-やスナック・ドリンク・調味料を取出し、ダンボ-ル内のビニールのタブを引き抜くと、水と石灰石が化学反応を起こして、トレイを加熱し始める。
「これは何事でございますか響殿!」
族長夫人のキリクが、響の姿を見て駆け寄って来る。
始めて見る料理や、加熱される箱を見て二度驚いている。
「子供達がお腹を空かせていたので、食事を振る舞っていたんです」
響は、ダンボ-ルの蓋を閉じると、族長達をテ-ブルに招き入れる。
族長夫婦は椅子に座り、モンタナ、パ-ソン、マエラは族長夫婦の後ろに立ってテ-ブルの料理を覗き込んでいる。
響は、トレイから器に料理を取り分けると、族長達に食べるように勧める。
「………………美味い!」
このような岩山で、塩味に慣れている大人達にとって、響が提供する料理の味は、夢のような物であった。
そして、ほとんどの子供達は、今まで甘い物を口にした事も無かった。
そんな子供達の前に、ジュ-スやチョコケ-キが提供されたのだ。
嬉しくて、幸せイッパイの子供達が走り回り、大人達が歌い踊るのも仕方がない。
しかし、そんな彼らに危険が迫っている事を、誰も気づいていない。
部外者の響は、一人の武装した男に『村の中を案内する』と言うお決まりの言葉で、朝食後連れ出され村の中を歩き回っていた。
この村は山の中腹にあり、一方は切り立った崖が外敵の侵入を防いでいる。
村に入るためには、昨日通った石造りの砦を通るか、山を越えて来るしか方法はない。
しかし、山越えは道も険しく、山の向こうには魔獣が住むトブリオ大森林が広がっているため、そこから来る事はまず不可能だった。
村の中には、二十軒の家の他に、テントが二十四張り建てられ、武装した者達が寝泊まりしているようだった。
多分、マゼンタが言っていた。
ガズール帝国の秘密機関タンバで、働いていた村の者達が戻って来ているのであろう。
響が歩く姿を、それとなく目で追っていた。
「昨夜出してくれた料理は、ここで採れない物も多いようだったが、外からの流通が止まっても、ここで取れる作物だけで、村人は食べて行けるのか?」
「あんたに出された料理は、非常用の備蓄品だ。村の者は、塩味のジャガイモスープしか食べちゃいねぇ。あんたは特別って事だよ。仲間の依頼を受けて、ここまで来てくれたんだからな」
そっぽを向きながら話すこの若者も、ここまで来た響に感謝をしているようだった。
「あそこで座っている子供達は、何をしているんだ?」
響が見る先には、十五人程の十歳前後の子供達が、壁に向かって座り込んでいた。
「ああ、あれは、投げナイフの練習だ。師匠が会議中だから待っているんだろう」
「よし!」
これより、響のお節介タイムの始まりだ。
『オートコンバットモード』を使って、投げナイフの扱い方を子供達に教えて行くのだった。
「族長、私の部隊で第二王子を暗殺して、王と第一王子を助け出しましょう」
暗部の責任者マエラは、謀反を起こした第二王子の暗殺し、元の帝国に戻そうと主張する。
「王と第一王子の命なく、第二王子を暗殺すると、我らは謀反人になるそ。王と第一王子は、病にかかっていると言うが、実際には行方不明で、第二王子が正式に後を継いでいるんだ。王と第一王子の行方を、探るのが先だ!」
秘密機関タンバが探索したが、王と第一王子の行方は分からなかった。
王と第一王子の捜索を主張する。彼は、諜報活動の責任者パ-ソンである。
「二人とも、今決めないといけない事は、密書の内容が第二王子に知られたかもしれないと言う事だ。もしもそうであれば、この村を襲う可能性が高い………戦うか、この村を捨てるか、決めなくてはいけない」
マエラとパ-ソンの話を遮り話しているのが、昨日、響を族長の所に連れて来た片目の男、警護部隊の責任者モンタナである。
「だが、密書の内容が知られたと言う、確証はないのだろ! ならば、私の部隊だけでも捜索に、出てもよいのではないか、族長!」
パ-ソンは、諜報活動の責任者らしく、捜索する場所を書き留めた地図を、テ-ブルの上に広げる。
「よし、パ-ソン、準備出来次第捜索に行け。マエラ、非戦闘員と子供合わせて百二十七名を、安全に隠せる所を探すのだ! モンタナよ、村の警備体制の強化と、食料の手配をするのだ。出て行く者も残る物も、食料は必要だからな。」
族長アクラは、決断を下す。一族の血を残し、名誉を守る為に二つの決断をする。
「その前に、今日はお客様もいる事ですし、備蓄の食材を使って、村の者にも真面な食事を振る舞いましょうか」
「それはいい、子供達も喜ぶ!」
族長夫婦は、子供達に腹いっぱい食べさせる事が出来ない事を、日頃から悩んでいた。
と言うのも、第二王子が政権を取り、秘密機関タンバが解散する前までは、食料や物資を十日に一度は運び入れていたのだが、今は、買い付ける先が無いのである。
村人は、一日一食か二食、ジャガイモスープか塩味の干し芋を食べていた。
「何事だ?」
会議を終えた族長達が家から出てみると、そこでは村人達が集まり食事をしていた。
一部の者は、この食事を喜び、樽を叩き女達が踊りを踊る。
その脇では、子供達が初めて口にするジュ-スを飲み、チョコケ-キを食べて嬉しそうに燥いでいた。
族長達が、村人達の中に入って行くと、テ-ブルの上にトレイに乗った暖かい、パン・温野菜・ハンバ-グ・デザートケ-キ、その他にスナック・ドリンク・調味料が立ち並んでいた。
テ-ブルの横では響が、ダンボ-ルからアクセサリ-やスナック・ドリンク・調味料を取出し、ダンボ-ル内のビニールのタブを引き抜くと、水と石灰石が化学反応を起こして、トレイを加熱し始める。
「これは何事でございますか響殿!」
族長夫人のキリクが、響の姿を見て駆け寄って来る。
始めて見る料理や、加熱される箱を見て二度驚いている。
「子供達がお腹を空かせていたので、食事を振る舞っていたんです」
響は、ダンボ-ルの蓋を閉じると、族長達をテ-ブルに招き入れる。
族長夫婦は椅子に座り、モンタナ、パ-ソン、マエラは族長夫婦の後ろに立ってテ-ブルの料理を覗き込んでいる。
響は、トレイから器に料理を取り分けると、族長達に食べるように勧める。
「………………美味い!」
このような岩山で、塩味に慣れている大人達にとって、響が提供する料理の味は、夢のような物であった。
そして、ほとんどの子供達は、今まで甘い物を口にした事も無かった。
そんな子供達の前に、ジュ-スやチョコケ-キが提供されたのだ。
嬉しくて、幸せイッパイの子供達が走り回り、大人達が歌い踊るのも仕方がない。
しかし、そんな彼らに危険が迫っている事を、誰も気づいていない。
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